覚せい剤使用事件で控訴

2019-09-03

覚せい剤使用事件で控訴

東京都港区に住むAさん(23歳)は、覚せい剤の常習使用者であるBさんに「シャブ持っていないか。」「打ち方分からないから打ってくれないか。」などと頼み、Bさんに覚せい剤入り水溶液の注射器を右腕に打ってもらいました。後日、Aさんは路上を歩いていると、Aさんの行動に不審を感じた警視庁東京湾岸警察署の警察官から職務質問を受けました。そして、Aさんは尿の任意提出を求められ、これに応じたところ、尿から陽性反応が出たことからAさんは覚せい剤取締法違反(使用罪)の件で緊急逮捕されました。また、Bさんも同じ罪で逮捕されました。Aさんは逮捕勾留を経て起訴され、裁判で懲役2年の実刑判決を受けたことから、これを不服として控訴しました。
(フィクションです)

~ 覚せい剤取締法(使用罪) ~

覚せい剤取締法には、覚せい剤の使用に関し、次の規定が設けられています。

覚せい剤取締法
19条(使用の禁止)
 左の各号に掲げる場合の外は、何人も、覚せい剤を使用してはならない
 1号 覚せい剤製造業者が製造のため使用する場合
 2号 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者が使用する場合
 3号 覚せい剤研究者が研究のため使用する場合
 4号 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から施用のために交付を受けた者が施用する場合
41条の3第1項 次の各号の一に該当する者は,10年以下の懲役に処する。
 1号 第19条(使用の禁止)の規定に違反した者

「使用」とは、覚せい剤等を用法に従って用いる、すなわち、「薬品」として消費する一切の行為をいいます。覚せい剤取締法は、覚せい剤を使用する客体を特に規定いません。ただ、通常は人体に使用する例が多いかと思います。人体に使用する場合、

自分で注射する場合でも、他人に注射する場合でも「使用」

に当たりますし、反対に、

他人に注射してもらう場合でも「使用」

に当たります。
また,使用方法は問いません。注射器で使用することが多いですが,直接も飲み込む経口投与,塗布,吸入,あぶりなどがあります。

~ 覚せい剤使用の量刑と控訴 ~

覚せい剤使用の場合、初犯であると「懲役1年6月 3年間執行猶予」の判決を言い渡されることが多いかと思います。
ところが、執行猶予中の場合はもちろん、執行猶予期間が経過したとしても、その後間もなくの犯行だった場合などは実刑判決を言い渡される可能性もあります。また、前回の罪が同種の罪(薬物事件)か異種の罪かによっても大きく異なるでしょう。

Aさんは実刑判決を言い渡され、それを不服として控訴しています。
控訴とは、簡易裁判所や地方裁判所から上級の高等裁判所へ上訴することをいいます。自分は無罪と考えているが有罪と認定された(事実誤認)、有罪であることは認めるが刑の種類や重さに不満があること(量刑不当)などを理由に控訴することができます。なお、控訴できるのは裁判を受けた被告人だけと思われている方もおられるかもしれませんが、訴追する側の検察官も控訴することができます。したがって、被告人側、検察側双方が控訴するというケースもよくあることです。

* 控訴期間には期限がある *

控訴期間は14日間です。そして、その期間の起算日は、判決言い渡し日の翌日です。
たとえば、平成31年4月1日に「懲役3年」との判決の言い渡しがあったとします。すると、控訴期間の起算日は4月2日ですからその日を含めた14日間が控訴期間ということになります。したがって、4月15日が控訴期限日で、その翌日の4月16日が確定日ということになります。
では、4月15日が土曜日だった場合はどうなるでしょうか?この場合、控訴期間の末日が土日祝日、12月29日から31日、1月2日、3日の場合は期間に算入しないとうい決まりがありますので、翌月曜日の4月17日が控訴期限日で、その翌日の4月18日が確定日となります。

~ 裁判(判決)の確定とは ~

確定とは、判決の内容に対しこれ以上不服申し立てをすることができなくなった状態のことをいいます。被告側、検察側が上訴することなく、上訴期間(14日間)が経過して裁判が確定した場合を「自然確定」といいます。なぜ、自然というのかといいますと、自然確定以外の事由、すなわち、当事者(被告人、検察官)の意思で確定することができるからです。つまり、被告人、検察官は上訴権を放棄したり、すでにした上訴を「取り下げ」たりすることができます。一方が上訴権を放棄したり、上訴を取り下げれば、他方が上訴権を放棄したり、上訴を取り下げた時点で裁判が確定します。

* 確定したらどうなるの? *

刑が確定すると、刑の執行がはじまります。死刑,懲役,禁錮,拘留の場合,身柄を拘束されている方は、そのまま収容施設で刑に服することになります。他方、在宅のまま刑が確定した場合は、検察庁から出頭の要請を受けます。そして、検察庁に出頭したのち、拘置所などに収容されます。ここで出頭しなかった場合は、収容状という令状によって強制的に身柄を拘束されます。執行猶予付き判決を受けた方は,確定日から刑の猶予期間がはじまります。

罰金,科料(1万円未満)の場合は,判決の言い渡しと同時に釈放されています。そして,刑が確定すると罰金,科料を納付しなければなりません。ただし,仮納付の裁判がついた場合は,刑の確定を待たずとも,罰金,科料を納付することができます。

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