Archive for the ‘未分類’ Category

覚醒剤使用事件で逮捕

2020-10-08

覚醒剤使用事件について、弁護士法人あいち刑事総合法律事務所の弁護士が解説します。

【事例】

さいたま市でタクシー運転手をしているAさんは、3年前に覚醒剤使用事件を起こして有罪判決を受けており、つい先日、執行猶予期間が終わったばかりです。
年末年始で忙しくて寝不足が続いたAさんは、仕事中の居眠り運転を防止するために覚醒剤を再び使用していました。
1週間ほど前に、Aさんは小樽市内の路上に立っている覚醒剤の密売人から1万円分の覚醒剤を購入し、それを3回に分けて使用しました。
最後に使用したのは昨日の夜です。
仕事前に、自宅において、水に溶かした覚醒剤を注射器で血管に射って使用したのですが、その後、仕事中に交通事故を起こしてしまいました。
Aさんは事故現場に駆け付けた埼玉県大宮西警察署の警察官に任意採尿を求められましたが、これを拒否しました。
(フィクションです)

【覚醒剤使用の罪について】

覚醒剤は、心身に様々な悪影響を及ぼすと共に依存性を有することから、覚醒剤取締法によって規制が行われています。
日本において規制されている薬物は多種多様ですが、中でも覚醒剤は特に危険性が高いと考えられています。
諸外国の状況も見てみると、大麻の規制が緩やかな国においても規制されていたり、最高刑を死刑や無期懲役とする国もあったりと、やはり危険視されているようです。

覚醒剤の使用については、以下のような規定が置かれています。

覚醒剤取締法(一部抜粋)
第十九条 左の各号に掲げる場合の外は、何人も、覚醒剤を使用してはならない。
一 覚醒剤製造業者が製造のため使用する場合
二 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者が施用する場合
三 覚醒剤研究者が研究のため使用する場合
四 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合
五 法令に基いてする行為につき使用する場合

第四十一条の三 次の各号の一に該当する者は、十年以下の懲役に処する。
一 第十九条(使用の禁止)の規定に違反した者

覚醒剤の摂取の態様は、注射器での注入、加熱による吸引、液体の服用など様々です。
これらはいずれも覚醒剤の使用に当たると考えられ、10年以下の懲役が科されるおそれがあるでしょう。

【採尿】

覚醒剤の使用は、尿から覚醒剤成分が検出されるか否かによって判断されます。
その検査を尿鑑定といいますが、その前段の手続きとして採尿があります。
採尿には、任意採尿と強制採尿があるのですが、被採尿者が警察官等の指示に従った自ら自然排尿した尿を警察等の捜査機関に任意提出することを「任意採尿」といい、任意採尿を拒否した被採尿者から強制的に尿を採ることを「強制採尿」といいます。
任意採尿で採取された尿と、強制採尿で採取された尿に証拠能力の差異はありません。

警察官等の捜査員が被採尿者から強制採尿するには、裁判官の発した捜索差押許可状(以下「令状」とする。)が必要です。
令状は、警察官等の捜査員が、疎明資料を作成した上で裁判官に対して請求します。
疎明資料には、被採尿者が任意採尿に応じない旨と、被採尿者が覚醒剤を使用している蓋然性がある旨が記載されているのですが、警察等の捜査機関は「任意採尿を拒否するということは覚醒剤をしようしているのだろう」と考えており、人が住んでいる居宅や、人が管理している建物等に対する捜索差押を許可する令状に比べると、強制採尿の令状は比較的発付されやすい傾向にあり、裁判官が強制採尿の令状を発付しないことは滅多にありません。
強制採尿は、病院の医師によって、尿道にカテーテルを通して膀胱から直接的に尿を採取する方法で行われます。
令状の効力で、強制採尿を行う病院まで被採尿者を強制的に連行することが許されているので、病院以外の場所で強制採尿の令状を示されて執行されると、警察官等の捜査員によって強制的に病院まで連行されるので注意しなければなりません。

【尿鑑定】

尿鑑定は、警察官等が行う簡易鑑定と、科学捜査研究所の職員が行う本鑑定の2種類があります。
「インスタントビュー」という専用の薬物検査キットを使用する鑑定と、警察署に設置されている「ガスクロマトグラフィー 」という大型機械を使用する鑑定の2種類の簡易鑑定を採用しています。
採尿した方全てに簡易鑑定が実施されるわけではなく、被採尿者が覚醒剤を使用している可能性が高い場合や、本鑑定の鑑定結果を待っていては、被採尿者が逃走して、その後の逮捕が困難になることが予想される場合(緊急性がある場合)などは簡易鑑定が実施される傾向にあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件の経験豊富な弁護士が、知識と経験を結集して最適な弁護活動を展開します。
ご家族などが覚醒剤使用の疑いで逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
事務所での法律相談料は初回無料です。

覚せい剤の密売

2020-09-24

覚せい剤の密売事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

◇事例◇

大阪市東成区に住むAさんはバーを経営していおり、その客に覚せい剤を売りつけていました。
ある日、Aさんが一人でお店にいる時に、厚生局麻薬取締部の捜査員が、捜索差押許可状を持って来て、店内を捜索されました。
そして、バックヤードに隠していた覚せい剤が見つかってAさんは、覚せい剤の所持違反現行犯逮捕されたのです。
Aさんは、20日間の勾留後に、覚せい剤の営利目的所持起訴されてしまいました。
(このお話はフィクションです。)

◇営利目的の覚せい剤所持事件◇

覚せい剤取締法で、覚せい剤の所持を禁止しています。
自分で使用する目的などの、非営利目的の単純な所持事件ですと、起訴されて有罪が確定すれば10年以下の懲役が科せられます。
特別な事情がない限りは、初犯だと執行猶予判決となる可能性が高く、刑務所に服役することは免れますが、再犯の場合は、実刑判決の可能性が高くなります。

密売等の営利の目的で覚せい剤を所持していたと認められた場合は、営利目的の覚せい剤所持罪となり、この罪で起訴されて有罪が確定すれば、1年以上の有期懲役が科せられることとなり、情状によっては300万円以下の罰金を併せて科せられます。

~営利の目的~

覚せい剤取締法では、大きく分けて所持、譲渡、譲受、使用、輸出入、製造を禁止しており、それぞれの違反形態は、非営利目的と営利目的とに分かれています。
そして営利目的には加重処罰規定を設けているのです。
このような加重処罰規定が設けられたのは、財産上の利得を目当てとして犯罪を行うことが道義的に厳しく非難に値するというだけでなく、一般にその行為が反復され、覚せい剤の濫用を助長・増進させ国民の保健衛生上の危害を増大させる危険性が高いからです。
営利の目的は、犯人が自ら財産上の利益を得、又は第三者に得させることを動機・目的とする場合を意味します。
警察等の捜査当局は、押収した覚せい剤の量や、実際に覚せい剤を買った人物がいるかどうか(密売履歴)、覚せい剤を密売して得た財産等から営利目的を立証するのですが、単に覚せい剤を有償で譲り渡すことだけで営利目的と認められるわけではありません。
営利目的の覚せい剤所持罪は、非営利目的の単純な所持罪に比べて非常に重たい法定刑が定められています。
営利目的の覚せい剤所持事件で逮捕、起訴された場合は、初犯であっても刑務所に服役する可能性があるので、早期に薬物事件に強い弁護士を選任する事をお勧めします。

◇麻薬取締官◇

麻薬取締官は、警察官とは異なり、違法薬物の捜査がのみが許されてる、厚生労働省の職員のことで、巷では「麻薬Gメン」と呼ばれています。
麻薬取締官は、薬物捜査に限って捜査権が与えられており、拳銃や警棒等の武器の所持も法律で認められています。
麻薬取締官は、麻薬及び向精神薬取締法やあへん法、麻薬特例法で、警察捜査では許可されていない「おとり捜査」がある程度許されています。
そのため麻薬取締官は薬物に対する専門的な知識を有しており、麻薬取締官の多くは薬剤師の国家資格を有しています。
麻薬取締官の扱う薬物事件は、大規模な組織的な密売、密輸事件や、有名人、著名人が起こした事件が多いです。
麻薬取締官に逮捕された場合でも、基本的な捜査手続きは警察に逮捕された場合と同じですが、麻薬取締官が所属する厚生労働省の地方厚生局麻薬取締部にある留置場は、勾留中の被疑者を収容する事ができないので、拘置所で身体拘束を受ける場合がほとんどです。

大阪市で営利目的の覚せい剤所持事件に強い弁護士をお探しの方、ご家族、ご友人が麻薬取締官に逮捕された方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
事務所での法律相談料は初回無料です。

麻薬所持で初回接見

2020-09-10

麻薬所持事件における初回接見の重要性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

【事例】

兵庫県神戸市須磨区に住むAさん(15歳)は、友人のBさんから「飲むと疲れが吹き飛ぶよ」と言われ、何かのマークが書かれた錠剤を貰いました。
Aさんが試しにその錠剤を飲んでみたところ、今まで味わったことのないほどの多幸感を抱き、その効果が数時間持続しました。
錠剤の効果が切れてから、Aさんはそれが何らかの薬物だと考えるに至りましたが、あまりの快感からBさんに「またほしい」とお願いしました。
その後、Aさんはたびたびその錠剤を摂取していましたが、ある日麻薬及び向精神薬取締法違反(麻薬所持)の疑いで兵庫県須磨警察署逮捕されました。
Aさんが逮捕されるのを茫然と見ていたAさんの母は、弁護士に初回接見を依頼しました。
(フィクションです)

【麻薬所持について】

麻薬はケシという植物を原材料とする薬物であり、鎮痛作用をはじめとして身体に様々な作用を及ぼします。
麻薬の代表例としては、医療の現場で痛みを抑えるために用いられるモルヒネが挙げられます。

麻薬は使い方を誤ると身体に種々の悪影響を及ぼす危険なものであるため、日本では麻薬及び向精神薬取締法が様々な規制を設けています。
規制の内容は、「麻薬」として指定された薬物の輸出入、製造、譲渡しなどの禁止や、医療機関における麻薬の管理および麻薬中毒者に対する措置などです。

麻薬及び向精神薬取締法は、麻薬を特に危険性が高い「ジアセチルモルヒネ等」(ジアセチルモルヒネまたはその塩類を含む麻薬。代表例としてヘロイン)とそれ以外とに分けています。
そして、それぞれの麻薬の所持につき、以下のとおり罰則を定めています。

①ジアセチルモルヒネ等…10年以下の懲役
※営利目的なら1年以上の懲役と場合により500万円以下の罰金を併科
②①以外…7年以下の懲役
※営利目的なら1年以上10年以下の懲役と場合により300万円以下の罰金を併科

少年事件では刑罰が科されませんが、事件の重大性は犯した罪の法定刑にある程度比例します。
ですので、麻薬所持の非行事実が認められた場合は、厳しい結果を回避するために尽力する必要があると言えるでしょう。

【初回接見の重要性】

麻薬に関する事件では、情報を掴んだ捜査機関が最初に捜索差押を行い、物的証拠たる麻薬が見つかった時点で逮捕されるというケースがよく見られます。
そのため、もし麻薬所持が捜査機関に発覚した場合、逮捕の可能性は決して低くないと考えて差し支えありません。

被疑者が20歳未満の者である場合、その者が起こした事件は基本的に少年事件として扱われます。
少年事件の手続は通常の刑事事件とかなり異なりますが、逮捕以後に行われる初回接見の重要性については疑う必要がありません。
初回接見は、逮捕中の被疑者に対して捜査の流れ取調べ対応などを伝えられるとともに、事件の詳細を弁護士と被疑者の家族が知る貴重な機会です。
そのため、少年事件においても、やはり迅速な初回接見は要請されることになります。

加えて、弁護士の活動が多岐に渡る少年事件では、早期に初回接見を行って少しでも早く活動に着手することが非常に重要となります。
少年事件が目指すのは少年の更生であり、最終的に何らの保護処分もなしに終了することもあれば、自宅を離れて少年院に行かなければならないこともあります。
こうした処分の行く末は、非行事実の発覚後いかにして少年の健全な育成環境を整えられるかに掛かっているのです。

もし弁護士が初回接見を通して早期に事件を把握すれば、少年事件のポイントを押さえた環境整備を行う余裕が生まれます。
少年事件の主眼は少年の育成環境を整える点にあるので、そうした余裕を持つことは非常に大切だと考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、少年事件の経験豊富な弁護士が、事件の円満な解決を目指して力の限りを尽くします。
お子さんが麻薬所持の疑いで逮捕されたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所(0120-631-881)にお電話ください。
刑事事件・少年事件専門の法律事務所として、その後の活動を見据えて可能な限り早く初回接見を行います。

麻薬事件で黙秘権

2020-08-20

麻薬事件における黙秘権について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

【事例】

東京都大田区に住むAさんは、音楽と踊りを楽しむためにクラブ通いをしていました。そのクラブでは、日常的にコカインの売買が行われており、Aさんは、コカインを購入し、使用してしまいました。
そのクラブを内偵していた、厚生労働省の関東厚生局麻薬取締部は、麻薬取締法違反でAさんを逮捕しました。
そして、その翌日に、留置先である警視庁池上警察署から東京地方検察庁に送検されました。
(フィクションです。)

【麻薬に対する規制】

麻薬が規制薬物の一種であることは周知のとおりかと思いますが、具体的に何が「麻薬」に当たるか分からない方は多いのではないでしょうか。
日本における「麻薬」の例としては、コカイン、ヘロイン、LSDなどが挙げられます。
具体的にいかなる薬物が「麻薬」に当たるかは、「麻薬及び向精神薬取締法」という法律に定められています。

麻薬及び向精神薬取締法では、麻薬の製造、所持、授受、輸出入などの様々な行為が原則として禁止されています。
その行為に罰則は、麻薬が「ジアセチルモルヒネ等」に当たる場合とそれ以外とで異なっています。
「ジアセチルモルヒネ等」とは、ジアセチルモルヒネ、その塩類またはそれらが含まれる麻薬のことで、代表例としてはヘロインが挙げられます。
ジアセチルモルヒネ等は薬理作用が特に強く危険性が高いことから、他の麻薬よりも重い罰則が科されます。

~コカイン~

コカインとは、コカの葉から麻薬成分を抽出した麻薬のことで、主に白色の粉末状で取引されます。
そして日本では、麻薬取締法で、その使用が禁止されています。
使用時の症状は、疲労がとれて眠気を感じにくくなって高揚感を感じることができ、食欲が衰退するといった覚せい剤を使用した時と似た感覚に陥ると言われていますが、その使用方法や効力は、覚せい剤と異なるようです。
覚せい剤は、水に溶かして注射器で注射して使用するのが主流のようですが、コカインは、粉末を鼻から吸い込んで使用するようです。
また効力は、覚せい剤の方が強く、持続性も覚せい剤の方が長いようです。

~コカインの使用~

麻薬取締法(麻薬及び向精神薬取締法)で、コカインの使用が禁止されています。
コカインは、使用の他に輸入・輸出・製造・栽培・小分け・譲渡・譲受・所持等が禁止されています。
コカインの使用は、覚せい剤の使用と同じように尿の鑑定で明らかになります。
コカインの使用で起訴されて有罪が確定すれば「7年以下の懲役」が科せられることとなりますが、この罰則規定は覚せい剤使用の法定刑が「10年以下の懲役」であるのに比べると少し軽いものです。
ちなみに、今回の事件でコカインの使用事件が世間で注目を集めていますが、警察等の捜査当局がコカインの使用事件を立件する件数は、覚せい剤の使用事件に比べると非常に少いものです。

【厚生労働省麻薬取締局】

厚生労働省の麻薬取締局は、通称「マトリ」「麻薬Gメン」と呼ばれている、薬物事件を専門にする捜査機関です。
薬物事件に限られますが、警察と同じように捜査権が認められており、けん銃等の武器の使用、所持も認められています。
警察の摘発する薬物事件は、警察官による職務質問が捜査の端緒となりますが、麻薬取締局が摘発する薬物事件は、関係者からの情報提供や、長期間に及ぶ内偵捜査を端緒とする事件が大半です。
そのため、世間を騒がせるような摘発量の多いが多い薬物事件や、著名人による薬物事件を摘発することがよくあります。

【送検って何?】

刑事事件を報じるテレビのニュースや新聞の記事などでよく「送検」という言葉を耳にします。
送検とはいったい、どの様な手続きを言うのでしょうか?
一般的に送検とは、警察等の捜査機関から検察庁に事件を送ることで、これによって捜査の主担が検察庁に移ります。
法律的には「送致」と呼ばれており、送致書類送致と、身柄送致の2種類に分かれます。
①書類送致(書類送検)
逮捕されなかった場合や、逮捕されたとしても勾留される前に釈放された場合など、身柄拘束をしていない事件を検察庁に送致することです。
書類送致は、送致前に考えられる一通りの捜査を終えてから行われることがほとんどで、送致を受けた検察官が起訴するか否かを判断します。
②身柄送致(身柄送検)
逮捕された場合に、逮捕から48時間以内に検察庁に送られる場合は、身柄送致となります。
警察等の捜査機関は、勾留請求することを前提に身柄送致する場合がほとんどですので、身柄送致された方のほとんどは、送致を受けた検察官によって勾留請求されてしまいます。

薬物事件でお困りの方、ご家族などが麻薬所持の疑いで逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
事務所での法律相談料は初回無料です。

覚せい剤使用罪と無罪判決、控訴

2020-08-13

覚せい剤使用罪と無罪判決、控訴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

~ 事例 ~

東京都千代田区に住むAさんは,コップに覚せい剤が入った液体を飲んで使用したという覚せい剤取締法違反(使用罪)で東京地方検察庁に起訴されました。Aさんは刑事裁判で、「私の知らないうちにコップに覚せい剤を入れられていた。」「私の知らないうちに覚せい剤を使ってしまった。」などと主張して覚せい剤の使用の故意を否認しました。しかし、裁判では、Aさんの主張は受け入れてもらえず、Aさんは懲役2年の実刑判決を言い渡されました。Aさんは、事実誤認、量刑不当を理由に控訴しようと考えています。Aさんは刑が確定してしまう前に控訴しなければなりません。
(フィクションです。)

~ 無罪判決が出る場合 ~

刑事訴訟法336条は無罪判決の規定で、以下のように書かれています。

刑事訴訟法336条
 被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。

繰り返すと、無罪判決は、

・被告事件が罪とならないとき
・被告事件について犯罪の証明がないとき

に出されます。刑事裁判で無罪判決が出される多くは後者(被告事件について犯罪の証明がないとき)の場合です。なお、被告事件について犯罪の証明の責任を負うのは検察官です。

~ 覚せい剤使用事件で無罪判決が出る場合 ~

覚せい剤使用事件の多くは尿などを採取され、尿などから覚せい剤成分が検出された旨の鑑定書が作成されます。そして、この鑑定書により被告人が故意に覚せい剤を使用したことが推認されてしまいます。しかし、

・尿の採取過程に誤り(違法・不当手続)があった場合
・鑑定手続に過誤があった場合

その鑑定書を生かすことは許されるでしょうか?判例は生かすことができない場合があることを認めており、その鑑定書が生かされない場合は

故意に覚せい剤を使用した証明がない

ものとして無罪判決が出されることがあります。
また、覚せい剤を使用するに至った経緯等につき合理的な説明ができたという場合も、もちろん、故意に覚せい剤を使用した証明がないものとして無罪判決が出されることがありますが、こちらは稀なケースといえます。

~ 控訴とは ~

控訴とは,簡易裁判所や地方裁判所の上級裁判所である高等裁判所に対し、裁判に誤りがあると申し出て判決の再検討を求めることをいいます。自分は無罪と考えているが有罪と認定された(事実誤認),有罪であることは認めるが刑の種類や重さに不満があること(量刑不当)などを理由に控訴することができます。なお,控訴できるのは裁判を受けた被告人だけと思われている方もおられるかもしれませんが,訴追する側の検察官も控訴することができます。したがって,被告人側,検察側双方が控訴するというケースもよくあることです。

* 控訴期間には期限がある *

控訴期間は14日間です。そして,その期間の起算日は,判決言い渡し日の翌日です。
たとえば,平成31年4月1日に「懲役3年」との判決の言い渡しがあったとします。すると,控訴期間の起算日は4月2日ですからその日を含めた14日間が控訴期間ということになります。したがって,4月15日が控訴期限日で,その翌日の4月16日が確定日ということになります。もし控訴を申し立てるのであれば、遅くとも4月15日のうちに申し立てなければなりません。
では,4月15日が土曜日だった場合はどうなるでしょうか?この場合,控訴期間の末日が土日祝日,12月29日から31日,1月2日,3日の場合は期間に算入しないとうい決まりがありますので,翌月曜日の4月17日が控訴期限日で,その翌日の4月18日が確定日となります。

~ 確定とは ~

確定とは,判決の内容に対しこれ以上不服申し立てをすることができなくなった状態のことをいいます。被告側,検察側が上訴(控訴とその次の不服申立てである上告を含むもの)することなく,上訴期間(14日間)が経過して裁判が確定した場合を「自然確定」といいます。なぜ,自然というのかといいますと,自然確定以外の事由,すなわち,当事者(被告人,検察官)の意思で確定することができるからです。つまり,被告人,検察官は上訴権を放棄したり,すでにした上訴を「取り下げ」たりすることができます。一方が上訴権を放棄したり,上訴を取り下げれば,他方が上訴権を放棄したり,上訴を取り下げた時点で裁判が確定します。

* 確定したらどうなるの? *

刑が確定すると,刑の執行がはじまります。死刑,懲役,禁錮,拘留の場合,身柄を拘束されている方は,そのまま収容施設で刑に服することになります。他方,在宅のまま刑が確定した場合は,検察庁から出頭の要請を受けます。そして,検察庁に出頭したのち,拘置所などに収容されます。ここで出頭しなかった場合は,収容状という令状によって強制的に身柄を拘束されます。執行猶予付き判決を受けた方は,確定日から刑の猶予期間がはじまります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件少年事件を専門とする法律事務所です。刑事事件少年事件でお悩みの方は,まずは,0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間,料法律相談初回接見サービスの受け付けを行っております。

大麻不法輸入事件で麻薬特例法違反

2020-08-06

麻薬特例法の刑事処罰について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

横浜市青葉区在住のAさん(40代男性)は、大麻密売組織の一員として、日本国内への大麻の不法輸入や大麻販売の業務を行っていたとして、麻薬特例法違反の容疑で、神奈川県青葉警察署に逮捕された。
Aさんの家族は、刑事事件に強い弁護士を、神奈川県青葉警察署のAさんとの初回接見(面会)に派遣した。
Aさんは、今後の麻薬特例法違反の取調べや刑事処罰の見通しを、弁護士と話し合い、弁護士に刑事処罰軽減に向けた弁護活動を依頼することにした。
(事実を基にしたフィクションです)

~麻薬特例法の刑事処罰とは~

薬物犯罪を起こした場合には、その薬物が覚せい剤、麻薬、大麻など、どの薬物であるかに応じて、「覚せい剤取締法」「麻薬及び向精神薬取締法」「大麻取締法」などの個別の法律によって、刑事処罰が規定されています。
ただし、「業として」各種薬物犯罪を行った場合や、薬物犯罪収益に関する罪を犯した場合には、特別法の「麻薬特例法」に違反するとして、刑事処罰を受けることになります。

「麻薬特例法」(国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律)は、日本が1992年に「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」を批准したことを契機として、法律が制定されました。

麻薬特例法では、「業として」覚せい剤、麻薬、大麻などの不法輸入や販売などを行った場合に、重い刑事処罰を科しています。
薬物犯罪に「営利性、継続性、組織性」などの要素が介在すると認められた場合に、「業として」薬物犯罪が行われたとして、重い処罰を受けます。

・麻薬特例法 5条(業として行う不法輸入等)
「次に掲げる行為を業とした者(略)は、無期又は五年以上の懲役及び一千万円以下の罰金に処する。」

薬物犯罪収益の隠匿や事実仮装を行った場合には、麻薬特例法違反に当たるとして、刑事処罰が規定されています。

・麻薬特例法 6条1項(薬物犯罪収益等隠匿)
「薬物犯罪収益等の取得若しくは処分につき事実を仮装し、又は薬物犯罪収益等を隠匿した者は、五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。薬物犯罪収益の発生の原因につき事実を仮装した者も、同様とする。」

また、事情を知った上で、薬物犯罪収益を受け取った者にも、麻薬特例法違反に当たるとして、刑事処罰が規定されています。

・麻薬特例法 7条(薬物犯罪収益等収受)
「情を知って、薬物犯罪収益等を収受した者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、法令上の義務の履行として提供されたものを収受した者又は契約(略)の時に当該契約に係る債務の履行が薬物犯罪収益等によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した者は、この限りでない。」

大麻不法輸入事件で刑事弁護の依頼を受けた弁護士は、実際に行った薬物犯罪が、「業として」という要件に当てはまるものなのか、事件の「営利性、継続性、組織性」などの要素を検討し、刑事処罰が軽くなるように弁護活動の主張を行っていきます。
「業として」薬物犯罪を行った麻薬特例法違反の場合には、法定刑は「無期又は5年以上の懲役及び1000万円以下の罰金」と重く規定されているため、執行猶予付きの判決を得るためには、まずは麻薬特例法違反に当たらない事情を、弁護士の側より主張立証していく必要性が考えられます。

横浜市青葉区大麻不法輸入事件でお困りの方は、刑事事件を専門に扱っている、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の評判のいい弁護士にご相談ください。

覚せい剤所持で実刑回避

2020-07-30

覚せい剤所持で実刑回避について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

~ケース~

埼玉県本庄市在住の会社員のAさんは,覚せい剤のパケをポケットに鞄にいれて繁華街を飲み歩いていた。
Aさんはかなり酔っており,それを見かけた埼玉県児玉警察署の警察官Xらから職務質問を受けた。
Aさんは酔っていたが普通に対応していたが,警察官から鞄の中を見せて欲しいと言われ,覚せい剤がばれると思い拒否した。
不審に思ったXらはAさんから鞄を奪い鞄の中を確認したところ,覚せい剤のパケが見つかった。
Aさんは覚せい剤取締法違反(覚せい剤所持)の疑いで現行犯逮捕された。
その後の検査によりAさんが覚せい剤を使用していたことも判明した。
Aさんの家族はAさんが実刑とならないように弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に相談した。
(フィクションです)

~職務質問~

警察官による職務質問は警察官職務執行法第2条に基づいてなされます。

警察官職務執行法第2条
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。

お酒を飲んでかなり酔っているという場合には警察官は異常な挙動があるとして職務質問をすることが許されます。
なお,職務質問の際に所持品検査をすることは条文上に規定はありませんが、判例によって,職務質問に付随して所持品検査をすることが認められています。
ただし,職務質問は任意捜査ですので有形力の行使は原則として許されていません。
有形力の行使があった場合には,犯罪の予防という目的との兼ね合いで適法であったかどうかが判断されることになります。

~実刑回避~

日本において,警察で事件を終局させるような軽微な事件を除いて,事件は警察から検察官へと送致されます。
検察官は送致された事件について起訴するか不起訴とするかを判断します。
不起訴には起訴猶予,嫌疑なし,嫌疑不十分などの種類があります。
検察統計によると日本における覚せい剤取締法違反の起訴率は概ね80%前後となっています。
起訴されなかった20%の大部分は被疑者が覚せい剤取締り法違反ではない場合や違法な捜査などによる嫌疑なしや嫌疑不十分による不起訴であると思われます。
そのため,覚せい剤取締法違反について起訴猶予による不起訴処分となることは非常に稀だと思われます。

今回のケースでは,警察官Xらによる鞄の中の確認によって覚せい剤を発見し覚せい剤取締法違反として逮捕しています。
仮にXらによる鞄の中の確認が法律上認められていない違法な捜査であると検察官が判断すれば嫌疑不十分による不起訴となるでしょう。
弁護士は違法な捜査があったと思われる場合には意見書などを検察官に送付します。
それによって検察官が違法な捜査があったと判断し,不起訴となる場合もあります。
また,起訴されてしまった場合には刑事裁判で違法な捜査があったと主張し,無罪判決を目指していきます。

警察官Xらよる鞄の中の確認自体は,先述のように職務質問に付随する所持品検査として判例で認められています。
しかし,今回のケースでは警察官XらはAさんから鞄を奪って中を確認したというのですから、職務質問に付随するものとして許容できる範囲を超えている可能性もあります。
そのような場合には違法な捜査であったとして,それによって得られた証拠は違法収集証拠として証拠とは認められません。
また,違法な捜査によって得られた証拠から派生した証拠も認められないと解されていますのでAさんの検査結果も証拠として認められない可能性が高いです。
そうなれば,検察官は適法な証拠がないので嫌疑不十分として事件を不起訴とする可能が非常に高いでしょう。

起訴されてしまった場合,覚せい剤取締法違反の単純所持,つまり個人使用目的で所持していた場合,初犯であれば執行猶予付きの判決となることが多いです。
ただし,自動的に執行猶予となるのではなく,裁判官に刑務所に入れるのではなく社会で更生することが可能であると認定してもらう必要があります。
具体的には,覚せい剤などの薬物は依存による再犯率が高いので薬物依存の専門医の診断を受けたり,ダルクのリハビリ等を受けたりしたことを証明できる書類などを裁判で提出していきます。
また再発防止に向けた家族・親戚の取り組みなども裁判で主張していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所です。
覚せい剤などの薬物事件の弁護経験が豊富な弁護士が多数所属しております。
覚せい剤などの薬物事件で逮捕されてしまいお困りの方は、0120-631-881までお気軽にご相談ください。
初回接見・無料法律相談のご予約を24時間受け付けております。

大麻の有償譲り渡し・譲り受け

2020-07-23

大麻を有償で譲り渡した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~今回のケース~

千葉県浦安市に在住のAさん(25歳)は、友人のBさん(25歳)に大麻を譲り渡して、現金を受け取りました。
Bさんは、自分で使用するために、大麻を譲り受けていました。

ある日、麻薬取締部からの情報をもとに千葉県浦安警察署の警察官がAさんの家に捜査に向かったところ、乾燥大麻を所持したAさんがいたため、Aさんは大麻取締法違反の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。
Aさんの供述によって、Bさんも大麻取締法違反の疑いで逮捕されてしまいました。
(これはフィクションです)

~問題となる条文~

〇大麻取締法

今回AさんとBさんが疑われているのは大麻取締法違反です。
大麻取締法には、以下のように規定されています。

第24条の2 
1 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、7年以下の懲役に処し、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処する。
3 前2項の未遂罪は、罰する。

・今回のケースでは
Aさんは、Bさんに大麻を譲り渡していますので、大麻取締法24条1項に該当します。
また、Bさんから現金を受け取っていますので、「営利の目的」があるとして、大麻取締法24条2項に該当するでしょう。

Bさんは、Aさんから大麻を譲り受けていますので、大麻法24条1項に該当します。
そして、Bさんは自分で使用する目的しかなかったので、「営利の目的」はなかったとして、大麻取締法24条2項には該当しないでしょう。

・罰則
Bさんのように、大麻取締法24条1項違反で起訴されて有罪が確定すると、「7年以下の懲役」が刑罰として科されることになります。
また、Aさんのように、「営利の目的」があるとして、大麻取締法24条2項違反で起訴されて有罪が確定すると「10年以下の懲役(情状により10年以下の懲役及び300万円以下の罰金)」が科されることになります。

~大麻取締法違反における弁護活動~

〇接見
今回のケースのような薬物事件においては、在宅事件にすると、事件に関する仲間との接触や証拠隠滅が行われる疑いがあります。
そのため、身体拘束(逮捕や勾留)を受ける可能性が高いです。

この時、ご家族の方は身体拘束を受けた方との接見(面会)が許されていますが、平日の限られた時間に限られています。
しかし、薬物事件の場合、ご家族の方を通して証拠隠滅の可能性があるため、接見禁止命令が出されて、ご家族の方でも接見ができない場合がほとんどです。

そのため、薬物事件を含む刑事事件への知識と経験が豊富な弁護士に、自分の代わりに接見に行ってもらうように依頼することをおすすめします。
弁護士は接見禁止などの制約がないため、身体拘束を受けた方と事由に面会をすることが可能ですし、ご家族の方からの伝言を伝えることもできます。
また、弁護士は現状の整理を行い、身体拘束を受けた方やそのご家族の方に、今後の見通しを分かりやすく伝えることが可能です。

〇身体拘束からの解放
上述の通り、薬物事件は身体拘束を受ける可能性が高いです。
そこで弁護士は、身体拘束を受けている方には証拠隠滅や逃亡のおそれがないこと等を主張することによって、身体拘束からの解放を目指します。

具体的には、弁護士は、身体拘束をする決定に対して、不服申し立てを行うことができます。
また、起訴後には、保釈請求を行い、身体拘束を受けている方が早期に身体拘束から解放されるように働きかけます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件に強い弁護士が無料法律相談、初回接見サービスをおこなっております。
無料法律相談や初回接見サービスの予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、大麻取締法違反を含む薬物事件など、刑事事件でお困りの方はお気軽にお問い合わせください。

外国で大麻を使った場合に日本で逮捕されるのか?

2020-07-16

外国で大麻を使った場合について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します

~ケース~

カナダに留学している大学3年生のAさんは下宿先のルームメイトに誘われて,クラブで行われる大麻パーティーに参加し大麻を吸引した。
Aさんは「カナダは大麻合法だから」という文と共に大麻を吸引している様子をSNSにアップした。
夏休みになり日本に帰国したAさんは同級生であるBさんに「大麻が合法の国で吸引しても大麻取締法が適用されてお前,逮捕されるぞ」と脅かされた。
Bさんからの言葉で逮捕されてしまうのではないかと不安になったAさんは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料法律相談を利用した。
(フィクションです)

~大麻取締法と国外犯~

カナダでは2018年10月に大麻が解禁され使用が合法となりました。
しかしながら,大多数の国では大麻は依然として違法のままであり,日本も大麻取締法により所持などが禁止されています。
カナダには語学留学や旅行などで多くの日本人が訪れ,今回のケースのAさんのように何らかの機会に大麻を使用することや自ら購入し大麻を使用するというケースも多いでしょう。
今回はカナダのように大麻の使用が合法化された国や地域で大麻を使用した場合に日本の法律で処罰されるのかを考えていきたいと思います。

まず重要な点として,大麻取締法では大麻使用を禁止していません。
そのため,日本国内でも大麻を使用するという行為だけでは何ら犯罪を構成しません。
しかし,使用するためには所持する必要がありますので結局のところ大麻所持を禁止する大麻取締法違反となります。
また,薬物犯罪では検査による成分検出や実際に違法薬物を所持していることが犯罪の証拠となります。
そのため,大麻使用が違法ではない国で大麻を使用した場合でも証拠の関係上,日本国内で大麻取締法で検挙するのは現実的ではないでしょう。
では,理論的には大麻取締法違反で検挙が可能なのかを検討していきます。

まず大麻取締法24条の8では「第24条、第24条の2、第24条の4、第24条の6及び前条の罪は、刑法第2条の例に従う。」と規定されています。
刑法第2条は刑法を「日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する」と規定します。
次に掲げる罪とは内乱や外患,通貨偽造や有価証券偽造,公文書偽造など,国家の根幹に対する犯罪行為の場合、日本人であるか外国人であるか、また犯罪地がどこであるかを問わず,当該犯罪を犯したすべての者に対して日本の刑法を適用するという規定なのです。

ところで,特別法には大麻取締法のように「~の罪は,刑法第2条の例に従う。」と規定されている物も多いです。
例としては覚せい剤取締法やあへん法,ハイジャック処罰法などがあります。
これらが刑法第2条の例に従うと規定している意味は,当該犯罪が国家間に共通する法益を侵害する犯罪であり各国に協力してその処罰を確保するためです。
そうすると,大麻取締法24条の8は大麻の取り締まりは国家間に共通する利益であるから日本としても相手国と協力して大麻の取り締まりにあたるという規定になるでしょう。
そして,カナダが大麻を禁止していない以上,日本とカナダの間で大麻を取り締まるという共通の利益が存在しないのですから日本においてカナダでの大麻の所持を罰することはできないと考えるべきでしょう。

なお,大麻取締法24条の8が規定している犯罪は,大麻を「みだりに」所持,栽培等をすることです。
法令において「みだりに」とは違法性があることを示す言葉ですのですなわち大麻を違法に所持等する必要があります。
そのため,日本国内において日本の法に反するのみならず,その行為が行われた国の法律にも違反していなければ処罰されないと考えられます。
さもなければ,カナダで合法に大麻を所持・使用したカナダ人が日本に旅行などで訪れた際に大麻取締法違反で処罰されることになってしまいます。

上記はあくまでも法解釈の一つであり事案の事情によっては逮捕されてしまう可能性もあります。
しかしながら,証拠の関係上,起訴されて刑事裁判となる可能性は低いと考えてよいでしょう。
不安な場合には弁護士に相談されることをおすすめいたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
これまで数多くの薬物事件を手掛けてまいりました。
外国で大麻を使ってしまい不安というような場合には0120-631-881までお気軽にご相談ください。
事務所での無料法律相談のご予約を24時間365日受け付けています・

大麻密輸の容疑で逮捕

2020-07-09

大麻を密輸した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~今回のケース~

大阪府堺市に在住のAさん(30歳)は、封筒の中にペースト状にした大麻を隠して、アメリカから国際郵便を日本の自宅宛てに送りました。
数日後、関西税関で、封筒の中身を不審に思った職員がその封筒を検査したことで、Aさんが大麻を密輸しようとしていたことが発覚してしまいました。
そこで、大阪府堺警察署の警察官がAさんの自宅へ向かい、帰国していたAさんは大麻取締法違反の疑いで逮捕されてしまいました。
Aさんの妻は、自分がどうすれば良いか分からなかったため、弁護士に相談することにしました。
(これはフィクションです。)

~問題となる条文~

〇大麻取締法

今回Aさんが疑われているのは大麻取締法違反です。
大麻取締法には、大麻を密輸した場合について以下のように規定されています。

第24条
1 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸入した者は、7年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、10年以下の懲役に処し、又は情状により10年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処する。
3 前2項の未遂罪は罰する。

・今回のケースでは
Aさんは、大麻をアメリカから密輸しようとしているので、大麻取締法24条1項に該当するでしょう。
そして、Aさんが個人的に使用するつもりはなく、大麻を第三者に売ることで利益を得るつもりで密輸していた場合には、「営利の目的」があるとして、大麻取締法24条2項に該当するでしょう。

・罰則
大麻取締法24条1項違反で起訴されて有罪が確定すると、「7年以下の懲役」が刑罰として科されることになります。
また、「営利の目的」があるとして、大麻取締法24条2項違反で起訴されて有罪が確定すると「10年以下の懲役(情状により10年以下の懲役及び300万円以下の罰金)」が科されることになります。

〇関税法

Aさんは、大麻取締法だけでなく、関税法にも違反する可能性が高いです。
関税法には、大麻を密輸した場合について以下のように規定されています。

第69条の11 (輸入してはならない貨物)
1 次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
 ① 麻薬及び向精神薬、大麻、あへん及びけしがら並びに覚醒剤(覚醒剤取締法にいう覚醒剤原料を含む。」並びにあへん吸煙具。ただし、政府が輸入するもの及び他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。

・今回のケースでは
Aさんは、関税法69条の11で輸入を禁止されている大麻を輸入しています。
そして、Aさんは他の法令で大麻を輸入することを許されているわけではないため、関税法69条11の1号違反となるでしょう。

・罰則
関税法69条の11に違反した場合の罰則規定は109条にあります。
関税法69条の11違反で起訴されて、有罪が確定すると、「10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金(又はこの併科)」が科せられることになります。

~大麻密輸事件における弁護活動~

今回のケースの様な薬物事件の場合、在宅事件にすると事件に関係する仲間との接触や、証拠隠滅が行われる疑いがあるため、身体拘束(逮捕・勾留)を受ける可能性が高いです。
また、ご家族の方を通しての証拠隠滅の可能性があるため、ご家族の方でさえも接見(面会)を禁止されることが大半です。

そこで、代わりに弁護士接見に行ってもらうように依頼することをおすすめします。
弁護士は、薬物事件を含む刑事事件に関する豊富な知識と経験をもっています。
そのため、身体拘束を受けている方やそのご家族の方に、現状の整理を行い、今後の見通しを分かりやすくお伝えすることが可能です。
また、弁護士には接見禁止などの制約がないため、自由に身体拘束を受けた方との面会が可能ですし、ご家族の方からの伝言を伝えることもできます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件に強い弁護士が無料法律相談初回接見サービスをおこなっております。
無料法律相談や初回接見サービスの予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、大麻取締法違反を含む薬物事件など、刑事事件でお困りの方はお気軽にお問い合わせください。

« Older Entries Newer Entries »