偽薬物販売で詐欺罪

2020-12-24

偽薬物販売で詐欺罪

~ケース~

神奈川県逗子市在住の大学3年生のAさんは偽物の薬物を販売することでお小遣い稼ぎをしようと企てていた。
Aさんはインタ―ネットで販売用のページを作り,「Sを売ります」「リーフ売ります」と宣伝していた。
なお,実際に販売していたのは食塩を覚せい剤の結晶のように固めたものや,大麻草のように装ったお茶っ葉などであった。
Aさんから商品を購入したVさんが警察に被害届を出したことで発覚し,Aさんは詐欺罪の疑いで神奈川県逗子警察署逮捕された。
(実際にあった事件を基にしたフィクションです)

~Aさんの罪~

今回のケースで,Aさんは食塩とお茶っ葉を販売していたのですから販売行為自体は罪にならないでしょう。
しかし,Aさんはあたかも覚せい剤大麻を売っているかのように装って購入者を騙していたのですから詐欺罪となる可能性はあるでしょう。

詐欺罪は刑法246条によって「人を欺いて財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処する。」と規定されています。
詐欺罪が成立するためには

・被害者を騙すことによって
・被害者が騙されて錯誤に陥り
・騙された被害者が自分の意思で財物を処分し
・その財物の占有が加害者に移転することによって
・被害者に損害が発生した

という流れが必要になります。
今回のケースではAさんによる「Sを売ります」「リーフ売ります」といった表示が被害者を騙しているかどうかが問題となります。
覚せい剤は隠語として俗に「シャブ」「スピード」「S(スピードの頭文字)」などと呼ばれています。
また大麻草も「葉っぱ」などといった隠語で呼ばれていることがあるようです。
そうすると,いかにも薬物を販売しているサイトにおいて直接的ではなくとも隠語として使われている「S」「リーフ」といった言葉で相当な値段で販売していたということはあたかも薬物を販売していると購入者を騙しているといえるのではないでしょうか。
詐欺罪のいう欺罔行為の程度は通常の一般人に要求される配慮を尽くしても錯誤に陥る程度の欺罔が必要とされています。
違法薬物を販売しているようなサイトで隠語である「S」「リーフ」といった言葉が用いられていた場合,一般に要求される配慮を尽くしても,違法薬物を販売していると錯誤に陥ってしまうといえるでしょう。
そして,違法薬物の販売をしているとVさんが錯誤に陥って代金を払っているので詐欺罪が成立してしまうでしょう。

詐欺罪は10年以下の懲役刑のみが規定されていますので起訴されてしまった場合には刑事裁判が開かれることになります。
その為,詐欺罪の場合は被害弁償などの示談を通じて不起訴(起訴猶予)を目指していきます。
また,起訴されてしまった場合でも被害弁償などが済んでいれば執行猶予付きの判決となる可能性もあります。

~Vさんの罪~

一方,覚せい剤大麻を買おうとしていたVさんは罪に問われないのでしょうか。
覚せい剤取締法は覚せい剤の所持,譲渡,譲受を禁止しています(覚せい剤取締法41条の2)。
そして同条第3項によって未遂の処罰規定が設けられています。
大麻取締法にも同様の規定があります(大麻取締法24条の2)。
そのため,こういった事件では被害者の購入しようとした行為が罪に問われてしまうため,事件が発覚しにくいという特徴があります。
覚せい剤取締法は10年以下の懲役,大麻取締法は5年以下の懲役となりますが、未遂のため減刑される可能性が高くなります。
Vさんの弁護活動としては,未遂であることを主張し,その後の情状などによって起訴猶予や執行猶予付き判決を求めていくことになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
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