(制度紹介)薬物犯罪と刑の一部執行猶予 メリット・デメリットは?
(制度紹介)薬物犯罪と刑の一部執行猶予 メリット・デメリットは?
前回の記事では、薬物法による刑の一部執行猶予を取り上げ、特に刑の一部執行猶予になる条件に注目しました。
今回の記事では、薬物法による刑の一部執行猶予のメリット・デメリットに注目します。
~刑の一部執行猶予のメリット・デメリット~
刑の一部執行猶予について薬物犯罪が他の犯罪と異なる点は、付けられる条件だけではありません。
薬物法第4条
第1項 前条に規定する者に刑の一部の執行猶予の言渡しをするときは、刑法第27条の3第1項の規定にかかわらず、猶予の期間中保護観察に付する。
第2項 刑法第27条の3第2項及び第3項の規定は、前項の規定により付せられた保護観察の仮解除について準用する。
前回の記事でも簡単に触れましたが、薬物法によって刑の一部執行猶予となった場合には、必ず執行猶予に保護観察が付けられることになります。
保護観察とは、保護司などと定期的な面談を行うなどして、生活改善や就労指導などを受ける処分を指します。
一般の刑の全部執行猶予や刑の一部執行猶予でも保護観察処分を付けることはできますが、必ず付くというものではありませんが、薬物法によって刑の一部執行猶予となった場合には、必ず執行猶予期間中に保護観察が付くことになります。
前回から今回の記事にかけて確認した、薬物法による刑の一部執行猶予の条件の緩和や、必ず保護観察が付くことといった特徴は、薬物犯罪の特徴に基づいています。
薬物犯罪、特に薬物の使用などは、中毒性が高く、再犯率が高いことは一般にも知られているところです。
日々のニュースでも、何度も覚醒剤や大麻を使用してしまった芸能人のニュースが流れることもあり、世間的にも「薬物犯罪は繰り返してしまう」というイメージがあるのではないでしょうか。
このような薬物犯罪の特徴から、薬物犯罪には再犯者が多く、前科を持っていたり、短期間で複数回検挙されていたりという人が少なくありません。
刑の一部執行猶予という制度は、元々再犯を繰り返してしまう人に対して、刑務所などの刑事施設で矯正教育を受けるということと、社会内で生活しながら処遇を受けることのどちらも経験することで再犯を防止しようという制度ですから、特に再犯率の高い薬物犯罪について、その特性に沿った条件・内容で制度を使おうとして、こうした特例が出来たのです。
刑の一部執行猶予を受けることで、刑事施設で矯正教育を受け、かつ出所後も保護観察処分による管理を受けることで、再犯をしないための環境づくりに資することができますし、単純に刑期の一部が執行猶予されることで、早く刑務所から出られるというメリットがあります。
刑務所に入れば、当然その間社会から切り離されて生活することになりますから、少しでも早く外に出て、社会生活をリスタートしたいと考える方は少なくないでしょう。
しかし、先ほど記載したように、薬物法による刑の一部執行猶予では必ず保護観察が付きますし、薬物依存の改善のための処遇も受けることが条件になっていますから、刑務所から出た後も相当期間の監視下に置かれ、国の影響力のもと過ごすことになります。
例えば、「懲役3年、うち1年を執行猶予2年」と仮定した場合、単に「懲役3年」であった場合には監視・管理される期間は3年ですが、「懲役3年、うち1年を執行猶予2年」の場合は、刑務所に入っている2年と執行猶予を受けている2年の合計4年、監視・管理されることになります。
「執行猶予」というとメリットの大きいことに思えますが、このようにメリット・デメリットがあるとも考えられるため、制度もよく理解しながら刑事手続に臨む必要があります。
特に薬物犯罪の場合、罰金刑が定められていない犯罪も多く、再犯が多いこともあり、刑事裁判になり、実刑か執行猶予かを争う事件も少なくありません。
こうした場合にどういった処分を目指すのか、どういった選択肢があるのかを理解した上で臨むことで、被告人の方の利益を守ることができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、薬物犯罪の刑事裁判についてのご相談・ご依頼も受け付けています。
まずは相談だけしたいという方のお問い合わせも受け付けていますので、お気軽にご相談ください