覚醒剤所持の疑いで現行犯逮捕
今回は、覚醒剤所持の疑いで現行犯逮捕されてしまった場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
Aさんは、京都府福知山市の人気の少ない駐車場に車を停め、覚醒剤を使用していたところ、パトロール中の京都府福知山警察署の警察官から職務質問を受けました。
Aさんは警察官を認めた瞬間に、覚醒剤等をダッシュボードのケースに隠しましたが、隠すところを警察官に見られてしまいました。
警察官が「何か隠さなかったか」と聞くので、Aさんは「何も隠しませんよ」と答えたところ、「じゃあダッシュボードの中みてもいいな、特に見せられないものはないよな」と告げられました。
観念したAさんがダッシュボードのケースを開けたところ、粉末の入ったパケットが発見されました。
簡易検査の結果、粉末が覚醒剤であることが確認されたので、Aさんは覚醒剤取締法違反の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。(フィクションです)
~覚醒剤所持罪、及び使用罪について解説~
覚醒剤取締法第41条の2第1項は、覚醒剤をみだりに所持する行為につき、10年以下の懲役を予定しています。
また、Aさんには覚醒剤使用罪の嫌疑もかかるでしょう。
警察署に引致されてから、尿検査を求められることになると思われます。
提出した尿から覚せい剤の使用を示す反応が検出されれば、Aさんの覚醒剤使用行為を立証する有力な証拠となります。
法定の除外事由がないのに、覚醒剤を使用する行為については、10年以下の懲役が予定されています(覚醒剤取締法第41条の3第1項1号)。
~逮捕後の手続~
現行犯逮捕された後は、警察署に引致されます。
その後、犯罪事実の要旨、弁護人選任権について説明を受け、弁解を録取された後、取調べを受けることになります。
留置の必要があると認められると、逮捕時から48時間以内に身柄が検察へ送致されます。
送致を受けた検察官は、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内に、Aさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するかを決めます。
勾留の請求を受けた裁判官が勾留決定を出すと、10日間、勾留されます。
やむを得ない事由があると認められるときは、最長10日間、勾留が延長されます。
Aさんが勾留されている場合は、勾留の満期日までに、検察官がAさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決定します。
時に、覚醒剤所持の被疑事実による勾留が満期になった際にAさんを釈放し、改めて覚醒剤使用の疑いで逮捕されてしまう場合もあります。
このような場合は、身体拘束を受ける期間が非常に長くなってしまいます。
Aさんの負担が過大にならないようにするため、覚醒剤所持と、覚醒剤使用の捜査を並行して行うよう求めていく必要があります。
~起訴後の弁護活動~
捜査に違法な点があり、証拠能力を否定されることが見込まれる証拠が存在するなど、特殊な場合を除いては、覚醒剤取締法違反事件は起訴される可能性が高いといえます。
しかし、個人使用目的で覚醒剤を所持し、これを使用していたにすぎない場合には、適切な弁護活動を尽くすことにより、執行猶予付判決を獲得できる可能性があります。
起訴後の弁護活動として、Aさんが再び薬物に手を染めないことをアピールすることが重要となります。
具体的には、
①信頼できる身元引受人を用意し、出廷してもらった上で、証言をしてもらうこと、
②薬物依存の治療プログラムを開始すること(これは保釈を実現していないと困難です)、
③自助グループ(ダルクなど)に参加し、周囲の支援を得ながら、環境の改善や薬物の断絶を図ること
が挙げられます。
~さいごに~
覚醒剤事案は非常に再犯者が多く、事件が終了した後、ふたたび覚醒剤に手を染める方も少なくありません。
薬物から手を断ち切ることができなければ、犯罪を繰り返すことになってしまいますし、自身の健康にも悪影響を与えます。
弁護士や周囲の支援を受けながら、薬物を断ち切るよう努力を続けることが大切と思われます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が覚醒剤取締法違反の疑いで逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。