覚せい剤取締法違反で逮捕

2019-09-23

覚せい剤取締法違反で逮捕

〈ケース〉
東京都渋谷区の代々木上原駅周辺で、Aさんは挙動不審であることを理由に警察官に職務質問を受けた。
その後も,Aさんは警察官の質問に対して要領を得ない応答をし,時々意識が朦朧とした様子も見せた。
そのため,警察官は覚せい剤使用の疑いが高いと判断し,その場でAさんの同意のもと所持品検査を行った。
その結果,Aさんの所持品から白い粉末入りのビニール小袋,注射器を発見した。
試薬検査の結果,覚せい剤の陽性反応が出た為,警察官はAさんを覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕した。
警視庁代々木警察署にて警察官がAさんの採尿検査をしたところ,検査薬に陽性反応が出たため,警察官は尿検査の結果を証拠として裁判所に通常逮捕令状を請求し,後日Aさんを覚せい剤取締法違反(使用)としても逮捕した。
(事例はフィクションです)

〈覚せい剤の所持、使用および譲渡の罰則〉

覚せい剤取締法は、覚せい剤(フェニルアミノプロパン、フェニルメチルアミノプロパン)の所持、使用、譲渡、譲受等を禁止しています。
覚せい剤を所持・譲渡した場合の刑罰は,営利目的の有無で異なります。
覚せい剤の所持・譲渡について営利目的がない場合は10年以下の懲役になる(41条の2第1項)一方,営利目的がある場合は1年以上の有期懲役(上限20年)となります(同2項)。
また,後者は、懲役に加えて500万円以下の罰金刑も科される可能性もあります。
覚せい剤の使用についても,10年以下の懲役が科されます(41条の3第1項)。
通常,営利目的なく覚せい剤を所持・使用した場合,初犯であれば,懲役1年6ヵ月程度で執行猶予3年の処分になることが多い傾向にあります。

〈職務質問・所持品検査〉

〇警察官職務執行法(警職法2条1項)
「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、 若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。」

端的に言えば,犯罪に関わっていると思われる人物に対して,警察官はその場で停止・質問することができるということです。
職務質問の内容として,身分証の提示を求められるほか,その場所にいた理由やどこへ向かうのかといったことを質問されます。
なお,職務質問は令状を必要とする強制処分(例として逮捕や捜索)ではありませんが,停止・質問する際に必要かつ合理的な範囲内であれば有形力の行使が認められます。
具体的には、相手の肩を掴んで引き留める行為が挙げられます。

実際は職務質問に伴って所持品検査が行われることが通常です。
本事例の所持品検査を直接規定した法令はありませんが,上記の警職法の職務質問の効果を上げるうえで必要かつ有効な行為であることから,先述の警職法2条1項で認められるとされています。
所持品検査には大きく分けて以下の4つの形態があります。
①衣服・所持品の外部を観察して質問する行為
②所持品の開示を求め,開示されたら点検する行為
③相手の同意がない時に,衣服・所持品の外部に触れる行為
④相手方の同意がない時に,所持品の内容を点検し,或いは,相手方の身体について所 持品の有無を点検する行為(身体検査)
特に③・④は所持品検査を受ける人が受けるプライバシーを一定程度制限する行為であるので,やむを得ない場合など,より厳しい条件の下で許容されます。

〈採尿検査の可能性〉

覚せい剤などの薬物を使用した疑いがある場合、採尿検査を行われることがあります。
採尿検査には、採尿検査を求められた人が任意で尿を提出する場合とそうでない場合があります。
任意での採尿・提出を拒否した場合,捜査機関は疑いの程度や被疑者の態度などにより強制採尿令状を請求・執行できます。
強制採尿令状の執行は,医師の手でカテーテルを用いて行われます。
この強制採尿は、覚せい剤などの使用行為の捜査・立証する為には極めて重要です。
もっとも、採尿を受ける人に身体的にも精神的にも大きな負担を強いるものであることから,やむを得ない場合にのみ裁判所が令状を発付して許可を与えることになっています。

〈覚せい剤の所持と使用〉

Aさんは覚せい剤の所持と使用という2つの罪で逮捕されています。
この場合,どのように刑罰が科されるのでしょうか。
覚せい剤の所持と使用の罪は併合罪(刑法45条)として扱われます。
この場合,「その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期と」します。
そのため,もし覚せい剤の所持と使用の両方が起訴されると、最長で15年の懲役が科すことが可能となります。
ただし、よほど事件が重大でない限り、それほど長期の懲役刑が科されることは稀でしょう。

覚せい剤取締法違反事件逮捕された場合,身柄の拘束が長期に及ぶ可能性が高いです。
理由としては,覚せい剤の入手経緯を詳細に捜査する必要があることや、証拠となる覚せい剤自体が隠滅しやすいことなどが挙げられます。
そして,長期の身柄拘束を受けた場合,学校や仕事への復帰が難しくなります。
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