【事例解説】覚醒剤密売による麻薬特例法違反で逮捕

2023-12-25

覚せい剤の密売を繰り返していたとして、麻薬特例法違反で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

大麻草

事例 

Aさんは、独自のルートから仕入れた覚せい剤を全国各地で密売していました。警察の地道な捜査により、Aさんの犯行が発覚し、麻薬特例法違反の疑いで逮捕されてしまいました。
警察から「Aさんを逮捕した」と連絡を受けたAさんの両親は、現在の状況を知るために弁護士に相談し、接見に行ってもらうことにしました。

覚醒剤の密売行為と麻薬特例法違反

事例のAさんは、全国各地で覚せい剤の密売行為を繰り返していたとして、麻薬特例法違反で逮捕されています。
覚醒剤の密売行為を繰り返していた場合は「覚醒剤取締法違反」で処罰されるのではと思われる方もいるかと思いますが場合によっては「麻薬特例法違反」で処罰される場合があるのです。
どちらの法律で処罰されるのかの違いはどのような部分にあるのでしょうか。

まず、麻薬特例法とは、正式名称を「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」という法律で、麻薬新条約と呼ばれる条約の締結に伴ってできた法律です。
麻薬特例法では、薬物犯罪による収益等を剥奪すること等によって規制薬物に係る不正行為の助長を防止したり、薬物犯罪に関する特例を定めたりしています。

今回取り上げた事例で麻薬特例法と関わってくるのは、被告人が何度も覚醒剤の密売を行っていたという部分であると考えられます。
というのも、麻薬特例法には以下のような条文があります。

麻薬特例法第5条
次に掲げる行為を業とした者(これらの行為と第8条の罪に当たる行為を併せてすることを業とした者を含む。)は、無期又は5年以上の懲役及び1,000万円以下の罰金に処する。

第4号 覚醒剤取締法第41条又は第41条の2(所持に係る部分を除く。)の罪に当たる行為をすること。

麻薬特例法という名前だけ聞くと、麻薬しか対象となっていないように思えますが、このようにして覚醒剤もその規制対象となっています。
この条文によると、覚醒剤取締法第41条もしくは第41条の2の所持以外の部分に当たる犯罪を「業として」行った場合、麻薬特例法違反となるとされています。
覚醒剤取締法第41条・第41条の2に当たる犯罪は、以下のものです。

覚醒剤取締法第41条
第1項 覚醒剤を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第41条の5第1項第2号に該当する者を除く。)は、1年以上の有期懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、無期若しくは3年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1,000万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。

覚醒剤取締法第41条の2
第1項 覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第42条第5号に該当する者を除く。)は、10年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。

すなわち、覚醒剤の輸出入や譲渡し・譲受けを「業として」行うと、特例に当てはまり、覚醒剤取締法違反ではなく麻薬特例法違反として処罰されることになるのです。
「業として」行われたかどうかは、その行為が反復継続して行われていたのかどうか、営利性はあったのかどうかなどの事情によって判断されます。
具体的には、何度も覚醒剤の密売をしたということであれば、反復継続して覚醒剤を譲り渡していたということになるでしょうし、高額の売上金を出していたことや集客を行っていたことなどもあれば営利性も認められそうです。
上記のような事情があると、麻薬特例法違反で処罰を受ける可能性があります。

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