Author Archive

覚せい剤使用事件で強制採尿

2019-11-02

覚せい剤使用事件で強制採尿

覚せい剤を使用し強制採尿された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

兵庫県丹波篠山市在住のAさんは、覚せい剤を使用し、自宅付近を歩いていたところ、兵庫県篠山警察署の警察官に声をかけられ、職務質問を受けました。
警察官は、Aさんの受け答えが覚せい剤などの薬物の使用をうかがわせものであったことから、Aさんに尿検査を求めました。
Aさんが頑なに拒否するため、警察官は強制採尿令状を取得し、病院へ連れていくことを検討しています。(フィクションです)

~覚せい剤使用罪について解説~

覚せい剤取締法第19条は、
① 覚せい剤製造業者が製造のため使用する場合
② 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者が施用する場合
③ 覚せい剤研究者が研究のため使用する場合
④ 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合
⑤ 法令に基いてする行為につき使用する場合
を除き、何人も、覚せい剤を使用してはならないとしています。
これに違反し、覚せい剤を使用すると、10年以下の懲役に処せられます(覚せい剤取締法第41条の3第1項1号)。

~警察による強制採尿の可否~

Aさんに声をかけた警察官は、令状により、強制的にAさんの尿を取得し、鑑定しようとしています。
このような強制採尿を伴う捜査を行うことはできるのでしょうか。

判例(最高裁昭和55年10月23日決定)は、
「(強制採尿は)被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終的手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許されてしかるべきであり、ただ、その実施にあたつては、被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮が施されるべきものと解するのが相当である」
と判示しており、強制力を用いた採尿を適法に行い得る場合があることを認めています。

そして、捜査機関が強制採尿をするには捜索差押令状(家宅捜索などに利用される令状)によるべきであり、右令状には、医師をして医学的に相当と認められる方法で行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠であるとしています。

上記の強制採尿令状が発付されたとして、令状により、Aさんを採尿場所まで強制的に連れて行くことができるか否かが問題となります。
Aさんに強制採尿を行う段階では逮捕が行われておらず、Aさんの身体の自由を制約する根拠がないように思えるからです。
この点につき、判例(最高裁平成6年9月16日決定)は、任意同行が不可能な場合に、強制採尿令状の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができ、その際、必要最小限度の有形力を行使することができるとしています。

~Aさんに強制採尿令状は発付されるか?~

強制採尿令状による採尿は、判例も「最終的手段」と位置付けており、Aさんが尿検査を拒んだからといって、直ちに強制採尿令状が発付されるわけではありません。
もっとも、Aさんに十分な覚せい剤使用の嫌疑があり、警察官の再三にわたる尿検査の説得にも応じない、という場合には、強制採尿令状が発付される可能性が高まります。

強制採尿令状により取得した尿とその鑑定書は、Aさんの覚せい剤使用を立証する重要な証拠となります。

~ケースの場合、取得された尿から陽性反応が検出されるとどうなるか?~

覚せい剤使用の疑いで現行犯逮捕される可能性が極めて高いと思われます。
逮捕され、勾留決定がなされると、最長23日間も身体拘束を受けることになります。
その間に捜査が行われることになりますが、警察がAさんの自宅を捜索し、覚せい剤やその使用に用いる器具などを押収されることが十分考えられます。
その場合、覚せい剤所持罪の嫌疑もかけられることになると思われます。

~身柄解放活動~

薬物使用事件においては、捜査中に釈放されにくく、起訴後に保釈請求をすることでやっと釈放されるケースが多いです。
したがって、薬物使用事件における身柄解放活動は、保釈の実現に向けて重点が置かれることになります。

~執行猶予付き判決の獲得を目指す~

覚せい剤使用事件の場合、初犯であれば執行猶予付き判決を得られる見込みが相当程度あります。
執行猶予を目指すに際しては、保釈中に薬物依存の治療を受ける、信頼できる身元引受人を用意するなど、自身に有利な事情を見つけ出すことが重要です。
ですので、起訴されて保釈が認められた場合は、弁護士のアドバイスを受けながら、執行猶予付き判決の獲得を目指して行動することをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所であり、覚せい剤使用事件についてもご相談いただけます。
ご家族が覚せい剤使用事件を起こし、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

初回法律相談:無料

大麻栽培で逮捕

2019-10-28

大麻栽培で逮捕

大麻栽培逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

京都府木津川市に住むAさんは,自宅の庭に野菜畑を所有しており,そこで採れた野菜を近所の住人に無償で譲り渡したりしていた。
ある日近所の住人Bさんが,Aさんから野菜の育て方を教わるために野菜畑を見学していたところ,野菜畑の中に「春菊」と書かれた立て札があるのを見つけた。
しかし,そこに栽培されていたものの形状が明らかに春菊ではなかったことから,不審に思ったBさんは,後日警察を呼んで確認したところ,「春菊」と書かれた立て札がある場所に栽培されていた草が大麻草であることが発覚した。
発覚後すぐに,Aさんは,無許可で大麻を栽培したとして,大麻取締法違反の罪で京都府木津警察署逮捕されてしまった。
(上記の事例はフィクションです)

~大麻取締法~

大麻取締法第3条 大麻取扱者でなければ大麻を所持し,栽培し,譲り受け,譲り渡し,又は研究のため使用してはならない。

大麻取締法第24条 大麻を,みだりに,栽培し,本邦若しくは外国に輸入し,又は本邦若しくは外国から輸出した者は,七年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は,十年以下の懲役に処し,又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は,罰する。

大麻取締法第24条の2 大麻を,みだりに,所持し,譲り受け,又は譲り渡した者は,五年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は,七年以下の懲役に処し,又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は,罰する。

このように,大麻取扱者以外の者が,大麻の栽培を行った場合には,7年以下の懲役に処せられ,営利目的での栽培の場合には,10年以下の懲役,又は情状により10年以下の懲役と300万円の罰金の両方が科されることになります。

「大麻取扱者」とは,「大麻栽培者及び大麻研究者をいう」(大麻取締法2条1項)と規定されており,「大麻取扱者」になるためには,厚生労働省令の定めるところにより,都道府県知事の免許を受けなければならないと定められています(同法5条1項)。
上記事例のAさんは,都道府県知事の免許を取得していない以上,「大麻取扱者」にはあたりません。

「栽培」とは,種をまいてから収穫までの育成行為をいいます。
播種を行った時点で実行の着手が認められ,栽培の未遂として処罰の対象となります。
その後発芽した時点で栽培の既遂に達し,大麻を刈り取るまで犯罪は継続すると解されています(継続犯)。
なお,大麻取締法違反は,実行の着手の前段階,つまり種子や栽培道具を提供するといった協力行為についても処罰の対象としており,「3年以下の懲役」という罰則が設けられています(24条の6)。
また,業として栽培を行っていたとされた場合,無期又は5年以上の懲役及び1千万円以下の罰金という非常に重い処罰を受けることになります(国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為等を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(麻薬特例法)5条2号)。

大麻取締法は,大麻の単純使用については罰則規定がなく,大麻を吸う行為そのものは処罰されないといえます。
大麻の使用が禁止されていないのは,大麻が医薬品や研究の用途などに広く使われており,自然界に自生しているからです。
もっとも,大麻を所持したり譲り受けたりせずに大麻を使用することは不可能ですので,実際は,所持や譲り受け行為を認定されてしまうことになります。

大麻については,日本でも合法化のための運動などがなされていますが,少なくとも現段階では,日本国内に合法の大麻は存在しません。

大麻所持の罪などで有罪となってしまった場合であっても,どれだけの量をどれだけの期間栽培していたのかなどケースにもよりますが,初犯であれば営利目的がなかったり業として行っていたとはいえない場合,執行猶予が付く可能性が十分にあります。
そのため,弁護士を選任して積極的に弁護活動を行うことが重要になってきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,薬物犯罪において行われる捜査について深い知識や経験をもつ弁護士が在籍しています。
弊所では24時間,無料相談及び初回接見のご依頼を受け付けておりますので,0120-631-881までお気軽にお電話ください。

麻薬特例法違反で逮捕

2019-10-23

麻薬特例法違反で逮捕

麻薬特例法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ ケース ~

福岡県福岡市中央区に住むAさんは、若いころから覚せい剤の密売で生計を立てていました。ある日、Aさんは、知人を通じて外国から100キロ単位の覚せい剤を密輸することを企てました。ところが、Aさんは、捜査当局に「覚せい剤の密売に関与している」との情報を入手されてしまいました。そして、博多港で大量の覚せい剤が押収されました。Aさんは、自宅で覚せい剤が配達されるのを待っていたところ、「配達です」との声がして玄関ベルが鳴ったため玄関へ行き、荷物を受け取りました。その際、配達員を装った福岡県中央警察署の警察官に麻薬特例法違反逮捕されてしまいました。荷物の中には丸められた新聞紙や古本のみが在中し、覚せい剤は入っていませんでした。警察が港で覚せい剤を押収した際、覚せい剤を抜き取った上で追跡捜査していたようです。Aさんは逮捕勾留された後、接見禁止決定により弁護人以外の者との面会が禁じられています。
(フィクションです。)

~ 麻薬特例法とは ~

麻薬特例法は、正式名称「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」(以下、法律)といいます。
薬物犯罪による薬物犯罪収益等のはく奪、規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図ることなどを目的としており(法律1条)、平成4年7月1日から施行されています。

「規制薬物」とは、麻薬向精神薬大麻あへんけしがら覚せい剤をいいます(法律2条1項)。
また、「薬物犯罪」とは、覚せい剤に限っていえば、

・覚せい剤の輸出入、製造の罪(営利目的を含む)、又はこれらの未遂罪
・所持、譲渡し及び譲受けの罪(営利目的を含む)、又はこれらの未遂罪
・譲渡しと譲受け(営利目的を含む)の周旋の罪

をいいます(法律2条2項5号)。

~ 規制薬物等の譲り受け等 ~

規制薬物等の譲り受け等の罪は法律8条2項に規定されています。

法律8条2項
 薬物犯罪(規制薬物の譲渡、譲受け、又は所持に係るものに限る。)を犯す意思をもって、薬物その他の物品を規制薬物として譲り渡し、又は譲り受け、又は規制薬物として交付を受け、若しくは取得した薬物その他の物品を所持した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

「規制薬物として」とされている点がポイントです。
つまり、譲り渡したり、譲り受けたりする対象や規制薬物そのものでなくてもよいわけです。
麻薬特例法が、規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図ることなどを目的としている所以です。

ただし、本罪の故意として「薬物犯罪(規制薬物の譲渡、譲受け、又は所持に係るものに限る。)を犯す意思」が必要です。
本罪で検挙される前に多数の薬物取引が証拠上認められる場合などは、「薬物犯罪(規制薬物の譲渡、譲受け、又は所持に係るものに限る。)を犯す意思」があると認められてしまう可能性が大きいといえます。
また、実際の対象物が薬物そのものではないことから、法定刑は薬物を譲り受けた場合よりも低くなっています。
ちなみに、覚せい剤の譲り受け罪の法定刑は「10年以下の懲役」、営利目的が認められる場合は「1年以上の有期懲役(上限20年)」、情状によっては「1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金」です。

~ 接見禁止 ~

薬物事件では、勾留によっては罪証隠滅行為を防止できないとして接見禁止決定を出されることが多いと思われます。接見禁止決定とは、弁護人あるいは弁護人となろうとする者以外の者との接見を禁止する決定を言います。
接見禁止を解除するための手段として、接見禁止の裁判に対する準抗告・抗告の申立てがあります。これは法律(刑事訴訟法)上認められた手続きです。他に、接見禁止の全部又は一部解除の申立てがあります。全部解除となれば、制限なく接見できます。また、一部解除とは、裁判官・裁判所が認めた範囲の人のみ接見を認める処置です。

事件関係者との接見は認めないが、事件に全く関係のない家族等なら接見を認める

などという場合に一部解除となります。
ですから、子ども様との一刻も早い接見をお望みの場合は、弁護士に法律上の異議申立てや全部又は一部解除の申し立てを行ってもらいましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、麻薬特例法をはじめとする薬物事件刑事事件少年事件専門の法律事務所です。お困りの方は、0120-631-881までお気軽のお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。

覚せい剤の「使用」とは何か

2019-10-18

覚せい剤の「使用」とは何か

東京都新宿区に住むAさん(23歳)は、仕事や職場での人間関係からストレスが溜まっていました。そんなとき、Aさんは、久しぶりに覚せい剤前科を多数有する地元の先輩Bさん(30歳)と会いました。AさんとBさんは覚せい剤のことで話が盛り上がりました。そして、AさんはBさんに最近の悩みなどについて相談すると、覚せい剤を勧められました。Aさんははじめ躊躇しましたが、Bさんからあまりにしつこく勧められたため、「1回くらいならいいや」という気持ちでBさんの誘いに乗り、Bさんから覚せい剤を譲り受けました。Aさんは覚せい剤を使うのが初めてだったため、Bさんに「覚せい剤を注射してくれ。」と頼んだところ、Bさんはこれを快く引き受けました。そして、Aさんは自宅で、Bさんから覚せい剤入りの注射器を打ってもらいました。数日後、Aさんは警視庁戸塚警察署覚せい剤取締法違反逮捕されてしまいました。覚せい剤を注射してもらった数日後、Aさんが自宅で暴れ、家族が戸塚警察署に通報したことがきっかけでした。Aさんの家族は、Aさんとの接見薬物事件に強い弁護士に依頼しました。
(フィクションです。)

~ 覚せい剤は違法! ~

覚せい剤麻薬等は、それを乱用する人間の精神や身体をボロボロにし、人間としての生活を営むことをできなくするだけでなく、場合によっては死亡することもあります。
また、薬物の乱用による幻覚・妄想が、殺人、放火等の凶悪な犯罪や交通事故を引き起こします。また、覚せい剤は暴力団組織などの犯罪組織の活動資金のネタとしても使われており、その活動資金を基に新たな犯罪、新たな被害者を生み出しかねません。
このように、覚せい剤は、乱用者本人のみならず、周囲の人、さらには社会全体に対しても、取り返しのつかない被害を及ぼしかねないものです。
こうしたことから、覚せい剤麻薬等の使用、所持等は法律により厳しく禁止されています。

覚せい剤取締法19条 左の各号に掲げる場合の外は、何人も、覚せい剤を使用してはならない。 

一 覚せい剤剤製造業者が製造のため使用する場合
二 覚せい剤剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者が施用する場合
三 覚せい剤剤研究者が研究のため使用する場合
四 覚せい剤剤施用機関にお取締法いて診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合
五 法令に基いてする行為につき使用する場合

覚せい剤取締法41条の3 次の各号の一に該当する者は、10年以下の懲役に処する。

一 第19条(使用の禁止)の規定に違反した者

~ 覚せい剤取締法における「使用」とは? ~

覚せい剤取締法でいうところの「使用」とは、覚せい剤等を用法に従って用いる、すなわち「薬品」として消費する一切の行為をいいます。
使用方法に制限はなく、水に溶かした覚せい剤を注射器によって血管に注入する方法や、覚せい剤の結晶を火に炙って、気化した覚せい剤を吸引する方法、覚せい剤を飲み物に溶かすなどして経口摂取する方法などがあります。

なお「使用」には

①他人の身体に覚せい剤を注射する行為
②他人に注射してもらう行為

も含まれます。そして、通常、①の場合、自己の身体に注射された人も、②の場合、他人の身体に注射した人も覚せい剤使用罪の共犯として処罰されます。

~ 覚せい剤使用罪の量刑 ~

初犯者に対する量刑は

懲役1年6月

で、執行猶予判決が付くのが相場です。
しかし、Aさんに前科がある場合は、さらに重くなる可能性はあります。
前の前科からどの程度の期間を経て今回の犯行を犯したか、にもよるでしょう。また、前科の種類でも異なるでしょう。前の前科が同じ薬物事犯である場合は「実刑」となる可能性も否定しきれません。異なる前科であっても、執行猶予期間中であったり、累犯前科(刑法56条)である場合はやはり実刑となる可能性が高いでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。刑事事件少年事件逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見無料法律相談の予約を受け付けております。

大麻と運転

2019-10-13

大麻と運転

東京都東久留米市に住むAさん(26歳)は、数年前に友人から大麻をもらって使用したのがきっかけで、大麻を日常的に使用していました。そして、ある日、Aさんは車を運転していたところ、蛇行運転が理由で警視庁田無警察署の警察官が運転するパトカーに停止を求められました。Aさんは、職務質問、所持品検査の結果、ズボンの右ポケットから大麻を見つけられ、大麻所持現行犯逮捕されました(また、後日、道路交通法違反(薬物運転の罪)でも追送検されてしまいました)。Aさんの母親から依頼を受けた弁護士がAさんと接見しました。

~ 大麻の危険性 ~

大麻は,その成分中のテトラヒドカンナノビールが中枢神経に作用し,精神に種々の影響をもたらすものです。
作用の程度等は,摂取方法,量等によって異なりますが,一般的に,精神的には陶然となり,多幸感をもたらす反面,衝動的で興奮状態になり,感情の不安定から暴力的な行動を取ることがあると言われています。大麻覚せい剤ほど依存性はないと言われているものの,覚せい剤のほか多数の違法薬物の入口となっているとも言われており,薬物に対する抵抗感をなくすという意味でも大変危険な薬物と言えます。

~ 大麻所持の罪 ~

大麻取締法では所持罪について以下の規定を設けています。

3条1項
 大麻取扱者でなければ大麻を所持し,栽培し,譲り受け,譲り渡し,又は研究のため使用してはならない。

24条の2第1項
 大麻を,みだりに,所持し,譲り受け,又は譲り渡した者は,5年以下の懲役に処する。

なお、覚せい剤と異なり、使用罪についての規定はありません。
これは、大麻を合法的な目的のために栽培する方をも処罰することになるという不都合を避けるために、使用罪に関する規定が設けられていないのであって、決して、

大麻が合法

とか

大麻使用を合法

と認めたわけではありませんから注意が必要です。

~ 大麻と交通違反 ~

また、薬物などの影響により車などを運転した場合は道路交通法違反に問われる場合があります。
道路交通法66条には次の規定が設けられています。

道路交通法66条
 何人も、前条第一項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。

「薬物の影響」とは、大麻覚せい剤などの使用、睡眠薬の飲用、シンナーなどの吸引により、正常な身体又は精神の状態に変化を生じ、運転に際し注意力の集中、距離感の確保等ができないため、運転者に課せられた注意義務を果たすことができないおそれがあること、をいいます。
なお、「前条第一項」とは、酒気帯び運転の規定をさします。したがって、「薬物の影響その他の理由」には、アルコールの影響によるものは含まれません。

薬物運転の罪の罰則は

5年以下の懲役又は100万円以下の罰金

です(道路交通法117条の2第3号)。

~ 大麻と交通事故 ~

薬物の影響により交通事故(人身事故)を起こした場合は、さらに重い罪に問われる可能性があります。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条の1号から6号には「危険運転」に関する類型が規定されており、その1号では

アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為

とされているからです。

そして、危険運転によって人を負傷させた場合は

(1か月以上)15年以下の懲役

人を死亡させた場合は

1年以上(20年以下)の懲役

を科せられるおそれがあります。

~ 大麻関連で逮捕された場合は? ~

逮捕されたご家族にとっては、この先ご本人がどんな罪に問われ、どのようになっていくのか不安になられることと思います。
そんなときは、弁護士接見を依頼し、今後の事件の見通しなどについて弁護士から説明を受けることも一つの方法です。
お困りの方は一度、ご検討ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。刑事事件少年事件逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見無料法律相談の予約を受け付けております。

覚せい剤使用で自首

2019-10-08

覚せい剤使用で自首

神奈川県横浜市栄区在住のAさん(40代男性)は、学生時代の友人らとの同窓会があった際に、ある友人から覚せい剤を譲り受けて、これを使用してしまった。
Aさんは覚せい剤使用後に、自己の行為を深く反省して、神奈川県栄警察署自首しようと考えている。
Aさんは警察に自首する前に、刑事事件に強い弁護士と法律相談して、自首するべきか自首しないべきかの判断や、自首した際にどのように警察の取調べで供述していくかを、弁護士と綿密に打合せした上で、今後の弁護対応を検討することにした。
(事実を基にしたフィクションです)

~自首により刑罰が軽くなる要件とは~

薬物使用事件などの刑事事件において、事件の発覚前に警察に自首した場合には、その後の刑事処罰が軽くなる可能性があります。
自首が成立して、刑罰軽減が実現するためには、「捜査機関に発覚する前の申告であること」「自発的申告であること」「自己の訴追を含む処分を求めること」という各要件を満たす必要があります。

・刑法 42条1項(自首等)
「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」

警察側に、犯行事実が全く発覚していない場合や、犯行事実は発覚しているけれども犯人が誰かが発覚していない場合には、「捜査機関に発覚する前」という要件を満たし、自首が成立します。
逆に、犯行事実や犯人は発覚しているけれども、犯人の所在が分からないといった場合には、自首は成立しません。

「自発的申告」の要件とは、自分から進んで捜査機関に対して自己の犯罪事実を申告した場合に、自首が成立することをいいます。
逆に、警察から嫌疑をかけられて取調べを受けている最中に、自己の犯罪事実を自供した場合には、自首は成立しません。
ただし、取調べを受けている事件とは別の余罪について取調べ最中に自供した場合に、その余罪が捜査機関側に発覚前のものであれば、余罪の自首は成立します。

「自己の訴追を含む処分を求めること」が、自首成立の要件となります。
逆に、犯行の一部を殊更に隠すような申告であったり、自己の責任を否定するような申告であるときは、自首は成立しません。

自首の成立要件を満たして、自首が成立した場合でも、必ず刑罰が軽くなるというわけではなく、裁判所が刑罰を軽くするかどうかを判断する形になります。
他方で、もし自首の要件を満たさず自首が成立しないようなケースであっても、被疑者が反省して、自分から警察に犯罪事実を申告したような場合には、裁判官や検察官が刑事処罰の量刑を判断する際に、被疑者が反省している事情が考慮されて、刑罰を軽くする方向に影響する可能性はあります。

覚せい剤取締法違反による覚せい剤使用罪の刑事処罰は、営利目的ではない場合、「10年以下の懲役」とされています
覚せい剤使用罪の法定刑は「懲役刑のみ」であるため、起訴されれば裁判となり、執行猶予付きの懲役刑判決が出るか、あるいは、刑務所に入ることとなる実刑判決が出る可能性があります。
執行猶予付き判決を得るためには、被疑者本人の過去の前科前歴の有無が大きく影響するとともに、今回の事件の経緯を、警察での取調べでどう供述したかという事情や、今後の薬物更生に向けた治療方針が整っている事情などが、判決に影響すると考えられます。

覚せい剤使用事件自首の法律相談を受けた弁護士は、自首することによるメリット・デメリットについて検討し、自首が成立して刑罰減軽されるかどうかや、今後の刑事処罰の見通しや、警察の取調べにおいてどのように供述していくかを、被疑者本人と綿密に打合せした上で、その後の弁護方針について法律相談いたします。

神奈川県横浜市覚せい剤使用事件でお困りの方は、刑事事件を専門に扱っている、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の評判のいい弁護士にご相談ください。

MDMAと少年

2019-10-03

MDMAと少年

埼玉県秩父市の高校に通うA君(16歳)は、友人のB君から「これを飲むと楽しい気分になるし、勉強の集中力も上がる。」と言われ、錠剤を数錠もらいました。A君は、「人から薬を勧められるなんて、きっと怪しいものに違いない」と思い、B君に「これ何?」と聞きましたが、B君から詳しい答えは返ってきませんでした。そこで、A君はB君に「遠慮しとくよ。」と言いましたが、B君から「友達じゃないか。」「おれのほかにもみんな使ってるから飲んでみなよ。」などと言われ、「長年のB君やその友人らとの縁を切るわけにはいかない。」「仲間外れにされるのが怖い。」と思い、自宅に帰って錠剤2粒を服用しました。その翌朝、A君は気がつくと埼玉県秩父警察署にいました。昨晩、A君は自宅で突然暴れだし、両親から通報を受けた警察官により保護されたようです。A君の部屋からはMDMA3錠が押収され、A君は、麻薬及び向精神薬取締法違反(麻薬所持)で事情を聴かれることになりました。
(フィクションです。)

~ MDMAは恐ろしい薬 ~

MDMAとは、正式名称をメチレンジオキシメタンフェタミンという合成麻薬のことで、別名「エクスタシー」「罰(バツ)」「タマ」とも呼ばれています。
MDMAの服用により、覚せい剤に似たような興奮作用を覚えるほか、幻覚、不安、不眠、脳・神経の破壊、心臓・腎臓・肝臓の機能不全、記憶障害等を引き起こすと言われています。
厚生労働省のポスターには、

・小さい人間がいっぱいやってきて、剣で自分を刺し殺そうとする。
・路上で暴れ、病院につれていかれた。入院すると「暑い、暑い」と全裸になり、1ヶ月の興奮状態がつづき、「バカヤロー、部屋から出せ」と大声でわめき散らして食事を床に投げつけたり、医者などになぐりかかり、「自分は鬼になっている」と妄想に取りつかれてしまった。
・「MDMAを飲んだら眠れなくなってしまった。頭が回転しなくなり、気分が落ち込んでしまって、学校の先生の話が1割も頭に入らなくなってしまった。もう6ヶ月もたつのに一向に元に戻らない。つらくて仕方がない。死んだ方がましだ。」

などの使用者の体験談が掲載されています。
まずは、こうした声も参考に、薬物、MDMAの恐ろしさを実感することが大切です。
もちろん、MDMAを「所持」すること、「使用(施用)」することは麻薬及び向精神薬取締法という法律により禁止され、「所持」については

7年以下の懲役

または、営利目的で所持した場合は、

1年以上10年以下の懲役、又は1年以上10年以下の懲役及び300万円以下の罰金

という罰則が設けられています。

~ 少年と薬物事件 ~

もっとも、少年の場合、ただちにこれらの罰則が科されるのは通常考え難いです。
少年の場合、捜査機関に発覚すると、

発覚→逮捕(されない場合あり)→捜査機関での捜査→家庭裁判所送致→調査→少年審判

という流れに乗ります。
薬物事件の場合、事案の重大性からほぼ家庭裁判所に送致されると考えた方がよろしいかと思います。
ただし、「調査」の過程で、少年審判を開くまでもないと判断された場合は「不開始決定」を受けることが考えられますし、少年院送致保護観察などの保護処分を受けさせるまでもないと判断された場合は「不処分決定」を受けることも考えられます。
少年院送致を受けた場合は少年院へ収容されることになり、保護観察を受けた場合は社会復帰は許されるものの、一定期間、保護観察所の監督の下で更生していくことになります。

薬物に手を染めてしまう少年については、その少年自身に問題があることはもちろん、その少年を取り巻く環境にも問題があることが多いと思われます。
そのため、「調査」では家庭環境、学校、友人関係などでの問題点を明らかにし、そこで現れた問題点を解決するべく、少年を取り巻く環境を整備していく必要があります。
その過程で、少年に更生の兆しがみえ、環境が整い、少年が再非行を犯すおそれがないと認められる場合は少年にとってよりよい結果を得られることができるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。刑事事件少年事件逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見無料法律相談の予約を受け付けております。

大麻所持で逮捕

2019-09-28

大麻所持で逮捕

~ケース~
大阪府大阪市阿倍野区に住むAさんは、窃盗の疑いで自宅を捜索されていた際、押し入れに隠していた大麻を発見されてしまいました。
大麻であることを確認された後、Aさんは、大麻取締法違反(所持)の疑いで大阪府阿倍野警察署現行犯逮捕されてしまいました。
それにより、窃盗事件の証拠だけでなく、大麻等も押収されました。(フィクションです)

~大麻所持罪を解説~

大麻所持罪とは、その名の通り、大麻をみだりに所持する犯罪です(大麻取締法第24条の2第1項)。
「みだりに」とは、社会通念上正当な理由があると認められないことを意味します。
たとえば、「大麻栽培者」、「大麻研究者」が業務の一環として行う所持行為は、大麻所持罪に該当しません。

「所持」とは、「事実上の実力支配関係」をいい、自宅の押し入れに大麻を保管する行為は、「所持」に該当します。

大麻所持罪につき、有罪判決が確定すると、5年以下の懲役に処せられます(大麻取締法第24条の2第1項)。
10年以下の懲役を定める覚せい剤所持罪に比べると法定刑は軽いと言えますが、覚せい剤所持罪と同じく、法定刑に懲役刑以外の刑種がありません。
したがって、起訴され、有罪判決を受けた場合、執行猶予がつかない限りそのまま刑務所に行かなければならないことになります。

~逮捕後の手続~

逮捕後、留置の必要があると認められるときは、逮捕時から48時間以内にAさんの身柄を検察へ送致します。
身柄を受け取った検察官は、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、釈放するかを決めます。
検察官の勾留請求に対し、裁判官が勾留決定を出すと、10日間勾留されます。
やむを得ない事由があると認められるときは、さらに最長10日間勾留が延長されます。

~身柄解放活動を弁護士に依頼~

大麻所持罪に限らず、何らかの刑事事件を起こして逮捕されてしまった場合、身柄解放活動のタイミングがいくつかあります。

(勾留請求前)
逮捕された後、留置場に入れられ、検察へ送致されると、検察官が被疑者を勾留するか、あるいは釈放するかを判断するタイミングがあります。
弁護士としては、このときに勾留の要件を満たさないことを主張し、勾留請求をしないよう働きかけることが考えられます。
弁護士の主張が容れられれば、勾留されずに釈放されることが期待できます。

(勾留請求後、勾留決定前)
検察官が勾留請求をし、かつ、裁判官が勾留決定をした場合に初めて勾留されることになります。
裁判官に対しても、勾留の要件を満たさないことを主張し、勾留決定を阻止する活動が考えられます。

(勾留決定後)
勾留されてしまった後は、「準抗告」、「勾留取消請求」などの制度を通じ、勾留の取消しを求めることができます。
勾留決定に違法があった、あるいは、勾留の要件を満たさなくなった、ということが認められると、釈放されます。
また、裁判官の職権発動を促し、「勾留の執行停止」の実現に向けて活動することも考えられます。

(起訴後の保釈請求)
大麻所持罪においては、大麻の入手ルートなど、捜査によって解明しなければならないことが多いため、勾留となることが多く、身体拘束が長引きがちになります。
上記の身柄解放活動が功を奏さず、さらに起訴されてしまった場合は、保釈の実現を目指すことになります。
保釈が許される場合であっても、保釈保証金を納付した上で釈放されることになります。
保釈保証金を用意しにくい場合は、その立替を行う機関も存在します。
逃亡、罪証隠滅を図ったり、裁判所の付した条件(住居の制限など)に違反するなどした場合は、保釈を取り消されることがあります。
保釈が取り消された場合は、納付した保釈保証金の全部又は一部を没取されることがあります。
反対に、裁判が無事に終了すれば、納付した保釈保証金は返ってきます。

接見にやってきた弁護士と相談し、早期の身柄解放の実現に向けて行動しましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所であり、大麻所持事件についても相談いただけます。
ご家族が大麻所持事件を起こし逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

初回法律相談:無料

覚せい剤取締法違反で逮捕

2019-09-23

覚せい剤取締法違反で逮捕

〈ケース〉
東京都渋谷区の代々木上原駅周辺で、Aさんは挙動不審であることを理由に警察官に職務質問を受けた。
その後も,Aさんは警察官の質問に対して要領を得ない応答をし,時々意識が朦朧とした様子も見せた。
そのため,警察官は覚せい剤使用の疑いが高いと判断し,その場でAさんの同意のもと所持品検査を行った。
その結果,Aさんの所持品から白い粉末入りのビニール小袋,注射器を発見した。
試薬検査の結果,覚せい剤の陽性反応が出た為,警察官はAさんを覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕した。
警視庁代々木警察署にて警察官がAさんの採尿検査をしたところ,検査薬に陽性反応が出たため,警察官は尿検査の結果を証拠として裁判所に通常逮捕令状を請求し,後日Aさんを覚せい剤取締法違反(使用)としても逮捕した。
(事例はフィクションです)

〈覚せい剤の所持、使用および譲渡の罰則〉

覚せい剤取締法は、覚せい剤(フェニルアミノプロパン、フェニルメチルアミノプロパン)の所持、使用、譲渡、譲受等を禁止しています。
覚せい剤を所持・譲渡した場合の刑罰は,営利目的の有無で異なります。
覚せい剤の所持・譲渡について営利目的がない場合は10年以下の懲役になる(41条の2第1項)一方,営利目的がある場合は1年以上の有期懲役(上限20年)となります(同2項)。
また,後者は、懲役に加えて500万円以下の罰金刑も科される可能性もあります。
覚せい剤の使用についても,10年以下の懲役が科されます(41条の3第1項)。
通常,営利目的なく覚せい剤を所持・使用した場合,初犯であれば,懲役1年6ヵ月程度で執行猶予3年の処分になることが多い傾向にあります。

〈職務質問・所持品検査〉

〇警察官職務執行法(警職法2条1項)
「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、 若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。」

端的に言えば,犯罪に関わっていると思われる人物に対して,警察官はその場で停止・質問することができるということです。
職務質問の内容として,身分証の提示を求められるほか,その場所にいた理由やどこへ向かうのかといったことを質問されます。
なお,職務質問は令状を必要とする強制処分(例として逮捕や捜索)ではありませんが,停止・質問する際に必要かつ合理的な範囲内であれば有形力の行使が認められます。
具体的には、相手の肩を掴んで引き留める行為が挙げられます。

実際は職務質問に伴って所持品検査が行われることが通常です。
本事例の所持品検査を直接規定した法令はありませんが,上記の警職法の職務質問の効果を上げるうえで必要かつ有効な行為であることから,先述の警職法2条1項で認められるとされています。
所持品検査には大きく分けて以下の4つの形態があります。
①衣服・所持品の外部を観察して質問する行為
②所持品の開示を求め,開示されたら点検する行為
③相手の同意がない時に,衣服・所持品の外部に触れる行為
④相手方の同意がない時に,所持品の内容を点検し,或いは,相手方の身体について所 持品の有無を点検する行為(身体検査)
特に③・④は所持品検査を受ける人が受けるプライバシーを一定程度制限する行為であるので,やむを得ない場合など,より厳しい条件の下で許容されます。

〈採尿検査の可能性〉

覚せい剤などの薬物を使用した疑いがある場合、採尿検査を行われることがあります。
採尿検査には、採尿検査を求められた人が任意で尿を提出する場合とそうでない場合があります。
任意での採尿・提出を拒否した場合,捜査機関は疑いの程度や被疑者の態度などにより強制採尿令状を請求・執行できます。
強制採尿令状の執行は,医師の手でカテーテルを用いて行われます。
この強制採尿は、覚せい剤などの使用行為の捜査・立証する為には極めて重要です。
もっとも、採尿を受ける人に身体的にも精神的にも大きな負担を強いるものであることから,やむを得ない場合にのみ裁判所が令状を発付して許可を与えることになっています。

〈覚せい剤の所持と使用〉

Aさんは覚せい剤の所持と使用という2つの罪で逮捕されています。
この場合,どのように刑罰が科されるのでしょうか。
覚せい剤の所持と使用の罪は併合罪(刑法45条)として扱われます。
この場合,「その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期と」します。
そのため,もし覚せい剤の所持と使用の両方が起訴されると、最長で15年の懲役が科すことが可能となります。
ただし、よほど事件が重大でない限り、それほど長期の懲役刑が科されることは稀でしょう。

覚せい剤取締法違反事件逮捕された場合,身柄の拘束が長期に及ぶ可能性が高いです。
理由としては,覚せい剤の入手経緯を詳細に捜査する必要があることや、証拠となる覚せい剤自体が隠滅しやすいことなどが挙げられます。
そして,長期の身柄拘束を受けた場合,学校や仕事への復帰が難しくなります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,覚せい剤取締法違反事件の経験豊富な弁護士による,身柄解放も含めた最善のアドバイスを受けることができます。
ご家族などが逮捕された場合、最短でお申込み直後,遅くともお申込みから24時間以内に弁護士が直接本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」もご提供しています。
刑事事件に関するご相談は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお任せください。

初回法律相談:無料

違法捜査で不起訴や無罪に

2019-09-18

違法捜査で不起訴や無罪に

~ケース~
Aさんは兵庫県尼崎市内の繁華街を歩いていたところ、薬物の使用をうかがわせる挙動が認められるということで、警察官から職務質問を受けました。
Aさんは所持していた鞄の中身を見せるよう求められましたが、これを頑なに拒否しました。
すると、しびれを切らした警察官数人がAさんを地面に倒して押さえつけ、鞄を無理やり奪って中身を全て路上に出しました。
その中から覚せい剤が見つかったことから、Aさんは覚せい剤使用の疑いで現行犯逮捕されました。
その後、兵庫県尼崎東警察署にてAさんの同意のもと採尿が行われ、鑑定により尿から覚せい剤の成分が検出されたので、その旨を明らかにする鑑定書が作成されました。(フィクションです)

~覚せい剤使用罪とは?~

覚せい剤取締法第19条は、覚せい剤製造業者が製造のため使用する行為(1号)、覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者が施用する場合(2号)などを除き、「何人も、覚せい剤を使用してはならない」としています。
19条の規定に違反して覚せい剤を使用すると、10年以下の懲役に処せられます(覚せい剤取締法第41条の3第1項1号)。
医師や研究者ではないAさんには、覚せい剤取締法第19条1号~5号の事由はないと考えられます
また、Aさんの尿から覚せい剤の成分が検出されているので、覚せい剤を使用したことは疑いがなさそうです。

~覚せい剤が違法な捜査により得られたら~

ケースの捜査には、その適法性に疑いがある点がいくつかあります。
Aさんは薬物の使用をうかがわせる挙動が認められるという理由で、職務質問を受けています。
この職務質問を開始したこと自体は適法と判断される可能性が高いと思われますが、職務質問は原則として任意に基づくものであり(警察官職務執行法第2条3項参照)、それに付随する所持品検査も同様に考えられています。
そして、対象者の同意がない所持品検査について、判例は「必要性、緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度」でのみ許容されるとしています。
ケースは、数人の警察官がAさんを地面に押さえつけて鞄を奪取し、その中から覚せい剤を発見してこれを押収した、というものです。
まず、Aさんは明確に鞄の中身を見せることを拒絶していることから、所持品検査を許容していたとは到底言えません。
次に、警察官としては、鞄を見せるよう説得し続けるなど、他により穏当な手段をとることができたはずです。
そうすると、警察官の行為は本件において相当とされる限度を超えていると言えます。
そして、覚せい剤の陽性反応が示された旨の鑑定書も、上記のような捜査がなければ得られなかった可能性があります。
以上から、本件の捜査は違法と評価される余地があるでしょう。

~捜査の違法を主張し、不起訴や無罪を獲得~

判例において、違法収集証拠排除法則という法律に明記されていないルールが認められています。
それによると、「令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合」においては、その証拠の証拠能力が否定されることがあります。
証拠能力が否定されると、どれほどその証拠が有力な価値を有するものであっても、裁判で証拠として用いることができません。
そのことを懸念した検察官としては、有罪を立証するに足りる証拠が他にないとして不起訴処分を行う可能性があります。
そこで、弁護士の活動として、検察官に対して上記理由から不起訴処分をするよう働きかけることが考えられます。
また、もし起訴された場合は、同様の理由で裁判官に無罪判決を下すべきだと主張することが考えられます。

~まずは、弁護士と相談しましょう~

薬物事件の捜査においては、捜査に違法があるという理由で、不起訴処分無罪判決がなされることがあります。
覚せい剤使用事件につき、捜査の適法性に疑問がある場合は、弁護士から違法収集証拠排除法則の適用の可否について説明を受けましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が覚せい剤使用事件を起こし、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

初回法律相談:無料

« Older Entries Newer Entries »