覚醒剤使用の疑いで捜査

2021-07-08

今回は、薬物使用の疑いで尿検査を受けたものの、明確な反応が検出されなかったため、在宅で捜査を受けている被疑者がとるべき行動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

Aさんは、外出中に職務質問を受け、薬物使用の疑いを強めた警察官により尿検査が実施されました。
しかし、簡易な検査であったため、Aさんが薬物を使用していることを明確に示す反応が検出されませんでした。
警察官はAさんに「尿は科学捜査研究所で本格的に検査することになる。結果が出るまでは自宅で待っていてほしい」と告げ、Aさんは自宅に戻ることができました。
Aさんは最近、覚醒剤を使用した心当たりがあるので、検査の結果によっては逮捕されてしまうのではないかと不安に感じています。(フィクションです)

~覚醒剤使用罪について~

覚醒剤を法定の除外事由なく、みだりに使用する行為が犯罪であることはいうまでもありません。

〇覚醒剤取締法第四十一条の三 次の各号の一に該当する者は、十年以下の懲役に処する。
一 第十九条(使用の禁止)の規定に違反した者

〇同法第十九条 次に掲げる場合のほかは、何人も、覚醒剤を使用してはならない。
一 覚醒剤製造業者が製造のため使用する場合
二 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者が施用する場合
三 覚醒剤研究者が研究のため使用する場合
四 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合
五 法令に基づいてする行為につき使用する場合

~Aさんが逮捕されなかったのはなぜ?~

Aさんを覚醒剤使用の疑いで逮捕するためには、
〇「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること」(令状による通常逮捕の場合・刑事訴訟法第199条1項)、
〇「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があること」(緊急逮捕の場合・刑事訴訟法第210条1項)が要件として求められています。
もっとも、覚醒剤使用事件では尿検査の結果使用の疑いが生じるので、逮捕状を求めることができない急速な場合はあまり考えられず、緊急逮捕でなく通常逮捕となるでしょう。
なお、覚醒剤を使用するところを現認すれば、現行犯として、令状なく逮捕することが可能です。

警察官らが行った簡易検査の結果は、明確にAさんが覚醒剤を使用したことを示すものではなかったため、上記要件を満たさないとして逮捕されなかったものと考えられます。

~今後はどうなる?~

科学捜査研究所における本格的な検査により、Aさんが覚醒剤を使用したことを示す結果が得られれば、逮捕されてしまう可能性が高いでしょう。
特にAさんには実際に覚醒剤を使用した事実があるのですから、上記のような結果が出てもまったくおかしくありません。
これによれば、近い将来、Aさんが逮捕されてしまう可能性がある、ということになるので、何らかの対策を講じるべきでしょう。

~逮捕に備えて弁護士を選任~

Aさんが覚醒剤使用の疑いで逮捕された場合、捜査段階において最長23日間の身体拘束を受ける可能性があります。
その間、誰からもサポートを受けられなければ、大きな身体的、精神的負担が生じます。

近い将来、逮捕されてしまう可能性が見込まれるときは、逮捕されてしまう前に弁護士と相談し、あらかじめ弁護活動を依頼しておくことをおすすめします。
勾留を延長されることなく起訴され、起訴後ただちに保釈されれば、身体拘束を最低限度に抑えることができます。
あらかじめ弁護士を依頼しておくことにより、実際に逮捕されてしまった後の弁護活動がスムーズになるでしょう。

ただし、この場合は私選弁護人を依頼する必要があります。
当番弁護士は逮捕された後にはじめて依頼できる弁護士であり、また、接見を受けられる回数も一度だけです。
国選弁護人は、資力要件を満たした被疑者に勾留決定が出されてから、はじめて付けられる弁護士です。
Aさんのように、逮捕される前の被疑者はこれらの制度を利用することができないので、私選弁護人を依頼しなければなりません。

私選弁護人を依頼する場合には、弁護士費用を被疑者やその家族において負担する必要があります。
自身の経済的事情を考慮しながら、薬物事件の弁護活動に詳しい弁護士を探しだし、事件解決を依頼しましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
覚醒剤使用事件を起こし、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。