覚せい剤使用事件の手続及び弁護活動を解説

2020-02-21

今回は、外の駐車場に停めた自動車内で覚せい剤を使用していた疑いで現行犯逮捕されてしまった場合に想定される刑事手続及びその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

Aさんは、深夜、東京都中野区内の駐車場に停めた自動車内で、覚せい剤を使用し、快感を得ていたところを、警視庁中野警察署の警察官から声をかけられました。
その時は、使用に用いる道具は収納していたのですが、警察官は薬物使用者に特異な挙動を見逃さず、「車内を見せて」、「尿を検査させて」と言いました。
しぶしぶ車内を見せている間、近くのトイレで尿を採取し警察官に引き渡しました。
薬物担当刑事による簡易検査の結果、覚せい剤を使用していることが判明したので、警察官らは、Aさんを覚せい剤使用の疑いで現行犯逮捕しました。
車内からも覚せい剤が発見されています。(フィクションです)

~刑事手続の流れについて解説~

(1)職務質問
捜査が始まるきっかけとして、様々な態様(被害者による告訴、告発など)がありますが、今回のケースは、職務質問をきっかけに捜査が始まっています。

警察官職務執行法第2条1項によれば、「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる」とされています。
上記が職務質問の法律的な根拠です。

同条3項によれば、「刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない」とされているので、職務質問は「任意処分」ということができます。

Aさんは自動車内で恍惚にふけっていたところを警察官に見られ、職務質問を受けています。
深夜の駐車場でこっそり恍惚にふけっているのを見た、というのは、薬物使用者に特異な挙動を見たということで、薬物の使用を疑うに足りる相当の理由があるといえるでしょう。

(2)尿検査及び所持品検査
こちらもAさんが「しぶしぶ」ながらも応じており、また、特に尿検査所持品検査を拒絶した事実が認められないので、任意の処分として許容される可能性が高いと思われます。

(3)覚せい剤所持の疑いで現行犯逮捕
尿検査の結果、Aさんが現に覚せい剤を使用していることがわかったので、現行犯逮捕された、という流れになります。

(4)逮捕後の手続
逮捕後、勾留・勾留延長がなされると、捜査段階で最長23日間身体拘束を受けます。
ケースの場合は、フルで勾留される可能性が高いでしょう。
身柄事件として事件が進行する場合、検察官は、勾留の満期日までに、Aさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決めます。

(5)起訴後
起訴後は、自動的に「起訴後勾留」に移行します。
この段階から、保釈請求を行うことが可能になります。

~ケースに必要な弁護活動~

(覚せい剤所持罪による逮捕の阻止)
ケースの場合、覚せい剤の所持の疑いで改めて逮捕される可能性があります。
改めて逮捕されれば、その分身体拘束期間が長くなります。
弁護士は覚せい剤の所持の件で改めて逮捕する必要が無い旨を主張し、早期に起訴させるなどして逮捕の阻止を目指します。

(保釈の実現)
保釈を実現できれば、保釈中に薬物依存の治療プログラムを開始するなどして、再犯のおそれがないことを裁判官にアピールする準備を行うことができます。

(執行猶予付き判決の獲得を目指す)
起訴されてしまったとしても、Aさんが初犯であれば、適切な弁護活動を尽くすことにより、執行猶予付き判決を獲得できる見込みが十分あります。
弁護士のアドバイスを聞きながら、裁判を乗り越えていきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が薬物事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。