覚せい剤と全部執行猶予・一部執行猶予 

2020-04-21

覚せい剤と全部執行猶予・一部執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

京都府下京区に住むAさんは、京都府下京警察署の家宅捜索を受け、覚せい剤を所持していたとして覚せい剤取締法(所持罪)で逮捕され、その後起訴されました。そして、Aさんの判決期日は、令和2年4月16日と指定されました。実は、Aさんは、令和元年5月16日に、刑務所を出所(覚せい剤取締法違反(使用)で(懲役)1年6か月間服役)したばかりでした。Aさんと接見した弁護士は、再犯防止の観点からも、一部執行猶予判決を獲得できないか検討しています。
(フィクションです)

~執行猶予とは~

執行猶予とは、その罪で有罪ではあるが、言い渡された刑(懲役刑、罰金刑)の執行を一定期間猶予する(見送る)ことをいいます。そして、執行猶予には「全部執行猶予」と「一部執行猶予」の2種類があります。

~全部執行猶予を受けるための要件~

全部執行猶予を受けるための要件は、刑法25条1項に規定されています。

刑法25条1項
次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる

1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を受けた日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

つまり、執行猶予を受けるには

1 3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けること
2 上記1号、あるいは2号に該当すること
3 (執行猶予付き判決を言い渡すのが相当と認められる)情状があること

が必要ということになります。

では、Aさんは今回の裁判(判決)で全部の執行猶予判決を受けることができるのでしょうか?

まず、1号の「前に禁錮以上の刑に処せられた」とは、判決前に、禁錮以上(禁錮、懲役、死刑)の刑の言渡しを受け、その刑が確定したことをいいます。なお、刑には実刑のほか執行猶予も含みます。
この点、Aさんは、判決前に、懲役2年の実刑判決を受け服役していますから、「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない」とはいえず1号にはあたりません。つまり、Aさんは2号の「前に禁錮以上の刑に処せられた」者ということができますが、判決時には「執行を終わった日」、つまり刑の服役期間が満了した日から5年を経過していませんから、2号にもあたりません。

以上から、Aさんは全部の執行猶予判決を受けることはできません。

~一部執行猶予判決を受けるための要件~

薬物事件を犯した者に対する一部執行猶予については、「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律(以下「法律」)」に規定があります。一部執行猶予判決を受けるには次の要件が必要です(法律3条)。

1 薬物使用等の罪を犯したこと
2 本件で、1の罪又は1の罪及び他の罪について3年以下の懲役又禁錮の判決の言い渡しを受けること
3 刑事施設における処遇に引き続き社会内において規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが、再び犯罪をすることを防ぐために「必要」であり、かつ、「相当」であること

なお、薬物使用等の罪については、他の犯罪と異なり、前科の要件は必要とされていません。つまり、Aさんのような累犯前科を持つ方であっても、一部執行猶予判決の対象となり得ます。

「薬物使用等の罪」とは、
・大麻の所持又はその未遂罪
・覚せい剤の所持、使用等又はこれらの罪の未遂罪
・麻薬及び向精神薬取締法の所持罪等
などがあります。

では、Aさんは一部執行猶予判決を受けることができるのでしょうか?
まず、Aさんは今回、覚せい剤所持罪起訴されていますから「1」にはあたります。また、今回の判決で3年以下の懲役を受けることができれば「2」にもあたるでしょう。
問題は「3」にあたるかです。この点については、裁判でAさんに一部執行猶予判決を付するための「必要性」、「相当性」があるということを的確に立証していく必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、覚せい剤事件をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件で全部執行猶予、一部執行猶予獲得をお考えの方は、フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。