大麻と捜索・差押え~USBメモリの差押えの可否
大麻と捜索・差押え~USBメモリの差押えの可否
福岡県北九州市在住のAさんは、福岡県八幡西警察署の警察官に大麻を有償譲渡しているとの疑いをかけられていました。そんな中、Aさんは自宅にいたところ、突然、八幡西警察署のガサ(捜索・差押え)を受けました。そして、Aさんは、大麻の取引に関する情報が記録されている、との理由で仕事で使うUSBメモリなどを押収されました。Aさんは、押収されたUSBメモリに大麻取引に関する情報を記録していた記憶はなく、それがないと仕事にならないため、一日でも早く還付してほしいと考えています。そこで、Aさんは、どうすればいいか薬物事件に関する知識、経験豊富な弁護士に無料法律相談を申し込みました。
(フィクションです。)
~ ガサ(捜索、差押え)の基本 ~
捜索とは、一定の場所・物・人の身体に対して、人・物の発見を目的としてなされる強制処分、差押えとは、物の占有を強制的に取得する処分、をいいます。
刑事訴訟法218条1項は、この捜索・差押えについて
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる・・・・・。(一部省略)
と規定しています。
捜索はプライバシー権、差押えは、財産権を侵害する行為ですから、その行為をためには、不当・違法な権利侵害を防止するため、予め発せられた裁判官の令状を必要としているのです。
捜索と差押えの許可状(令状)が別々に発せられることは少なく、一括して捜索差押許可状とうい令状が発せられるのが通常です。
~ 令状の基本 ~
また、裁判官の発する令状があるからといって、何から何まで差押えていい、というわけではありません。
刑事訴訟法218条1項には
犯罪の捜査のため必要があるとき
と記載されていますから、差押えられるものは、
犯罪(被疑事実)と関連のあるもの
でなければなりません。
また、令状を請求する捜査機関は
差し押さえるべき物、捜索すべき場所
などを特定して令状を請求しなければならず、令状を発布する裁判官も、これらの事項を記載した令状を発付しなければなりません。
~ 電磁的記録と電磁的記録媒体の差押え ~
ところで、差押えの対象は有体物であって、電磁的記録、すなわち、電子データのような無体物は差押えの対象ではありません。他方で、これを記録する電磁的記録媒体(USBメモリなど)は有体物であり差押えの対象です。
ただ、こうした電子データを記録した電磁的記録媒体は、実際に中身を確認しなければ、本当に犯罪に関係のある情報が記録されているかどうかわかりません。
そこで、差押えの現場で、電磁的記録媒体の内容を確認できない場合に、犯罪(被疑事実)との関連性の有無にかかわらずこれらを包括的に差押えることができるかどうかが問題となります。
この点、最高裁判所(最決平成10年5月1日)は、パソコン、フロッピーディスクなどの電磁的記録媒体の差押えの場面に関し、
・被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性
・そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは情報を破損される危険
の2つの要件を挙げ、これらの要件を満たす場合は電磁的記録媒体の中身を確認することなく差押えることも許されるとしています。
~ 還付のための法的手段 ~
よって、こうした要件が認められない場合は、当該差押えは
違法
であり、直ちに捜査機関に還付を求めなければなりません。
こうした場合に、捜査機関に物の還付を求める方法としては、裁判所がなした捜索・差押えの裁判に対する準抗告の申し立てです。
この申し立てが認められれば、捜索・差押えが取り消され、捜査機関から差押えられたものが還付されます。
なお、捜査機関の差押えが違法でない場合でも、差押えの必要がないことを理由に、捜査機関に物の還付を請求することができます。
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