(事例紹介)覚醒剤使用と危険運転致傷罪

2022-08-02

(事例紹介)覚醒剤使用と危険運転致傷罪

~事例~

鳥栖署は1日、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の疑いで、住居、職業ともに不詳の男(47)を再逮捕した。
再逮捕容疑は2021年10月16日午後0時10分ごろ、鳥栖市原町の国道3号で、覚醒剤などの影響により正常な運転が困難な状態で軽ワゴン車を運転し、信号停車中のトラックに後方から衝突、トラック運転者の首や腰に12日間のけがを負わせた疑い。
(中略)
 鳥栖署によると、尿から覚醒剤、血液から睡眠導入剤が検出された。
(後略)
(※2022年8月1日19:15佐賀新聞配信記事より引用)

~覚醒剤使用と危険運転致傷罪~

今回取り上げた事例では、男性が危険運転致傷罪の容疑で再逮捕されています。
報道によれば、男性はすでに覚醒剤使用による覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕・起訴されているとのことで、取り上げた報道はそのあと危険運転致傷罪の容疑で再逮捕されたという経緯のものです。

覚醒剤を使用すれば、覚醒剤取締法違反という犯罪になることは多くの方がご存知のことと思います。
しかし、その覚醒剤の使用に関連して成立する犯罪もあります。
今回取り上げた報道にある、危険運転致傷罪はその1つです。

危険運転致傷罪は、いわゆる自動車運転処罰法(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)に定められている犯罪です。

自動車運転処罰法第2条
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。
第1号 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為

危険運転致傷罪は、自動車運転処罰法第2条に定められており、第1号~第8号に定められている危険運転行為によって人を負傷させた場合に成立します。
第1号~第8号に定められている8つの危険運転行為のうち、第1号の危険運転行為は、上記の通り「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」とされています。
この「薬物」には、睡眠薬などの病院などで処方される薬のほか、今回問題となっている覚醒剤などの違法薬物も含まれています。
ですから、例えば覚醒剤を使用して意識が混濁しているような状態で自動車を運転し人身事故を起こしたという場合には、この自動車運転処罰法第2条第1号に当てはまる危険運転致傷罪に問われるということになります。

今回取り上げた事例では、男性はまさに覚醒剤などを使用した影響で正常な運転が困難な状態で自動車を運転して人身事故を起こしてしまったという容疑をかけられています。
かけられた容疑の内容が事実だとすれば、危険運転致傷罪が成立する可能性があるということになるでしょう。
対して、容疑の内容と事実が異なり、危険運転行為はなかったということであれば、危険運転致傷罪ではなく過失運転致傷罪(自動車運転処罰法第5条)にとどまるとされる可能性もあります。

「正常な運転が困難な状態」といえるかどうかなど、危険運転致傷罪の成立には専門的な観点から検討すべき点が多く存在します。
もちろん、覚醒剤を使用したことに対する覚醒剤取締法違反への対応も必要です。
今回のケースのように、覚醒剤の使用に関連して、薬物犯罪以外の部分で複数の犯罪が成立するケースもありますから、刑事事件に幅広く対応している弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、覚醒剤取締法違反事件はもちろん、交通事件から暴力事件、性犯罪事件まで幅広い刑事事件を手掛けています
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