覚せい剤使用の疑いで緊急逮捕
今回は、覚せい剤使用の疑いで緊急逮捕されてしまった場合の刑事手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
東京都調布市に住むAさんは、日頃から覚せい剤などの薬物を使用するなどして、繁華街を飲み歩いていました。
ある日、警視庁調布警察署の警察官から職務質問を受けた際、真夏にも関わらず長そでの服を着用していることや、会話のやり取りがスムーズでないことを見咎められ、尿を任意提出するよう求められました。
Aさんは任意に尿を提出しましたが、簡易検査に回される際の隙を狙って逃亡しました。
なお、Aさんの尿からは覚せい剤の使用を示す反応が検出されました。
翌日、Aさんが自宅を出るとパトロール中の警察官と遭遇しました。
Aさんがやはり逃げ出したため、警察官はAさんを引き留めて身元を確認したところ、昨晩逃亡した覚せい剤使用の被疑者であることが判明しました。
Aさんは後に覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで緊急逮捕されてしまいました。(フィクションです)。
~覚せい剤使用罪とは?~
その名の通り、法定の除外事由(「覚せい剤製造業者が製造のため使用する場合」や、「覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者が施用する場合」などが該当します)がないのに覚せい剤を使用する犯罪です。
覚せい剤取締法第19条は、同条1号~5号に掲げる場合の他、何人も、覚せい剤を使用してはならないとしています。
上記19条の規定に違反して覚せい剤を使用した場合は、10年以下の懲役が予定されています(覚せい剤取締法第41条の3第1項1号)。
~Aさんになされた緊急逮捕とは?~
緊急逮捕とは、
要件①:死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯した場合
要件②:罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある
要件③:急速を要し裁判官の逮捕状を求めることができない
上記3つの要件を充足した場合に、令状なしで犯人を逮捕する手続を言います。
なお、現行犯逮捕と異なり、逮捕することができる者は①検察官、②検察事務官又は②司法警察職員に限定されます。
~緊急逮捕は適正であったか?~
Aさんの疑われている覚せい剤使用罪は最長で10年以下の懲役に処せられる犯罪類型です。
これによれば、要件①の「長期三年以上の懲役に当たる罪を犯した場合」に該当することになります。
また、Aさんが逮捕された前日に行われた簡易検査によれば、Aさんが覚せい剤を使用したことを示す反応が検出されています。
これは要件②を充足したとする理由の1つとなるでしょう。
さらに、事件翌日のAさんは警察官を認めてさらに逃亡しようとしています。
警察官もパトロール中に偶然Aさんと接触したもので、逮捕状が出るまでAさんを放っておけばまた見失ってしまうでしょう。
こうした事情から、要件③も充足されるでしょう。
上記事実関係によれば、Aさんになされた緊急逮捕は適正であったと判断される可能性が高いと思われます。
~緊急逮捕後の手続~
Aさんが逮捕された後は、取調べが行われ、令状が請求されることになります。
令状が発せられなければ釈放されることになります。
ケースの事件はもともと身体拘束が長期化しやすい類型であることに加え、被疑者であるAさんが何度も逃亡を図っています。
これによれば、Aさんに勾留がつき、長期間身体拘束をされる可能性が高くなるでしょう。
事件が起訴された後は、保釈を請求することができます。
保釈許可決定が出れば、保釈保証金を納付して外に出ることができます。
Aさんが初犯であれば、適切な弁護活動を尽くすことにより、執行猶予付き判決を獲得することが見込めます。
まずは、早期に弁護士と相談し、善後策を練ることが重要でしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が覚せい剤使用の疑いで緊急逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。