捜査機関の種類を解説

2020-12-03

今回は、刑事手続における捜査機関の種類について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

大阪市此花区に住むAさんは、自宅でMDMAを所持し、その薬理作用を得るため使用するなどしていました。
AさんがMDMAを所持・使用しているとの情報を得た麻薬取締官は、内偵を行い、捜索差押許可状の発付を得ました。
麻薬取締官は、Aさんの自宅に赴き、Aさんに捜索差押許可状を示した後、自宅の捜索を開始しました。
捜索の結果、Aさんの机の引き出しからMDMAの錠剤が発見されたので、これを押収された後、Aさんは麻薬及び向精神薬取締法違反(MDMAの所持)の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。(フィクションです)

~MDMAの所持・使用行為の規制~

(MDMAの所持)
麻薬及び向精神薬取締法第66条1項は、「ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持」する行為を禁止しています。
ジアセチルモルヒネ等とは、一般に「ヘロイン」のことを意味します。
MDMAは、「ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬」に該当します。

「所持」とは、「事実上の実力支配関係」をいい、自宅にある机の引き出しの中でMDMAを保管する行為は、当然「所持」に該当します。

MDMAの所持については、7年以下の懲役が予定されています。

(MDMAの使用)
MDMAを「施用」(条文上「施用」となっています)する行為も処罰の対象です(麻薬及び向精神薬取締法第27条1項・66条の2第1項)。

「施用」とは、「麻薬を注射、経口、粘膜への塗布、鼻腔からの吸入等の方法によって、自己又は他人の身体に用いること」をいいます。

Aさんが逮捕された被疑事実はMDMAの「所持」ですが、MDMAを使用していた嫌疑もかけられるでしょう。
尿検査などを受けた結果、MDMAの使用を示す反応が検出されれば、MDMAの使用行為についても捜査を受けることになります。
場合によっては、MDMA所持の件とは別に、MDMAを使用した罪について、改めて逮捕されてしまうことも考えられます。
身体拘束が長引かないよう、所持の件と使用の件とを並行して捜査するよう申し入れる必要があるかもしれません。

~犯罪捜査の主体~

犯罪の捜査は、「検察官」、「司法警察職員」が行います。
「検察事務官」は、検察官の指揮を受けて、犯罪の捜査を行うことになっています。

(司法警察職員)
「司法警察職員」は、「一般司法警察職員」と「特別司法警察職員」からなり、麻薬取締官は特別司法警察職員に該当します。
そのため、警察官ではありませんが、薬物事件に関して捜査権限を持ち、被疑者の逮捕、捜索・差押えを行うことができます。
麻薬取締官は厚生労働省の職員で、薬物事件の捜査に特化したノウハウを有しており、中には、薬剤師の資格を持つ麻薬取締官もおられます。

他の特別司法警察職員の例として、「海上保安官」、「労働基準監督官」などがあります。

(検察官)
Aさんは逮捕後、逮捕時から48時間以内に、検察へ身柄が送致されることになるでしょう。
検察へ送致された後は、「検察官」が取調べを行います。
ケースのような事件では、司法警察職員において捜査を行い、捜査が熟した後、検察へ送致する、という手続がとられますが、経済事件、汚職事件などにあっては、最初から検察官が捜査を行うこともあります。
検察官も、捜索・差押え、取調べを行うことができますし、被疑者を逮捕することもできます。
また、捜査の最終段階において、被疑者を起訴するか、不起訴にするかは、検察官が決定しています。
警察官や麻薬取締官は起訴・不起訴の別を決定することはできません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族がMDMA所持の疑いで、麻薬取締官により逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。