覚せい剤所持で現行犯逮捕
覚せい剤所持で現行犯逮捕
~ケース~
Aさんは、覚せい剤と注射器をポケットに入れ、京都府京都市山科区内を飲み歩いていました。
1件目の飲食店で覚せい剤を使用した後、2件目の飲食店に向かっている最中、京都府山科警察署の警察官から職務質問を受けました。
警察官からは、「ポケットの中見てもいいか」と言われ、しぶしぶポケットの中身を出すと、覚せい剤と注射器が出てきました。
これがきっかけとなり、Aさんは覚せい剤所持の疑いで現行犯逮捕されました。(フィクションです)
~覚せい剤所持罪、覚せい剤使用罪について解説~
(覚せい剤所持罪)
覚せい剤をみだりに所持する犯罪です。
「所持」とは、覚せい剤に対する事実上の実力支配関係をいいます。
覚せい剤を自身が直接手にしている必要はなく、社会通念上本人の実力支配、管理の及ぶ場所に保管していれば足り、自宅に覚せい剤を置いている場合なども「所持」に該当します。
ケースでは、ポケットの中に覚せい剤を入れており、明らかに「事実上の実力支配関係」が認められるので、「所持」性が認められると考えられます。
覚せい剤所持罪につき有罪が確定すれば、10年以下の懲役に処せられます(覚せい剤取締法第41条の2第1項)。
(覚せい剤使用罪)
覚せい剤をはじめとする薬物事件においては、警察官から尿検査を求められることが非常によくあります。
尿やその鑑定書は、覚せい剤の使用を立証する極めて重要な証拠であり、陽性反応が出た場合は覚せい剤使用罪の疑いで逮捕されることも考えられます。
覚せい剤使用罪は、覚せい剤取締法第19条に違反して、覚せい剤を使用する犯罪です。
こちらも、覚せい剤所持罪と同じく、法定刑は10年以下の懲役となっております(覚せい剤取締法第41条の3第1項1号)。
「使用」とは、覚せい剤を消費する一切の行為をいいます。
自身に注射、経口投与、吸入する行為が「使用」の典型例です。
通常の覚せい剤使用の動機は、「快感を得ること」ですが、動機はこれに限定されておらず、例えば、警察官に職務質問された際に、覚せい剤を隠滅する目的でとっさに飲み込む行為も「使用」に該当します。
覚せい剤所持罪も、覚せい剤使用罪も、法定刑はかなり重い部類に属します。
罰金刑が予定されていないため、執行猶予がつかなければ、懲役の実刑判決となって刑務所へ収容されるおそれがあります。
また、覚せい剤取締法違反行為の起訴率は高く、上記のケースにつき起訴される可能性は高いと思われます。
したがって、ケースの事件においては、早期の身柄解放、執行猶予付き判決の獲得が主な到達点になってきます。
もちろん、不起訴処分の獲得を目指せる事情(違法な捜査など)があれば、不起訴処分を目指すべきであることはいうまでもありません。
~早期の身柄解放を目指す~
被疑者が逮捕され、釈放されない場合、逮捕時から48時間以内に身柄が検察へ送致されます。
送致後、検察官は身柄を受け取ったときから24時間以内に被疑者の勾留を請求するか、釈放するか、あるいは起訴するかを決めます。
検察官が勾留を請求し、裁判官がその請求の妥当性を認めると、10日間の身体拘束を受けます。
さらにやむをえない事由があると認められるときは、さらに最長10日間(逮捕から数えて最長23日間)の身体拘束を受けることになります。
上記の「勾留」が行われるのは、勾留の要件である逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがあると認められたときです。
そこで、弁護人となった弁護士としては、そうした勾留の要件を満たさないことを主張して勾留の当否を争うことになります。
勾留決定前であれば、検察官や裁判官に対して意見を述べ、早期の身柄解放を目指します。
勾留決定後であれば、準抗告などの不服申し立てにより裁判官の判断が妥当でないことを指摘し、勾留決定の取消しによる身柄の解放を目指します。
~執行猶予付き判決の獲得に向けた活動~
起訴されて以降は、保釈により社会に戻ることができます。
保釈は起訴されたその日のうちにも請求することができ、その請求が認められた場合に保釈保証金を納付して身柄解放となります。
そのため、起訴される前から、ある程度の金銭や、起訴された被告人の身元を引き受ける身元引受人など、保釈に必要な準備をしておくべきです。
起訴された場合は、裁判においてAさんの更生の可能性を見られることになります。
ですので、Aさんが社会に戻っても薬物に手を出さずに生活しうることを、裁判所に納得してもらわなければなりません。
それに際して、Aさんを受け入れる場所(家庭や勤務先)、薬物依存症の治療プログラムを受ける用意があると、Aさんにとっても有利に働く可能性が高いです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、刑事事件に熟練した弁護士が多数在籍しています。
ご身内の方が覚せい剤所持事件を起こし、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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