覚せい剤事件で執行猶予

2019-05-16

覚せい剤事件で執行猶予

大阪府大阪市北区に住むAさんは、バーで知り合った男から勧められ、覚せい剤を使用してしまいました。
男が警察に逮捕されたことから捜査がAさんに及び、Aさんは覚せい剤取締法違反(自己使用)の疑いで大阪府大淀警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです)

【覚せい剤について】

覚せい剤はアンフェタミン系の精神刺激薬です。
摂取することで神経が興奮し、眠気や疲労感を取り払う覚醒作用があります。
これらの効果は工場の生産性向上に有益だと考えられて、太平洋戦争中、旧日本軍は覚せい剤を大量に製造しました。
戦後、軍の物資が民間に放出されましたが、覚せい剤はタバコや酒といった嗜好品が不足していた民間に広まりました。
こうした経緯もあり、現在の日本において覚せい剤取締法による検挙人数は1万人を超え、薬物事件の中で最も多いです。
覚せい剤覚せい剤取締法によって規制されています。
覚せい剤取締法においては、覚せい剤の輸出・輸入、所持、製造、譲渡、使用が規制されています。
罰則についてはそのほとんどに懲役刑が含まれています。
中でも覚せい剤を輸出・輸入した場合、1年以上の有期懲役(上限20年)に処せられます。輸入して売ろうとしていたなど営利の目的がある場合は最低でも懲役3年、最高刑は無期懲役という非常に厳しいものとなっています。
覚せい剤に関する事件の性質としては、①特に使用事件において尿検査等により覚せい剤の使用が客観的に明らかであることと②被害者がいないことが挙げられます。
被害者がいないため、刑事事件において不起訴処分を得るために効果的な示談を行うことができません。
ですから、覚せい剤の使用が客観的に明らかになりやすいという事情もあり、覚せい剤事件では起訴を避けることが難しいと言えます。
実際、平成26年のデータでは刑事事件全体では起訴率が3割程度であるのに対し、覚せい剤事件に限って言うと8割が起訴されています。
このことからも、覚せい剤事件不起訴処分という形で日常生活に復帰することが容易でないことが伺えると思います。
そのため、覚せい剤事件においては執行猶予を得ることが重要になってきます。

【執行猶予とは】

執行猶予とは、懲役や禁錮といった判決で言い渡された刑をすぐには行わず一定期間その執行を猶予する制度です。
しかし、執行猶予が付いたからといって、絶対に刑を受けることがないかというとそうではありません。
猶予期間中に犯罪を起こして起訴され執行猶予が付かなかった場合など、一定の要件を満たしてしまえば、執行猶予が取り消されて処罰が執行されることには注意が必要です(刑法刑法26条から26条の3参照)。
また、不起訴処分とは異なり、犯罪を犯したことが公判で認められたわけですから前科が残ります。
一方、執行猶予が取り消されることなく一定期間が経過すれば、もはや刑を科されることはなくなります。
ですので、執行猶予を得ることで、刑務所に収容され社会から一定期間断絶されることは無くなる可能性があります。
社会に早期に復帰できることは事実ですから、その点はメリットということができるでしょう。

執行猶予を得るためにはいくつか要件があります。
①言い渡される刑が3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金であること
②事件が発生した過程、事件が社会に与える影響、被告人の性格・更生可能性等(情状と言われます)を総合考慮した結果、執行を猶予することが相当であると認められること

また被告人の前科・前歴等によって要件が追加されることがあります。
以下で場合ごとに見ていきます。
①前科・前歴のない場合
追加の用件はありません。
②過去に懲役・禁錮について執行猶予の判決を受けたことがあり、言い渡された執行猶予の期間が終了している場合
追加の用件はありません
③過去に懲役・禁錮について執行猶予の判決を受けたことがあり、執行猶予の期間が終了していない場合
1年以下の懲役または禁錮の言い渡しで、情状に特に考慮するべきものがあること
④過去に懲役・禁錮について実刑の確定判決を受けたことがある場合
刑の執行終了日または執行免除の日から今回の判決を言い渡される時点で5年が経過していること

以上が刑の全部の執行猶予の要件となっています。
刑の一部の執行猶予の場合は、③については追加の要件なく認められています。
一方で、刑の全部の執行猶予の場合、特に③について認められるのが容易ではなく、これらを訴えていくには法律の専門的な知識が必要です。
刑事裁判で執行猶予を得るためには、法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
大阪府大阪市北区刑事事件でお困りの方、覚せい剤所持などの薬物事件で嫌疑を受けてお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回の相談を無料で行っております。

大阪府大淀警察署までの接見費用:34,700円