薬物別―危険ドラッグ

1 危険ドラッグとは

一般に、覚醒剤や麻薬と同種の成分や類似の化学物質を混入させた植物片等を意味しますが、法的な定義はありません。

危険ドラッグと一口に言っても、粉状のものや錠剤になっているもの、液状のもの等、様々な形態で販売されており、合法ハーブ・脱法ハーブ・アロマ・リキッド・お香等と聞こえの良い呼び方をされることが多いです。

しかし、合法ドラッグや脱法ドラッグと言われていても、覚醒剤などの違法薬物よりも人体への悪影響が強い危険な成分が混入されていることも多く、危険ドラッグの多くが違法薬物として規制の対象に含まれます。

具体的には、「医薬品医療機器法」(いわゆる「旧薬事法」)により、中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物質が指定薬物として、医療等の用途に供する場合を除いて、その製造、輸入、販売、所持、使用等が禁止されています。

薬事法により、指定薬物の輸入、製造、販売、授与、販売若しくは授与目的での貯蔵又は陳列については禁止されていましたが、所持、使用等について特段の規制がなく、指定薬物を含む脱法ドラッグを安易に入手し使用する事例が数多く報告され、急性毒性や「依存症候群」等の精神症状を発現した事例、交通事故等による他者への危害事例が頻発しました。

このような状況を改善すべく、平成26年4月1日より、指定薬物の輸入、製造、販売等に加え、所持、使用、購入、譲り受けが新たに禁止されました。

 

2.危険ドラッグの危険性について

危険ドラッグは、店舗やインターネット上で、「合法ドラッグ」「脱法ハーブ」等と称して販売されています。

こうした商品には、興奮・覚醒作用がある「覚醒剤類似物質(アッパー系)」と沈静・幻覚作用がある「合成大麻(ダウナー系)」の両方が配合されていることがあり、また、それらの配合比率も商品により異なっているので、使用によりどんな作用が発生するか予測できません。

そのため、意識障害、嘔吐、けいれん、呼吸困難等を起こして死傷者を伴う大きな交通事故を起こしたり、最悪の場合には死につながることもあります。

 

3 法定刑

・医薬品医療機器等法76条の4、84条26号

指定薬物について、医療等の用途以外での製造、輸入、販売、授与、所持、購入、譲り受け、使用が禁止されています。

違反すると、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、又は両方が併科されます。

 

・医薬品医療機器等法83条の9

業として、指定薬物の製造、輸入、販売、授与し、又は、所持(販売や授与をする目的で貯蔵し、陳列した場合に限る)した場合には、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、又は両方が併科されます。

 

・医薬品医療機器等法76条の5、85条9号

指定薬物の広告は、医薬関係者や医療等用途に使用するものを対象として行う場合を除き禁止されています。

違反すると、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又は両方が併科されます。

 

・医薬品医療機器等法76条の6第1項、87条15号

指定薬物である疑いがある物品、及びそれに加え指定薬物と同等以上に精神毒性を有する蓋然性が高い物である疑いがある物品の貯蔵・陳列している者、製造・輸入・販売・授与した者に対して、検査命令を出すことができます。

検査命令に違反した場合は、50万円以下の罰金です。

 

・医薬品医療機器等法76条の6第2項、86条23号

検査結果が出るまでは、当該物品や同一の物品を製造・輸入・販売・授与、販売又は授与の目的で陳列し、広告してはならない旨を併せて命じることができます。

命令に違反した場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。

 

・関税法109条1項、69条の11第1項1号の2

医薬品医療機器等法に基づき指定される指定薬物を輸入した場合、10年以下の懲役、3000万円以下の罰金、又は両方が併科されます。

 

4 弁護活動

・犯罪の成立を争う場合

危険ドラッグの所持・使用、輸入・販売等をした場合でも、犯行当時に違法な薬物であることの認識がなかったのであれば、罪に問われることはありません。

ただ、違法性の認識については、これが規制薬物に該当するという認識までを要するものではなく、当該薬物が違法な物かも知れないという認識がある程度で構わないとされています。

ですから、違法薬物とは知らなかったという主張は、容易に通るものではありません。

しかし、確実に適法であるとの確信を持っていた場合には、犯罪が成立しませんし、十分に争う余地はあります。

弁護士は、違法薬物との認識がなかったということを、客観的な証拠や事実に照らして、具体的に主張していきます。

また、たとえ事件を起こしても、それを証明するに足りる証拠がなければ有罪にはなりません。

その証拠は適法な捜査によって獲得されたものでなければなりません。

ですから、職務質問・所持品検査・取り調べなど、捜査の過程で看過しがたい重大な違法行為があれば、その旨を主張して、収集された証拠を排除します。

こうした主張が認められれば、犯罪を立証する証拠が不十分であるとして、不起訴処分・無罪判決を受けられる可能性が高まります。

 

・環境調整・再犯防止

危険ドラッグ・脱法ドラッグを使用したことなどにつき争いがない場合、できる限り量刑を軽くしてもらえるように、酌むべき事情を精査して主張していきます。

具体的には、薬物への依存や常習性がないこと・再犯を防ぐ対策をとっていること・共犯者間で従属的な立場にあったことなどを客観的な証拠に基づいて説得的に主張します。

薬物依存を断ち切るためには、専門医の治療を受けることも重要です。

減刑・執行猶予付き判決の獲得には、ご家族や周囲の方の理解と協力のもと、二度と薬物犯罪に手を染めない環境作りと具体的な対応策を裁判所に示すことが重要なのです。

また、医薬品医療機器等法では、選択刑として罰金刑が定められているため、正式な裁判手続きではなく、略式手続によって罰金にすることが可能です。

この略式罰金を狙うためにも、環境づくりが大切です。

 

・身柄解放活動

危険ドラッグ・脱法ドラッグに関する犯罪をしてしまった場合でも、証拠隠滅の恐れがない・逃亡の恐れがないことなどを客観的な証拠に基づいて積極的に主張します。

こうした活動は、逮捕・勾留されている方の早期釈放・保釈につながります。
   
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所として薬物犯罪事件も多く扱っています。

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