(事例紹介)営利目的譲渡による大麻取締法違反事件と保釈

2022-08-09

(事例紹介)営利目的譲渡による大麻取締法違反事件と保釈

~事例~

群馬、沖縄両県警の合同捜査本部は7日、大麻取締法違反(営利目的譲渡)の疑いで、埼玉県熊谷市の無職男=当時(25)=ら20代の男4人を逮捕した。
(中略)
4人の逮捕容疑は共謀して昨年8月~10月、埼玉県内のコンビニエンスストアから3回にわたり、それぞれ大麻草約100グラムを代金29万~32万円で、大分市内の顧客宛に宅配便で発送し、営利目的で大麻を譲り渡した疑い。
(※2022年6月7日上毛新聞配信記事より引用)

~大麻の営利目的譲渡による大麻取締法違反事件~

大麻取締法3条は、大麻取扱者(大麻取締法2条2項・3項に定められた都道府県知事の免許を得た者)以外の者が大麻を譲り渡すことを禁止しています。

大麻取締法3条
大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。

そして、大麻取締法24条の2は、大麻をみだりに譲り渡すことを禁止しています。
特に、大麻取締法24条の2第2項は、営利目的譲渡し行為を厳しく罰しています。

大麻取締法24条の2第1項
大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する。

大麻取締法24条の2第2項
営利の目的で前項の罪を犯した者は、7年以下の懲役に処し、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処する。

大麻取締法24条の2第1項の「譲り渡し」とは、大麻について何らかの処分権を与えてその所持を移転することをいいます。
刑事事件例では、AさんはVさんに大麻を売り渡しており、このAさんの行為は大麻取締法24条の2第1項の「譲り渡し」に該当すると考えられます。

また、大麻取締法24条の2第1項の「みだりに」とは、法律に大麻の譲渡しを適法とする除外事由がないことをいいます。
例えば、大麻取締法3条は「大麻取扱者でなければ」大麻を譲り渡してはいけないと規定しています。
この場合、大麻取扱者であることは、大麻取締法に規定された大麻の譲渡しを適法とする除外事由に当たります。

今回取り上げた事例では、逮捕された男性らの大麻の譲渡し行為を適法とさせる法定の除外事由は報道からは見当たりません。
大麻の譲渡しは大麻取締法24条の2第1項の「みだりに」行われたと判断されたのでしょう。

さらに、大麻取締法24条の2第2項の「営利の目的」とは、財産上の利益を得る目的をいいます。
今回取り上げた事例でも、男性らは顧客相手に大麻を販売していたようです。
売り渡すという意味通り、男性らは財産上の利益(代金)を得る目的があった、すなわち大麻取締法24条の2第2項の「営利の目的」があったと考えられます。

以上より、男性らには大麻取締法違反の罪(営利目的譲渡し)が成立すると考えられます。

~保釈~

刑事訴訟法89条は、同条1号から6号がない限り、被告人の方の権利として保釈を許可しなければならないとしています。

刑事訴訟法89条
保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。

刑事訴訟法89条の「次の場合」とは、①重大犯罪であること、②重大犯罪の有罪判決を受けたことがあること、③常習して犯罪を犯していること、④罪証隠滅のおそれがあること、⑤証人威迫等のおそれがあること、⑥氏名又は住所不定であることです。

また、刑事訴訟法90条は、権利保釈が認められなくとも、裁量により保釈を許可することができると規定しています。

刑事訴訟法90条
裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

もしも権利保釈が認められなくとも、例えば会社を解雇されるおそれがある、家族の介護が必要である、被告人本人の通院が必要であるといった保釈を認めてもらう必要性などを合わせて主張していくことで、この裁量保釈を求めていくこともできます。

保釈は何度でも請求することができますので、弁護士と共に保釈に十分な環境を整えながら粘り強く保釈を求めていくことが重要です。

今回の事例では、まだ男性らは逮捕されて捜査されている段階ですが、この後男性らが身体拘束されたまま事件が起訴されるとなれば、こうした保釈制度を利用して釈放を求めていくことも考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を中心に取り扱っている法律事務所です。
営利目的譲渡による大麻取締法違反事件での保釈についてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。