覚せい剤の尿検査を拒否し強制採尿

2019-08-09

覚せい剤の尿検査を拒否し強制採尿

~ケース~
Aさんは覚せい剤を使用し、兵庫県県神戸市内の繁華街を飲み歩いていました。
そうしたところ、警察官がAさんにつき、薬物使用者に特有の挙動を認めたため、職務質問を行いました。
Aさんは、腕の注射痕を見せることや尿検査を頑なに拒否したため、警察官らが4~5時間にわたって説得を続けました。
ですが、それでもAさんは要求に応じなかったことから、ついに強制的に尿を採取することになりました。(フィクションです)

~薬物使用の疑いをかけられるとどうなるか?~

薬物使用の被疑者が検挙されるきっかけは様々です。
日本における刑事手続は任意捜査が原則なので(刑事訴訟法第197条1項但書)、警察官が薬物使用の疑われる被疑者を見つけた場合、通常は説得を重ね、尿を任意提出するよう求めます。
ただ、「尿がでない」という弁解をするなどし、尿を提出しない被疑者も当然存在するので、このような場合には、強制の処分により尿を取得することになります。

~どこまで説得が許されるのか~

ケースでの警察官らは4~5時間にわたって説得を続けていますが、このようなことは許されるのでしょうか。
説得と称してAさんを足止めした場合は、実質的に身体拘束処分である逮捕がなされていたとして、任意捜査の限界を超え違法と判断される場合があります。
問題となってくる犯罪と嫌疑の程度、被疑者の態度、現場の状況により、その妥当性が判断されるでしょう。

~採尿令状について解説~

裁判官が発する令状により、強制的に個人が所有する物を押収したり、事件現場の検証を行ったりすることがあります。
これと同じく、令状によってAさんの尿を強制的に取得し(強制採尿)、その鑑定を行うことにより、Aさんの覚せい剤使用を立証することが考えられます。
Aさんの体内にある尿を強制的に採取することになるので、そのような捜査方法が果たして適正であるのか、という議論もあります。
この点について、最高裁は、厳格な条件(たとえば医師が行わなければならない)のもと令状により適法に行い得る旨を判示しています。

強制採尿を許す令状が発付されると、病院に連行され、医師の手によって強制的に尿を採取されることになります。
採取された尿から覚せい剤の使用を裏付ける成分が検出されれば、そのまま覚せい剤使用の疑いで現行犯逮捕されると考えられます。

覚せい剤使用罪の法定刑は重く、10年以下の懲役となっています。
罰金刑が予定されていないので、有罪判決が出ると、懲役刑が言い渡されることになります。
つまり、執行猶予が付かなければ即実刑になる、ということです。
そのため、覚せい剤使用罪により起訴されてしまった場合は、執行猶予付き判決の獲得に向けて行動することが重要です。

~逮捕後の弁護活動~

覚せい剤使用事件につき、早期の身柄解放の実現は困難が予想されます。
また、起訴される可能性も高いです。
起訴されてしまった場合には、保釈が認められる可能性があるので、保釈保証金の準備など、保釈の実現に向けた活動を行います。

また、より軽い量刑の判決を獲得するための活動として、「贖罪寄付」を行うことや、再犯防止に向けた治療を受ける用意をすることが考えられます。

まず、被害者のいる犯罪(たとえば傷害罪)においては示談を成立させることが重要ですが、覚せい剤使用罪は特定の被害者が存在するわけではありません。
そのため、上記のような示談はできない、ということになりますが、その代わりに、弁護士会などの団体に寄付をし、反省の意思を示すことが考えられます。
これを「贖罪寄付」といいます。

次に、再犯のおそれが高いと判断される場合には、厳しい判決が予想されます。
そのため、信頼できる身元引受人を確保したり、依存症治療を計画したりし、覚せい剤使用を繰り返さないよう環境整備がされていると主張することも重要です。

一方で、覚せい剤事件では、ときに捜査が行き過ぎて違法なものとなる場合があります。
たとえば、逮捕状もないのに被疑者の行動を長時間制限する、必要性が高くないにもかかわらず強制採尿を行う、などが考えられます。
こうした捜査により得られた証拠を用いて被告人を有罪にすることは許されないとして、採尿された尿やその鑑定書を証拠としないよう訴えるべき事案もあります(違法収集証拠排除)。
このような活動を通じ、よりAさんにとって有利な判決の獲得を目指していくことになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所であり、ケースのような薬物使用事件の解決実績も豊富です。
ご家族が覚せい剤使用事件を起こし、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

初回法律相談:無料