麻薬取締法違反で逮捕・即決裁判

2019-03-27

麻薬取締法違反で逮捕・即決裁判

事例:Aは自らが所持している違法薬物が、実際は覚せい剤であるのに、これを麻薬(コカイン)であると思い込んで所持していた。
京都府宇治警察署の警察官は、Aを麻薬取締法違反の疑いで逮捕した。
なお、Aは違法薬物を所持していたことは認めている。
Aの家族は、薬物事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実を基にしたフィクションです。)。

~麻薬取締法と覚せい剤取締法~

まず、どちらも違法薬物であるコカイン覚せい剤は、それぞれ別の法律によってその取締りを規定しています。
コカインは、麻薬取締法によってその所持等の禁止が定められています。
麻薬取締法は、28条1項本文において「麻薬取扱者、麻薬診療施設の開設者又は麻薬研究施設の設置者でなければ、麻薬を所持してはならない」と、「麻薬」の所持を禁止しています(ここにいう「麻薬」とは、2条1号が別表第一に定めるものであり、コカインもこの別表第一によって本法が取り締まる「麻薬」に当たるものとされています)。
これに対し、覚せい剤は、覚せい剤取締法においてその所持等を禁止しています。
覚せい剤取締法は14条1項において、(法定除外事由の無い限り)「何人も、覚せい剤を所持してはならない」と、「覚せい剤」の所持を禁止しています。

麻薬取締法で禁止される麻薬の所持の法定刑が「7年以下の懲役」(同法66条1項)であるのに対し、覚せい剤取締法で禁止される覚せい剤の所持の法定刑は「10年以下の懲役」(同法41の2第1項)と後者の方が重い刑罰が科されていることになります。

本件では、Aはコカインだと思って覚せい剤を所持していたところを逮捕されています。
この場合に、どちらの法律が適用されるのでしょうか。
この点、判例(最決昭和61・6・9)は、軽い罪の故意(本件でいえば麻薬所持)で重い罪(本件でいえば覚せい剤所持)を犯した場合には、犯罪の構成要件が重なり合う限度で軽い罪が成立することを認めています。
本件では、両罪の目的物が麻薬か覚せい剤かに差異があるだけで、犯罪の構成要件の重なり合いが認められるため、軽い麻薬所持罪が成立することになります。

~即決裁判手続の利用~

薬物犯罪は重大犯罪であり、仮に初犯であっても起訴され、通常の刑事裁判は避けられないとのイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
しかし、特に初犯であれば、通常の刑事裁判ではなく即決裁判手続を利用することで早期に裁判などの刑事手続からの解放を目指すという道を選ぶことも考えられます。

即決裁判手続とは、争いのない明白かつ軽微な事件について、検察官が被疑者の同意を得て起訴と同時に申立て行うことで、迅速かつ簡易な審理・判決を実現させる手続です(刑事訴訟法350条の2)。
即決裁判手続では、可能な限り速やかに裁判の期日が指定され、原則としてその日のうちに結審・判決がなされます。
そして、判決で懲役または禁鋼が言い渡される場合には、必要的に執行猶予が付されることとなります。
このように即決裁判手続によれば、迅速な刑事手続からの解放と執行猶予判決がなされることから、事件の早期解決を希望する被疑者や家族にとっては少なくないメリットを得ることが可能です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、麻薬取締法違反や覚せい剤取締法違反などの薬物事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
当該事件における即決裁判手続の利用の可否や、そのメリットだけではなくデメリットなども十分に検討・ご説明差し上げます。
麻薬取締法違反事件(麻薬所持罪)で逮捕された方のご家族は、年中無休で繋がるフリーダイヤル(0120-631-881)まで、まずはお電話ください。
京都府宇治警察署への初回接見費用:36,500円