覚醒剤使用事件で逮捕
覚醒剤使用事件について、弁護士法人あいち刑事総合法律事務所の弁護士が解説します。
【事例】
さいたま市でタクシー運転手をしているAさんは、3年前に覚醒剤使用事件を起こして有罪判決を受けており、つい先日、執行猶予期間が終わったばかりです。
年末年始で忙しくて寝不足が続いたAさんは、仕事中の居眠り運転を防止するために覚醒剤を再び使用していました。
1週間ほど前に、Aさんは小樽市内の路上に立っている覚醒剤の密売人から1万円分の覚醒剤を購入し、それを3回に分けて使用しました。
最後に使用したのは昨日の夜です。
仕事前に、自宅において、水に溶かした覚醒剤を注射器で血管に射って使用したのですが、その後、仕事中に交通事故を起こしてしまいました。
Aさんは事故現場に駆け付けた埼玉県大宮西警察署の警察官に任意採尿を求められましたが、これを拒否しました。
(フィクションです)
【覚醒剤使用の罪について】
覚醒剤は、心身に様々な悪影響を及ぼすと共に依存性を有することから、覚醒剤取締法によって規制が行われています。
日本において規制されている薬物は多種多様ですが、中でも覚醒剤は特に危険性が高いと考えられています。
諸外国の状況も見てみると、大麻の規制が緩やかな国においても規制されていたり、最高刑を死刑や無期懲役とする国もあったりと、やはり危険視されているようです。
覚醒剤の使用については、以下のような規定が置かれています。
覚醒剤取締法(一部抜粋)
第十九条 左の各号に掲げる場合の外は、何人も、覚醒剤を使用してはならない。
一 覚醒剤製造業者が製造のため使用する場合
二 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者が施用する場合
三 覚醒剤研究者が研究のため使用する場合
四 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合
五 法令に基いてする行為につき使用する場合
第四十一条の三 次の各号の一に該当する者は、十年以下の懲役に処する。
一 第十九条(使用の禁止)の規定に違反した者
覚醒剤の摂取の態様は、注射器での注入、加熱による吸引、液体の服用など様々です。
これらはいずれも覚醒剤の使用に当たると考えられ、10年以下の懲役が科されるおそれがあるでしょう。
【採尿】
覚醒剤の使用は、尿から覚醒剤成分が検出されるか否かによって判断されます。
その検査を尿鑑定といいますが、その前段の手続きとして採尿があります。
採尿には、任意採尿と強制採尿があるのですが、被採尿者が警察官等の指示に従った自ら自然排尿した尿を警察等の捜査機関に任意提出することを「任意採尿」といい、任意採尿を拒否した被採尿者から強制的に尿を採ることを「強制採尿」といいます。
任意採尿で採取された尿と、強制採尿で採取された尿に証拠能力の差異はありません。
警察官等の捜査員が被採尿者から強制採尿するには、裁判官の発した捜索差押許可状(以下「令状」とする。)が必要です。
令状は、警察官等の捜査員が、疎明資料を作成した上で裁判官に対して請求します。
疎明資料には、被採尿者が任意採尿に応じない旨と、被採尿者が覚醒剤を使用している蓋然性がある旨が記載されているのですが、警察等の捜査機関は「任意採尿を拒否するということは覚醒剤をしようしているのだろう」と考えており、人が住んでいる居宅や、人が管理している建物等に対する捜索差押を許可する令状に比べると、強制採尿の令状は比較的発付されやすい傾向にあり、裁判官が強制採尿の令状を発付しないことは滅多にありません。
強制採尿は、病院の医師によって、尿道にカテーテルを通して膀胱から直接的に尿を採取する方法で行われます。
令状の効力で、強制採尿を行う病院まで被採尿者を強制的に連行することが許されているので、病院以外の場所で強制採尿の令状を示されて執行されると、警察官等の捜査員によって強制的に病院まで連行されるので注意しなければなりません。
【尿鑑定】
尿鑑定は、警察官等が行う簡易鑑定と、科学捜査研究所の職員が行う本鑑定の2種類があります。
「インスタントビュー」という専用の薬物検査キットを使用する鑑定と、警察署に設置されている「ガスクロマトグラフィー 」という大型機械を使用する鑑定の2種類の簡易鑑定を採用しています。
採尿した方全てに簡易鑑定が実施されるわけではなく、被採尿者が覚醒剤を使用している可能性が高い場合や、本鑑定の鑑定結果を待っていては、被採尿者が逃走して、その後の逮捕が困難になることが予想される場合(緊急性がある場合)などは簡易鑑定が実施される傾向にあります。
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