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おとり捜査

2021-03-11

おとり捜査について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部が解説します。

警察官Xが覚せい剤取締法違反(譲り受けの罪)で逮捕されたBさんを取調べ中、Bさんから「博多に住むAから譲り受けた」との供述を得ました。その後、Xは、Aさんの覚せい剤密売に関する証拠の収集に努めましたが、決定的な証拠を得ることはできませんでした。そこで、Xは、Bさんの知人になりすまし、Aさんに「Bさんから紹介してもらった」「覚せい剤を売ってくれないか」と持ちかけました。Aさんは一度断ったものの、Xから執拗に覚せい剤を要求され、取引の値段も上げられたことからこれに応じることにしました。そして、Aさんは待ち合わせ場所に行ったところ、Xが現れ、Xから「シャブは?」と言われたため約束通り覚せい剤をXに渡したところ、Xから「警察だ」と言われ、その場で覚せい剤取締法違反(譲り渡しの罪)で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~覚せい剤取締法違反~

覚せい取締法41条の2第1項では、

 覚せい剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、譲り受けた者

を「10年以下の懲役」に処するとしています。また、その第2項では営利の目的でこれらの行為をした者を「1年以上の有期懲役」に処し、又は情状により「1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金」に処するとしてます。

~おとり捜査~

おとり捜査とは、捜査機関(警察など)又はその依頼を受けた捜査協力者が、その身分や意図を相手方に秘し(隠し)て犯罪を実行するよう働きかけ、相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところで現行犯逮捕等により検挙する捜査手法をいいます。

ところで、刑事手続について定めた刑事訴訟法にはおとり捜査についての規定がありません。取調べ、捜索、差押え、逮捕など何らかの捜査をするにあたっては必ずその法的根拠が必要です。では、おとり捜査はどうでしょうか?
この点、最高裁判所(最判平16.7.12)は、

「少なくとも、直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において、通常の捜査方法のみでは犯罪の摘発が困難である場合に、機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象にして行われるおとり捜査は、刑訴法197条1項に基づく任意捜査として許容される。」

としています。

※刑事訴訟法197条1項
 捜査については、その目的を達成するために必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律に定めのある場合でなければ、これをすることができない。

~任意捜査であれば無制約に認められるか?~

おとり捜査が任意捜査であることはお分かりいただけたと思います。しかし、任意捜査であるからといって無制約に何でもかんでも許されるわけではありません。任意捜査であっても、強制捜査の場合と同様、人々の人権を侵害するおそれは十分あるのです。そこで、最高裁は、「必要性」と「相当性」という基準を用いて任意捜査にも歯止めをかけようとしています。

おとり捜査の「必要性」は認められると考えられています。それは、特に覚せい剤事犯の場合、密行性が高いため(被害者、目撃者がおらず密室で行われることが多い)、通常の捜査手法では摘発は困難と考えられるからです。

この点、おとり捜査は「犯意誘発型」と「機会提供型」に分かれ、犯意誘発型は「相当性」が認められるが、「機会提供型」は認められないと考えられています。
「犯意誘発型」とは、もとから犯罪を犯す意思のない者に対して積極的に働きかけを行って犯意を誘発するおとり捜査、「機会提供型」は、もともと犯罪を犯す意思のある者に犯行の機会を提供するおとり捜査のことをいいます。
「犯意誘発型」の場合、犯罪を防止するべき国家(捜査機関)が犯罪を作りだしている点、適正手続きの原則を侵害している点から「相当性」が認められず違法とされているのに対し、「機会提供型」の場合は、犯罪を犯す意思のある者に機会を提供したにすぎず、国家が犯罪を作出したとはいえないことから「相当性」が認められ適法と考えられています。

本件は、Aさんが取引を断っているにもかかわらず、警察官Xから執拗に取引を持ちかけられていることに鑑みれば「犯意誘発型」に当たるとも考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件を起こしお困りの方は、まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスを受け付けております。

覚せい剤所持事件の所持品検査

2021-03-04

覚せい剤の所持品検査について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

福岡県北九州市に住むAさんは、深夜歩いていたところ、福岡県小倉北警察署の警察官Pに呼び止められ、職務質問を受けた。
Pは、Aさんが血走った目でしどろもどろになりながら受け答えをし、異様な発汗等がみられたことから、Aさんが何らかの薬物を使用している可能性があると考えた。
Pは、Aさんが薬物を所持している可能性があると思料したことから、Aさんにバッグの中身を見せるように言った。
Aさんは「いやだ、もう帰らせてもらう」と言って帰ろうとしたため、PはAの進路をふさぎ、無理矢理Aのバッグを開け、中から粉末入りの小袋と注射器を取り出した。
その後、小袋内の粉末が覚せい剤であると判明したため、Aさんは覚せい剤所持の被疑事実で福岡県小倉北警察署に逮捕された。
(フィクションです)

~職務質問に伴う所持品検査の適法性~

上記の事例でAさんは、職務質問をきっかけに所持品検査を受け、覚せい剤所持の容疑で逮捕されています。

職務質問については、警察官職務執行法(以下、警職法)2条1項にもとづいてなされる活動であり、厳密には、捜査ではなく行政警察活動として位置づけられています。
職務質問は任意で行われることが原則ですが、必要かつ相当であるといえる場合、一定の有形力を行使することも認められています。

確かに、上記の警職法2条1項は「停止させて質問することができる」と規定されているにとどまるため、職務質問に伴う所持品検査については認められないとも思えます。
もっとも、職務質問そのものの実効性を確保する必要があるため、職務質問に伴う所持品検査についても、強制にわたらない限り許容されると考えられています。

上記の事例においては、警察官Pは無理矢理Aのバッグを開けていることから、強制的に所持品検査を行っているとも思えます。
もっとも、ここでいう「強制にわたらない限り」とは、単に意思に反して所持品検査を行うことをいうのでなく、所持品検査を行う必要性、緊急性を考慮して具体的状況の下で相当といえることを指します。

上記の事例においては、Aさんは血走った目をして、しどろもどろの受け答えをしており、異様な発汗等の薬物使用者特有の症状が見られています。
そのため、Aさんについて、何らかの薬物を使用していることについての十分な嫌疑あるといえ、所持品検査を行う必要性があると考えられます。

また、仮に、Aさんが薬物を使用していたり現に薬物を所有していた場合には、一度Aさんを家に帰すと、容易に証拠である薬物を破棄することが可能となります。
そのため、職務質問の現場において、所持品検査を行うことについての緊急性もあるといえます。

もっとも、上記の事例においてPは、Aさんが所持品検査を明確に拒否しているにもかかわらず、無理矢理にAさんのバッグを開封し、中から粉末入りの小袋と注射器を取り出しています。
そのため、このようなPの行為が相当といえるかどうかについては争いがあると考えられます。

また、仮に、Aさんが薬物を使用していたり現に薬物を所有していた場合には、一度Aさんを家に帰すと、容易に証拠である薬物を破棄することが可能となります。
そのため、職務質問の現場において、所持品検査を行うことについての緊急性もあると考えられます。

もっとも、上記の事例においてPは、Aさんが所持品検査を明確に拒否しているにもかかわらず、抵抗するAを振り払って、無理矢理にAさんのバッグを開封し、中から粉末入りの小袋と注射器を取り出しています。
そのため、このようなPの行為が相当といえるかどうかについては争いがあると考えられます。

仮にPの上記行為が違法であるといえる場合、Pの行為によって獲得した証拠品である覚せい剤及び注射器の証拠能力が否定される可能性もあります。
そのため、Aさんとしては弁護士を選任して、上記のPによる所持品検査が違法であることを警察や検察に主張する必要があります。
そうすれば、検察としては公判を維持することが難しいと考え、Aさんを不起訴処分にする可能性もあると考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は、刑事事件を専門とした弁護士であり、職務質問をきっかけとした逮捕や取調べのご相談も受け付けています。覚せい剤などの薬物事件や、職務質問についてお悩みの方は、弊所の弁護士までご相談ください。まずは、0120-631-881までお気軽にお電話ください。

覚せい剤と全部執行猶予・一部執行猶予 

2021-02-25

覚せい剤と全部執行猶予・一部執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

Aさんは家宅捜索を受け、覚せい剤を所持していたとして覚せい剤取締法(所持罪)で逮捕され、その後起訴されました。Aさんは、覚せい剤取締法違反(使用罪)で服役し、出所してから1年程度しか経過しておらず、執行猶予を獲得することは難しいと思っていたところ、弁護人から一部執行猶予の獲得を目指そうと言われました。
(フィクションです)

~執行猶予とは~

執行猶予とは、その罪で有罪ではあるが、言い渡された刑(懲役刑、罰金刑)の執行を一定期間猶予する(見送る)ことをいいます。そして、執行猶予には「全部執行猶予」と「一部執行猶予」の2種類があります。

~全部執行猶予を受けるための要件~

全部執行猶予を受けるための要件は、刑法25条1項に規定されています。

刑法25条1項
次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる

1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を受けた日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

つまり、執行猶予を受けるには

1 3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けること
2 上記1号、あるいは2号に該当すること
3 (執行猶予付き判決を言い渡すのが相当と認められる)情状があること

が必要ということになります。

では、Aさんは今回の裁判(判決)で全部の執行猶予判決を受けることができるのでしょうか?

まず、1号の「前に禁錮以上の刑に処せられた」とは、判決前に、禁錮以上(禁錮、懲役、死刑)の刑の言渡しを受け、その刑が確定したことをいいます。なお、刑には実刑のほか執行猶予も含みます。
この点、Aさんは、判決前に、懲役2年の実刑判決を受け服役していますから、「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない」とはいえず1号にはあたりません。つまり、Aさんは2号の「前に禁錮以上の刑に処せられた」者ということができますが、判決時には「執行を終わった日」、つまり刑の服役期間が満了した日から5年を経過していませんから、2号にもあたりません。

以上から、Aさんは全部の執行猶予判決を受けることはできません。

~一部執行猶予判決を受けるための要件~

薬物事件を犯した者に対する一部執行猶予については、「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律(以下「法律」)」に規定があります。一部執行猶予判決を受けるには次の要件が必要です(法律3条)。

1 薬物使用等の罪を犯したこと
2 本件で、1の罪又は1の罪及び他の罪について3年以下の懲役又禁錮の判決の言い渡しを受けること
3 刑事施設における処遇に引き続き社会内において規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが、再び犯罪をすることを防ぐために「必要」であり、かつ、「相当」であること

なお、薬物使用等の罪については、他の犯罪と異なり、前科の要件は必要とされていません。つまり、Aさんのような累犯前科を持つ方であっても、一部執行猶予判決の対象となり得ます。

「薬物使用等の罪」とは、
・大麻の所持又はその未遂罪
・覚せい剤の所持、使用等又はこれらの罪の未遂罪
・麻薬及び向精神薬取締法の所持罪等
などがあります。

では、Aさんは一部執行猶予判決を受けることができるのでしょうか?
まず、Aさんは今回、覚せい剤所持罪で起訴されていますから「1」にはあたります。また、今回の判決で3年以下の懲役を受けることができれば「2」にもあたるでしょう。
問題は「3」にあたるかです。この点については、裁判でAさんに一部執行猶予判決を付するための「必要性」、「相当性」があるということを的確に立証していく必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、覚せい剤事件をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件で全部執行猶予、一部執行猶予獲得をお考えの方は、フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。

大麻取締法違反で勾留阻止

2021-02-18

Aさんは、自宅で大麻を不法に所持していた大麻取締法違反の疑いで逮捕されました。Aさんは、自己使用目的で所持していただけで、また大麻取締法違反に問われるのも今回が初めてでした。
Aさんが大麻取締法違反の容疑で逮捕されたことを知ったのAさんの妻は、一刻も早くAさんを釈放してもらうため、刑事事件に強い法律事務所を訪れ、弁護士に相談をすることにした。
(事実を基にしたフィクションです)

~大麻取締法違反での身柄拘束~

大麻取締法は、無許可・無免許での大麻の栽培、輸出入、所持、譲渡、譲受等について罰則を設けて規制しています。
上記のケースのAさんのように、大麻を単純所持していた場合、法定刑は5年以下の懲役となります。

犯罪白書の統計によると、大麻取締法違反を犯した場合、逮捕・勾留される割合は約6割となっており、窃盗罪や傷害罪といった犯罪と比べると、逮捕・勾留される確率は高いです。
というのも、大麻取締法違反といった薬物犯罪は、釈放してしまうと売人や薬物関係の知り合いなどに逃亡や証拠隠滅の指示をすることを危惧され、逮捕によって身柄拘束をされる確率が高くなっているのだと考えられます。

刑事事件の被疑者として逮捕されてしまうと、逮捕時から48時間以内に身柄を釈放するか検察官に送致するかの決定がされます。
検察官に送致された場合、24時間以内に検察官は被疑者を勾留するか否かを決定し、勾留する場合には、裁判所に対して勾留請求を行います。
勾留請求を受けた裁判所は、被疑者から直接話を聞いた上で(勾留質問といいます)、最終的に勾留するか否かの決定をくだします。

~早期身柄解放活動~

このように、逮捕されてから72時間以内に勾留されるか否かが決定されます。
そのため、逮捕後はできるだけ早く弁護士が身柄解放に向けた活動をすることが大切です。

逮捕直後に弁護士が接見をし、被疑者本人に事情を聞くとともに(大麻所持の経緯や所持の量など)、被疑者にとって有利な証拠(身元引受人の存在など)を集めることによって、被疑者に逃亡の恐れがないこと、証拠隠滅のおそれがないことなどを検察官や裁判官に説明し、長期間の身柄拘束である勾留を防ぐ活動をすることができます。
また、大麻所持の事案では、職務質問から現行犯逮捕されるケースが多いですが、その逮捕手続に違法がないかどうかをチェックし、もし違法な点があれば、捜査機関に抗議し、裁判所にその違法性を認めてもらうよう主張していくことも可能です。

上記のような弁護活動をすることで、身柄拘束の確率が高い大麻取締法違反であっても、勾留阻止の可能性を高めることに繋がります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は、刑事事件に特化した弁護活動を日頃行っておりますので、大麻取締法違反についての刑事弁護活動も多数承っております。
大麻取締法違反に問われてお困りの方、勾留阻止に向けた弁護活動をご希望の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士までご相談ください。

覚せい剤と保釈

2021-02-11

覚せい剤と保釈について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

Aさん(23歳)は覚せい剤取締法違反(自己使用罪)で逮捕され,その後,起訴されてしまいました。Aさんのご両親は,Aさんの体調のことなどが心配になって保釈請求を検討中です。そこで,Aさんのご両親は,保釈請求のため刑事事件専門の弁護士に相談しました。
(フィクションです)

~保釈~

保釈とは,被告人(裁判にかけられた人)に対する勾留の執行(効力)を停止して,その身柄拘束を解くことをいいます。ここでは,保釈請求はどのタイミングでできるのか,保釈されるのはどんな場合か,保釈のメリット,注意点についてご紹介します。

上記で述べたとおり,保釈は被告人のために認められた制度です。したがって,保釈請求は,身柄を拘束された方が被疑者から被告人に変わる瞬間,つまり,

起訴後

に行うことができます。
ただし,保釈請求したからといって,直ちに釈放されるわけではありません。請求を受けた裁判官,裁判所が請求を認めるべきか否か判断するのに時間を要しますし,仮に請求を認めたとしても,検察官から反対意見が出ればさらに時間を要することになります。したがって,なるべく被告人を早く釈放したい場合は,起訴されたと同時に保釈請求を出すという方法も考えられます。

刑事訴訟法は,保釈される場合として「権利保釈」「裁量保釈」「職権保釈」を規定しています。

*権利保釈*

刑事訴訟法89条は,次の場合を除いては,保釈を許可することを「原則」としました。これを「権利保釈」といいます。

1号 被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき
2号 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪判決の宣告を受けたことがあるとき
3号 被告人が常習として懲役3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したおのであるとき
4号 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
5号 被告人が,被害者その他の事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき
6号 被告人の氏名又は住居が分からないとき

*裁量保釈*

上記1号から6号までに当たる事由がある場合でも,裁判所(又は裁判官)は,保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅する恐れの程度のほか,身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上,経済上,社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し,適当と認めるときは,職権で保釈を許可することができます。これを「裁量保釈」といいます。

保釈のメリットは、

・精神的,肉体的負担の軽減
→留置場,拘置所暮らしの生活は,多大な精神的,肉体的負担を伴います。保釈されれば,これらの負担から解放されます。

・様々な処分を免れる
→早期に釈放されることにより,会社の懲戒処分(解雇,減給等),学校の退学処分等を免れることができるかもしれません。

・家族が安心する
→何より,ご家族が安心されます。ご家族が留置場等へ面会に行く手間も省けます。

・裁判に向けた十分な打合せができる
→いつでも弁護士に相談できるわけですし,釈放されているわけですから何より落ち着いて打合せを行うことができます。

他方で、デメリットは、

・保釈保証金を準備しなければいけない
→釈放には保釈保証金の納付が必要です。事案にもよりますが,最低でも100万円から150万円は必要で,決して安い金額とはいえません。

・保釈につき様々な条件が付けられる
→裁判に出廷することはもちろんですが,住所を変えるとき,数日間の旅行をするときなどは予め裁判所の許可が必要となります。条件を守らなければ,保釈保証金を没収されます。

・再び収容される
→はじめに述べたように,保釈は勾留の効力は一時的に「停止」するにすぎません。したがって,条件を守らなければ,保釈保証金を没収うされるほか,再び留置場等へ収容されることになります。

を挙げることができます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件で保釈をご検討中の方は,ぜひ一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。0120-631-881で,24時間,無料法律相談,初回接見サービスを受け付けております。

薬物事件における没収  

2021-02-04

薬物事件における没収について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部が解説します。   

Aさんは,覚せい剤取締法違反(所持の罪)で逮捕,起訴され、札幌地方裁判所で裁判を受け,「懲役1年6月 3年間執行猶予 覚せい剤約0.5グラムを没収する」との判決の言い渡しを受けました。Aさんは判決後,弁護士に「没収」とは何か尋ねました。
 (フィクションです)

~ はじめに ~

今回は,「没収」」という日頃聞き慣れない言葉について解説いたします。薬物事件では特に重要な言葉ですので,ぜひ参考にされてください。

~ 没収とは ~

没収とは,物の所有権を剥奪して国庫に帰属させる財産刑のことをいいます。
刑罰の種類について定めた刑法9条は,「死刑,懲役,禁錮,罰金,拘留及び科料を主刑とし,没収を付加刑とする。」としており,没収を刑罰の一種としています。
ここでいう「主刑」とは独立に言い渡すことができる刑罰のことで,「付加刑」とは主刑が言い渡された場合にそれに付加してのみ言い渡すことができる刑罰のことをいいます。没収は付加刑ですから,判決で没収だけを言い渡すことはできず,必ず懲役や罰金等の他の刑罰と一緒に言い渡されます。

~ 没収の目的 ~

没収は刑罰の一種ですから,制裁的の意味合いがあることは間違いありません。しかし,それよりもむしろ,社会への危険・害悪の防止,犯罪組織への利得還元の防止など保安処分としての意味合いの方が濃いとも言われています。
国によって覚せい剤を没収してしまわなければ,再びそれを使うなどする人がいて社会に危険・害悪をもたらしかねないからそれを没収してしまおうというわけです。

* 押収との違い *

没収とよく混同される言葉として「押収」があります。「押収」とは,捜査機関が,対象者から任意で物の提出を受けたり,強制的に物を差し押さえたりする場合のことです。他方,「没収」は刑罰の一種で,裁判官しか言い渡すとこができません。また,「押収」は一時的に物の占有を取得したにすぎず,所有権を放棄しないかぎりのちのち還付(返却)されますが,「没収」は所有権を剥奪することなので永久的に手元に戻ってくることはありません。
「没収」は法的には「押収」されていないものでも対象とすることはできますが,実務では,「押収」されているものに限り「没収」の対象としているようです。

~ 「没収」には「必要的没収」と「任意的没収」 ~

「没収」には、必ず没収すべき「必要的没収」と、裁判官の裁量に委ねられる「任意的没収」の2つに分けられます。

= 必要的没収 =

必要的没収については刑法、又は特別法に規定されています。刑法に規定されている必要的没収は、賄賂の没収(刑法197条の5)です。薬物事件に関するものとしては、

・麻薬(麻薬及び向精神薬取締法69条の3第1項)
・大麻(大麻取締法24条の5第1項)
・覚せい剤(覚せい剤取締法41の8第1項)

などがあります。
これらの者は、必ず没収することとしないと、新たな犯罪を生み出すことにもなりかねず社会に害悪をもたらす危険が大きいことから必要的没収とされています。必要的没収を看過してこれを科さない判決が言い渡された場合は、法令適用の誤りとして控訴理由となります(刑事訴訟法380条)。

= 任意的没収 =

任意的没収については刑法19条に規定されています。

刑法19条1項 次に掲げる物は,没収することができる。
1号 犯罪行為を組成した物(偽造文書行使罪における偽造文書,賭博罪における賭金,無免許運転における自動車など)
2号 犯罪行為の用に供し,又は供しようとした物(文書偽造の用に供した偽造の印章,殺人に用いた日本刀,住居侵入・窃盗のために使用した懐中電灯など)
3号 犯罪行為によって生じ,若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物(犯罪によって生じ→通貨偽造罪における偽造通貨,文書偽造罪における偽造文書など/これによって得た物→賭博に勝って得た財物,財産犯罪によって領得した財物など/犯罪行為の報酬として得たもの→殺人の依頼に応じて殺人を行ったことによって得た報酬金,窃盗幇助の謝礼として得た財物など)
4号 前号に掲げる物の対価として得た物(盗品等の売却代金,窃盗犯人が盗んだ現金で買ったものなど)

1号によると、無免許運転した際の自動車も没収される可能性はあるわけですが、保管のため(保管は検察庁がすることになるかと思います)のスペースを確保することが難しいと思われますし、手間も労力がかかります。また、日常生活の交通手段ともなっており、免許停止期間や欠格期間が経過して免許を取得すれば再び運転することができるわけですから、実務では没収されることはまずありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,薬物事件をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件を起こしお困りの方は,まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間,無料法律相談,初回接見サービスを受け付けております。

覚せい剤所持の罪、薬物事件の特徴

2021-01-28

覚せい剤所持の罪、薬物事件の特徴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。

密売人のAさんは、休日、自宅にいたところ、突然、警察署の捜索(ガサ)を受け、自宅から覚せい剤約30グラムを押収されてしまいました。そして、Aさんは覚せい剤取締法違反(営利目的所持の罪)で逮捕されてしまいました。Aさんから依頼を受けた弁護士がAさんと接見しました。
(フィクションです。)

~ 覚せい剤取締法 ~

覚せい剤取締法で禁止している覚せい剤の所持には、①単純(非営利目的)所持と②営利目的所持の2種類があります。

①の法定刑は「10年以下の懲役」です。他方、②の法定刑は「1年以上の有期懲役又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金」で、①より非常に重たい罪であることが分かります。

* 所持とは *

「所持」とは、「事実上の実力支配関係」とも言われています。すなわち、自分が直接手にしている必要はなく、社会通念上本人の実力支配、管理の及ぶ場所に保管していればいいとされています。ある日、突然、警察のガサが入り、自宅部屋のタンス内から覚せい剤を押収されたとき、覚せい剤(所持の罪)で逮捕されるのはこのためです。

* 営利目的とは *

営利目的とは、覚せい剤を所持する動機が財産上の利益を得る、ないしはこれを確保する目的に出たことをいうとされています。本人が営利目的を有していたかどうかは、専ら本人の内心に関わる事情ですから、以下のような客観的事情から推認されます。

① 覚せい剤を所持する量
  覚せい剤を所持する量が多ければ、それだけ他人に売っている疑いが高くなり、営利目的が疑われます。
② 所持の態様 
  ガサ時に、多量のチャック付きポリ袋(パケ)に入った覚せい剤が押収されたなどという場合も、他人に売っている疑いが高くなり、営利目的が疑われます。
③ 覚せい剤以外の押収品
  通常、覚せい剤はパケに2~3回分の使用量を入れて売られます。また、その際、使用道具である注射器も付けれれることがあります。そのため、多量のパケ、注射 器(未使用のもの)が押収された場合は、営利目柄が疑われます。その他、覚せい剤を小分けする量を計るなどする電子計り、小分けに使うピンセット、スプーン等が 押収された場合も同様です。その他、密売事実を裏付ける購入者リスト、メモ、メール・電話履歴等が押収され、そこに密売の形跡が認められる場合は営利目的を疑わ れるでしょう。

~ 薬物事件の特徴 ~ 

覚せい剤事件をはじめとする薬物事件の場合、他の刑事事件と異なり、以下の特徴があると言われています。

= 示談できる相手がいない =

覚せい剤事件をはじめとする薬物事件にかかる犯罪は被害者不在の犯罪です。被害者がいる刑事事件では被害者との示談→不起訴処分・執行猶予獲得という絵を描きやすいのですが、薬物事件の場合は被害者が存在しないためそうはいきません。

= 高い確率で逮捕・勾留される =

薬物事件の場合、覚せい剤の入手(輸入等)→売却→譲り受け(譲り渡し)→使用という一連の流れを踏み、その過程には多くの関係者が関与しています。にもかかわらず、その関与者全員が検挙されることは稀です。したがって、たとえ特定の犯人を検挙できたとしても、他の未検挙者と通謀するなどして罪証隠滅行為をすると疑われてしまい、逮捕・勾留される可能性が高いのです。

= 高い確率で接見禁止も =

そのため、薬物事件では、勾留によっては罪証隠滅行為を防止できないとして接見禁止決定を出されることが多いと思われます。接見禁止決定とは、弁護人あるいは弁護人となろうとする者以外の者との接見を禁止する決定を言います。

~ 薬物事件における弁護活動 ~

上記の特徴から、示談交渉は無意味です。そこで、釈放に向けた弁護活動(保釈請求等)が主となります。その他、執行猶予や一部執行猶予・減軽獲得のため、再犯防止に向けた対策を立案して実行に移せるよう手助けを行います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,薬物事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。

薬物事件(使用の罪)で保釈なら

2021-01-21

薬物事件と保釈について、弁護士法人あいち総合法律事務所大阪支部が解説します。

Aさんは、同区内の自宅アパートで、覚せい剤を注射する方法で使用しました。しかし、翌日、Aさん宅に警察の捜索が入り、尿の任意提出を求められ提出したところ、尿から覚せい剤成分が検出されたことから、Aさんは覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕されてしまいました。Aさんは勾留され、国選弁護人が選任されましたが、国選弁護人の弁護活動には満足していませんでした。そして、10日間の勾留期間を経た後、Aさんは覚せい剤取締法違反で起訴されてしまいました。そこで、Aさんの父親は、国選弁護人から私選弁護人への切り替えを検討しており、Aさんを保釈してもらいたいと考えています。
(フィクションです)

~ 保釈とは ~

保釈とは、被告人(裁判にかけられた人)に対する勾留の執行(効力)を停止して、その身柄拘束を解くことをいいます。「被告人」とは起訴され、刑事裁判にかけられた人をいいますから、あくまで保釈請求は

起訴後

しかすることができません。

~ 保釈のメリットと保釈されないデメリット ~

保釈のメリットとしては以下の点が挙げられます。

① 精神的,肉体的負担の軽減
  留置場,拘置所暮らしの生活は,多大な精神的,肉体的負担を伴います。保釈されれば,これらの負担から解放されます。

② 様々な処分を免れる
  早期に釈放されることにより,会社の懲戒処分(解雇,減給等),学校の退学処分等を免れることができるかもしれません。

③ 家族が安心する
  何より,ご家族が安心されます。ご家族が留置場等へ面会に行く手間も省けます。

④ 裁判に向けた十分な打合せができる
  釈放されていますからいつでも弁護士に相談できるわけですし,何より落ち着いて、時間をかけて打合せを行うことができます。

他方で、保釈されないデメリットとしては、上記の真逆のことがいえるでしょう。①精神的、肉体的負担は継続しますし、②身柄拘束が継続すれば職場や学校への復帰も難しくなるかもしれません。よって、仮に、裁判で執行猶予判決を得たとしても、その後の社会復帰が難しくなるかもしれません。また、③ご家族の不安・負担は継続します。④裁判に向けた打合せも、保釈された場合よりは不十分なものとなるでしょう。

~ 保釈の注意点 ~

保釈は、あくまで勾留の停止にすぎません(勾留の効力が消滅したわけではない)。また、メリットだけではありません。以下の点に注意する必要があります。

① 多額の保釈保証金が必要となる
  保釈保証金の額は、被告人の認否、事案の内容等に鑑みて裁判官(裁判所)が決めます(日産のカルロスゴーン社長が保釈保証金1億円を納付したことはニュースにな りました)。決して安い金額ではなく、通常の簡易な事件でさえ100万円~150万円を準備する必要があります。

② 保釈条件を遵守する必要がある
  保釈を許可するにあたっては
・裁判所から呼び出された場合は必ず出頭する
・住居地を変更するには裁判所の許可を受ける
・被害者への連絡は弁護人を介する
・被害者、目撃者、共犯者などの事件関係者と接触しない
・薬物に近寄らない
などの条件を付けられます。全くフリーな状態で釈放されるわけではありません。

③ 保釈保証金は没収され、収容されるおそれがある
  決められた条件を守らなければ納付した保釈保証金は没収され、再び留置施設等に収容されるおそれがあります。

~ 薬物事件(使用の罪)で保釈を目指すなら ~

薬物事件の使用の罪の場合、主要となる証拠は主に被疑者・被告人の尿と尿に関する鑑定書です。しかし、尿はすでに起訴前に押収されていることが通常ですし、鑑定書は警察(科捜研)が作成しますから、保釈後ともに罪証隠滅の対象とはなり得ません。つまり、薬物事件の使用の罪の場合、起訴後の罪証隠滅のおそれはほとんどないと言っても過言ではありません。したがって、薬物事件の使用の罪で保釈を目指すなら、

逃亡のおそれ

をどう担保するかがまず鍵となりそうです。そのためには、

適切な身柄引受人を確保する

ことが必要ですが、薬物に対する依存度の程度によっては

専門の施設に入所、入院する

ことも検討した方がいい場合もあります。
あとは、薬物事件に限らず、保釈を許可すべき必要性を裁判所に訴えていく必要があるでしょう。たとえば、

・持病があり、特定の病院へ通院・入院する必要があること
・要介護者がおり、被告人の援助が必要なこと
・家族にとって被告人の経済的支援が必要なこと

などが挙げられます。

こうした事情を効果的に主張していくためには、弁護士の力が不可欠です。お困りの方は弊所の弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。

刑事裁判の確定とは

2021-01-14

Aさんは、覚せい剤取締法違反の罪を犯した罪で懲役3年の実刑判決を受けてしまいました。Aさんとしては、有罪であることは認めつつも、刑の重さ(量刑)に不満を抱いており、控訴したいと考えています。Aさんは刑が確定してしまう前に控訴しなければなりません。

~ 刑事裁判のその後 ~

日本では三審制がとられており、第一審が終わっても、不服があれば「第一審→第二審→第三審」と続いていくことはご存知かと思います。第一審において「有罪」とされた場合、その後、どのような経過を辿るのかご存知でしょうか?事例では「控訴」「確定」という言葉が出てきましたから、その言葉の意味を中心に解説していきたいと思います。

~ 控訴とは ~

控訴とは、簡易裁判所や地方裁判所から上級の高等裁判所へ上訴することをいいます。自分は無罪と考えているが有罪と認定された(事実誤認)、有罪であることは認めるが刑の種類や重さに不満があること(量刑不当)などを理由に控訴することができます。なお、控訴できるのは裁判を受けた被告人だけと思われている方もおられるかもしれませんが、訴追する側の検察官も控訴することができます。したがって、被告人側、検察側双方が控訴するというケースもよくあることです。

* 控訴期間には期限がある *

控訴期間は14日間です。そして、その期間の起算日は、判決言い渡し日の翌日です。
たとえば、平成31年4月1日に「懲役3年」との判決の言い渡しがあったとします。すると、控訴期間の起算日は4月2日ですからその日を含めた14日間が控訴期間ということになります。したがって、4月15日が控訴期限日で、その翌日の4月16日が確定日ということになります。
では、4月15日が土曜日だった場合はどうなるでしょうか?この場合、控訴期間の末日が土日祝日、12月29日から31日、1月2日、3日の場合は期間に算入しないとうい決まりがありますので、翌月曜日の4月17日が控訴期限日で、その翌日の4月18日が確定日となります。

~ 確定とは ~

確定とは、判決の内容に対しこれ以上不服申し立てをすることができなくなった状態のことをいいます。被告側、検察側が上訴することなく、上訴期間(14日間)が経過して裁判が確定した場合を「自然確定」といいます。なぜ、自然というのかといいますと、自然確定以外の事由、すなわち、当事者(被告人、検察官)の意思で確定することができるからです。つまり、被告人、検察官は上訴権を放棄したり、すでにした上訴を「取り下げ」たりすることができます。一方が上訴権を放棄したり、上訴を取り下げれば、他方が上訴権を放棄したり、上訴を取り下げた時点で裁判が確定します。

* 確定したらどうなるの? *

刑が確定すると、刑の執行がはじまります。死刑,懲役,禁錮,拘留の場合,身柄を拘束されている方は、そのまま収容施設で刑に服することになります。他方、在宅のまま刑が確定した場合は、検察庁から出頭の要請を受けます。そして、検察庁に出頭したのち、拘置所などに収容されます。ここで出頭しなかった場合は、収容状という令状によって強制的に身柄を拘束されます。執行猶予付き判決を受けた方は,確定日から刑の猶予期間がはじまります。

罰金,科料(1万円未満)の場合は,判決の言い渡しと同時に釈放されています。そして,刑が確定すると罰金,科料を納付しなければなりません。ただし,仮納付の裁判がついた場合は,刑の確定を待たずとも,罰金,科料を納付することができます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は、まずは、0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの受け付けを行っております。

薬物事件における違法な所持品検査

2021-01-07

薬物事件における違法な所持品検査について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

~今回の事件~

無職のAさんは、東京都港区の路上に立っていた覚せい剤の密売人から、自分で使用するための覚せい剤を購入しました。
Aさんは購入した覚せい剤をリュックサックに隠して、近くにある地下鉄の駅を目指して歩き始めましたが、しばらくして警視庁赤坂警察署の警察官2名に職務質問されたのです。
警察官から「リュックサックの中を見せてくれ。」と要求されたAさんは、この要求を「何もやましい物は入っていないので嫌です。」と拒みました。
しかし警察官はしつこくAさんにリュックサックの中身を見せるように要求してきたのです。
そのためAさんが警察官から離れようとしたところ、1人の警察官がAさんの両手を掴み、その隙にもう一人の警察官がリュックサックのチャックを勝手に開けてリュックサックの中をまさぐり、密売人から購入した覚せい剤を取り出したのです。
Aさんは、簡易鑑定の後に、その場で覚せい剤取締法(所持)違反現行犯逮捕されてしまいました。(フィクションです。)

~所持品検査~

所持品検査は、職務質問の効果をあげるうえで、必要性や有効性が認められるならば、職務質問に付随する行為として行うことができるとされています。
職務質問については、警察官職務執行法(警職法)で以下の様に規定されています。

警職法 第2条1項 質問
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者~を停止させて質問することができる。

ただし、職務質問は原則として対象者の同意がなければ行えず、所持品検査についても同様とされています。
その点において、令状を取得して強制的に行う捜索差押えとは区別されなければなりません。

~警察比例の原則~

警察活動には、警察比例の原則というものがあります。
警察比例の原則とは、「警察活動は、必要性に見合った相当なものでなければならない」とする原則のことです。
所持品検査も例外ではなく、警察比例の原則に従わなければなりません。
つまり、所持品検査には「必要性」と「相当性」が求められます。
所持品捜査の「必要性」や「相当性」には、明確な基準はなく、具体的状況の下で判断されるとされています。

~違法な所持品検査~

所持品検査が必要ではなかったり、相当ではなかったりする場合、つまり警察比例の原則に反するような違法な所持品検査であるときは、その後の刑事手続きにも影響が及ぶことがあります。
例えば、違法な所持品検査によって、覚せい剤が発見され、覚せい剤取締法(所持)違反現行犯逮捕された場合、違法に収集された覚せい剤は証拠として認められないことがあります。
その結果、有罪を立証するに足りる証拠がなく、無罪判決が言い渡されることもあるのです。
この証拠に関するルールは、法律に定められているものではありませんが、裁判例において当然のものとして扱われています。

~薬物事件のときの弁護活動~

覚せい剤取締法違反等の薬物事件で警察の捜査を受ける方のほとんどは、証拠隠滅や逃走等のおそれを理由に、逮捕勾留といった身体拘束を受けてしまいます。
そこで、ご家族の方から弁護士初回接見の依頼をすることをおすすめします。
初回接見とは、弁護士が、逮捕されてしまった方のもとに面会(接見)に行くサービスのことです。
弁護士は、立会人無しで逮捕されてしまった方と話し合うことができるので、事件に関して伝えたいことを正直に話すことができます。
また、今後の取調べで自分に不利なことにならないような対応の仕方を伝えることもできます。

今回の事例では、もはや捜索・差押えに等しい捜査が行われているとして、所持品検査が違法となる可能性があります。
弁護士は、そのような違法な捜査活動に対応できるスペシャリストです。
逮捕されてしまった方との接見をもとに、所持品検査が違法であったという証拠を集め、釈放の働きかけや無罪の主張をすることができるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に強い弁護士無料法律相談初回接見サービスをおこなっております。
無料法律相談や初回接見サービスの予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、東京都港区薬物事件など、刑事事件でお困りの方はお気軽にお問い合わせください。

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