覚醒剤取締法違反(所持)で逮捕・薬物事件の弁護活動
覚醒剤取締法違反(所持)で逮捕されてしまった事案を題材に、薬物事件の弁護活動について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~事例~
大阪府吹田市に住むAは、覚醒剤をコカイン(麻薬)と思い込んで所持していた。
大阪府吹田警察署の警察官は、Aを覚醒剤取締法違反(所持)の疑いで逮捕した。
Aの家族は、薬物事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実をもとにしたフィクションです。)
~薬物に対する故意~
刑法犯として処罰される大前提として、(過失犯処罰規定がない限り)故意がなければ犯罪が成立することはありません。
この点、刑法38条1項本文は「罪を犯す意思がない行為は、罰しない」と規定していることも、そのことの表れといえます。
もっとも、本件においてAは、覚醒剤をコカイン(麻薬)と勘違いして所持しています。
つまり、Aは、客観的には覚醒剤所持という覚醒剤取締法違反に当たる行為をしていますが、麻薬取締法違反の認識(故意)しか有していないのです。
このような場合、故意との関係でどのような犯罪が成立するかが問題となります。
(なお、「覚せい剤取締法」は、令和元年の改正によって「覚醒剤取締法」に名称が変更されることとなっていることに注意が必要です(令和2年4月1日施行)。)
この点に関するリーディングケースとして有名なのが、最高裁昭和54年3月27日決定です。
同決定は、「麻薬と覚せい剤とは、ともに、その濫用によつてこれに対する精神的ないし身体的依存(いわゆる慢性中毒)の状態を形成し、個人及び社会に対し重大な害悪をもたらすおそれのある薬物であつて、外観上も類似したものが多いことなどにかんがみると、麻薬と覚せい剤との間には、実質的には同一の法律による規制に服しているとみうるような類似性がある」と判示しています。
そして、「両罪は、その目的物が覚せい剤か麻薬かの差異があるだけで、その余の犯罪構成要件要素は同一であり、その法定刑も全く同一であるところ、前記のような麻薬と覚せい剤との類似性にかんがみると、この場合、両罪の構成要件は実質的に全く重なり合つているものとみるのが相当である」とし、故意の阻却を認めず、客観的に存在する犯罪の成立を認めています。
本件も、上記判例と同様に、麻薬所持と覚醒剤所持とで実質的には同一の法律による規制に服していると考えれるような類似性が認められます。
さらに、覚醒剤所持と麻薬所持はいずれも「10年以下の懲役」と、法定刑も全く同一となっています。
したがって、上記判例法理から、覚醒剤取締法違反に対応する故意が認められ、(客観的に存在する)覚醒剤取締法違反(覚醒剤所持罪)が成立することになります。
~薬物事件における弁護活動について~
覚醒剤取締法違反などの薬物事件は、起訴される可能性が極めて高い犯罪類型です。
そのため、弁護士としては、当初から起訴されることを考慮に入れた弁護活動を行っていくことが重要となります。
特に同種前科がないような場合には、即決裁判手続を利用し被疑者・被告人の負担の軽減を図ることも考えられます。
即決裁判手続によれば、「裁判所は……できる限り、即日判決の言渡しをしなければならない」(刑事訴訟法350条の28)とされ、さらに「即決裁判手続において懲役又は禁錮の言渡しをする場合には、その刑の全部の執行猶予の言渡しをしなければならない」(同法350条の29)とされています。
また、逮捕後に勾留による身体拘束を受けていたとしても、刑の全部の執行猶予の告知を受ければ直ちに身体拘束から解放されることが可能になります(同法345条参照)。
このように、起訴されるとしても、被疑者・被告人の不利益を最小限にするため、様々な制度の活用していくことが考えられるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
覚醒剤取締法違反事件で逮捕された方のご家族は、年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)に 今すぐお電話ください。