覚せい剤の所持・使用事件で執行猶予

2019-12-22

覚せい剤の所持・使用事件で執行猶予

今回は、覚せい剤の所持・使用事件における弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

神奈川県川崎市に住むAさんは、自宅で覚せい剤を所持・使用した疑いで逮捕され、現在神奈川県宮前警察署に勾留されています。
Aさんには薬物事件の前科、前歴はありません。
取調べでは、購入先に迷惑がかかると思い、黙秘していた時期もありましたが、この頃は少しずつ覚せい剤の使用に至った経緯について供述を始めています。
検察官からは、公判請求を見込んでいる(起訴する方針ということです)と告げられており、なるべく軽い量刑の判決を受けられれば、と考えています。
どうすればよいのでしょうか。

~Aさんに成立する犯罪について解説~

覚せい剤取締法違反の罪が成立することになると思われます。
Aさんは自宅で覚せい剤を所持し、これを使用していたとのことなので、覚せい剤の所持罪、覚せい剤の使用罪の嫌疑がかけられていると考えられます。

覚せい剤の所持・使用の罪の法定刑は、いずれも「10年以下の懲役」となっております(覚せい剤取締法第41条の2第1項、41条の3第1項1号)。

検察官が「公判請求を見込んでいる」と言っているので、起訴される可能性が極めて高いと思われます。
検察官は有罪立証の可能性を十分に検討して起訴に踏み切るので、起訴されてしまうと無罪判決を獲得するのは一般的に困難と言えます。
捜査の手続に重大な違法があったので、証拠能力が否定されるべき証拠がある、などと主張する場合などを除いては、有罪判決を受けることを前提とした上で、いかに軽い量刑で済ませることができるかを考えていく方が良いかもしれません。

Aさんには薬物事件の前科、前歴がないので、適切な弁護活動を行えば、執行猶予付き判決を獲得できる可能性があります。
懲役刑を言い渡された場合であっても、執行猶予が付けられれば、刑務所に行かずに済みます。
もちろん、猶予期間中に犯罪を起こすなどして、執行猶予が取り消されてしまった場合には、刑務所に行かなければなりません。
執行猶予期間中に、問題を起こさないように生活を見直し、社会復帰を目指していきましょう。

~起訴後身体拘束は続くのか?~

勾留されたまま起訴されると、自動的に起訴後勾留に移行し、身体拘束の期間が数か月単位で伸びてしまいます。
その場合、裁判所に保釈請求を行い、保釈の許可を受けて身柄解放を実現すべきです。

保釈は、
①被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき
②被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき
③被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
④被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
⑤被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき
⑥被告人の氏名又は住居が分からないとき
などの事由がある場合を除き、許可されなければなりません(必要的保釈)。

また、これらの事由があっても、保釈された被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認められる場合、保釈が許可されます(裁量保釈)。

捜査段階で必要なことが全て明らかになっている場合は、保釈を許す決定を獲得しやすくなります。

外に出るためには、保釈保証金を納付しなければなりません。
保釈保証金を用意できない場合には、保釈保証金を立て替えてくれる機関もあります。
保釈保証金が用意できない場合は、弁護士に相談してみましょう。

~執行猶予付き判決の獲得を目指すために~

保釈中は、薬物依存症の治療プログラムを受けることをおすすめします。
これは、薬物への接触を断ち、執行猶予を獲得できる可能性を高めるためです。
裁判官は、Aさんが再度、薬物犯罪に手を染めずに生活することができるか、ということを気にしています。
Aさんが薬物を断つ努力をしていることをアピールすることによって、裁判官も執行猶予をつけやすくなります。

また、量刑を軽くするために、贖罪寄付が有効な場合があります。
贖罪寄付とは、弁護士会などの団体に対し、寄付を行って反省の意思を示す活動です。
覚せい剤の所持・使用罪などのように、直接の被害者がいない場合には、示談ができませんので、贖罪寄付を行い反省の意思を示すことがあります。

以上のような弁護活動は飽くまでも一例であり、実際には個々の事案に合わせて適切な活動を行う必要があります。
弁護士のサポートを受けながら、より有利な事件解決を目指していきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所であり、薬物事件の解決実績も豊富です。
ご家族が覚せい剤取締法違反事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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