覚せい剤使用罪と無罪判決、控訴

2019-06-15

覚せい剤使用罪と無罪判決、控訴

東京都千代田区に住むAさんは,コップに覚せい剤が入った液体を飲んで使用したという覚せい剤取締法違反(使用罪)で東京地方検察庁に起訴されました。Aさんは刑事裁判で、「私の知らないうちにコップに覚せい剤を入れられていた。」「私の知らないうちに覚せい剤を使ってしまった。」などと主張して覚せい剤の使用の故意を否認しました。しかし、裁判では、Aさんの主張は受け入れてもらえず、Aさんは懲役2年の実刑判決を言い渡されました。Aさんは、事実誤認、量刑不当を理由に控訴しようと考えています。Aさんは刑が確定してしまう前に控訴しなければなりません。
(フィクションです。)

~ 無罪判決が出る場合 ~

刑事訴訟法336条は無罪判決の規定で、以下のように書かれています。

刑事訴訟法336条
 被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。

繰り返すと、無罪判決は、

・被告事件が罪とならないとき
・被告事件について犯罪の証明がないとき

に出されます。刑事裁判で無罪判決が出される多くは後者(被告事件について犯罪の証明がないとき)の場合です。なお、被告事件について犯罪の証明の責任を負うのは検察官です。

~ 覚せい剤使用事件で無罪判決が出る場合 ~

覚せい剤使用事件の多くは尿などを採取され、尿などから覚せい剤成分が検出された旨の鑑定書が作成されます。そして、この鑑定書により被告人が故意に覚せい剤を使用したことが推認されてしまいます。しかし、

・尿の採取過程に誤り(違法・不当手続)があった場合
・鑑定手続に過誤があった場合

その鑑定書を生かすことは許されるでしょうか?判例は生かすことができない場合があることを認めており、その鑑定書が生かされない場合は

故意に覚せい剤を使用した証明がない

ものとして無罪判決が出されることがあります。
また、覚せい剤を使用するに至った経緯等につき合理的な説明ができたという場合も、もちろん、故意に覚せい剤を使用した証明がないものとして無罪判決が出されることがありますが、こちらは稀なケースといえます。

~ 控訴とは ~

控訴とは,簡易裁判所や地方裁判所の上級裁判所である高等裁判所に対し、裁判に誤りがあると申し出て判決の再検討を求めることをいいます。自分は無罪と考えているが有罪と認定された(事実誤認),有罪であることは認めるが刑の種類や重さに不満があること(量刑不当)などを理由に控訴することができます。なお,控訴できるのは裁判を受けた被告人だけと思われている方もおられるかもしれませんが,訴追する側の検察官も控訴することができます。したがって,被告人側,検察側双方が控訴するというケースもよくあることです。

* 控訴期間には期限がある *

控訴期間は14日間です。そして,その期間の起算日は,判決言い渡し日の翌日です。
たとえば,平成31年4月1日に「懲役3年」との判決の言い渡しがあったとします。すると,控訴期間の起算日は4月2日ですからその日を含めた14日間が控訴期間ということになります。したがって,4月15日が控訴期限日で,その翌日の4月16日が確定日ということになります。もし控訴を申し立てるのであれば、遅くとも4月15日のうちに申し立てなければなりません。
では,4月15日が土曜日だった場合はどうなるでしょうか?この場合,控訴期間の末日が土日祝日,12月29日から31日,1月2日,3日の場合は期間に算入しないとうい決まりがありますので,翌月曜日の4月17日が控訴期限日で,その翌日の4月18日が確定日となります。

~ 確定とは ~

確定とは,判決の内容に対しこれ以上不服申し立てをすることができなくなった状態のことをいいます。被告側,検察側が上訴(控訴とその次の不服申立てである上告を含むもの)することなく,上訴期間(14日間)が経過して裁判が確定した場合を「自然確定」といいます。なぜ,自然というのかといいますと,自然確定以外の事由,すなわち,当事者(被告人,検察官)の意思で確定することができるからです。つまり,被告人,検察官は上訴権を放棄したり,すでにした上訴を「取り下げ」たりすることができます。一方が上訴権を放棄したり,上訴を取り下げれば,他方が上訴権を放棄したり,上訴を取り下げた時点で裁判が確定します。

* 確定したらどうなるの? *

刑が確定すると,刑の執行がはじまります。死刑,懲役,禁錮,拘留の場合,身柄を拘束されている方は,そのまま収容施設で刑に服することになります。他方,在宅のまま刑が確定した場合は,検察庁から出頭の要請を受けます。そして,検察庁に出頭したのち,拘置所などに収容されます。ここで出頭しなかった場合は,収容状という令状によって強制的に身柄を拘束されます。執行猶予付き判決を受けた方は,確定日から刑の猶予期間がはじまります。

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