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薬物事件と一部執行猶予
薬物事件と一部執行猶予
東京都府中市に住むAさんは、警視庁府中警察署の家宅捜索を受け、覚せい剤を所持していたとして覚せい剤取締法違反(所持罪)で逮捕され、その後勾留を経て起訴されました。そして、Aさんの判決期日は、令和元年6月18日と指定されました。実は、Aさんは、平成31年10月1日に、刑務所を出所(覚せい剤取締法違反(使用)で(懲役)1年6か月間服役)したばかりでした。Aさんと接見した弁護士は、再犯防止の観点からも、一部執行猶予判決を獲得できないか検討しています。
(フィクションです)
~ 執行猶予とは ~
執行猶予とは、その罪で有罪ではあるが、言い渡された刑(懲役刑、罰金刑)の執行を一定期間猶予する(見送る)ことをいいます。そして、執行猶予には「全部執行猶予」と「一部執行猶予」の2種類があります。今回は、そのうち一部執行猶予についてご紹介いたします。
~ 一部執行猶予とは ~
一部執行猶予は、言い渡された刑期のうち、一部を実刑とし、一部を執行猶予にするものです。
たとえば、薬物事件の場合、
被告人を懲役2年に処する。
その刑の一部である懲役6月の執行を2年間猶予し、その猶予の期間中被告人を保護観察に処する。
などという判決が言い渡されます。
一部執行猶予は、執行猶予期間中、刑の執行猶予取消しによる心理的強制の下で、
社会内における再犯防止・改善更生を促すこと
を目的としています。
* 一部執行猶予は実刑である *
一部執行猶予は、実刑と全部執行猶予の「中間」と誤解されることもありますが、あくまで実刑の一部です。
つまり、裁判所(裁判官)としては、従前どおり、まず実刑か全部執行猶予のどちらが相当かを判断した上で、実刑を選択した場合に、全部実刑か一部実刑(一部執行猶予)かを選択できる選択肢が増えたということになります。
~ 一部執行猶予判決を受けるための要件 ~
では、薬物事件で一部執行猶予を受ける要件をご紹介いたします。
薬物事件を犯した者に対する一部執行猶予については、「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律(以下「法律」)」に規定があります。一部執行猶予判決を受けるには次の要件が必要です(法律3条)。
1 薬物使用等の罪を犯したこと
2 本件で、1の罪又は1の罪及び他の罪について3年以下の懲役又禁錮の判決の言い渡しを受けること
3 刑事施設における処遇に引き続き社会内において規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが、再び犯罪をすることを防ぐために「必要」であり、かつ、「相当」であること
なお、薬物使用等の罪については、他の犯罪と異なり、前科の要件は必要とされていません。つまり、
Aさんのような累犯前科を持つ方であっても、一部執行猶予判決の対象
となり得ます。
ただし、薬物事件においては、執行猶予期間中
必ず保護観察
に付されます。
* 薬物使用等の罪とは? *
法律2条2項には次の罪が挙げられています。
同項2号 大麻の所持又はその未遂罪
同項4号 覚せい剤の所持、使用等又はこれらの罪の未遂罪
同項5号 麻薬及び向精神薬取締法の所持罪等
~ 一部執行猶予のデメリット ~
確かに、一部執行猶予は実刑の期間(刑務所に服役する期間)が短くなるというメリットはあります。しかし、薬物事件では、上記のように必ず保護観察が付きます。保護観察が付くと、定期的に保護観察に通所しなければならないなど、公的機関の監視下に置かれることになります。しかも、執行猶予期間中、保護観察に付されるわけですから、
全部実刑の場合の服役期間より公的機関の監視下に置かれる期間が長くなる
というデメリットが発生します。つまり、上記の例でいうと、全部実刑の場合、満期出所でも2年間の刑期で済むところ、一部執行猶予の場合、実刑の1年6月に加え、2年間保護観察を付されるわけですから、合計で3年6月、公的機関による監視下に置かれることになります。しかも、保護観察所から言われた遵守事項を守らなければ、執行猶予を取り消され、再び
服役しなければならないおそれもあります。
一部執行猶予を選択肢に入れる場合は、こうしたデメリットも考慮して検討しなければなりません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。薬物事件での一部執行猶予獲得をご検討中の方は、フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、犯罪行為による刑事事件・少年事件の当事者の弁護活動を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件を専門に扱っていますので、薬物犯罪にも精通した弁護士が、初回の相談から捜査・裁判終了による事件解決まで一貫した弁護活動を行います。
当事務所では、薬物犯罪事件についての無料相談のご予約は365日24時間受け付けています。相談・接見は、土日祝日、夜間でも即日対応可能です。弁護士のスケジュールの都合が合えば、お電話をいただいてからすぐ相談・接見を行うこともできます。薬物犯罪事件で少しでもお困りの方は、ぜひご相談ください。
保釈中に覚せい剤使用で逮捕
保釈中に覚せい剤使用で逮捕
埼玉県草加市に住むAさんは、同区内の自宅アパートで、覚せい剤を所持し、使用した(覚せい剤取締法違反(所持罪、使用罪))疑いで埼玉県草加警察署に逮捕、その後、さいたま地方検察庁の検察官に同罪で起訴されました。Aさんの私選弁護人はさいたま地方裁判所に保釈請求し、許可されたことからAさんの家族から預かっていた保釈金を納付の上、Aさんは釈放されました。ところが、Aさんは保釈釈放中に知人女性宅を訪ね、その女性を誘って女性に覚せい剤を注射しました。後日、女性が草加警察署の警察官から職務質問を受けて事態が発覚。Aさんは覚せい剤取締法違反(使用罪)で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
~ 保釈とは ~
保釈とは、被告人(裁判にかけられた人)に対する勾留の執行(効力)を停止して、その身柄拘束を解くことをいいます。「被告人」とは起訴され、刑事裁判にかけられた人をいいますから、あくまで保釈請求は
起訴後
しかすることができません。
~ 保釈のメリット ~
保釈のメリットとしては以下の点が挙げられます。
① 精神的,肉体的負担の軽減
留置場,拘置所暮らしの生活は,多大な精神的,肉体的負担を伴います。保釈により釈放されれば,これらの負担から解放されます。
② 様々な処分を免れる
早期に釈放されることにより,会社の懲戒処分(解雇,減給等),学校の退学処分等を免れることができるかもしれません。
③ 家族が安心する
何より,ご家族が安心されます。ご家族が留置場等へ面会に行く手間も省けます。
④ 裁判に向けた十分な打合せができる
釈放されていますからいつでも弁護士に相談できるわけですし,何より落ち着いて、時間をかけて打合せを行うことができます。
~ 保釈の注意点 ~
保釈は、あくまで勾留の停止にすぎません(勾留の効力が消滅したわけではない)。また、メリットだけではありません。以下の点に注意する必要があります。
① 多額の保釈保証金が必要となる
保釈保証金の額は、被告人の認否、事案の内容等に鑑みて裁判官(裁判所)が決めます(日産のカルロスゴーン社長が保釈保証金1億円を納付したことはニュースになりました)。決して安い金額ではなく、通常の簡易な事件でさえ100万円~150万円を準備する必要があります。
② 保釈条件を遵守する必要がある
保釈を許可するにあたっては
・裁判所から呼び出された場合は必ず出頭する
・住居地を変更するには裁判所の許可を受ける
・被害者への連絡は弁護人を介する
・被害者、目撃者、共犯者などの事件関係者と接触しない
・薬物に近寄らない
などの条件を付けられます。全くフリーな状態で釈放されるわけではありません。
③ 条件を守らなければ保釈許可を取り消され保釈保証金を没収されて、拘束される
決められた条件を守らなければ保釈許可を取り消され、納付した保釈保証金は没収され、再び留置施設等に拘束されるおそれがあります。
~ 保釈中に・・・~
上記のとおり、保釈中は裁判所から指定された条件を守って生活しなければなりませんが、近年、保釈中に①逃走する、②覚せい剤を使用する、という事件が話題となりました。
①について
これは、神奈川県愛川町に住む男性が、刑務所に収容するため男性宅を訪れた検察庁職員らに包丁を示すなどして逃走したというものです。男性は控訴(1回目の裁判である第一審に対する不服申立て)を棄却され、第一審で言い渡された懲役3年6月の刑がすでに確定していた、ということですから純粋な保釈中ではありませんが、控訴申し立て後に保釈請求し、許可されたことから釈放されていたのです。なお、控訴審では男性は法廷に出廷する必要がありませんから、控訴棄却が言い渡されてもその日に収容されることはなく、言い渡しから数か月後に収容に至るという事態となったのです。この場合、保釈保証金は没収されます。
②について
次に、覚せい剤取締法(所持罪、使用罪)で起訴されていた埼玉県飯能市の男性が、保釈中、覚せい剤を知人女性に使用したというものです。このケースは、第一審裁判中での出来事であること、刑を言い渡されておらず、かつ、確定もしていないことが①のケースと異なります。男性は再度逮捕されています。では、保釈金は没収されるのかといえば、没収されません。これは、すでに起訴された事件と新たに逮捕された事件とが全く別の事件であるからです。
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薬物事犯と没収②
薬物事犯と没収②
Aさんは,大阪府大阪市中央区にて覚せい剤を所持したとして、覚せい剤取締法違反(所持の罪)で逮捕されました。その後起訴されて大阪地方裁判所で裁判を受け,「懲役1年6月 3年間執行猶予 覚せい剤約0.5グラムを没収する」との判決の言い渡しを受けました。Aさんは判決後,弁護士に「没収」とは何か尋ねました。
(フィクションです)
~ 前回のおさらい ~
前回の「薬物事犯と没収①」では,没収の意義や没収の対象物などについて解説いたしました。しかし,没収の対象物であるからとって,その全てが没収されるわけではありません。そこで,今回は,没収の要件や必ず没収しなければならない場合とそうでない場合などについて解説いたします。
~ 没収の要件 ~
没収の要件については刑法19条2項に規定されています。
刑法19条2項
没収は,犯人以外の者に属しない物に限り,これをすることができる。ただし,犯人以外の者に属する物であっても,犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは,これを没収することができる。
= 犯人以外の者に属しない物 =
少し分かりにくいですが,まず,「犯人」とは,被告人自身のほか共犯者も含まれると解されています。したがって,まず,
① 犯人(共犯者を含む)自身の所有に属する物
は没収できます。また,
② 誰の所有にも属さない無主物
も「犯人以外の者に属しない物」に当たりますから没収できます。しかし,所有者不明の場合は,未だ犯人以外の者に属しない物かどうか不明ですから没収することはできません。では,例えば,犯人が所有している抵当権付きの不動産の場合はどうでしょうか?この場合は,抵当権という第三者の担保物権が付いていますから,やはり「犯人以外の者に属しない物」とはいえず(つまり,犯人以外の者に属する物といえるから),没収することはできません。以上をまとめると,
犯人以外の者が,その物につき所有権・用益物権(地上権,地益権など)・担保物権(質権,抵当権など)を有しない場合
に限って没収できるということになります。
= 犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるとき =
「犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるとき」とは,その物につき,刑法19条1項各号に該当する事実があることを認識した上で取得したという意味です。この場合であれば,
犯人以外の者が所有権・用益物権(地上権,地益権など)・担保物権(質権,抵当権など)を有する物
で没収することができます。
~ 任意的没収と必要的没収 ~
これまで,没収の対象物や没収のための要件を解説してきましたが,前回ご紹介した「刑法19条1項」を再度確認していただければわかるように,条文には「没収することができる」と書かれてあります。つまり,没収しなくてもいい訳です。このように,裁判官の裁量で没収するかしないかを決められる没収のことを「任意的没収」といいます。例えば,交通事故を起こした自動車。これは,刑法19条1項1号の「犯罪行為を組成した物」に当たり,かつ,自動車の所有が運転者の物であれば没収の要件は満たしますが,通常,没収されることはありません。自動車は財産的価値が高く,懲役刑,禁錮刑,罰金刑に加えて没収まで科すとなるとあまりにも刑が重たくなると考えられますし,実際問題,没収するとしても多大な手間と費用がかかるからです。
これに対して,裁判官の裁量の余地がない没収のことを「必要的没収」といい,法律で規定されています。例えば,覚せい剤取締法41条の8第1項には
「第41条から前条までの罪に係る覚せい剤又は覚せい剤原料で,犯人が所有し,又は所持するものは,没収する。ただし,犯人以外の所有に係るときは,没収しないことができる。」
と規定されています。前段をご覧いただくと、「没収することができる」ではなく「没収する」ですから、必要的没収というわけです。このように,覚せい剤の所有の場合は必ず没収するとされています。
* 所持の場合は? *
所持の場合は,若干,ややこしいです。なぜなら,但書で「犯人以外の所有に係るときは,没収しないことができる」とされているからです。例えば,
Aさんが所持していた覚せい剤は実はBさんの物だったという場合
です。また,「犯人以外の所有に係るとき」には,犯人の所有に属するか第三者の所有に属するかが明らかでない場合も含まれると解されますから,例えば,
道端で拾った覚せい剤をAさんが所持していた場合など
は但書きケースに当たると思われます。このケースの場合に没収する場合は,検察官が別の手続を踏むことが必要ですが,それはまた機会を改めて解説いたします。
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薬物事犯と没収①
薬物事犯と没収①
Aさんは,大阪府大阪市中央区にて覚せい剤を所持したとして、覚せい剤取締法違反(所持の罪)の疑いで逮捕されました。その後、起訴されて大阪地方裁判所で裁判を受け,「懲役1年6月 3年間執行猶予 覚せい剤約0.5グラムを没収する」との判決の言い渡しを受けました。Aさんは判決後,弁護士に「没収」とは何か尋ねました。
(フィクションです)
~ はじめに ~
今回は,「没収」」という日頃聞き慣れない言葉について解説いたします。薬物事犯では特に重要な言葉ですので,ぜひ参考にされてください。
~ 没収とは ~
没収とは,物の所有権を剥奪して国庫に帰属させる財産刑のことをいいます。
刑罰の種類について定めた刑法9条は,「死刑,懲役,禁錮,罰金,拘留及び科料を主刑とし,没収を付加刑とする。」としており,没収を刑罰の一種としています。
ここでいう「主刑」とは独立に言い渡すことができる刑罰のことで,「付加刑」とは主刑が言い渡された場合にそれに付加してのみ言い渡すことができる刑罰のことをいいます。没収は付加刑ですから,判決で没収だけを言い渡すことはできず,必ず懲役や罰金等の他の刑罰と一緒に言い渡されます。
~ 没収の目的 ~
没収は刑罰の一種ですから,制裁的の意味合いがあることは間違いありません。しかし,それよりもむしろ,社会への危険・害悪の防止,犯罪組織への利得還元の防止など保安処分としての意味合いの方が濃いとも言われています。
国によって覚せい剤を没収してしまわなければ,再びそれを使うなどする人がいて社会に危険・害悪をもたらしかねないからそれを没収してしまおうというわけです。
* 押収との違い *
没収とよく混同される言葉として「押収」があります。「押収」とは,捜査機関が,対象者から任意で物の提出を受けたり,強制的に物を差し押さえたりする場合のことです。他方,「没収」は刑罰の一種で,裁判官しか言い渡すとこができません。また,「押収」は一時的に物の占有を取得したにすぎず,所有権を放棄しないかぎりのちのち還付(返却)されますが,「没収」は所有権を剥奪することなので永久的に手元に戻ってくることはありません。
「没収」は法的には「押収」されていないものでも対象とすることはできますが,実務では,「押収」されているものに限り「没収」の対象としているようです。
~ 没収できる物 ~
では,没収できる「物」とはなんでしょうか?
これについては刑法19条1項に規定されています。
刑法19条1項 次に掲げる物は,没収することができる。
1号 犯罪行為を組成した物
2号 犯罪行為の用に供し,又は供しようとした物
3号 犯罪行為によって生じ,若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
4号 前号に掲げる物の対価として得た物
= 没収できる「物」とは =
「物」とは有体物をいい,動産のみならず不動産も含まれますが,利益や債権は含まれません。例外的に刑法以外の特別法によって有体物以外のものが没収の対象になる場合もあります。例えば,麻薬特例法と呼ばれる法律では,「薬物犯罪収益等」の没収の規定を定めており,薬物犯罪による収益等に当たるものであれば預金債権等の無体的財産も没収の対象となります。
= 1号(犯罪行為を組成した物) =
偽造文書行使罪における偽造文書,賭博罪における賭金,無免許運転における自動車など。
= 2号(犯罪行為の用に供し,又は供しようとした物) =
文書偽造の用に供した偽造の印章,殺人に用いた日本刀,住居侵入・窃盗のために使用した懐中電灯など。
= 3号(①犯罪行為によって生じ,若しくは②これによって得た物又は③犯罪行為の報酬として得た物) =
① 通貨偽造罪における偽造通貨,文書偽造罪における偽造文書など。
② 賭博に勝って得た財物,財産犯罪によって領得した財物など。
③ 殺人の依頼に応じて殺人を行ったことによって得た報酬金,窃盗幇助の謝礼として得た財物
= 4号(前号に掲げる物の対価として得た物) =
盗品等の売却代金,窃盗犯人が盗んだ現金で買ったものなど。
~ おわりに ~
今回は,没収の意義,没収の対象となる物について解説いたしました。没収の対象物であるからとって,その全てを没収できるわけはありませんし,できるとしても必ず没収するとは限りません。次回以降は,没収するための要件などについて解説いたします。
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薬物事件と執行猶予制度
薬物事件と執行猶予制度
~ケース~
京都府京都市下京区在住のAさんは、3年前に覚せい剤使用の容疑で逮捕、起訴され、懲役1年6カ月、執行猶予3年の有罪判決を受けていた。
Aさんは上記の有罪判決確定後、薬物更生プログラムなどを受講していたが、同プログラムに参加していた他の受講者に誘われ、覚せい剤に対する誘惑を断ち切れず、執行猶予期間内に再び覚せい剤を購入し、使用してしまった。
その後、Aさんは覚せい剤の使用が発覚し、覚せい剤使用の容疑で逮捕されてしまった。
しかし、京都府下京警察署の取調べ等に対しAさんは、再び覚せい剤を使用してしまったことに深く後悔し、真に薬物からの更生を目指したいと考えているという旨の供述をしている。
~刑の執行猶予について~
刑の執行猶予については、刑法25条1項に規定されています。同項では①前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者、②前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者について、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金を受けたときに、情状により、刑の全部の執行を猶予できると規定されています。
Aさんは、3年前に覚せい剤の使用容疑で、懲役1年6カ月の有罪判決を受けています。懲役刑は「禁錮以上の刑」であるため、上記①には当たりません。更に、Aさんは刑を言い渡されてから長くとも3年しか経過していないことから、②にも当たりません。
もっとも、刑法25条2項は、仮に前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、①その刑の全部の執行を猶予されており、②1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、③情状に特に酌量すべきものがあるときについても、執行猶予判決をすることができると定めています。
まず、上記のケースのAさんについては、以前に執行猶予3年の判決を得ていることから、禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予された者(①)に当たります。
また、Aさんは、警察の取調べ等に対し、再び覚せい剤を使用してしまったことに深く後悔し、真に薬物からの更生を目指したいと考えている旨の供述をしています。この言葉どおり、判決前から再度薬物更生のための治療を徹底して受けていくことで、特に情状に酌量すべきものがあると評価される可能性があります(③)。
したがって、Aさんは、2度目の覚せい剤使用について、懲役1年以下の判決を受けることが出来れば(②)、再度の執行猶予判決が得られる可能性があります。
もっとも、初犯でも1年6カ月から2年程度の刑期が相場であるため、再犯で1年以下となることは稀です。
上記事例のような薬物の執行猶予期間中の再犯では、再度の執行猶予が付くことはまずありえないと言っても過言ではありません。
~一部執行猶予制度について~
平成28年の法改正により、刑の一部執行猶予判決を行うことが可能となりました。
例えば、「懲役2年6月に処する。その刑の一部である6月の刑の執行を3年間猶予する」という判決が言い渡された場合、懲役2年6月のうち、6か月部分については3年間執行が猶予されます。
つまり、2年間は刑務所に入らなければなりませんが、執行猶予が取り消されない限り、刑期が6か月短縮されると言うことができます。
この制度については、社会内での矯正を可能な限り取り入れるという目的があり、薬物事件における必要性を踏まえて創設されたものといえます。
上記の判決でいうと、一部執行猶予となった場合、本来より6か月早く刑務所から出て、早期に薬物依存症の更生プログラムを受けられるようになります。
また、一部執行猶予は、先ほど説明した再度の全部執行猶予よりも要件が緩くなっています。
たとえば、再度の全部執行猶予は「1年以下の懲役または禁錮」という限定がありますが、一部執行猶予は「3年以下の懲役または禁錮」となっています。
ですから、特に前科があるという方にとっては、再度の全部執行猶予よりも一部執行猶予の方がはるかに獲得しやすいと言えます。
上記制度によって薬物事件からの更生、再犯防止を目指すなら、ぜひ弁護士に相談してください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、覚せい剤を含む薬物事件のご相談のご予約、無料相談及び初回接見のご依頼を24時間受け付けております。
逮捕されてからでも、前科があっても、弁護士に相談したいと思ったら、0120-631-881までお気軽にお電話ください。

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所持品検査でコカインが見つかり逮捕
所持品検査でコカインが見つかり逮捕
~ケース~
警察官Pは、「福岡県福岡市南区周辺において薬物売買が行われている」との情報を得て、周辺をパトロールしていたところ、暴力団風の男Aを発見した。
Pは、が挙動不審な様子でPを見て逃走しようとしたことから、Aに対し職務質問を開始することとした。
Aは、Pの「ここで何をしているのか」等の質問に対し一向に解答しようとせず、任意での所持品検査にも応じようとはしなかった。
Aは、Pの再三の所持品検査の要求を拒み続け、「俺は帰る」と言ってその場を離れようとした。
そのため、Pは、Aの進路を妨害し、無理矢理Aのズボンのポケットに手を入れ、そこに入っていたコカインの袋を取り出した。
これによって、Aのコカインの所持が発覚し、PはAをコカイン所持の容疑で現行犯逮捕した。
(上記のケースはフィクションです)
~コカインについての刑事罰~
コカインには、覚せい剤と同じ様に神経を興奮させる作用を有しており、気分の高揚、眠気や疲労感がなくなったように感じさせるという効果を有しています。
コカインの乱用を続けた場合、幻覚等の症状が現れたり、多量摂取をしてしまうと、呼吸困難により死亡してしまう恐れがあり、コカインは大きな危険の伴う薬物であるといえます。
そのため、コカインの所持・使用・製造・輸出入・譲渡・譲受等の行為については「麻薬及び向精神薬取締法」によって厳しく処罰されています。
輸入・輸出・製造・栽培については、営利目的がなくとも、1年以上10年以下の懲役に処せられる可能性があります。
自己使用で営利目的のない所持の場合であっても、法定刑は「7年以下の懲役」と非常に重い刑罰となっています。
過去の量刑でみてみると、1年6か月~2年程度の懲役及び3年程度の執行猶予となることが多いようです。
そのため、コカインの所持等で逮捕された場合、出来るだけ早い段階に弁護士に相談・依頼し、適切な弁護活動をしてもらうことで、減刑を目指していくことが重要です。
~職務質問に伴う所持品検査~
覚せい剤やコカイン等の薬物所持が疑われる場合、警察官にかばんやポケット内の所持品を出してくれるよう、所持品検査を求められることがあります。
職務質問については、警察官職務執行法2条1項に基づいてなされます。同法は所持品検査については規定していませんが、職務質問に附随するものとして認められています。所持品検査も職務質問と同様、原則として、相手方の同意がある(=任意)場合にのみ認められることになります。
そのため、これらを拒否したからといって、法的に処罰されることありません。
ただ、相手方の同意がなければ所持品検査が全く許されないとすると、職務質問の効果が上がらず捜査に支障が出る可能性があります。
そこで、最高裁判所は以下のように判断しています。
「捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、所持品検査の必要性、緊急性、これによつて侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度で許容される場合がある」
つまり、所持品検査の必要性や程度によっては、対象者の同意がなくとも許される場合があるということです。
もっとも、警察官が勝手にカバンを開けて中を探ったり、ポケットの中に手を入れたりすることは、もはや所持品検査の範疇にとどまらず許されない可能性が高いでしょう。
そのため、上記のケースにおいて、PがAのズボンのポケットから無理矢理コカインの入った袋を取り出した行為については、所持品検査として許容される程度を超えるものとして違法となると考えられます。
場合によっては、こうした違法な捜査により得られた証拠物が裁判から除外され、結果的に無罪につながる可能性があります。
以上のような主張を適切に行うには、法律の専門家である弁護士の存在が必須と言っても過言ではありません。
少しでも不安であれば、ぜひ一度お近くの弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は、刑事事件を専門とした弁護士であり、所持品検査をきっかけとした逮捕や取調べのご相談も受け付けています。
薬物事件についてお悩みの方は、まずは弊所の弁護士まで、ご相談ください。
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初回法律相談:無料

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当事務所では、薬物犯罪事件についての無料相談のご予約は365日24時間受け付けています。相談・接見は、土日祝日、夜間でも即日対応可能です。弁護士のスケジュールの都合が合えば、お電話をいただいてからすぐ相談・接見を行うこともできます。薬物犯罪事件で少しでもお困りの方は、ぜひご相談ください。
覚せい剤事件のおとり捜査②
覚せい剤事件のおとり捜査②
~ケース~
東京都八王子市在住のAさんは、覚せい剤取締法違反の疑いで警視庁八王子警察署に逮捕されました。
その後、勾留により10日間拘束されたあと、覚せい剤取締法違反で起訴されてしまいました。
しかし、Aさんは警察による捜査がおとり捜査であって違法であったと主張しています。
というのも,Aさんは覚せい剤のいわゆる「売人」をしており,覚せい剤の取引に赴いたところ,取引相手は警察官であり覚せい剤取締法違反の疑いで現行犯逮捕されたという経緯があるからです。
(フィクションです)
~おとり捜査の適法性~
前回,おとり捜査の適法性について,①直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において,②通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難であり,③機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象に行う,という3つの要件を満たす場合には任意捜査として許容されるとした判例を紹介いたしました。
では,おとり捜査で逮捕されたと主張するAさんがどうなってしまうのかをいくつかのパターンに分けて考えていきましょう。
~パターン①~
捜査員が積極的にAさんにコンタクトを取り,覚せい剤を購入したい旨の打診をした場合。
上記事例において,何らかの理由でAさんが他人に対して覚せい剤を販売する意思を持っていなかったとします。
この場合に,捜査員からAさんに覚せい剤の購入を打診することは,Aさんに覚せい剤譲渡という犯罪の犯意を誘発することになります。
このようなおとり捜査は犯意誘発型と呼ばれ、前回説明したとおり国家による犯罪の作出として許されないといえます。
そうすると,おとり捜査の結果押収した覚せい剤は違法収集証拠として扱われ、証拠能力が否定される、すなわち裁判で証拠として採用されない余地が出てきます。
その場合は、犯罪を証明する証拠に欠けることとなり、Aさんは裁判で無罪となる可能性が出てくるでしょう。
~パターン②~
Aさんが覚せい剤の販売を常習して繰り返していたところ,その情報を得た捜査員が覚せい剤を購入したい旨の打診をした場合。
このような場合はいわゆる機会提供型のおとり捜査であるため,適法な捜査であるとされる可能性が高いです。
Aさんは覚せい剤の販売を常習的に繰り返しており,捜査員による特段の働きかけがなくとも覚せい剤譲渡の犯罪行為を行っていたといえるでしょう。
また,覚せい剤の譲渡の場合,所持や使用と異なり,通常の捜査方法のみでは犯罪事実の証明が困難といえます。
このパターンでは,覚せい剤譲渡をしているという情報そのものは警察は得ている形になりますが,それだけでは譲渡の事実があったと証明することは困難です。
加えて,覚せい剤譲渡の場合には直接の被害者となる者はいません。
したがって,判例のいう3要件を満たしていることから、適法なおとり捜査として許容される可能性が高いでしょう。
~パターン③~
Aさんは覚せい剤の販売を常習して繰り返していたところ,その情報を得た捜査員が覚せい剤を購入したい旨の打診をした。
取引の際,Aさんは覚せい剤を持って来ていなかったため,捜査員が今すぐ持って来てほしい旨打診し,Aさんに覚せい剤を持って来させた場合。
平成16年の判決はこのパターンに似た事件でした。
当該事件では,大阪へ東京から運び人に大麻樹脂を持って来させたところを逮捕されたというものでした。
被告人側は「捜査員からの執拗な取引への働き掛けがあり,犯意誘発型である」と主張しましたが,働きかけの時点で被告人が大麻樹脂を売ろうと買い手を求めていたのであるから,おとり捜査として適法であると判示されました。
~おとり捜査で逮捕されてしまったら~
平成16年判決では,覚せい剤などの薬物犯罪においてはおとり捜査が認められる場合があるという旨判示されました。
しかし,おとり捜査が常に適法な捜査として認められるわけではありません。
たとえ平成16年判決が提示した3要件に該当しても,その他の事情から捜査として許容される範囲を超えているとして違法な捜査とされる余地はあります。
いくら捜査のためとはいえ、不必要に被疑者・被告人の人権を侵害してはならないからです。
また,おとり捜査を含めてどのような点が違法だったと主張するかによって,刑事裁判で主張が認められるかも異なってきます。
違法なおとり捜査があったことを正しく主張し,裁判で認めてもらうためには刑事事件の弁護経験の豊富な弁護士に弁護を依頼することをお勧めします。
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覚せい剤などの薬物事件で逮捕されてしまいお困りの方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
初回接見・無料法律相談のご予約を24時間受け付けております。

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覚せい剤事件のおとり捜査
覚せい剤事件のおとり捜査
~ケース~
東京都八王子市在住のAさんは、覚せい剤取締法違反の疑いで警視庁八王子警察署に逮捕されました。
その後、勾留により10日間拘束されたあと、覚せい剤取締法違反で起訴されてしまいました。
しかし、Aさんは警察による捜査がおとり捜査であって違法であったと主張しています。
というのも,Aさんは覚せい剤のいわゆる「売人」をしており,覚せい剤の取引に赴いたところ,取引相手は警察官であり覚せい剤取締法違反の疑いで現行犯逮捕されたという経緯があるからです。
(フィクションです)
~おとり捜査~
麻薬取締法第58条やあへん法第45条では、麻薬取締官などが麻薬やあへんに関する犯罪を捜査するにあたり,厚生大臣の許可を受けて,同法の禁止規定に関係なく麻薬やあへんなどを譲り受けることができる旨規定されています。
なお,この規定は麻薬取締官などにのみ譲る受けることが認められ,警察官は譲り受けることが認められていません。
銃刀法では警察官に銃器等の譲受を認める規定,公営競技に関連する法律ではノミ行為の情報収集のために「ノミ屋の客になることができる」という規定があります。
これらの規定は,捜査の中で犯罪組織などに身分を隠して近付いた場合に,違法行為を勧められることがあり,下手に断ると職業身分が露見しかねないよう場合に,自己の安全と捜査のために違法行為をしたとしても,捜査員が罪に問われないようにするためにあります。
すなわち,これらの規定はおとり捜査を一般的に許容しているわけではなく,これらの規定を根拠におとり捜査を行うことはできません。
逆に,これらの規定がないからといっておとり捜査が一般的に許容されないというわけでもありません。
なお,おとり捜査に関する規定は麻薬取締法およびあへん法にのみ規定があり,覚せい剤取締法および大麻取締法にはおとり捜査に関する明示の規定はありません。
おとり捜査は学説上,大きくわけて以下の2つの類型にわけることができます。
一つ目は,犯罪意思のない者に対して,働きかけによって犯意を生じさせ,犯行におよんだところを検挙する犯意誘発型と呼ばれるものです。
二つ目は,既に犯意を有している者に対して,その犯意が現実化および対外的行動化する機会(犯行の機会)を与えるだけの働きかけを行った結果,犯行に及んだところを検挙する機会提供型と呼ばれるものです。
犯意誘発型の場合,もともと,犯罪を行わなかったであろう者に対し国家(捜査機関)が干渉し,犯罪行為を行わせるものであり,まさに国家が犯罪を作り出すものであるから許されないと考えられています。
機会提供型については,最高裁判所昭和28年3月5日決定(刑集7巻3号482頁)が「おとり捜査は,これによって犯意を誘発された者の犯罪構成要件該当性,責任制又は違法性を阻却するものではなく,公訴提起の手続きに違反し又は公訴権を消滅させるものではない」と判示しています。
この事案はいわゆる機会提供型のおとり捜査であったため,機会提供型については捜査の違法はないと解されてきたといえるでしょう。
その後,「おとり捜査は,捜査機関又はその依頼を受けた捜査協力者が,その身分や意図を相手方に秘して犯罪を実行するように働き掛け,相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところで現行犯逮捕等により検挙するものであるが,少なくとも,直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において,通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難である場合に,機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象におとり捜査を行うことは,刑事訴訟法197条1項に基づく任意捜査(執筆者注:令状がなくとも行うことができる捜査)として許容されるものと解すべき」と判示されました(最高裁判所平成16年7月12日決定刑集58巻5号333頁)。
この判決によると,①直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において,②通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難であり,③機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象に行う,という3つの要件を満たす場合には任意捜査として許容されることになります。
これらの要件を満たさない場合には,強制捜査として直ちに違法捜査となるわけではありませんが,おとり捜査の適法性は厳しく審査されることになるでしょう。
次回は具体的な事件の内容からAさんに対するおとり捜査が許容されるものであるのかを解説していきたいと思います。
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外国人の覚せい剤所持事件で無罪主張
外国人の覚せい剤所持事件で無罪主張
~ケース~
神奈川県横浜市中区在住のフィリピン国籍で飲食店を経営しているAさんは、友人であるXさんからハンドバッグを譲ってもらった。
ある日,Aさんがお酒に酔って街を歩いていた際に,神奈川県加賀町警察署の警察官から職務質問を受けた。
Aさんは職務質問に応じ,任意の所持品検査にも応じた。
所持品検査の際,Xから譲ってもらったハンドバッグが二重底になっており,内側からパックに小分けされた覚せい剤が発見された。
Aさんはその場で覚せい剤取締法違反の疑いで現行犯逮捕されてしまった。
在留資格の関係で強制退去となってしまわないか心配になったAさんは、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に弁護を依頼した。
(フィクションです)
~在留資格~
外国人の在留資格については、出入国管理及び難民認定法(通称:入管法)に規定されています。
加えて,強制退去となる事由も入管法第24条に規定されています。
ただし、条文は「本邦からの退去を強制することができる」となっていますので,強制退去事由に該当した場合に直ちに強制退去とならない場合もあります。
実際の強制退去事由も24条に規定されており,無期又は1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた場合(執行猶予となった場合を除く)には強制退去事由となると規定されています(24条4号リ)。
しかし,薬物事件においては執行猶予の有無に関係なく,有罪判決を受けた場合は強制退去事由であると規定されています(24条4号チ)。
そのため,Aさんが仮に覚せい剤取締法違反で有罪となってしまった場合,執行猶予が付されたとしても強制退去させられてしまう可能性があります。
~無罪を主張~
覚せい剤に限らず、多くの薬物事件は初犯であれば執行猶予付きの判決となります。
しかし,覚せい剤取締法違反の場合,上述のように執行猶予が付されても強制退去事由に該当してしまいます。
そのため,Aさんが強制退去とならないためには、無罪判決もしくは不起訴処分を勝ち取る必要があります。
今回のケースのような事件では,Aさんは否認することになりますので,逮捕後勾留されてしまう可能性が高くなる可能性があります。
また、Xさんが自ら覚せい剤を隠していたと供述することはあまり考えられませんから,正式な刑事裁判で事実を争う形になる可能性は高いでしょう。
刑事裁判で無罪を主張する場合は,犯罪事実そのものがなかった(冤罪である),もしくは罪とならない事由があることを主張していきます。
今回のケースで、Aさんは覚せい剤自体を所持してしまっていたので、犯罪事実そのものがなかったと主張することは出来ません。
一方,刑法では故意処罰が原則であるため(刑法38条),Aさんは覚せい剤所持に関する故意・認識がなかったことを主張します。
覚せい剤所持には過失の場合の処罰規定はありませんので,故意がなかったと刑事裁判で認められればAさんは無罪となります。
裁判では、どのように主張を組み立てていくかによって主張が認められる場合と認められない場合に分かれてしまうことがあります。
今回のケースのような事件の場合,主張が認められるかどうかが有罪となるか無罪となるかの分かれ目となります。
無罪を主張したいような場合には、刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士に弁護を依頼されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
薬物事件に限らず,身に覚えのない事で逮捕されてしまったような場合には0120-631-881までご相談ください。
警察署での初回接見・事務所での無料法律相談のご予約を24時間受け付けております。
(神奈川県加賀町警察署までの初回接見費用:35,500円)

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、犯罪行為による刑事事件・少年事件の当事者の弁護活動を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事事件を専門に扱っていますので、薬物犯罪にも精通した弁護士が、初回の相談から捜査・裁判終了による事件解決まで一貫した弁護活動を行います。
当事務所では、薬物犯罪事件についての無料相談のご予約は365日24時間受け付けています。相談・接見は、土日祝日、夜間でも即日対応可能です。弁護士のスケジュールの都合が合えば、お電話をいただいてからすぐ相談・接見を行うこともできます。薬物犯罪事件で少しでもお困りの方は、ぜひご相談ください。
大麻所持と逮捕後の流れ
大麻所持と逮捕後の流れ
~ケース~
会社員のAさんは、埼玉県さいたま市浦和区内の自宅で大麻を栽培し,インターネットなどで大麻の販売をしていた。
ある日,Aさんは近所にある行きつけのバーで自分の栽培した大麻を使用した。
帰宅中,通りがかった埼玉県浦和警察署の警察官に職務質問をされ,ポケットから残っていた大麻が見つかり大麻取締法違反(所持)の現行犯として逮捕された。
Aさんは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に初回接見を依頼した。
(フィクションです)
~大麻取締法~
大麻取締法は、覚せい剤取締法,あへん法,麻薬及び向精神薬取締法とならぶ薬物四法のひとつです。
その名の通り,「大麻」すなわち大麻草の所持などを規制しています。
しかし,大麻取締法第1条では、成熟した茎およびその製品,大麻草の種子およびその製品を大麻から除くと規定しています。
また,大麻の使用そのものは規制されていません。
大麻が規制対象となっているのは、大麻草に含まれるテトラヒドロカンナビノールという成分が多幸感,幻覚,妄想などを引き起こし有害作用があるためです。
このテトラヒドロカンナビノールは大麻草の樹液に多く含まれており,花や葉には樹液が多く含まれていますが,成熟した茎や種子にはあまり含まれていません。
日本では,茎の部分は麻縄や麻織物として利用されていますし,種子の部分は七味唐辛子に使用されています。
大麻草をすべて規制対象としてしまうと,麻縄や七味唐辛子を持っているだけで,大麻所持として大麻取締法違反となってしまいます。
そのため,成熟した茎や種子およびその製品は大麻取締法の規制の対象から外されています。
また,薬物の使用の有無は主に検査などで指定成分(大麻では上記のテトラヒドロカンナビノール)が体内から検出されるかどうかで判断されます。
大麻の茎や種子には少量とはいえテトラヒドロカンナビノールが含まれていますので、七味唐辛子などで大麻の種子を食べた場合に検出されてしまう可能性があります。
そのため,規制対象となっている大麻草の花・葉・樹脂などからテトラヒドロカンナビノールを摂取したと確実に言うことができません。
そこで,覚せい剤など他の薬物と異なり、大麻については使用が処罰範囲から除外されました。
もっとも,罰せられるべき大麻の使用は,大麻の所持なくしては現実的には不可能ですので大麻所持で検挙されることは当然ありえます。
なお,覚せい剤や麻薬などは製造が禁止されていますが,あへん法や大麻取締法では原料であるケシや大麻草の栽培が禁止されています。
罰則は大麻の所持・譲受・譲渡は5年以下の懲役,栽培・輸出・輸入は7年以下の懲役となっています。
営利目的での所持などは7年以下の懲役および200万円以下の罰金の併科,栽培などは10年以下の懲役および300万円以下の罰金の併科となります。
~逮捕後の流れ~
薬物事件では,多くの場合が所持をはじめとするいくつかの違反行為の併合罪となります。
今回のAさんも大麻の栽培,所持および譲渡を行っています。
刑事事件において、逮捕や勾留(10日以上にわたる身体拘束)は逮捕状や勾留状に記載された犯罪事実のみに効力が及ぶとされています(事件単位の原則)。
たとえば,コンビニでの万引きで逮捕・勾留し,その身体拘束を利用して別の強盗事件の取調べなどをすることは原則として許されないとされています。
薬物事件の場合,使用・所持などは厳密にはそれぞれ別個の事件ですが一度の逮捕・勾留で一緒に取り調べられることが多くなっています。
このような場合,事件同士の関連性などから許されるかどうかが判断されます。
また,事件単位の原則を厳密に適用しますと,所持について逮捕した後,栽培で逮捕し,またその後に譲渡で逮捕というかえって被疑者の身柄拘束期間が長くなってしまいます。
そのため,身柄拘束期間を短縮する面でも,薬物事件で互いに密接関連しているような事件同士では一緒に取調べされる場合が多くなっています。
薬物事件では多くの場合勾留がなされますが,ある程度捜査が進展する前に身柄解放に向けた活動をした場合,釈放された後に別の容疑で再逮捕・再勾留されてしまう可能性が高くなっています。
薬物事件で逮捕されてしまい今後の見通しなどが不安な場合には、薬物事件の弁護経験が豊富な弁護士に相談されることをおすすめいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
薬物事件で逮捕されてしまい,今後の見通しなどがご不安な場合には0120-631-881までお気軽にご相談ください。
警察署等での初回接見・事務所での無料法律相談のご予約を24時間受け付けています。
(埼玉県浦和警察署での初回接見費用:35,900円)

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