国選弁護と私選弁護の違い
1 被疑者国選弁護人が付かない場合
(1)在宅事件の場合
被疑者国選弁護人制度の対象となるのは、少なくとも「勾留を請求された被疑者」(刑事訴訟法37条の2第1項、2項)でなければなりません。
したがって、逮捕されて勾留を請求されるまでは国選弁護人は付きません。
身体拘束されずに捜査が進められる事件を在宅事件といいますが、在宅事件の場合には、捜査は進展しているのに国選の弁護人は付けることができないということになります。
弁護人が付いていない状態で捜査が進むことは、後々の裁判において不利益を被る可能性が高くなります。
いまだ逮捕されていないからといって安心せず、早い段階から弁護人を付けることが大切です。
例えば、示談交渉を進めていくことで、逮捕されるリスクを少なくしたり、被害届の取下げをしてもらって刑事事件化するのを回避することができたりします。
(2)逮捕の段階(勾留前の段階)
逮捕された直後も、勾留請求はされていないので、被疑者国選弁護人は請求できないということになります。
しかし、逮捕した場合には72時間以内に勾留を請求するか釈放するかを判断しなければならず、ほとんどの場合は勾留請求がなされます。
この場合に、弁護人が付いていると、勾留請求をしないように検察官に対して働きかけたり、勾留を決定しないように裁判官に意見書を提出したりすることで、長期の身体拘束となる勾留を回避できる可能性がある活動ができます。
2 国選弁護人と私選弁護人の違い
(1)形式的な違い
国選弁護人と私選弁護人の違いは、大きく分けると
- 自分の費用で選任するか否か、
- 検察官による勾留請求の前に選任できるか否か、
- 弁護人の選任・解任が自由にできるか否か
という3点あるといえます。
私選弁護人は、
- 自分の費用で選任しますが、
- 検察官の勾留請求前に選任でき、
- 気に入った弁護士を選任でき、解任もいつでも自由にできます。そして、
- 何よりも事件解決のためにスピードを重視したある程度の質を有した弁護士を確保することができます。
一方、国選弁護人は私選弁護人とは逆で、
- 国に費用を負担してもらって選任しますが、
- 検察官の勾留請求前には選任できず、
- 選任にあたって刑事弁護に精通した弁護士を指名することはできませんし、仮に馬が合わなかったとしても解任も自由にはできません。
(2)実質的な違い
上記で述べたように、国選弁護人は自由に選任することができません。
また、国選弁護人として選ばれる弁護士は、必ずしも刑事弁護経験をもっているとは限りません。
したがって、国選弁護人として選任された弁護士が、刑事弁護を一度もやったことがないという場合もあり得ます。
そのため、しっかりとした弁護活動をしてもらえないということもあります。しかし、一度選ばれた国選弁護人は容易に解任することはできません。
一方、私選弁護人は自らの費用で選任するため、信頼できる弁護人を選ぶことができます。
刑事弁護に精通した弁護人を選ぶことで、よりよい弁護活動が期待できます。
もし、その弁護人の動きが悪い場合にはすぐに解任することが可能です。
3 薬物犯罪事件における弁護人選び
薬物犯罪事件では、薬物依存から立ち直れる環境を整えることが重要なポイントになってきます。
例えば、各種医療機関と連携して薬物依存の改善に取り組んだり、ダルクに代表される薬物を断ち切るための活動をしている任意団体にサポートをしてもらったりといった、周囲のサポート環境の整備が重要です。
このような環境整備を行うことで、執行猶予を獲得できる確率が高まったり、その後の更生につながっていったりします。
環境整備にはかなりの時間が必要になる場合があります。
できるだけ早い段階で、環境整備に着手する必要があります。
また、環境を整えるにあたっては、薬物使用者本人が実際にその環境に身を置いて成果を上げることができるかを観察する必要があります。
そのためには、早期の身体解放も必要になってきます。
これらの活動を適切に行える、薬物犯罪事件に精通した弁護士に早い段階から動いてもらうことが重要です。
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