麻薬事件で黙秘権

2020-08-20

麻薬事件における黙秘権について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

【事例】

東京都大田区に住むAさんは、音楽と踊りを楽しむためにクラブ通いをしていました。そのクラブでは、日常的にコカインの売買が行われており、Aさんは、コカインを購入し、使用してしまいました。
そのクラブを内偵していた、厚生労働省の関東厚生局麻薬取締部は、麻薬取締法違反でAさんを逮捕しました。
そして、その翌日に、留置先である警視庁池上警察署から東京地方検察庁に送検されました。
(フィクションです。)

【麻薬に対する規制】

麻薬が規制薬物の一種であることは周知のとおりかと思いますが、具体的に何が「麻薬」に当たるか分からない方は多いのではないでしょうか。
日本における「麻薬」の例としては、コカイン、ヘロイン、LSDなどが挙げられます。
具体的にいかなる薬物が「麻薬」に当たるかは、「麻薬及び向精神薬取締法」という法律に定められています。

麻薬及び向精神薬取締法では、麻薬の製造、所持、授受、輸出入などの様々な行為が原則として禁止されています。
その行為に罰則は、麻薬が「ジアセチルモルヒネ等」に当たる場合とそれ以外とで異なっています。
「ジアセチルモルヒネ等」とは、ジアセチルモルヒネ、その塩類またはそれらが含まれる麻薬のことで、代表例としてはヘロインが挙げられます。
ジアセチルモルヒネ等は薬理作用が特に強く危険性が高いことから、他の麻薬よりも重い罰則が科されます。

~コカイン~

コカインとは、コカの葉から麻薬成分を抽出した麻薬のことで、主に白色の粉末状で取引されます。
そして日本では、麻薬取締法で、その使用が禁止されています。
使用時の症状は、疲労がとれて眠気を感じにくくなって高揚感を感じることができ、食欲が衰退するといった覚せい剤を使用した時と似た感覚に陥ると言われていますが、その使用方法や効力は、覚せい剤と異なるようです。
覚せい剤は、水に溶かして注射器で注射して使用するのが主流のようですが、コカインは、粉末を鼻から吸い込んで使用するようです。
また効力は、覚せい剤の方が強く、持続性も覚せい剤の方が長いようです。

~コカインの使用~

麻薬取締法(麻薬及び向精神薬取締法)で、コカインの使用が禁止されています。
コカインは、使用の他に輸入・輸出・製造・栽培・小分け・譲渡・譲受・所持等が禁止されています。
コカインの使用は、覚せい剤の使用と同じように尿の鑑定で明らかになります。
コカインの使用で起訴されて有罪が確定すれば「7年以下の懲役」が科せられることとなりますが、この罰則規定は覚せい剤使用の法定刑が「10年以下の懲役」であるのに比べると少し軽いものです。
ちなみに、今回の事件でコカインの使用事件が世間で注目を集めていますが、警察等の捜査当局がコカインの使用事件を立件する件数は、覚せい剤の使用事件に比べると非常に少いものです。

【厚生労働省麻薬取締局】

厚生労働省の麻薬取締局は、通称「マトリ」「麻薬Gメン」と呼ばれている、薬物事件を専門にする捜査機関です。
薬物事件に限られますが、警察と同じように捜査権が認められており、けん銃等の武器の使用、所持も認められています。
警察の摘発する薬物事件は、警察官による職務質問が捜査の端緒となりますが、麻薬取締局が摘発する薬物事件は、関係者からの情報提供や、長期間に及ぶ内偵捜査を端緒とする事件が大半です。
そのため、世間を騒がせるような摘発量の多いが多い薬物事件や、著名人による薬物事件を摘発することがよくあります。

【送検って何?】

刑事事件を報じるテレビのニュースや新聞の記事などでよく「送検」という言葉を耳にします。
送検とはいったい、どの様な手続きを言うのでしょうか?
一般的に送検とは、警察等の捜査機関から検察庁に事件を送ることで、これによって捜査の主担が検察庁に移ります。
法律的には「送致」と呼ばれており、送致書類送致と、身柄送致の2種類に分かれます。
①書類送致(書類送検)
逮捕されなかった場合や、逮捕されたとしても勾留される前に釈放された場合など、身柄拘束をしていない事件を検察庁に送致することです。
書類送致は、送致前に考えられる一通りの捜査を終えてから行われることがほとんどで、送致を受けた検察官が起訴するか否かを判断します。
②身柄送致(身柄送検)
逮捕された場合に、逮捕から48時間以内に検察庁に送られる場合は、身柄送致となります。
警察等の捜査機関は、勾留請求することを前提に身柄送致する場合がほとんどですので、身柄送致された方のほとんどは、送致を受けた検察官によって勾留請求されてしまいます。

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