覚せい剤取締法違反(所持)事件の手続を解説

2020-07-02

今回は、自宅で覚せい剤を保管していた疑いで逮捕されてしまった場合の手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

兵庫県豊岡市に住むAさんは、売人から購入した覚せい剤を、自宅にある机の引き出しに保管していました。
ある日、Aさんの自宅に兵庫県豊岡南警察署の警察官が現れ、捜索差押許可状を示されました。
Aさんは拒否しようとしましたが、警察官は「このガサは拒否できない」と答え、大人数で室内に乗り込んできました。
机の引き出しが調べられ、中から発見された覚せい剤様の物件が検査された結果、覚せい剤であることが判明したため、Aさんは覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕されてしまいました。(フィクションです)

~覚せい剤所持罪について解説~

覚せい剤をみだりに所持する行為が犯罪であることは、特に説明の必要はないでしょう。

※覚せい剤取締法第41条の2 
覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第四十二条第五号に該当する者を除く。)は、十年以下の懲役に処する。

~Aさんの自宅になぜ警察官が現れたか?~

覚せい剤の購入先である売人からAさんが浮上した、すでにAさんが薬物事犯の被疑者として内偵されていた、など、理由は様々です。

捜索差押許可状に基づく捜索・差押えは拒否できません。
仮に玄関を閉じて警察官の進入を拒んだとしても、押収物の隠匿を防ぐために緊急の必要があるとして、鍵を壊すなどして進入されてしまいます。

※刑事訴訟法第218条第1項 
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。・・・
刑事訴訟法第222条第1項 
・・・第百十条から第百十二条まで・・・の規定は、・・・司法警察職員が第二百十八条・・・の規定によってする押収又は捜索について・・・これを準用する。・・・
刑事訴訟法第111条第1項
差押状、記録命令付差押状又は捜索状の執行については、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる。・・・

~Aさんの現行犯逮捕~

刑事訴訟法第213条によれば、「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」とされています。
ケースにおいては、Aさんの引き出しから発見された覚せい剤様の物件が、検査によって本物の覚せい剤であることが確認されています。
すると、Aさんは現に覚せい剤所持行為を行う「現行犯人」に該当することになります。

Aさんの自宅の「捜索・差押」は令状によって行われましたが、Aさんの「現行犯逮捕」には令状が必要ありません。

~逮捕後の手続~

現行犯逮捕された後は、警察署に引致されます。
その後、犯罪事実の要旨、弁護人選任権について説明を受け、弁解を録取された後、取調べを受けることになります。
ケースの場合は、覚せい剤の使用行為についても嫌疑をかけられる可能性があります。

留置の必要があると認められると、逮捕時から48時間以内に身柄が検察へ送致されます。
送致を受けた検察官は、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するかを決めます。

勾留の請求を受けた裁判官が勾留決定を出すと、10日間勾留されます。
さらにやむを得ない事由があると認められると、最長10日間、勾留を延長されます。

Aさんが勾留されている場合は、勾留の満期日までに、検察官がAさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決定します。

~勾留される可能性~

一般的にケースの様な薬物事件においては、法律上可能な全ての期間、勾留されてしまう可能性が高いでしょう。
薬物の入手ルートなどの解明に時間がかかるためです。

~起訴か不起訴か~

捜査が適正になされていれば、起訴されることになる可能性が高いと思われます。
反対に、捜査に違法があり、証拠として用いることができない物件、書面等があれば、不起訴処分となる場合もあります。

~量刑の見通し~

起訴された場合であっても、Aさんが初犯であり、適切な弁護活動がなされれば、執行猶予付き判決を獲得できる可能性が十分見込めます。
信頼できる弁護士を依頼し、有利な事件解決を目指していくことをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が覚せい剤所持罪の疑いで逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。