覚醒剤の輸入・密輸

覚醒剤の輸入・密輸

1 覚醒剤の規制法令

覚醒剤(覚せい剤)の輸入・密輸を規制する主な法律は,①覚醒剤取締法,②麻薬特例法(国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律),③関税法です。

覚醒剤取締法

第四十一条 覚醒剤を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第四十一条の五第一項第二号に該当する者を除く。)は、一年以上の有期懲役に処する。

2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、無期若しくは三年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは三年以上の懲役及び一千万円以下の罰金に処する。

3 前二項の未遂罪は、罰する。

麻薬特例法

第四条 税関長は、関税法(昭和二十九年法律第六十一号)第六十七条同法第七十五条 において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による貨物の検査により、当該検査に係る貨物に規制薬物が隠匿されていることが判明した場合において、薬物犯罪の捜査に関し、当該規制薬物が外国に向けて送り出され、又は本邦に引き取られることが必要である旨の検察官又は司法警察職員からの要請があり、かつ、当該規制薬物の散逸を防止するための十分な監視体制が確保されていると認めるときは、当該要請に応ずるために次に掲げる措置をとることができる。ただし、当該措置をとることが関税法規の目的に照らし相当でないと認められるときは、この限りでない。

一 当該貨物(当該貨物に隠匿されている規制薬物を除く。)について関税法第六十七条の規定により申告されたところに従って同条の許可を行うこと。

二 その他当該要請に応ずるために必要な措置

2 前項(第一号を除く。)の規定は、関税法第七十六条第一項ただし書の規定による郵便物中にある信書以外の物の検査により、当該信書以外の物に規制薬物が隠匿されていることが判明した場合について準用する。この場合において、当該規制薬物については、同法第七十四条の規定は、適用しない。

第五条 次に掲げる行為を業とした者(これらの行為と第八条の罪に当たる行為を併せてすることを業とした者を含む。)は、無期又は五年以上の懲役及び一千万円以下の罰金に処する。

四 覚醒剤取締法第四十一条又は第四十一条の二(所持に係る部分を除く。)の罪に当たる行為をすること。

第八条 薬物犯罪(規制薬物の輸入又は輸出に係るものに限る。)を犯す意思をもって、規制薬物として交付を受け、又は取得した薬物その他の物品を輸入し、又は輸出した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

関税法

第六十九条の十一 次に掲げる貨物は、輸入してはならない。

一 麻薬及び向精神薬、大麻、あへん及びけしがら並びに覚醒剤(覚醒剤取締法にいう覚醒剤原料を含む。)並びにあへん吸煙具。ただし、政府が輸入するもの及び他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。

第百九条 第六十九条の十一第一項第一号から第六号まで(輸入してはならない貨物)に掲げる貨物を輸入した者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2 具体的な規制行為     

 覚醒剤取締法、麻薬特例法、関税法により、覚醒剤の輸入は規制の対象になっています。具体的な輸入行為としては、海外で購入した覚醒剤を日本に持ち込もうとしたところ、税関検査で発覚した場合や、海外の友人から国際郵便で日本国内に送ってもらう場合に税関検査で発覚した場合などが考えられます。

 税関で止められた場合には、覚醒剤取締法の「輸入」は既遂となりますが、関税法の「輸入」は未遂となります。また、麻薬特例法はコントロールドデリバリーを可能にしています。具体的には、海外の友人から覚醒剤を国際郵便で日本国内に送ってもらう場合に、いったん税関で覚醒剤が発見され、警察により、郵便物の中身を覚醒剤からお菓子などに抜き替えて、郵便物を警察が監視した状況で郵便物が本人のところに届けられます。本人が覚醒剤が入っていると思って郵便を受け取った場合には、受け取った郵便物がお菓子であったとしても麻薬特例法の罪が成立してしまいます。また,覚醒剤が見つかってもそのまま税関を通して監視し,本人が受け取ったところで摘発することもあります。

3 争点

 輸入・密輸事件に関わっていない又は知らされていなかったという犯人性や共謀の否認の他に、輸入行為はしてしまったものの覚醒剤と知らなかったなど故意を争うケースもあります。覚醒剤取締法、麻薬特例法、関税法の罪は故意がなければ成立しません。故意があるといえるには,具体的に覚醒剤を輸入したという認識が必要です。「覚醒剤とは知らなかった」等の事情がある方は、故意の有無が問題になります。故意における薬物の認識は,一般常識的なもので足りると考えられており,身体に有害で違法な薬物を含むものであると思っていた場合には,法律上,故意があるとされます。

4 処分の見通し

 身体拘束については、逮捕された上で、20日間勾留される可能性が高くなります。薬物事件の場合利害関係者が多く、捜査の長期化が予想されるほか,関係者と通じて証拠隠滅を図るおそれがあるとされるからです。最終的な刑の判断は、覚醒剤の輸入が成立する場合,薬物の量や輸入目的のいかん,常習性などが考慮されて判断がなされます。輸入した薬物の量が多い場合や利益を得る目的、業務として輸入行為を行っていたと認められる場合には,実刑判決を受ける可能性が高くなります。早期に弁護士を弁護人として選任し、適切な取調対応アドバイスを受け、身柄解放活動を行うことで、不起訴や無罪に向けた否認の主張が認められる可能性を高めたり、釈放・保釈の可能性を高めることができます。また、容疑者・犯人本人が覚醒剤の輸入行為による自身の罪を認めている自白事件でも、薬物輸入事件に精通した弁護士をつけることで、釈放・保釈の可能性を高めながら、執行猶予付き判決及び減刑に向けた活動をしていくことができます。

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