覚醒剤取締法違反事件で裁判員裁判に?
覚醒剤取締法違反事件で裁判員裁判に?
覚醒剤取締法違反事件で裁判員裁判になるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
〜事例〜
札幌市東区に住んでいるAさんは、X国から覚醒剤を輸入し、販売して大金を得ていました。
しかしある日、Aさんが輸入していた覚醒剤が発見され、Aさんは覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
札幌方面東警察署に留置されたAさんの元にAさんの家族が依頼した弁護士が訪れたため、Aさんは今後の刑事事件の流れや見通しを詳しく聞きました。
そこでAさんは、弁護士からこのまま起訴されれば裁判員裁判になるということを聞き、非常に驚きました。
Aさんは裁判員裁判について詳しくなかったため、弁護士から裁判員裁判の特徴や弁護活動についてさらに詳しく聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・覚醒剤取締法違反でも裁判員裁判になる
裁判員裁判とは、刑事裁判に法律の専門家である裁判官・検察官・弁護士以外に一般人から選ばれた裁判員が参加して被告人の有罪・無罪や有罪とする場合の刑罰の重さを決める裁判のことを指します。
裁判員裁判は2009年から行われているため、裁判員裁判が登場してから10年以上が経過しています。
そのため、この記事をご覧の皆さんにも裁判員裁判という言葉は聞き馴染みのある言葉となったのではないでしょうか。
この裁判員裁判は、全ての犯罪・刑事裁判に適用されるわけではなく、ある一定の重大犯罪に適用されるとされています。
特にイメージが強いのは、殺人事件など人の命に関わるような刑事事件の裁判ではないでしょうか。
しかし、今回のAさんの事例のように、覚醒剤取締法違反という薬物犯罪でも裁判員裁判の対象となります。
裁判員裁判の対象となる犯罪はどのように決められているのでしょうか。
裁判員裁判がどういった刑事事件を対象にしているのかは、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」(通称:裁判員法)で決められています。
裁判員法第2条第1項
地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条又は第3条の2の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第26条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
第1号 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
第2号 裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)
つまり、原則として、刑罰に「死刑または無期の懲役もしくは禁錮」が定められている犯罪については、起訴されれば裁判員裁判が開かれることになるのです。
これを念頭に置いて、今回のAさんが犯した覚醒剤取締法違反について確認してみましょう。
覚醒剤取締法第41条
第1項 覚醒剤を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第41条の5第1項第2号に該当する者を除く。)は、1年以上の有期懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、無期若しくは3年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
覚醒剤の輸入は、輸入の目的によって刑罰の重さが異なります。
例えば自己使用の目的で覚醒剤を輸入したような場合は覚醒剤取締法第41条第1項に当てはまり(1年以上の有期懲役)、販売する目的で覚醒剤を輸入したような場合は同法同条第2項に当てはまる(無期若しくは3年以上の懲役、又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金)ということになります。
今回の事例のAさんは、 X国から販売目的で覚醒剤を輸入していますから、覚醒剤取締法第41条第2項の「無期若しくは3年以上の懲役、又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金」が科される可能性があります。
ここで、先ほど確認した裁判員裁判の対象事件は「死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件」ですから、Aさんの覚醒剤取締法違反事件は裁判員裁判となるのです。
裁判員裁判というと薬物事件のイメージは薄いかもしれませんが、犯罪の種別に関係なく、裁判員裁判の対象となります。
裁判員裁判は通常の刑事裁判と異なる手続きも多く、刑事事件に詳しい弁護士にフォローしてもらいながら対応に臨むことが望ましいです。
刑事事件を中心に取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、裁判員裁判となる覚醒剤取締法違反事件のご相談・ご依頼も受け付けています。
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