覚せい剤所持事件を起こし逮捕

2019-12-02

覚せい剤所持事件を起こし逮捕

~ケース~

ある日、東京都文京区所在のAさんの自宅に捜索差押許可状を携えた警視庁本富士警察署の警察官が数名現れました。
玄関を開けると、令状を見せられました。
警察官が多数家の中に入ってきて、家の中を捜索しています。
警察官らは、覚せい剤取締法違反の疑いで、捜索差押許可状の発付を受けてやってきたようです。
洋服ダンスの中に隠していた粉末入りパケットの中身が覚せい剤であることを確認されると、Aさんは覚せい剤所持の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。(フィクションです)

~覚せい剤所持罪について解説~

覚せい剤所持罪とは、その名の通り、覚せい剤をみだりに所持する犯罪です(覚せい剤取締法第41条の2第1項)。
「みだりに」とは、法定の除外事由がないことを言うと考えられています。
覚せい剤を所持してもよい場合として、

①覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の管理者、覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者の業務上の補助者がその業務のために覚せい剤を所持する場合

②覚せい剤製造業者が覚せい剤施用機関若しくは覚せい剤研究者に覚せい剤を譲り渡し、又は覚せい剤の保管換をする場合において、郵便若しくは民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第二項に規定する信書便(第二十四条第五項及び第三十条の七第十号において「信書便」という。)又は物の運送の業務に従事する者がその業務を行う必要上覚せい剤を所持する場合

③覚せい剤施用機関において診療に従事する医師から施用のため交付を受ける者の看護に当る者がその者のために覚せい剤を所持する場合

④法令に基いてする行為につき覚せい剤を所持する場合

があります。

これらの事由がないのに、覚せい剤を所持すると、覚せい剤所持罪が成立します。
覚せい剤所持罪の法定刑は、10年以下の懲役となっており、比較的重い犯罪ということができるでしょう。

~Aさんは今後どうなるか?~

警察署に引致され、犯罪事実の要旨、弁護人選任権について説明された後、弁解を聞かれます。
その後取調べを受けることになります。
薬物事件においては、被疑者が薬物を入手したルート、薬物を裏で扱っている組織の実態など、捜査によって明らかにしなければならないことがたくさんあります。
そのため、捜査機関が口裏合わせによる証拠隠滅などを警戒する結果、勾留決定の出やすい傾向があるということができます。

さらにAさんの場合、覚せい剤の使用についても疑われるものと考えてよいでしょう。
覚せい剤所持事件の捜査中に、Aさんが覚せい剤を使用したことを立証する証拠(Aさんの尿、尿を鑑定した結果が記載された鑑定書など)が出てくれば、覚せい剤所持事件による勾留の期限に達した後、すぐに覚せい剤使用罪の疑いで逮捕されることも絶対にないとは言い切れません。
捜査段階における身体拘束期間はかなり長期化することを見込む必要があると思われます。

~Aさんはどうするべきか?~

Aさんが起訴され、Aさんの事件に関してこれ以上調べることがない、という状況になれば、「保釈」を許す決定がなされる可能性が十分見込まれます。
もし保釈が認められれば、裁判所に一定の金銭を納付するのと引き換えに、少なくとも裁判が終わるまで身柄を解放してもらうことができます。

ただ、身柄解放を実現しても、事件が終了したわけではありません。
やはり、より有利な判決を獲得して最終的な結果を少しでもよいものにすべきです。
Aさんに前科がなければ、有罪判決であっても、刑の執行を猶予される可能性があります。
執行猶予判決が付けば、刑務所に行かずに済みます。

起訴後、あるいは起訴を見越した弁護活動として、①薬物依存の治療プログラムを受ける、②贖罪寄付を行うことなどが考えられます。

執行猶予付き判決を獲得するためには、Aさんが再び覚せい剤に手を出さないということを、裁判所に納得してもらうことが重要です。
薬物依存の治療プログラムを受ける理由は、この点にあります。

また、刑事事件においては、被害者と示談を行うことが重要ですが、覚せい剤所持、使用事件においては、傷害事件暴行事件におけるような被害者が存在しません。
そのため、「被害者との示談」は行うことができません。
その代わり、弁護士会などの団体に寄付を行うことにより、反省の意思を示す「贖罪寄付」が有効な場合があります。
薬物事件においては、このような弁護活動を通じ、より被疑者・被告人にとって有利な事件解決を目指すことになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所であり、薬物事件の解決実績も豊富です。
ご家族が覚せい剤所持事件を起こし、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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