MDMA製造事件で逮捕

2019-05-11

MDMA製造事件で逮捕

~ケース~

兵庫県神戸市東灘区の製薬会社に勤めるAさんは、自らの借金を返すためにMDMAを製造し販売していた。
兵庫県東灘警察署の捜査官Xは、AさんがMDMAを製造・販売していることを突き止めた。
後日,神戸地方裁判所によって発付された逮捕状を基に,Aさんは兵庫県東灘警察署によって麻薬取締法違反麻薬製造)の疑いで逮捕された。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻Bさんは、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所初回接見を依頼した。
(2019年4月16日のニュースを基にしたフィクションです)

~麻薬取締法~

麻薬取締法は、正式名称を麻薬及び向精神薬取締法といい,その名の通り麻薬および向精神薬を取り締まる法律です。
この法律と関連法令(政令や施行令など)によって、具体的にどのような薬品が「麻薬」や「向精神薬」に該当するかが定められています。
これは、誤って不利益を受ける者が生じないよう刑罰法規が明確に規定されていなければならないという原則によるものです。
たとえば,「麻薬を所持してはいけない」という規定のみの場合,どういった薬品が麻薬に該当するのかが不明確であり、いかなる場合に処罰されるのか必ずしも分かりません。
そうすると,警察(国家)がある薬品を麻薬であると認定すれば恣意的な運用が可能となってしまいます。
そういった不都合がないように、刑罰法規などは予め罪となる事柄を明確に規定しておく必要があるのです。
上記事例で問題とされているMDMAは、正式名称を「メチレンジオキシメタンフェタミン」と言います。
このMDMAは、「麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令」の第1条40号によって麻薬であると指定されています。

~麻薬取締法違反~

麻薬取締法では無許可での麻薬の製造を禁止しています。
無許可でMDMA等の麻薬を製造した場合,1年以上10年以下の懲役が科されるおそれがあります。
また,営利目的での製造であった場合には、法定刑が1年以上の有期懲役(上限20年)及び500万円以下の罰金となります(65条1項2項)
なお,麻薬製造業者および麻薬研究者による研究目的での製造は禁止されていません。

~逮捕と在宅~

今回のケースでAさんは逮捕されてしまっています。
一方,ケースのモデルとなった事件では,大学教授が麻薬研究者としての許可を受けずに学生にMDMAを作らせていたというもので,逮捕はされずに書類送検されたようです。

被疑者を逮捕した警察は,原則として48時間以内に事件を検察官に送致するかどうか決めなければなりません。
そして、送致を受けた検察官は,24時間以内に被疑者の勾留を請求するかどうかを決定しなければなりません。
勾留請求に対する判断は裁判官が行い、勾留が認められた場合には10日間,延長請求が認められた場合には更に10日間の最長で20日間勾留されてしまうことになります。
検察官は勾留が終わるまでに原則として事件を起訴するかどうかを決定する必要があります。

一方で,被疑者を逮捕しない場合,事件を検察官に送致しなければならない時間的制約は基本的にありません。
警察が事件を捜査し,捜査した書類などをまとめて検察官に送致するので書類送検と呼ばれます。
また,検察官も勾留の場合と異なり,起訴するかどうかを決定する時間的制約も基本的にありません。
したがって,逮捕勾留されない在宅事件の方が事件の手続きがゆっくりと進む形になります。

逮捕勾留は無条件に認められるものではなく,住所不定・罪証隠滅,逃亡のおそれがある場合といった勾留の理由および勾留の必要性(捜査による利益が不利益に勝ること)が要求されます。
逮捕段階で弁護士を依頼することによって勾留阻止に向けた活動が可能です。
具体的には,ご家族の方の上申書や勾留の必要がない事を主張する意見書を検察官に提出します。
今回のケースでは、家庭でしっかりと監督すること,罪証隠滅をしないために製造現場である会社には近づかない事などを確約した書面を提出することが考えられます。
勾留請求が認められてしまった場合にも,勾留に対する準抗告という不服申立てを裁判所に行うことができます。
これらが認められれば、晴れて釈放されることになります。

ただし,釈放されたとしても事件そのものは存続していますし,今回のケースのような事件ではほぼ間違いなく刑事裁判を受けることになります。
麻薬に限らず,薬物の営利目的での製造は所持や使用に比べて犯情が悪質であるとみなされやすく、初犯であっても実刑となってしまう可能性もあります。
しかし,事件への反省や今後の更生,再発防止への取り組みなどを裁判で主張することによって執行猶予付きの判決となる可能性もあります。
薬物事件の弁護経験の豊富な弁護士に依頼することによって実刑判決を回避できる場合もございます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
MDMAをはじめとする麻薬覚せい剤など薬物事件で逮捕されてしまいお困りの方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
初回接見・事務所での無料法律相談のご予約を24時間受け付けています。
兵庫県東灘警察署までの初回接見費用:35,200円)