Archive for the ‘未分類’ Category
(事例紹介)自宅で大麻栽培 大麻取締法違反で逮捕
(事例紹介)自宅で大麻栽培 大麻取締法違反で逮捕
自宅で大麻を栽培したとして、大麻取締法違反の疑いで逮捕されたという大麻取締法違反事件を基に、大麻取締法違反について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事件概要
新潟県柏崎警察署は、大麻取締法違反(栽培)の疑いで柏崎市に住む男を逮捕しました。
男は今年9月上旬頃に、柏崎市内の自宅でプランターに大麻の種をまいて育てたとして、大麻取締法違反(栽培)の疑いが持たれています。
警察によると、男の自宅にはプランター3個と育苗用のポット10個があり、調べに対し「自分で乾燥させて使うためにやった」とおおむね容疑を認めているものの、育てていた時期については一部否認しているようです。
(10月14日配信の日テレニュースの記事を参考にしたフィクションです。)
大麻取締法とは
大麻を、所持、栽培、譲り受け、譲り渡した場合、刑法ではなく大麻取締法によって処罰されます。
大麻は、大麻草及びその製品をいうものとされています。
しかし、大麻草の成熟した茎及びその製品、並びに大麻草の種子及びその製品は、この法律にいう「大麻」には当たらないとされています。
その理由としては、大麻草の成熟した茎や大麻草の種子には、中枢神経に作用し,著しい向精神作用を及ぼす「テトラヒドロカンナノビール」という成分がほとんど含まれていないということと、大麻の茎は麻織物に種子は七味唐辛子などに使用されているため、このような大麻を活用する必要性があることから規制の対象とはされていないようです。
大麻を栽培してしまうと
大麻取扱者以外の大麻の栽培は、大麻取締法3条で禁止されています。
大麻取扱者とは、都道府県知事の免許を受けた「大麻栽培者」や「大麻研究者」のことをいいます。
大麻取扱者ではないのに、大麻を栽培した場合の刑罰は、7年以下の懲役です(大麻取締法24条1項)。これに、営利目的があった場合は刑罰が加重され、10年以下の懲役又は情状により10年以下の懲役及び300万円以下の罰金となります(同条2項)。
営利目的については、当事者の供述内容だけでなく、栽培されていた大麻の量や事件関係者の有無などから総合的に判断されます。
今回の事件では、営利目的についてはまだ不明ですが、自宅で大麻を育てており、この点についてはおおむね認めていることから大麻取締法違反で処罰される可能性は高いでしょう。
大麻取締法違反に強い弁護士
大麻取締法違反の弁護活動を得意とする弁護士をお探しの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、無料相談のご予約をフリーダイヤル0120-631-881にて24時間、年中無休で受け付けております。
まずは、お気軽にお電話下さい。
また、ご家族、ご友人が逮捕された場合は、初回接見サービスをご利用ください。
(制度紹介)薬物犯罪と刑の一部執行猶予 メリット・デメリットは?
(制度紹介)薬物犯罪と刑の一部執行猶予 メリット・デメリットは?
前回の記事では、薬物法による刑の一部執行猶予を取り上げ、特に刑の一部執行猶予になる条件に注目しました。
今回の記事では、薬物法による刑の一部執行猶予のメリット・デメリットに注目します。
~刑の一部執行猶予のメリット・デメリット~
刑の一部執行猶予について薬物犯罪が他の犯罪と異なる点は、付けられる条件だけではありません。
薬物法第4条
第1項 前条に規定する者に刑の一部の執行猶予の言渡しをするときは、刑法第27条の3第1項の規定にかかわらず、猶予の期間中保護観察に付する。
第2項 刑法第27条の3第2項及び第3項の規定は、前項の規定により付せられた保護観察の仮解除について準用する。
前回の記事でも簡単に触れましたが、薬物法によって刑の一部執行猶予となった場合には、必ず執行猶予に保護観察が付けられることになります。
保護観察とは、保護司などと定期的な面談を行うなどして、生活改善や就労指導などを受ける処分を指します。
一般の刑の全部執行猶予や刑の一部執行猶予でも保護観察処分を付けることはできますが、必ず付くというものではありませんが、薬物法によって刑の一部執行猶予となった場合には、必ず執行猶予期間中に保護観察が付くことになります。
前回から今回の記事にかけて確認した、薬物法による刑の一部執行猶予の条件の緩和や、必ず保護観察が付くことといった特徴は、薬物犯罪の特徴に基づいています。
薬物犯罪、特に薬物の使用などは、中毒性が高く、再犯率が高いことは一般にも知られているところです。
日々のニュースでも、何度も覚醒剤や大麻を使用してしまった芸能人のニュースが流れることもあり、世間的にも「薬物犯罪は繰り返してしまう」というイメージがあるのではないでしょうか。
このような薬物犯罪の特徴から、薬物犯罪には再犯者が多く、前科を持っていたり、短期間で複数回検挙されていたりという人が少なくありません。
刑の一部執行猶予という制度は、元々再犯を繰り返してしまう人に対して、刑務所などの刑事施設で矯正教育を受けるということと、社会内で生活しながら処遇を受けることのどちらも経験することで再犯を防止しようという制度ですから、特に再犯率の高い薬物犯罪について、その特性に沿った条件・内容で制度を使おうとして、こうした特例が出来たのです。
刑の一部執行猶予を受けることで、刑事施設で矯正教育を受け、かつ出所後も保護観察処分による管理を受けることで、再犯をしないための環境づくりに資することができますし、単純に刑期の一部が執行猶予されることで、早く刑務所から出られるというメリットがあります。
刑務所に入れば、当然その間社会から切り離されて生活することになりますから、少しでも早く外に出て、社会生活をリスタートしたいと考える方は少なくないでしょう。
しかし、先ほど記載したように、薬物法による刑の一部執行猶予では必ず保護観察が付きますし、薬物依存の改善のための処遇も受けることが条件になっていますから、刑務所から出た後も相当期間の監視下に置かれ、国の影響力のもと過ごすことになります。
例えば、「懲役3年、うち1年を執行猶予2年」と仮定した場合、単に「懲役3年」であった場合には監視・管理される期間は3年ですが、「懲役3年、うち1年を執行猶予2年」の場合は、刑務所に入っている2年と執行猶予を受けている2年の合計4年、監視・管理されることになります。
「執行猶予」というとメリットの大きいことに思えますが、このようにメリット・デメリットがあるとも考えられるため、制度もよく理解しながら刑事手続に臨む必要があります。
特に薬物犯罪の場合、罰金刑が定められていない犯罪も多く、再犯が多いこともあり、刑事裁判になり、実刑か執行猶予かを争う事件も少なくありません。
こうした場合にどういった処分を目指すのか、どういった選択肢があるのかを理解した上で臨むことで、被告人の方の利益を守ることができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、薬物犯罪の刑事裁判についてのご相談・ご依頼も受け付けています。
まずは相談だけしたいという方のお問い合わせも受け付けていますので、お気軽にご相談ください
(制度紹介)薬物犯罪の刑の一部執行猶予が付く条件とは?
(制度紹介)薬物犯罪の刑の一部執行猶予が付く条件とは?
前回の記事では、刑の一部執行猶予という制度をご紹介しました。
今回の記事では、薬物犯罪をした場合に刑の一部執行猶予が付く条件ついて注目します。
~薬物犯罪をした場合の刑の一部執行猶予~
前回の記事で確認した通り、刑の一部執行猶予が付けられる条件としては、刑法によって以下の条件が定められています。
刑法第27条の2
第1項 次に掲げる者が3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、1年以上5年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができる。
第1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
第2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
第3号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
しかし、実は、覚醒剤や大麻、麻薬、危険ドラッグなどに代表される薬物犯罪(薬物法第2条に定めるもの)については、刑の一部執行猶予が付けられる条件は、この刑法に定められている条件とは異なる条件になっています。
薬物犯罪に関する刑の一部執行猶予については、「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」(通称「薬物法」)という法律で定められています。
薬物法第3条
薬物使用等の罪を犯した者であって、刑法第27条の2第1項各号に掲げる者以外のものに対する同項の規定の適用については、同項中「次に掲げる者が」とあるのは「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律(平成25年法律第50号)第2条第2項に規定する薬物使用等の罪を犯した者が、その罪又はその罪及び他の罪について」と、「考慮して」とあるのは「考慮して、刑事施設における処遇に引き続き社会内において同条第1項に規定する規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが」とする。
少し分かりづらいかもしれませんが、薬物法第3条では、刑法第27条の2第1項に定められている刑の一部執行猶予の条件を緩和しています。
ここでは、薬物法に定められている薬物犯罪(薬物法第2条に定めるもの)を犯した者については、「3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、刑事施設における処遇に引き続き社会内において同条第1項に規定する規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるとき」に刑の一部執行猶予を付けることができるとしているのです。
具体的には、薬物法で定められている薬物犯罪を犯した者については、刑法第27条の2第1項で定められている条件のうち、前科の有無(禁錮以上の刑に処せられたことがあるかどうか等)の条件がなくなっているのです。
つまり、薬物法に定められた薬物犯罪をした者については、刑法第27条の2第1項の条件に当てはまらなかったという者についても刑の一部執行猶予が付けられる可能性があるということになります。
なお、注意しなければならないのは、たとえ薬物法に定められている薬物犯罪をしていても、刑法第27条の2第1項に元々当てはまる条件であった場合には、刑法上の取扱いになります。
ですから、薬物法によって刑の一部執行猶予を付けられるのは、刑法第27条の2第1項に当てはまらない、かつ薬物法に定められた薬物犯罪をした場合ということになります。
こうして見ると、「薬物犯罪のみ刑の一部執行猶予の条件が緩和されているのはずるい」「薬物犯罪に対して甘い」と思われるかもしれません。
しかし、刑の一部執行猶予は、一定期間は刑務所に入り矯正教育を受け、刑務所から出所した後も執行猶予期間があり、そこで問題があれば再度刑務所に入ることになるというシステムになります。
さらに、次回の記事で詳しく取り上げますが、薬物法によって刑の一部執行猶予が付けられた場合には、執行猶予期間に必ず保護観察がつくという特徴もあります。
こうしたことから、薬物法によって刑の一部執行猶予が付けられるということは、出所後の執行猶予期間中に厳しく管理を受けるということになり、そこで問題があれば再度刑務所に行くことになりますし、さらに薬物依存改善の処遇を受けることも条件となっていますから、単に監視され管理される期間が長くなっているとも捉えることができます。
そのため、条件が緩和されていること=「薬物犯罪を優遇している」というわけではないのです。
刑事事件に関わる制度では、こうした特例があることもあります。
よく理解できずに刑事手続に臨んでしまい、適切な対応をすることができなくなってしまうことは避けなければなりません。
まずは自身の刑事事件で取られる手続や制度、見通しなどをきちんと理解していくことが大切ですから、早い段階で弁護士の話を聞いておくことをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕・勾留されている方向けのサービスから、在宅捜査を受けている方向けのサービスまでご用意しています。
ひとまず弁護士の話を聞いてみたいという方でもお気軽にご利用いただけますので、まずはお問い合わせ下さい。
(制度紹介)「刑の一部執行猶予」とはどんな制度?
(制度紹介)「刑の一部執行猶予」とはどんな制度?
前回の記事では、執行猶予という制度を取り上げましたが、今回の記事では、執行猶予のうち、「刑の一部執行猶予」という制度を紹介します。
覚醒剤取締法違反事件や大麻取締法違反事件、麻薬取締法違反事件などの薬物事件では、しばしばこの「刑の一部執行猶予」という判決が下されることがあります。
この制度はいったいどういった制度なのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
~刑の「一部」執行猶予~
「刑の一部執行猶予」とは、文字通り、有罪判決で下された刑罰の一部について執行猶予とする制度を指します。
裁判で判決を言い渡されるときには、例えば、「被告人懲役3年に処する。その刑の一部である懲役1年の執行を2年間猶予する」といった形で言い渡されます。
この場合、懲役3年という刑罰のうち、2年は刑務所に入って懲役刑に服する必要がありますが、残りの1年については2年の執行猶予となり、刑務所から出て生活することができます。
ただし、残りの懲役1年の刑罰は、あくまで執行猶予となっているだけですから、2年という執行猶予期間中に問題があれば、執行猶予は取り消され、猶予されていた分の懲役1年という刑罰を受けることになります。
刑法では、その第27条の2以下で、刑の一部執行猶予について詳しく定めています。
刑法第27条の2
第1項 次に掲げる者が3年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、1年以上5年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができる。
第1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
第2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
第3号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
第2項 前項の規定によりその一部の執行を猶予された刑については、そのうち執行が猶予されなかった部分の期間を執行し、当該部分の期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から、その猶予の期間を起算する。
第3項 前項の規定にかかわらず、その刑のうち執行が猶予されなかった部分の期間の執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった時において他に執行すべき懲役又は禁錮があるときは、第一項の規定による猶予の期間は、その執行すべき懲役若しくは禁錮の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から起算する。
刑法第27条の3
第1項 前条第一項の場合においては、猶予の期間中保護観察に付することができる。
第2項 前項の規定により付せられた保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。
第3項 前項の規定により保護観察を仮に解除されたときは、第27条の5第2号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。
刑法第27条の4
次に掲げる場合においては、刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第3号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第27条の2第1項第3号に掲げる者であるときは、この限りでない。
第1号 猶予の言渡し後に更に罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられたとき。
第2号 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられたとき。
第3号 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないことが発覚したとき。
刑法第27条の5
次に掲げる場合においては、刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。
第1号 猶予の言渡し後に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
第2号 第27条の3第1項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守しなかったとき。
刑法第27条の7
刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、その懲役又は禁錮を執行が猶予されなかった部分の期間を刑期とする懲役又は禁錮に減軽する。
この場合においては、当該部分の期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日において、刑の執行を受け終わったものとする。
一般に「執行猶予」として知られる「刑の全部執行猶予」と同様、「刑の一部執行猶予」も何の条件もなくつけられるというわけではなく、つけるには条件があります。
そして、こちらも「刑の全部執行猶予」同様に、「刑の一部執行猶予」の執行猶予期間については、保護観察を付けることができます。
さらに、「刑の一部執行猶予」の執行猶予期間中に問題があった場合も、「刑の全部執行猶予」の執行猶予期間同様、その執行猶予が取り消される可能性があります。
この「刑の一部執行猶予」という制度は、平成28年に施行された、比較的新しい制度です。
刑の一部執行猶予という制度は、刑務所などの施設に入って矯正教育などの処遇を受けること(施設内処遇)と、社会内で保護観察などの処遇を受けること(社会内処遇)を組み合わせることで、より更生を目指すという目的のもと作られた制度です。
刑の全部執行猶予か実刑かという2択だけでは、特に再犯を繰り返してしまうような人にとっては効果的ではないのではないかという考えから、この刑の一部執行猶予という制度ができたのです。
刑事事件で一般に知られる「執行猶予」は、先ほども挙げた通り、「刑の全部執行猶予」のことであることが多いでしょう。
しかし、今回紹介した「刑の一部執行猶予」という「執行猶予」の種類も存在します。
この「執行猶予」に限らず、刑事事件では一般に知られている・イメージされている用語に細かく種類があったり、別のものを指していたりすることがあります。
こうしたイメージのずれ・齟齬を解消することは、刑事手続きに臨むためには非常に重要でしょう。
そのためにも、早い段階から弁護士のサポートを受け、不明なことをなくしていくことが望ましいです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、覚醒剤や大麻、麻薬、危険ドラッグなどに関連する薬物事件を含めた刑事事件の当事者となってしまった方、そのご家族などから、刑事弁護についてのご相談・ご依頼を受け付けています。
まずはお気軽にお問い合わせください。
次回の記事では、特に薬物事件に注目して刑の一部執行猶予という制度を紹介していきます。
(制度紹介)執行猶予はどんな制度?薬物事件で執行猶予を得るには?
(制度紹介)執行猶予はどんな制度?薬物事件で執行猶予を得るには?
このホームページで取り上げているような大麻取締法違反や覚醒剤取締法違反、麻薬取締法違反や薬機法違反などによる薬物事件では、罰金刑が定められていない犯罪もあり、その場合は起訴されると刑事裁判になり、有罪となると執行猶予がつかなければ刑務所へ行くことになるというケースも少なくありません。
刑務所に行くことになれば、会社や学校を辞めなければならなくなったり、家族や知人との縁が薄くなってしまったりといったデメリットがあることから、執行猶予をつけてほしいというご要望をもって弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に相談に来られる方もいらっしゃいます。
今回は、そういった執行猶予と薬物事件に注目していきます。
~執行猶予とは?~
そもそも、執行猶予とはどういった制度なのでしょうか。
執行猶予とは、刑事裁判で有罪となった際に言い渡された刑罰の「執行」を一定期間「猶予」し、その執行猶予期間中に犯罪をせずに過ごした場合には、言い渡された刑罰を受けることを免れるという制度です。
執行猶予については、刑法で詳しく定められています。
刑法第25条(刑の全部の執行猶予)
第1項 次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
第1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
第2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
第2項 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。
ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
刑法第27条(刑の全部の執行猶予の猶予期間経過の効果)
刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。
執行猶予がつけられる条件は、刑法第25条第1項に定められています。
有罪判決を受けた際には、禁固以上の前科がないか、過去に禁固以上の前科があってもその執行・免除から5年以上経っているかしているうえで、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡し」を受けなければ執行猶予はつきません。
そのため、元々の刑罰が重く設定されている犯罪では、そもそも有罪判決の際に言い渡される刑罰の下限が「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」には収まらないものもあり、そうした場合には情状酌量による刑罰の減軽がなければ執行猶予判決は見込めないということになります。
例えば、薬物犯罪では、営利目的で違法薬物を輸入することに重い刑罰が定められていることが多いですが、
・覚醒剤の営利目的輸入:無期若しくは3年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1,000万円以下の罰金に処する。(覚醒剤取締法第41条第2項)
・麻薬(ヘロイン等)の営利目的輸入:無期若しくは3年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1,000万円以下の罰金に処する。(麻薬取締法第64条第2項)
といった規定があります。
これらの刑罰の下限は「懲役3年」であることから、覚醒剤やヘロインの営利目的輸入事件では、有罪判決を受けた場合に執行猶予を獲得するには、定められている刑罰の下限に当たる刑を言い渡されなければならないということになります。
そして、執行猶予はあくまで刑罰の執行を猶予しているだけであり、執行猶予期間中に再度犯罪をするなどした場合には、執行猶予は取り消され、言い渡された刑罰を受けなければなりません。
刑法第26条(刑の全部の執行猶予の必要的取消し)
次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。
ただし、第3号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第25条第1項第2号に掲げる者であるとき、又は次条第3号に該当するときは、この限りでない。
第1号 猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
第2号 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
第3号 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。
刑法第26条の2(刑の全部の執行猶予の裁量的取消し)
次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。
第1号 猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
第2号 第25条の2第1項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。
第3号 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき。
刑法第26条に当てはまるケースでは、執行猶予を「取り消さなければならない」としていることから、必ず執行猶予が取り消されます。
対して、刑法第26条の2では、執行猶予を「取り消すことができる」としていますから、これに当てはまるケースでは、執行猶予が取り消されるかどうかは判断によるということになります。
~薬物事件と執行猶予~
薬物事件では、「初犯であれば執行猶予がつく」と言われることも多いです。
しかし、執行猶予のつく条件は、ここまで見てきたとおりのものであり、初犯だからといって必ず執行猶予がつくというものでもありません。
先ほど例として挙げた、覚醒剤やヘロインの営利目的輸入事件では、有罪判決の際に言い渡される刑罰の下限が執行猶予がつく条件ぎりぎりであったように、薬物事件の内容によっても執行猶予がつくかどうかは変わってきますし、余罪の有無や犯行をしていた期間、態様、当事者の反省や再犯防止の環境が整っているかどうかといったことでも執行猶予の有無は異なるでしょう。
だからこそ、薬物事件で執行猶予を目指すのであれば、早い段階から弁護士と公判に向けた準備を整え、公判の場で有利な事情を示すことのできるようにしておくことが大切です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、公判において執行猶予を求めていきたいというご相談・ご依頼も多く受け付けています。
覚醒剤や大麻、麻薬、危険ドラッグといった違法薬物に関わる薬物事件の刑事手続にお悩みの際は、遠慮なく弊所弁護士にご相談下さい。
(事例紹介)さいたま地裁で無罪判決 覚醒剤所持・覚醒剤使用事件
(事例紹介)さいたま地裁で無罪判決 覚醒剤所持・覚醒剤使用事件
~事例~
2020年12月、覚醒剤を所持と摂取したとして、覚醒剤取締法違反の罪に問われた女性(43)の判決公判が4日、さいたま地裁で開かれ、一場修子裁判官は「交際男性が覚醒剤を摂取させるなどした可能性が否定できない」として無罪(求刑4年6月)の判決を言い渡した。
女性は警察官の任意同行に応じ、尿検査と所持品検査を受けた際、覚醒剤の所持と摂取が発覚。女性は「知らない間に交際男性に覚醒剤を入れられた」などと主張していた。
一場裁判官は判決で、交際男性と女性は、男女関係の問題から度々口論になり、逮捕前も口論になったと説明。2人は同居生活をしていたことなどから、「気付かないうちに男性が女性に覚醒剤を摂取させたり、バッグに入れたりすることは十分に可能で容易」と指摘し、「女性が覚醒剤の使用と所持の認識があったとするには合理的な疑いが残る」とした。
(後略)
(※2022年10月5日9:40YAHOO!JAPANニュース配信記事より引用)
~無罪を求める弁護活動~
今回取り上げた事例では、覚醒剤を所持・摂取したとして覚醒剤取締法違反で起訴された女性が無罪判決を受けています。
この事例でも問題になっている覚醒剤の所持や使用による覚醒剤取締法違反という犯罪は、「故意犯」と呼ばれる犯罪であり、その犯罪が成立するには、その犯罪に当たる行為をしているという事情だけでなく、その犯罪をするという認識や、その犯罪に当たる行為をするのだという認識を持っていなければならないという犯罪です。
つまり、自身が覚醒剤を所持しているという認識なく覚醒剤を持っていたり、自身が覚醒剤を摂取する認識のないまま覚醒剤を摂取してしまったといった場合には、覚醒剤の所持や使用による覚醒剤取締法違反は成立しないということなります。
今回取り上げた事例では、女性は、知らないうちに交際相手の男性からバッグに覚醒剤を入れられたり、覚醒剤を摂取させられたりした可能性が残ると判断されています。
すなわち、女性が覚醒剤を所持していたり、尿検査で覚醒剤の成分が検出された=覚醒剤を使用していたという事実はあれど、女性にはその覚醒剤の所持や使用の故意がなかったということから、覚醒剤取締法違反は成立しない=無罪であると判断されたのです。
今回の事例のように、かけられている容疑を否認し、刑事裁判で無罪を主張するためには、その犯罪が成立するのかどうかということに対して合理的な疑いがあるということを訴えていくことになります。
そのためには、取調べを受けている段階から慎重に対応して刑事裁判に臨む必要があります。
例えば、取調べでは被疑者の方の話を基に供述調書が作成されますが、不本意な供述や誘導された供述が調書となってしまえば、それを刑事裁判の場で覆すことは困難になってしまうことが予想されます。
もちろん、供述調書の内容は本意ではないということや、誘導に乗ってしまったのだということを刑事裁判の場で主張することもできますが、一度証拠として採用されたものを覆すことは非常に難しいことでもありますので、そもそもそういった調書を作らずきちんと自分の認識を適切に伝えていくということが重要になるのです。
こうしたことから、無罪を求めていく上で、刑事裁判になる前から取調べ対応のアドバイスをするということは、重要な弁護活動の1つなのです。
日本の刑事裁判では、有罪判決を受ける確率が99.9%とも言われており、無罪を勝ち取ることは非常に難しいことです。
だからこそ、無罪を主張したい場合には、信頼できる弁護士にできる限りの弁護活動をしてもらうことが望ましいです。
まずは弁護士に会って話を聞くことが必要ですから、刑事事件の当事者になった段階から早めに弁護士への相談・依頼をしてみることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕・勾留されている方にも在宅捜査を受けている方にも弁護士によるアドバイスを受けられるよう、サービスをご用意しています。
0120-631-881では、スタッフがご相談者様の状況に合わせたサービスをご案内していますので、まずはお気軽にご相談ください。
(事例紹介)大麻などの違法薬物の営利目的所持事件で逮捕された事例
(事例紹介)大麻などの違法薬物の営利目的所持事件で逮捕された事例
~事例~
末端価格で3200万円相当の違法薬物を営利目的で所持したとして、麻薬密売組織の指示役とみられる男が、愛知県警に再逮捕されました。
(中略)容疑者は今年7月、群馬県内のアパートの一室で、麻薬成分を含むきのこ類およそ900グラムや大麻草5.7キロ程など、合わせて末端価格3200万円相当の違法薬物を、販売目的で所持した疑いが持たれています。
警察は(中略)、今年5月からの2カ月間だけでも、ツイッターを使って少なくとも6500万円以上を売り上げていたとみて詳しく調べています。
(※2022年10月5日21:02YAHOO!JAPANニュース配信記事より引用)
~違法薬物の営利目的所持事件~
今回の事例では、男性が大麻などの違法薬物を営利目的で所持した疑いで逮捕されています。
報道では具体的な罪名は出ていませんが、男性が所持したとされている違法薬物は、大麻・麻薬成分を含むきのこ類などであるとされています。
これらについては、それぞれ大麻取締法や麻薬取締法で規制されていると考えられ、成立するであろう犯罪は大麻取締法違反や麻薬取締法違反であると予想されます。
大麻などの違法薬物は所持するだけでも犯罪となりますが、多くの違法薬物は所持の目的が営利目的なのかそうでないのかという違いによって、刑罰の重さが異なります。
今回の事例で容疑となっていると考えられる、大麻取締法と麻薬取締法を確認してみましょう。
大麻取締法第24条の2
第1項 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、7年以下の懲役に処し、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。
麻薬取締法第66条
第1項 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者(第69条第4号若しくは第5号又は第70条第5号に該当する者を除く。)は、7年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上10年以下の懲役に処し、又は情状により1年以上10年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。
大麻取締法第24条の2第1項と、麻薬取締法第66条第1項では、それぞれ大麻と麻薬の所持などについて処罰を定めています。
これらの所持は「単純所持」と呼ばれる所持を指しており、例えば自分で大麻や麻薬を使用するために所持していたような場合は、この条文によって処罰されることとなります。
対して、大麻取締法第24条の2第2項と、麻薬取締法第66条第2項では、それぞれ大麻と麻薬の営利目的の所持についての処罰を定めています。
大麻の単純所持が「5年以下の懲役」という刑罰であるのに対して大麻の営利目的所持が「7年以下の懲役又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金」、麻薬(ジアセチルモルヒネ以外)の単純所持が「1年以上10年以下の懲役又は情状により1年以上10年以下の懲役及び300万円以下の罰金」となっていることから、大麻であっても麻薬であっても、単純所持行為よりも営利目的所持行為の方が重く処罰されることが分かります。
こうした営利目的の違法薬物の所持については、大麻や麻薬に限らず、覚醒剤や危険ドラッグなどでも、単純所持よりもさらに重く処罰されるように定められています。
これは、違法薬物を売買することで違法薬物を他人に拡散するということの影響や、利益目的であるという悪質性などを考慮された結果であると考えられます。
今回の事例では、男性が大麻や麻薬の営利目的所持の容疑をかけられて逮捕されています。
報道によれば、麻薬成分を含むきのこ類約900gや大麻草約5.7kgが見つかったとされていますが、これほど多い量を所持しているとなると、単に自己使用の目的で持っていたとは考えにくいと判断される可能性が高くなるでしょう。
また、報道によると、捜査機関は男性がSNSを利用して違法薬物を販売していたとしているようですが、SNSなどでやり取りをしているのであれば、その履歴が残っている可能性がありますから、そこから違法薬物の所持目的を調べるということも考えられます。
薬物事件では、単に当事者が「自分で使う目的だった」と供述したからといってそれが鵜呑みにされるというわけではなく、所持していた量やSNSなどのやり取りの履歴、お金の動きなど、客観的な証拠も考慮され、単純所持なのか営利目的なのかということが判断されていきます。
しかし、本当に自己使用の目的でしかなかったのに営利目的の所持だとされてしまったら、それは冤罪となります。
不当に重い刑罰を受けることは避けなければなりませんから、取調べの段階から適切に対応していく必要があるでしょう。
もちろん、営利目的の所持であった場合でも、刑罰の減軽を求めるには事前の準備を綿密に行った上で刑事裁判に臨む必要がありますから、容疑を認めていても早くからの対応が望ましいです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、大麻・麻薬を含む違法薬物の営利目的所持事件など、違法薬物に関連した刑事事件についても、ご相談・ご依頼いただけます。
専門スタッフがご状況に合わせたサービスをご案内いたしますので、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
(事例紹介)MDMA中毒の女性を放置で保護責任者遺棄致死罪
(事例紹介)MDMA中毒の女性を放置で保護責任者遺棄致死罪
~事例~
合成麻薬「MDMA」を服用して中毒症状になった女性を放置して死亡させたとして、警視庁国際犯罪対策課は、保護責任者遺棄致死容疑で、(中略)被告(24)=新宿区大久保、麻薬および向精神薬取締法違反(使用)罪で起訴=ら20代の男女4人を再逮捕した。
(中略)
再逮捕容疑は、5月2日未明、文京区湯島のクラブで、女性を含めた5人でMDMAを服用し、女性が激しく暴れるなどの薬物中毒症状が生じているにも関わらず、店の前の路上に放置して、搬送先の病院で死亡させたとしている。
女性の体内からは致死量のMDMAの成分が検出され、死因は急性MDMA中毒と舌根部圧迫による窒息だった。
同課によると、4人は女性を連れて退店後、舌をかまないように女性の口内におしぼりを詰めて約40分後に119番通報し、現場から立ち去った。女性は意識不明の状態で見つかった。
(後略)
(2022年9月21日12:01産経新聞配信記事より引用)
~薬物中毒と保護責任者遺棄致死罪~
今回取り上げた事例では、逮捕された男女4人は、MDMA中毒となった女性を放置し死なせてしまったという容疑で逮捕されています。
そもそも、MDMAとは、引用した記事内にある通り、「合成麻薬」であり、違法薬物です。
MDMAは、麻薬取締法で規制されており、所持することも使用することも禁止されています。
今回逮捕された男女4人はすでにMDMAの使用によって麻薬取締法違反で起訴されているようです。
麻薬取締法第66条
第1項 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者(第69条第4号若しくは第5号又は第70条第5号に該当する者を除く。)は、7年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上10年以下の懲役に処し、又は情状により1年以上10年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。
麻薬取締法第66条の2
第1項 第27条第1項又は第3項から第5項までの規定に違反した者は、7年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の違反行為をした者は、1年以上10年以下の懲役に処し、又は情状により1年以上10年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。
(※注:「第27条」は麻薬の施用などを禁止している条文)
今回問題となっているのは、こうしたMDMAの使用による麻薬取締法違反だけでなく、そのMDMAを一緒に使用して薬物中毒になった女性を放置し死亡させたということです。
この行為について、男女4人が保護責任者遺棄致死罪という犯罪の容疑をかけられています。
刑法第218条(保護責任者遺棄罪)
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。
刑法第219条(遺棄等致死傷罪)
前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
保護責任者遺棄致死罪は、保護責任者遺棄罪を犯し、それによって人を死なせてしまった際に成立する犯罪で、刑法では第219条に定められています。
保護責任者遺棄罪は、大まかにいえば、病者などを保護する責任のある人がするべき保護をしなかったという犯罪です。
この「保護する責任のある者」は、乳児の親や高齢者の介護をする家族などが思いつきやすいかもしれませんが、血縁関係に関係なく、状況によっては誰でも当てはまり得ます。
「保護する責任」=保護する義務は、法律や契約によって発生する義務だけでなく、事務管理や条理によって発生する義務も含まれています。
例えば、元々法律上は要保護者を保護する義務はなかったものの、好意によって要保護者を保護し始めたといった場合でも、そのあとの保護を継続すべきという義務が発生し、「保護する責任のある者」となるケースなどが考えられます。
具体的に挙げると、具合の悪そうな他人を見かけ、親切心で自分の車に乗せて病院へ連れて行こうとしたという場合には、その人を病院まで送り届けるといった保護をする義務が発生すると考えられます。
今回の事例にあてはめて考えてみましょう。
今回の事例では、報道によると、逮捕された男女4人はMDMA中毒となってしまった女性と一緒にMDMAを使用しており、そこから女性がMDMA中毒の症状が出ていたにも関わらず放置して去ったという経緯のようです。
報道では、逮捕された男女4人は、MDMA中毒となった女性におしぼりを含ませたり119番通報をしたりしており、女性の保護を開始しているものとみることができます。
しかし、その後については女性のもとから立ち去っており、保護を開始した=「保護する責任のある者」となったにもかかわらず保護をしなかったことから、保護責任者遺棄罪に該当する行為をしていると考えられているのでしょう。
結果として、女性はMDMA中毒などにより亡くなっており、保護責任者遺棄罪に当たる行為によって女性が死亡した=保護責任者遺棄致死罪の容疑がかけられているのだと考えることができます。
今回のケースのように、薬物中毒となった人に対して保護を行わなかったことによる保護責任者遺棄事件・保護責任者遺棄致死事件は度々起こっており、10年ほど前には元男性俳優が一緒にMDMAを使用した女性が薬物中毒で意識不明になったところに適切な処置をしなかったとして、保護責任者遺棄致死罪に問われる裁判が話題になりました(結果は保護責任者遺棄罪で有罪。参考記事)。
最近でも、市販薬をオーバードーズして昏睡状態となった女性を放置した保護責任者遺棄罪の容疑で男性らが逮捕される事件(参考記事)が報道されるなどしています。
こうした保護責任者遺棄事件・保護責任者遺棄致死事件では、本当にその人が「保護する責任のある者」といえるのかどうかといった検討から、取調べ対応、被害者対応など、行うべき弁護活動が多様に存在します。
薬物中毒の原因がMDMAなどの違法薬物の使用であった場合には、大麻取締法違反などの薬物犯罪に対しても対応が求められます。
だからこそ、早めに弁護士に相談し、見通しや刑事手続きの流れを把握したうえで適切な弁護活動を開始してもらうことが大切です。
刑事事件を中心に取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、薬物事件はもちろん、保護責任者遺棄事件・保護責任者遺棄致死事件などの刑法犯にも対応しています。
0120-631-881では、スタッフがご状況に合わせたサービスをご案内中です。
まずはお気軽にお問い合わせください。
(事例紹介)10代の少年による覚醒剤・大麻所持事件の事例
(事例紹介)10代の少年による覚醒剤・大麻所持事件の事例
~事例~
兵庫県警は尼崎市に住む16歳の少年ら3人を覚醒剤取締法違反などの疑いで神戸地検尼崎支部に送致しました。
覚醒剤取締法違反や大麻取締法違反の疑いで送致されたのは尼崎市の16歳から18歳の少年ら3人です。
警察によりますと、3人は2021年5月から9月、尼崎市内で覚醒剤や指定薬物が含まれた錠剤や大麻草を所持したり、高校生に液体10本を大麻として譲り渡したりするなどした疑いが持たれています。
少年らはいずれも容疑を否認しているということです。
(後略)
(※2022年9月15日20:11サンテレビNEWS配信記事より引用)
~10代による違法薬物事件~
今回取り上げた事例は、10代の少年ら3人が、覚醒剤取締法違反や大麻取締法違反の容疑で送検されたという報道です。
覚醒剤や大麻は、所持しているだけで違法となる違法薬物であり、違法薬物であると認識しながら所持していたのであれば、覚醒剤取締法違反や大麻取締法違反となります。
覚醒剤取締法第41条の2
第1項 覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第42条第5号に該当する者を除く。)は、10年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。
大麻取締法第24条の2
第1項 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、7年以下の懲役に処し、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。
20歳以上の者による覚醒剤所持の覚醒剤取締法違反事件や大麻所持の大麻取締法違反事件であれば、法律に定められている刑罰で罰金刑のみの規定がないことから、起訴されれば必ず刑事裁判になるということになります。
しかし、今回取り上げた事例のように、10代の者が起こした少年事件であれば、少年法に則って手続が進められることから、原則としてはこれらの刑罰は科せられず、公開の法廷に立って裁判を受けることはないということになります(いわゆる「逆送」の事例など、一部例外は存在します。)。
少年事件の手続では、警察や検察による捜査を受けた後、事件が家庭裁判所へ送られ、そこでさらに調査を受けた後に審判が開かれ、保護処分となるという流れが取られることが一般的です。
今回取り上げたような覚醒剤や大麻のかかわる違法薬物事件であったり、事件関係者が複数人いる少年事件であったりすると、物理的な証拠隠滅の可能性や関係者との接触による証拠隠滅の可能性を考慮され、捜査段階の時点で逮捕・勾留による身体拘束を受けることもあります。
また、少年事件では、家庭裁判所に送致された後にも「観護措置」という身体拘束を受ける可能性がありますが、今回の事例のように、複数人で一緒に犯罪をした疑いのある場合には、より専門的に調査の必要があると判断されて「観護措置」を取られる可能性もあります。
その後の審判は、20歳以上の者の起こした刑事事件と異なり、非公開で開かれます。
審判では、少年に適切な処分が決められることとなりますが、その処分は原則として「保護処分」と呼ばれる、その少年の更生のための処分となります。
保護処分としては、少年院などへの施設送致や、保護司と定期的に面接するなどしながら一定期間を過ごす保護観察などが挙げられます。
例えば、今後の生活をどのように見直すのか、少年本人やその家族の事件の受け止めはどのようにできているのかといったところを審判で確認し、それまでの調査の結果などとも照らし合わせて処分が決定されるということになります。
覚醒剤や大麻といった違法薬物事件は、10代の少年少女とは結び付きにくいかもしれません。
しかし、SNSの発達などもあり、10代の少年少女が覚醒剤や大麻といった違法薬物事件に関わってしまうケースもあります。
少年事件の手続は特殊な面もあり、当事者だけでなくご家族なども不安を感じられることが予想されます。
もちろん、本人が容疑を否認しているような場合には、捜査段階からのサポートも重要です。
いずれのケースでも、早い段階から弁護士に相談しておくことで手続や権利の把握をした状態で刑事手続や少年事件の手続に臨むことがおすすめです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、20歳以上の方の刑事事件だけでなく、10代の方の少年事件も取り扱っています。
覚醒剤や大麻などの違法薬物事件の取り扱いもございますので、お子さんが薬物事件で逮捕されてしまった、覚醒剤や大麻の容疑で子どもが捜査されているなどのケースでお困りの際は、お気軽にご相談ください。
(事例紹介)MDMAの麻薬取締法違反で無罪 違法捜査認定
(事例紹介)MDMAの麻薬取締法違反で無罪 違法捜査認定
~事例~
合成麻薬のMDMAを使用したとして麻薬取締法違反の罪に問われた大学生の女性(24)について、東京地裁立川支部は無罪を言い渡した。海瀬弘章裁判官は、現場での簡易検査が陰性にもかかわらず警察署に同行しようとした経緯などをふまえ「任意捜査の限度を超えた」と指摘し、「令状主義の精神を没却する重大な違法捜査」と認めた。判決は9日付。
(中略)
判決は、警察官が女性に「簡易検査で陰性なら帰宅していい」と約束したにもかかわらず、陰性と判明後も署への任意同行を求め続けた行為を「違法」と認定。警察官への暴行は、署への同行を求められるなかで「違法捜査によって直接的に誘発された」と判断した。
逮捕後に実施され陽性とされた尿鑑定については、「重大な違法がある捜査手続きと密接に関連する証拠で、同様の捜査を抑制する見地からも証拠能力を否定すべきだ」と説明した。
(後略)
(※2021年12月15日19:00朝日新聞デジタル配信記事より引用)
~MDMAと違法捜査~
今回取り上げた事例では、MDMA使用による麻薬取締法違反に問われた女性の刑事裁判で、違法捜査が認められて証拠が排除された結果、無罪となっています。
MDMAは、合成麻薬として麻薬取締法で規制されており、所持しているだけでも麻薬取締法違反となりますし、使用することも麻薬取締法違反となります。
こうしたMDMAによる麻薬取締法違反事件などを含む違法薬物事件では、しばしば違法捜査が問題になることがあります。
例えば、今回取り上げた事例では、「警察官が女性に『簡易検査で陰性なら帰宅していい』と約束したにもかかわらず、陰性と判明後も署への任意同行を求め続けた」という行為が違法捜査であったと認定され、その違法捜査と密接に関連する証拠であるとして、逮捕後に行われた尿鑑定について証拠能力を否定したとのことです。
このように、違法捜査によって入手された証拠は、違法収集証拠(その証拠の収集手続きに違法な手続があった証拠)と呼ばれ、刑事裁判で有罪・無罪や刑罰の重さを判断する際に、その証拠能力を否定し排除されることとなっています。
この法則を「違法収集証拠排除法則」と呼ぶこともあります。
この違法収集証拠排除法則は、刑法や刑事訴訟法に違法収集証拠排除法則として定められているというわけではなく、憲法第31条で定められている適正手続の保障と、憲法第35条に定められている令状主義から導き出されるものであると解釈されています。
憲法第31条(適正手続の保障)
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
憲法第35条(令状主義)
第1項 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
第2項 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
つまり、「法律に定められている適正な手続によらなければ刑罰を科されない」ということや「正当な理由に基づいて発布された令状がなければ捜索・押収ができない」ということが憲法に定められているのに、違法捜査=適正でない手続に基づいて収集された証拠が刑事裁判で使われ、それによって刑罰を受けるということになれば、憲法に定められていることに反することになります。
こうしたことから、違法捜査で収集された証拠は刑事裁判では排除しようという違法収集証拠排除法則があると考えられているのです。
しかし、実務上、違法捜査があったとしても必ずしもそれに関連する証拠が刑事裁判で排除されるわけではありません。
違法の程度が重大ではないと判断された場合には、証拠能力が否定されないという場合もあるのです。
違法捜査があったとしてどの程度の違法性なのか、証拠能力を否定できるものなのかなどは、その事件の詳細な事情を全て考慮した上でなければ判断することはできませんし、違法捜査を主張していくにも細かな検討と準備が必要になっていきます。
だからこそ、違法捜査を受けたことを主張したい、無罪を求めたいという場合には、できるだけ早い段階から専門家である弁護士の力を借りることが望ましいといえます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、これまで多くの刑事事件を取り扱ってきました。
その中には、MDMAによる麻薬取締法違反事件のような違法薬物事件も存在します。
薬物事件にお困りの方、刑事事件の違法捜査について弁護士に相談し意見を聞きたいという方は、まずはお気軽にお問い合わせください。