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覚せい剤使用事件の弁護活動
今回は、覚せい剤使用の罪で逮捕されてしまった場合の弁護活動につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
千葉県市川市に住むAさんは自宅に覚せい剤を保管しており、これを注射器で注射するなどして使用していました。
いつものように覚せい剤を注射して繁華街を歩いていたところ、薬物使用者に特異な挙動を見咎められ、警察官から職務質問を受けました。
「袖を捲って、注射痕の有無を確認させてほしい」、「尿検査に応じてほしい」と求められましたが、Aさんは3時間にわたり拒絶しました。
千葉県市川警察署の警察官は最終手段として、強制採尿令状をとり、Aさんから強制的に尿を取得しました。
尿からは覚せい剤の使用を認める成分が検出されたので、Aさんは覚せい剤取締法違反の疑い(使用)で現行犯逮捕されてしまいました。(フィクションです)
~覚せい剤の使用行為の規制について解説~
覚せい剤取締法第19条は、1号から5号までの除外事由(覚せい剤製造業者が製造のため使用する場合など)がある場合を除き、「何人も、覚せい剤を使用してはならない」としています。
これに違反し、有罪判決を受ける場合は、10年以下の懲役に処せられます(覚せい剤取締法第41条の3第1項1号)。
~今後の捜査~
覚せい剤の使用の疑いで逮捕されてしまった場合、逮捕後、すぐに釈放されるケースは少ないといえます。
多くの場合、留置されることになるでしょう。
留置される場合は、逮捕時から48時間以内に、Aさんの身柄が検察へ送致されます。
検察では検察官が取調べを行います。
検察官は、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するかを決めなければなりません。
特にそれまでの捜査に問題がなければ、勾留請求がなされる可能性が高いでしょう。
勾留請求がなされると、裁判官が勾留質問を行い、勾留の可否を検討します。
勾留決定がなされると、10日間勾留されます。
やむを得ない事由があると認められると、さらに最長10日間勾留が延長されます。
法律上、捜査段階において、最長23日間、逮捕・勾留される可能性があります。
覚せい剤取締法違反被疑事件をはじめとする薬物事件においては、薬物の入手ルート、共犯者の有無を調べるために、身体拘束が長引く傾向にあります。
ケースの場合も、23日間フルに勾留される可能性が高いと思われます。
さらに、自宅を捜索される可能性も高いでしょう。
捜索されれば、覚せい剤が発見され、押収されることになりますが、この場合、覚せい剤使用の件とは別に、覚せい剤を所持した疑いで再逮捕される場合もあります。
~ケースの事件において想定される弁護活動~
まず、勾留を回避する活動が考えられますが、ケースの場合はなかなか困難かもしれません。
覚せい剤の所持行為が発覚した場合には、覚せい剤使用の件における勾留期限よりも前に、再逮捕を回避する弁護活動を行わなければなりません。
覚せい剤使用の件で23日間身体拘束を受け、さらに所持の件で23日間身体拘束を受けることになると、Aさんには大変な負担がかかります。
弁護士は捜査機関に対し、再逮捕をしなくても、所持の捜査を遂げられる旨を主張し、再逮捕の回避を目指します。
また、捜査や身柄拘束に違法な点があれば、その旨を主張し、身柄の解放を目指します。
起訴されてしまった場合は、保釈請求を行い、保釈の実現を目指して活動する必要があります。
より有利な判決を目指すためには、薬物依存の治療を開始する必要があります。
そのためにも、是非、保釈を実現したいところです。
その他にも、Aさんが再び覚せい剤に手を染めないよう、責任をもって監督する身元引受人を用意し、できれば情状証人として法廷で証言してもらう必要もあります。
有利に事件を解決できるよう、一刻も早く弁護士の接見を受けることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が覚せい剤使用事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
大麻再犯事件で実刑判決後の仮釈放
薬物再犯事件の量刑と仮釈放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
大阪府堺市在住のAさん(40代女性)は、大麻所持の再犯事件を起こして大阪府西堺警察署に逮捕され、その後に行われた裁判で、弁護士とともに執行猶予獲得に向けた主張立証活動を行ったが、Aさんの前科が複数あることが裁判官に重要視されて、懲役刑の実刑判決を受けた。
Aさんは刑務所に入ることになったが、入所後の薬物依存克服のための治療にAさんが尽力したことが評価されて、懲役刑の刑期満了を待たずに、Aさんは仮釈放されることとなった。
(事実を基にしたフィクションです)
~薬物再犯事件の刑罰の量刑判断~
薬物事件の刑罰量刑が判断される際には、同様の薬物前科,薬物前歴の有無や、前回の事件から今回の事件まで何年経過しているかといった事情が、大きく影響します。
初犯の薬物事件では「不起訴処分」や「罰金刑」で済んだような場合でも、2回目、3回目の薬物再犯事件を起こせば、裁判の公判が行われて「執行猶予付きの懲役刑判決」を受けたり、最悪の場合には「懲役刑の実刑判決」を受けて、刑務所に入ることになります。
前回の事件で「執行猶予付きの懲役刑判決」を受けた者が、前回の判決から5年以内に再犯判決を受ける場合には、執行猶予を付けることができないとされており、裁判では必ず実刑判決を受けて、刑務所に入ることになります。
また、前回の執行猶予判決から5年以上経過している場合であっても、「執行猶予の期間満了後に何年経過しているか」という事情が、執行猶予が付くか付かないかの判断に、大きく影響します。
薬物再犯事件を起こした場合には、少しでも早くに弁護士に相談して、今後の警察取調べにおいて薬物再犯の経緯をどのように供述すべきかを検討することが、まずは重要となります。
その上で、裁判となったときに、被告人の薬物依存克服のための通院治療計画や、周囲の治療に向けた環境作り、被告人本人の薬物依存克服に向けた強い意思を、弁護士の側から主張することで、刑事処罰軽減に向けた弁護活動を行い、執行猶予付き判決の獲得などを目指します。
~仮釈放とは~
しかし、それでも薬物前科が複数あることで、実刑判決を受けて刑務所に入った場合には、ある程度の刑期を善良に模範的に過ごした者に対する「仮釈放」という制度があります。
・刑法 28条(仮釈放)
「懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。」
刑法では「有期刑は刑期の3分の1経過後、無期刑は10年経過後」が仮釈放の条件とされていますが、実務上は全国8箇所の地方更生保護委員会の処分により、「有期刑は刑期の3分の2以上経過後、無期刑は20年以上経過後」に仮釈放されるケースが多いようです。
仮釈放後は、保護司の保護観察を受けながら、更生に向けて社会の中で暮らしていくことになります。
・仮釈放、仮出場及び仮退院並びに保護観察等に関する規則 32条(仮釈放許可の基準)
「仮釈放は、次に掲げる事由を総合的に判断し、保護観察に付することが本人の改善更生のために相当であると認められるときに許すものとする。
一 悔悟の情が認められること。
二 更生の意欲が認められること。
三 再犯のおそれがないと認められること。
四 社会の感情が仮出獄を是認すると認められること。」
大麻再犯事件では、実刑判決を受ける前の段階で、刑事事件に強い弁護士とともに裁判における効果的な主張立証の方法を綿密に検討した上で、執行猶予付き判決の獲得を目指すことが重要です。
大阪府堺市の大麻再犯事件でお困りの方は、刑事事件を専門に扱っている、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の評判のいい弁護士にご相談ください。
薬物傷害事件で鑑定留置
鑑定留置について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
大阪市西区在住のAさん(30代女性)は、商店街で通りすがりの人に暴力を振るって、怪我をさせたとして、傷害罪の容疑で大阪府西警察署に逮捕された。
Aさんは、逮捕後の警察捜査で、薬物使用の疑いがあると判明し、傷害事件当時の責任能力が問題となり、精神鑑定にかけられることになった。
Aさんの家族は「精神鑑定のための鑑定留置により、さらにAさんの身柄拘束の期間が延長される」と警察から聞かされた。
Aさんの家族は、今後のAさんの早期釈放や刑罰軽減のために、まずは刑事事件に強い弁護士をAさんのもとに初回接見(面会)に派遣し、今後の事件対応について、弁護士のアドバイスを求めることにした。
(事実を基にしたフィクションです)
~鑑定留置とは~
刑事犯罪を起こして身柄拘束中の被疑者・被告人は、「精神状態に問題があることにより、刑事事件の責任能力が有るか無いかを判断するため」に精神鑑定がなされることがあります。
精神鑑定(特に嘱託鑑定)の際には、鑑定留置の処分により、さらに身柄拘束が長引くことがあります。
精神鑑定の種類として、「起訴前の簡易鑑定」「起訴前の嘱託鑑定」「起訴後の正式鑑定」などが挙げられます。
①起訴前の簡易鑑定
逮捕から起訴されるまでの身柄拘束期間に、検察官の判断によって実施される精神鑑定を「簡易鑑定」といいます。
検察官の依頼を受けた精神科医が、数時間程度の診察を1回行い、鑑定書を文書で提出します。
簡易鑑定が行われる機会は、嘱託鑑定や正式鑑定に比べて多く、検察官による起訴・不起訴の判断に、大きく影響しています。
②起訴前の嘱託鑑定
逮捕から起訴されるまでの身柄拘束期間に、検察官の嘱託によって実施される精神鑑定を「嘱託鑑定」といいます。
嘱託鑑定を実施する際には、検察官は「裁判官が発行する鑑定処分許可状」を取得する必要があります。
嘱託鑑定は通常2ヶ月程度かかるとされており、嘱託鑑定に要した時間は、逮捕から起訴されるまでの勾留期間の時間制限から除外されるため、起訴判断までの身柄拘束期間が長引く結果となります。
また、嘱託鑑定を実施する際に、被疑者の同意は必要とされません。
③起訴後の正式鑑定
起訴後の公判期間中に、裁判官の命令によって実施される精神鑑定を「正式鑑定」といいます。
刑事訴訟法165条には「裁判所は、学識経験のある者に鑑定を命ずることができる。」との規定があり、通常は弁護人側から「精神鑑定の実施を要望する文書」が裁判所に提出され、裁判官が弁護人の依頼を容認する形で、正式鑑定がなされます。
正式鑑定を実施する鑑定人には、宣誓義務・証人喚問などの重い責任が課されます。
精神鑑定(特に嘱託鑑定)のために、鑑定留置が行われる場合には、被疑者の身柄拘束期間が長くなってしまう結果になるため、早期解放を願う被疑者本人やその家族にとって、身柄拘束延長の不利益を被るおそれがあります。
他方で、精神鑑定が実施されることで、被疑者の心神耗弱状態や心神喪失状態や認定されれば、刑事処罰が軽くなる可能性も考えられます。
薬物傷害事件で刑事弁護の依頼を受けた弁護士は、被疑者本人やその家族の意向を聞き取りながら、より良い結果に結び付けるためには、精神鑑定を依頼したほうがいいのか、精神鑑定を拒否したほうがいいのかを検討します。
精神鑑定に関わる事件において、早期釈放や刑事処罰軽減に向けた最適な弁護活動を目指して、弁護士の側から、裁判官や検察官に対して積極的な働きかけを行っていきます。
大阪市西区の薬物傷害事件でお困りの方は、刑事事件を専門に扱っている、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の評判のいい弁護士にご相談ください。
薬物事件にかかる違法性の認識と故意
薬物事件にかかる違法性の認識と故意について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。
【ケース】
京都府宇治市在住ののAさんは、学生時代の先輩であるXから、「LAD」という薬品を海外から輸入して欲しいと頼まれた。
Aさんは、「LSD」に名前が似ているため違法薬物ではないかとXに尋ねた。
Xによると、名前は似ているがLSDとは異なる薬品であり、薬機法で規制されている違法ドラッグではないということであった。
それを聞いて安心したAさんは、海外から指定された「LAD」を輸入しXに渡し報酬を受け取った。
Aさんが数回海外から「LAD」を輸入したところ、ある日、京都府宇治警察署によって麻薬取締法違反(輸入)の疑いで逮捕された。
Aさんは、Xから「違法でない」と聞いていたので故意について争いたいと考えており,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に初回接見を依頼した。
(フィクションです)
~違法薬物~
LSDは正式名称をリゼルギン酸ジエチルアミドといい,ドイツ語の「Lysergsaurediethylamid」を略してLSDといいます。
ところで,英語での名称は「Lysergic Acid Diethylamide」であり略すとLADとなります。
すなわち,LSDとLADは略す元の言語が異なるだけであり同じ薬物を指していることになります。
日本において薬物は,覚せい剤取締法,麻薬取締法,大麻取締法,あへん法のいわゆる薬物四法に加え薬機法(正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)によって規制されています。
刑法は明確性の原則という,条文から一見して何が違法となるのかが明確でなければならないという原則があります。
大麻やあへんは植物および抽出物そのものですのでそれほど大きな問題はありませんが「覚せい剤」等の場合は問題が発生する可能性があります。
すなわち,「覚せい剤」とは何を指すのか問題となる物質が「覚せい剤」であるのかどうかがわからないということが考えられます。
そこで,日本の薬物の規制は,薬物に含まれる具体的な成分を指定することによって規制対象を明確にしています。
覚せい剤の場合,フェニルアミノプロパンおよびフェニルメチルアミノプロパンおよび塩類,麻薬や違法ドラッグは様々な成分が指定されています。
LSDすなわちリゼルギン酸は,麻薬取締法によって1970年より規制対象となっています。
そのため,Xの言う通りLADは違法ドラッグではありませんが麻薬取締法によって規制される薬品になります。
~違法性の認識と故意~
刑法犯の成立には故意が必要とされており(刑法38条),故意が認められない場合,過失犯の処罰規定がなければ処罰されないことになります。
今回のケースでAさんはXから違法ドラッグではないと聞かされており,自分が規制されている薬品を輸入しているという認識はなかったので,故意がなかったと考えられるかもしれません。
しかしながら,故意責任の本質は,規範に直面したにもかかわらず,あえてそれを乗り越えて実行行為に出たことに対する道義的非難にあります。
すなわち麻薬輸入の故意が認められるためには,規範に直面する程度の意味の認識が必要です。
ただし,刑法は一般人に向けられた行為規範であるので,専門家的認識までは不要とされています。
つまり「麻薬」であるという明確な認識はなくとも,麻薬を含む身体に有害で違法な薬物かもしれないという認識があれば,麻薬の素人的認識があったといえ,故意が認められます。
なお,判例は犯罪の成立には違法性の認識は不要であるとしており,違法性の認識は故意の要件でないとしています。
しかし,違法性の認識を欠いたことにつき相当の理由が有る場合には責任が阻却されるとする判例もあります(東京高判昭55・9・26)。
~Aさんの場合~
今回のケースでAさんはLADがLSDと同じように違法な薬物でないかとXに尋ねています。
その際のXによる違法ドラッグではないという回答によってAさんは安心してLADを輸入しています。
そのため,AさんはLADが違法な薬物であるという認識を持たずに輸入をしていたことになり責任が阻却される可能性はあります。
しかし,Xは単なる高校の先輩であり,LADが違法薬物であるかどうかを判断する専門家的知見を持っていたとはいえないでしょう。
また,Xは薬機法で規制されている違法ドラッグでないという回答をしたのであり,違法な薬物でないと回答したわけではありません。
AさんはXのそういった言葉を信じて違法なものではないと思い込んだだけですから違法性の認識がなかったことについて相当な理由があったといはいえないでしょう。
したがって今回のケースの場合Aさんには麻薬輸入の故意がなかったというのは難しいでしょう。
しかしながら,違法なものではなかったと認識するにあたり,相当な理由が認められれば責任は阻却される可能性はあります。
事件の具体的な事情によって相当な理由があったかどうかが判断される事になるでしょう。
また,そういった事情を的確に主張しなければ責任が阻却されることは難しく,刑事裁判で有罪となってしまいます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は薬物事件などの刑事事件専門の法律事務所です。
薬物事件で違法性の認識や故意について争いたいとお考えの方は0120-631-881までご相談ください。
薬物事件に詳しい弁護士による無料相談,初回接見のご予約を24時間受けつけています。
MDMA~職務質問から現行犯逮捕
MDMA~職務質問から現行犯逮捕
MDMA所持が職務質問で発覚し現行犯逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ ケース ~
福岡県うきは市に住むAさん(35歳)は、自転車に乗って買い物に行く途中、福岡県うきは警察署の警察官から職務質問を受けました。Aさんは、警察官からポケットの中など全て見せるよう。所持品検査を求められました。Aさんは、ズボンのポケット内にMDMAを入れていたことからこれを拒否しました。しかし、Aさんは警察官から「令状持ってくるけど?」と言われたため、渋々、ポケットの中からMDMAを取り出し、警察官に提出しました。警察官の検査の結果、MDMAであることが判明したため、Aさんは麻薬及び向精神薬取締法違反(所持罪)の現行犯で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
~ MDMAと職務質問 ~
Aさんは、警察の職務質問をきっかけに所持品検査を受けた結果、MDMAの所持が発覚し、「麻薬取締法違反」の疑いで逮捕されています。
職務質問も所持品検査も、Aさんの意思に基づいて行われるものです(任意です)。
しかし、任意と言っても、警察官は職務質問には当然従うべきものであるかのような態度で職務質問や所持品検査を求めたり、場合によっては複数人の警察官の応援を呼んで、対象者が逃げないように対象者を取り囲んで職務質問、所持品検査を行うこともあります。そうすると、職務質問や所持品検査を受けた方にとってはもはや任意とは受け取れなくなるでしょう。
ただ、その際に、職務質問を拒否しようとしてあまり過激な態度を取ってしまうと、警察官から「その態度の裏に何かあるのでは」、と疑われてしまうおそれもあります。ここで、もし警察官を突き飛ばしたり、掴まれた腕を振りほどいたりすると公務執行妨害罪で逮捕されてしまうおそれもありますので、職務質問、所持品検査への対応には注意が必要です。
また、最近は、職務質問や所持品検査の対応に関して、インターネット上で様々な情報が流れています。しかし、これらの情報を鵜呑みにすると、情報の正確性が担保されていないことも考えられますから逆効果となり、やはり逮捕されてしまうおそれもあります。
もし職務質問や所持品検査を受けられた際に気になったことがあれば、ぜひその点を含めて弁護士に相談されるとよいでしょう。
~ MDMAと現行犯逮捕 ~
警察官はAさんからMDMAの提出を受けています。
このように、捜査上の必要に基づき物を占有する処分を「領置」といいます。
領置は、刑事訴訟法221条に規定されています。
刑事訴訟法221条
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者その他の者が遺留した物又は所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物は、これを領置することができる。
領置も対象者の意思に基づいて行われる任意処分なので、一応拒否するということも可能です。
ただし、物の提出を拒否すると、今度は捜索、差押えにより強制的に物を押収される可能性が出てきます。
領置段階では、あくまで物の提出を求められるにとどまるかと思いますが、捜索、差押え段階となるとバッグを開けられ中身を取り出されたり、あるいはバッグそのものを差押えられるリスクも出てきます。
Aさんは麻薬及び向精神薬取締法違反で現行犯逮捕されています。
現行犯逮捕については、刑事訴訟法212条1項、2項、213条に規定されています。
刑事訴訟法212条1項
現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を現行犯人とする。
刑事訴訟法213条
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
Aさんは、まさにMDMAを所持していたと疑われたことから、「現に罪を行った者」として現行犯逮捕されたのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。
覚せい剤使用罪で逮捕され無罪主張
覚せい剤使用罪で逮捕され無罪主張
覚せい剤使用罪で逮捕されてしまった場合の無罪主張ついて,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~事例~
Aは,東京都台東区にあるホテルの駐車場において,自己の体内に覚せい剤を注射することによって使用したとして,警視庁浅草警察署の警察官に,覚せい剤使用罪の疑いで逮捕された。
なお,Aは,警察官の捜査に違法がある旨を主張している。
Aの家族は,薬物事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
~覚せい剤取締法について~
本件Aは、ホテルの駐車場において覚せい剤を使用した疑いで逮捕されてしまっています。
この点について、薬物を取締り、これを不法に所持や使用したものの処罰を定めているのが「覚せい剤取締法」です。
覚せい剤取締法は、41条の3第1項第1号において、「第19条(使用の禁止)の規定に違反した者」を「10年以下の懲役に処する」としています。
そして、同法19条は、法定の除外事由(典型的には研究行為や医療行為等)のない限り「何人も、覚せい剤を使用してはならない」ものと規定しています。
同条における「使用」とは、覚せい剤をその用法にしたがって用いる一切の行為を指すとされています。
覚せい剤の摂取態様には、その種類に応じて様々なものが考えられますが、上記のように「使用」とはかなり包括的な概念であり、また本件のような注射による覚せい剤の摂取という典型的な行為が「使用」に当たることは明らかであるといえます。
もっとも,証拠上,「使用」したかどうかについては,尿検査によって覚せい剤成分を検出する必要があります。
~覚せい剤事件(薬物事件)における無罪主張~
よく勘違いされやすいこととして,刑事裁判における立証責任の所在の問題があります。
刑事裁判においては,被告人や弁護士が無罪を証明する必要はなく,あくまで相手方当事者である検察官が有罪の証明をしなくてはならないということです。
したがって,被告人・弁護士が無罪主張を行うことは,検察官の有罪主張のための立証活動を弾劾することに尽きるということになります。
この点,薬物事件で争点になりやすいのが,検察官が有罪立証のために提出する証拠物等が違法捜査によって獲得されたものであって証拠として排除されるのではないかということです。
これは具体的には,判例(最判昭和53年9月7日等参照)上も確立した「違法収集証拠排除法則」の適用を主張するものです。
覚せい剤事件は,尿採取を巡る被疑者の長時間の留め置きなど違法捜査が顕在化しやすい犯罪類型ともいわれています。
これまで,実務においては,違法収集証拠排除法則の主張はなかなか通るものではないという認識が一般的でしたが,近年では特に下級審レベルにおいて無罪が確定したものも含め違法収集証拠排除の主張が徐々にではありますが裁判所に受け入れられつつあるのが現状といえます。
したがって,薬物事件においても無罪主張にあたっては,臆することなく違法捜査の主張することも十分に考慮されるべきであると考えられます。
仮に罪を犯してしまったとしても,憲法・刑事訴訟法に違反する捜査活動は断じて許されないのです。
近時も,薬物事件において,尿検査の手続きの際に捜査官が被疑者に対し,虚偽の説明が行ったことなどを重視し,採取された尿の証拠能力を否定し,被告人に無罪判決が下されています。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,覚せい剤使用罪などの薬物事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
覚せい剤使用事件で逮捕された方のご家族は,24時間365日対応可のフリーダイヤル(0120-631-881)に 早期にお問い合わせください。
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大麻所持事件で前科があっても執行猶予獲得は可能?
大麻所持事件で前科があっても執行猶予獲得は可能?
前科と執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ ケース ~
東京都西多摩郡に住むAさんは、令和元年7月27日に、自宅で大麻を所持していたとして大麻取締法違反で現行犯逮捕されました。実は、Aさんは、平成25年7月1日に、東京地方裁判所で、同じ大麻取締法違反(所持罪)により懲役6月、3年間執行猶予の判決(平成25年7月16日自然確定)を受けています。Aさんは接見に来た弁護士に再び執行猶予を獲得できるのか尋ねました。
(フィクションです。)
~ 執行猶予の種類 ~
全部の執行猶予は、執行猶予の期間、刑の執行が猶予され、社会内で更生を目指すものです。
これに対し、一部の執行猶予というものがあります。
これは、言い渡された刑の一部の期間は刑務所内で生活し、残りの期間を社会内で生活して更生を目指すというもので、実刑判決の一部です。
Aさんが平成25年に受けた判決は全部の執行猶予付きの判決で、今回もその全部の執行猶予判決を獲得できないか弁護士に尋ねているようです。
そして、全部の執行猶予は、さらに①単なる執行猶予と②再度の執行猶予の2つに分けられます。
~ ①単なる執行猶予 ~
①単なる執行猶予を受けるための要件は、刑法25条1項に規定されています。
刑法25条1項
次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる
1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を受けた日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
つまり、①単なる執行猶予を受けるには
1 3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けること
2 上記1号、あるいは2号に該当すること
3 (執行猶予付き判決を言い渡すのが相当と認められる)情状があること
が必要です。
~ ②再度の執行猶予 ~
②再度の執行猶予の要件は、刑法25条2項に規定されています。
刑法25条2項
前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
①の単なる執行猶予と異なる点は、「執行猶予期間中」に罪を犯したことが必要とされる点、「1年以下の懲役または禁錮の言い渡しを受ける」必要がある点、さらに「情状が「特に」酌量すべきもの」である必要がある点、です。
このように、②再度の執行猶予は執行猶予期間中に犯罪を犯したものであることから、執行猶予を受けるための要件のハードルが①単なる執行猶予よりも高くなっていることがわかります。
~ 執行猶予期間が経過した場合の効果 ~
では、Aさんは、①単なる執行猶予、②再度の執行猶予のいずれを受けることができるでしょうか?
この点、Aさんは前刑確定日から3年後の平成28年7月15日に執行猶予期間が満了し、その翌日の7月16日から「執行猶予期間が経過した」といえる状態となります。
よって、本件は執行猶予期間経過後の犯行ということになります。
そして、執行猶予期間が経過した場合、刑の言渡しは効力を失い(刑法27条)、経過後に犯罪を犯したとしても、全部の執行猶予の要件につき定めた刑法25条1項1号の「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」に該当します。
よって、Aさんは①単なる執行猶予を受けれる可能性がある、ということになります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。
覚せい剤の所持・使用事件で執行猶予
覚せい剤の所持・使用事件で執行猶予
今回は、覚せい剤の所持・使用事件における弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
神奈川県川崎市に住むAさんは、自宅で覚せい剤を所持・使用した疑いで逮捕され、現在神奈川県宮前警察署に勾留されています。
Aさんには薬物事件の前科、前歴はありません。
取調べでは、購入先に迷惑がかかると思い、黙秘していた時期もありましたが、この頃は少しずつ覚せい剤の使用に至った経緯について供述を始めています。
検察官からは、公判請求を見込んでいる(起訴する方針ということです)と告げられており、なるべく軽い量刑の判決を受けられれば、と考えています。
どうすればよいのでしょうか。
~Aさんに成立する犯罪について解説~
覚せい剤取締法違反の罪が成立することになると思われます。
Aさんは自宅で覚せい剤を所持し、これを使用していたとのことなので、覚せい剤の所持罪、覚せい剤の使用罪の嫌疑がかけられていると考えられます。
覚せい剤の所持・使用の罪の法定刑は、いずれも「10年以下の懲役」となっております(覚せい剤取締法第41条の2第1項、41条の3第1項1号)。
検察官が「公判請求を見込んでいる」と言っているので、起訴される可能性が極めて高いと思われます。
検察官は有罪立証の可能性を十分に検討して起訴に踏み切るので、起訴されてしまうと無罪判決を獲得するのは一般的に困難と言えます。
捜査の手続に重大な違法があったので、証拠能力が否定されるべき証拠がある、などと主張する場合などを除いては、有罪判決を受けることを前提とした上で、いかに軽い量刑で済ませることができるかを考えていく方が良いかもしれません。
Aさんには薬物事件の前科、前歴がないので、適切な弁護活動を行えば、執行猶予付き判決を獲得できる可能性があります。
懲役刑を言い渡された場合であっても、執行猶予が付けられれば、刑務所に行かずに済みます。
もちろん、猶予期間中に犯罪を起こすなどして、執行猶予が取り消されてしまった場合には、刑務所に行かなければなりません。
執行猶予期間中に、問題を起こさないように生活を見直し、社会復帰を目指していきましょう。
~起訴後身体拘束は続くのか?~
勾留されたまま起訴されると、自動的に起訴後勾留に移行し、身体拘束の期間が数か月単位で伸びてしまいます。
その場合、裁判所に保釈請求を行い、保釈の許可を受けて身柄解放を実現すべきです。
保釈は、
①被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき
②被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき
③被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
④被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
⑤被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき
⑥被告人の氏名又は住居が分からないとき
などの事由がある場合を除き、許可されなければなりません(必要的保釈)。
また、これらの事由があっても、保釈された被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認められる場合、保釈が許可されます(裁量保釈)。
捜査段階で必要なことが全て明らかになっている場合は、保釈を許す決定を獲得しやすくなります。
外に出るためには、保釈保証金を納付しなければなりません。
保釈保証金を用意できない場合には、保釈保証金を立て替えてくれる機関もあります。
保釈保証金が用意できない場合は、弁護士に相談してみましょう。
~執行猶予付き判決の獲得を目指すために~
保釈中は、薬物依存症の治療プログラムを受けることをおすすめします。
これは、薬物への接触を断ち、執行猶予を獲得できる可能性を高めるためです。
裁判官は、Aさんが再度、薬物犯罪に手を染めずに生活することができるか、ということを気にしています。
Aさんが薬物を断つ努力をしていることをアピールすることによって、裁判官も執行猶予をつけやすくなります。
また、量刑を軽くするために、贖罪寄付が有効な場合があります。
贖罪寄付とは、弁護士会などの団体に対し、寄付を行って反省の意思を示す活動です。
覚せい剤の所持・使用罪などのように、直接の被害者がいない場合には、示談ができませんので、贖罪寄付を行い反省の意思を示すことがあります。
以上のような弁護活動は飽くまでも一例であり、実際には個々の事案に合わせて適切な活動を行う必要があります。
弁護士のサポートを受けながら、より有利な事件解決を目指していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所であり、薬物事件の解決実績も豊富です。
ご家族が覚せい剤取締法違反事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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覚せい剤取締法違反事件で保釈されるも取消しに
覚せい剤取締法違反事件で保釈されるも取消しに
覚せい剤取締法違反事件における保釈とその取消しについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ ケース ~
埼玉県加須市に住むAさんは、覚せい剤取締法違反で起訴されていましたが、Aさんの弁護人が保釈請求して許可され、釈放されていました。ところが、Aさんは第一回公判期日として指定されていた令和元年10月31日に、さいたま地方裁判所に出廷しませんでした。そこで、Aさんは、担当検察官の請求により裁判所の決定で保釈許可を取り消されてしまいました。そして、Aさんは、自宅にいたところ、保釈許可取消決定に基づいてAさんを収容しにきた検察事務官に収容されそうになりました。そこで、Aさんは自宅駐車場に停めてあった車に乗り込み、そのまま逃走しました。
(実例を基に作成したフィクションです。)
~ 保釈とは ~
保釈とは、被告人(起訴され裁判にかけられた人)に対する勾留の執行(効力)を停止して、その身柄拘束を解くことをいいます。
保釈のメリットとしては、
・精神的,肉体的負担の軽減
・ご家族などが安心する
・裁判に向けた十分な打合せが可能となる
・社会的不利益(解雇)などを回避できる可能性がある
などのメリットがあります。
~ 保釈許可が取り消される場合 ~
しかし、保釈はあくまで勾留の停止にすぎず(勾留の効力が消滅したわけではない)、保釈の条件を守らなければ取り消されることもあります。
刑事訴訟法では96条では以下の場合に、裁判所の決定で保釈許可を取り消すことができるとされています。
刑事訴訟法96条
1号 被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。
2号 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
3号 被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
4号 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
5号 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
今回、Aさんは公判期日に出廷しておらず、かつ、その不出廷に正当な理由もないと認められたことから(1号)、保釈許可が取り消されたものと思われます。
~ 保釈許可が取り消された後 ~
保釈許可が取り消されると、再び刑事施設(留置場、拘置所など)に収容されます。
収容するのは、検察庁の検察事務官が担当することが多いかと思います。
この収容に関しては刑事訴訟法98条に規定されています。
刑事訴訟法98条
1項 保釈若しくは勾留の執行停止を取り消す決定があつたとき、又は勾留の執行停止の期間が満了したときは、検察事務官、司法警察職員又は刑事施設職員は、検察官の指揮により、勾留状の 謄本及び保釈若しくは勾留の執行停止を取り消す決定の謄本又は期間を指定した勾留の執行停止の決定の謄本を被告人に示してこれを刑事施設に収容しなければならない。
2項 前項の書面を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、同項の規定にかかわらず、検察官の指揮により、被告人に対し保釈若しくは勾留の執行停止が 取り消された旨又は勾留の執行停止の期間が満了した旨を告げて、これを刑事施設に収容することができる。ただし、その書面は、できる限り速やかにこれを示さなければならない。
3項 第七十一条の規定は、前二項の規定による収容についてこれを準用する。
また、保釈許可が取り消された場合、裁判所に預けていた保釈保証金の全部または一部が没収される可能性がおそれがあります。
刑を免れるために逃亡したとなれば、少なくとも保釈保証金の一部が返還されなくなることは覚悟すべきでしょう。
~ 逃走した場合は逃走罪? ~
なお、Aさんは逃走していますから逃走罪に問われるかのように思います。
ですが、逃走罪(97条以下)は、拘束中に逃走した場合に問われる罪です。
今回のケースにおいて、Aさんは保釈許可を取り消されたとはいえ、実際にまだ拘束されてないわけですから「拘束中」とはいえず逃走罪には問われないものと思われます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。
覚せい剤を営利目的で輸入し逮捕
覚せい剤を営利目的で輸入し逮捕
今回は、営利目的での覚せい剤輸入罪につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
Aさんは、某国でXから「覚せい剤を日本のYという者のところまで運んで欲しい。報酬として1000万円がYから支払われる」と言われたので、覚せい剤の運搬に参加することにしました。
Xから覚せい剤が3キログラム程入ったスーツケースを渡され、これを持って大阪府泉佐野市内の空港に降りたところ、税関のX線検査で覚せい剤様の物が発見されたので、税関職員はスーツケースを開けるよう求めました。
Aさんが頑なに拒否するので、大阪府関西空港警察署の警察官が呼ばれました。
警察官は、捜索差押許可状の発付を得て、スーツケースをこじ開け、粉末の簡易検査を行ったところ、覚せい剤であることが判明したので、Aさんを覚せい剤を輸入した疑いで現行犯逮捕しました。(フィクションです)
~Aさんには何罪が成立するか?~
覚せい剤取締法違反の罪(営利目的輸入の罪)、関税法違反の罪(禁制品輸入未遂罪)が成立する可能性が考えられます。
~覚せい剤の営利目的輸入の罪~
覚せい剤の営利目的輸入の罪は、営利の目的で、覚せい剤を、みだりに、本邦に輸入する犯罪です。
法定刑は、無期若しくは3年以上の懲役、又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金となっています(覚せい剤取締法第41条2項)。
営利目的による覚せい剤の輸入行為は大変な重罪であり、裁判員裁判法第2条1項1号により、裁判員裁判対象事件とされています。
~関税法違反の罪~
関税法第69条の11第1項1号は、覚せい剤やその原料などを輸入してはならないとしており、これに違反すると、関税法第109条1項により、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処せられます。
これらの刑罰が併科(同時に科される)されることもあります。
~上記の犯罪の既遂時期~
覚せい剤の営利目的輸入罪と、禁制品輸入罪には、いずれも未遂犯処罰規定があるので、既遂犯が成立する場合と、未遂犯が成立する場合とがあります。
未遂犯に留まった場合は、有罪判決を受けるときに、刑を減軽される場合があります。
(覚せい剤の営利目的輸入罪の場合)
判例(最高裁判所昭和58年9月29判決)は、「覚せい剤を船舶から保税地域に陸揚げし、あるいは税関空港に着陸した航空機から覚せい剤を取り下ろすことによって既遂に達するものと解するのが相当である」としています。
ケースでは、覚せい剤の入ったAさんのスーツケースが明らかに日本の空港にて飛行機から取り下ろされているので、覚せい剤の営利目的輸入既遂罪が成立することになると思われます。
(禁制品輸入罪について)
関税法上の禁制品輸入罪の既遂時期は、覚せい剤などの禁制品を携帯して通関線を突破したときと解されています。
したがって、ケースの場合、禁制品輸入罪は未遂に留まるものと考えられます。
~裁判員裁判について~
覚せい剤の営利目的輸入罪は、裁判員裁判対象事件なので、複雑な手続に服さなければなりません。
裁判員という一般人が参加している、という点も、負担に思われるかもしれません。
裁判員裁判では、公判前整理手続が行われます。
ここでは、争点の整理が行われ、検察官の手持ち証拠が開示されるなどします。
調書などの書面については、証拠とすることに同意するか、同意しないかを回答しなければならない場合がありますが、これには高度な法的判断を必要とすることが見込まれます。
また、長い公判前整理手続を経て1回目の裁判を迎えることになり、なおかつ数日間にわたって裁判が行われることから相当の負担が掛かります。
判決においても、有罪判決を受ける場合は、厳しい判断がなされることが考えられます。
より軽い処分で済ませて社会復帰を目指すために、また、複雑な手続において適切に振る舞うサポートを受けるために、弁護士へ事件解決を依頼することをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が営利目的で覚せい剤を輸入し、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
(無料法律相談のご予約はこちら)