おとり捜査で逮捕
おとり捜査で逮捕
~ケース~
神奈川県横浜市港北区在住のAさんは、区内で覚せい剤の売人をしていました。
Aさんは、「覚せい剤を2グラム売ってほしい。3日後の午後2時に大倉山駅のトイレで金を用意して待っている。」という電話を受けました。
Aさんは、3日後電話で指定されたトイレに行くと、数人の警察官が中に待機しており、Aさんはその場から逃げようとしたがその場にいた警察官らに進路を塞がれ、そのまま覚せい剤所持の容疑で現行犯逮捕されてしまいました。
Aさんは、神奈川県江北警察署に留置され、「そもそも電話してきたのは警察官である。このようなおとり捜査は違法である。」と主張している。
その後、Aさんは刑事事件に強い弁護士に接見を依頼することに決めました。
(上記の事例はフィクションです。)
~おとり捜査とは~
おとり捜査については、法律上規定された概念ではなく、明確な定義があるわけではありません。一般的には、捜査機関や捜査協力者などが、身分やその意図などを隠して、対象者に犯罪を行うように働きかけたり、犯罪を行う機会を提供し、実際に対象者が犯罪行為を行ったところを検挙するという捜査手法のことを指します。このようなおとり捜査は、直接的な被害者がおらず、密行性が高く通常の捜査では検挙が難しい薬物犯罪などで主に用いられることになります。
おとり捜査には、「機会提供型」と「犯意誘発型」の二つの類型に分けることができると考えられています。
機会提供型のおとり捜査は、もともと犯罪を行う意図を持っていた者に対し、捜査機関等が犯罪を行う場所や機会を与えるという捜査手法です。
他方、犯意誘発型のおとり捜査は、そもそも犯罪を行う意図が無い者を捜査機関等がそそのかして犯罪を行わせるという捜査手法をいいます。
おとり捜査は上記のように法律の規定がないことから、「強制の処分」に該当しない範囲でのみ行うことができます。
「強制の処分」に当たらないといえる場合には、裁判所の令状などを得ることなくおとり捜査を行うことができることになりますが、無制限におとり捜査を行うことができるというわけではなく、あくまで任意捜査の範囲内でのみ適法となります。
おとり捜査の適法性が問題となった事案において、最高裁は「少なくとも、直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において、通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難である場合に、機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象におとり捜査を行うことは、刑訴法197条1項に基づく任意捜査として許容されるものと解すべきである」としています(最決平16年7月12日)。
上記の最高裁判例によると、少なくとも覚せい剤所持といった薬物犯罪においてなされる「機会提供型」のおとり捜査については任意捜査として適法となると判断しているといえます。
上記の事例では、Aさんは以前から覚せい剤の売人をしており、覚せい剤を売る意思を当然に有していたといえることから、警察官はAさんに対し覚せい剤の所持(又は譲渡)の機会を提供したに過ぎず、機会提供型のおとり捜査ということになります。
そのため、上記の事例のおとり捜査については、判例上適法であると判断される可能性が高いです。
仮に、違法なおとり捜査が行われた場合には、そのような捜査によって押収された証拠品は違法収集証拠として証拠能力が認められず、裁判で使うことができなくなる可能性もあります。
そのため、おとり捜査で逮捕されてしまった場合には、速やかに刑事事件を専門に扱っている弁護士に相談することが必要となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は薬物事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
ご自分やご家族の受けたおとり捜査が違法捜査なのかどうか、専門家である弁護士に相談することができます。
初回無料法律相談のご予約受付や、初回接見サービスのお申込み受付を24時間いつでも行っていますので、0120-631-881までお気軽にお電話ください。