覚せい剤取締法違反事件で保釈されるも取消しに

2019-12-17

覚せい剤取締法違反事件で保釈されるも取消しに

覚せい剤取締法違反事件における保釈とその取消しについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ ケース ~

埼玉県加須市に住むAさんは、覚せい剤取締法違反で起訴されていましたが、Aさんの弁護人保釈請求して許可され、釈放されていました。ところが、Aさんは第一回公判期日として指定されていた令和元年10月31日に、さいたま地方裁判所に出廷しませんでした。そこで、Aさんは、担当検察官の請求により裁判所の決定で保釈許可を取り消されてしまいました。そして、Aさんは、自宅にいたところ、保釈許可取消決定に基づいてAさんを収容しにきた検察事務官に収容されそうになりました。そこで、Aさんは自宅駐車場に停めてあった車に乗り込み、そのまま逃走しました。
(実例を基に作成したフィクションです。)

~ 保釈とは ~

保釈とは、被告人(起訴され裁判にかけられた人)に対する勾留の執行(効力)を停止して、その身柄拘束を解くことをいいます。
保釈のメリットとしては、

・精神的,肉体的負担の軽減
・ご家族などが安心する
・裁判に向けた十分な打合せが可能となる
・社会的不利益(解雇)などを回避できる可能性がある
  
などのメリットがあります。

~ 保釈許可が取り消される場合 ~

しかし、保釈はあくまで勾留の停止にすぎず(勾留の効力が消滅したわけではない)、保釈の条件を守らなければ取り消されることもあります。
刑事訴訟法では96条では以下の場合に、裁判所の決定で保釈許可を取り消すことができるとされています。

刑事訴訟法96条
 
1号 被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。
2号 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
3号 被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
4号 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
5号 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。

今回、Aさんは公判期日に出廷しておらず、かつ、その不出廷に正当な理由もないと認められたことから(1号)、保釈許可が取り消されたものと思われます。

~ 保釈許可が取り消された後 ~

保釈許可が取り消されると、再び刑事施設(留置場、拘置所など)に収容されます。
収容するのは、検察庁の検察事務官が担当することが多いかと思います。
この収容に関しては刑事訴訟法98条に規定されています。

刑事訴訟法98条

1項 保釈若しくは勾留の執行停止を取り消す決定があつたとき、又は勾留の執行停止の期間が満了したときは、検察事務官、司法警察職員又は刑事施設職員は、検察官の指揮により、勾留状の  謄本及び保釈若しくは勾留の執行停止を取り消す決定の謄本又は期間を指定した勾留の執行停止の決定の謄本を被告人に示してこれを刑事施設に収容しなければならない。
2項 前項の書面を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、同項の規定にかかわらず、検察官の指揮により、被告人に対し保釈若しくは勾留の執行停止が  取り消された旨又は勾留の執行停止の期間が満了した旨を告げて、これを刑事施設に収容することができる。ただし、その書面は、できる限り速やかにこれを示さなければならない。
3項 第七十一条の規定は、前二項の規定による収容についてこれを準用する。

また、保釈許可が取り消された場合、裁判所に預けていた保釈保証金の全部または一部が没収される可能性がおそれがあります。
刑を免れるために逃亡したとなれば、少なくとも保釈保証金の一部が返還されなくなることは覚悟すべきでしょう。

~ 逃走した場合は逃走罪? ~

なお、Aさんは逃走していますから逃走罪に問われるかのように思います。
ですが、逃走罪(97条以下)は、拘束中に逃走した場合に問われる罪です。
今回のケースにおいて、Aさんは保釈許可を取り消されたとはいえ、実際にまだ拘束されてないわけですから「拘束中」とはいえず逃走罪には問われないものと思われます。

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