覚醒剤所持(営利目的)で現行犯逮捕・おとり捜査と弁護活動

2021-09-16

警察のおとり捜査により覚醒剤所持で現行犯逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

事例:Aは、覚醒剤を所持していたところ、以前から付き合いのあるBから「覚醒剤を買いたい」という旨の連絡があった。Aは、人通りの少ない公園を指定し、翌日Bと取引することにした。当日この現場でのやり取りの一部始終を監視していたの警察官は、その場で予試験を実施し、覚醒剤反応が出たことからAを覚醒剤取締法違反(営利目的所持)の疑いで現行犯逮捕した。なお、上記のBのAに対する覚醒剤取引の申し込みは、警察より依頼を受けておとりとして行ったものであった。Aの家族は、薬物事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。

~薬物犯罪とおとり捜査~

発見された薬物(と思われる物)に試薬による予試験を行い、覚醒剤反応が出たことから現行犯逮捕するという事例は薬物事件では少なくありません。本件でより特徴的なことは、Bを使って捜査機関が行った捜査が、いわゆる「おとり捜査」と呼ばれる捜査手法であることです。おとり捜査というと一般的にも認知度の高い捜査手法だと思われますが、しかし本来犯罪を取り締まる役割を担う捜査機関が犯罪の発生に手を貸すような捜査を行うことは許されるのでしょうか。
 おとり捜査の適法性に関して判例(最決平成16年7月12日)は、「少なくとも、直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において、通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難である場合に、機械があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象におとり捜査を行うことは、刑訴法197条1項に基づく任意捜査として許容されるものと解すべきである」として、任意処分の限界を超えない限りはおとり捜査も適法である旨を判示しています。
 したがって、実務上において覚醒剤事件などの薬物事件は重大犯罪とされていること、またその密航性からその摘発が困難であること、さらに判示のとおり直接の被害者がいない犯罪であることなどからすれば、本件おとり捜査も任意処分として認められる可能性が高いと思われます。
 なお、捜査の適法性に関しては、任意処分の前提として「強制の処分」(刑訴法197条ただし書)に当たらないことが必要となりますが、この点に関しては重要な権利利益の侵害がないとして強制処分とまではいえないことが通常でしょう。

~刑事弁護士による弁護活動(薬物事件)~

まず、上述のおとり捜査のような手法を含め、薬物事件は法的に問題の少なくない証拠収集が行われることが多いといわれている事件類型です。たとえば上述したようなおとり捜査もあらゆる場合に適法になるわけではなく、違法なおとり捜査が行われた場合には、それに引き続く逮捕等の身体拘束も違法となる可能性があります。また、違法なおとり捜査によって取得された証拠についても証拠排除される可能性も生じます。
したがって、起訴前の捜査弁護活動としても、かかる違法性を主張することによって逮捕・勾留といった身体拘束からの解放を目指す弁護活動や不起訴を目指した弁護活動を早々にあきらめるべきではないでしょう。他方で、薬物事件が起訴率の高い事件類型であることは否定しがたく、依頼者が起訴されてしまった場合における弁護活動についても抜かりのない準備が求められることになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)事件を含めた薬物事件を多数扱っている刑事事件専門の法律事務所です。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)事件で逮捕された方のご家族等は、年中無休で対応している弊所フリーダイヤル(0120-631-881)まで今すぐにお問い合わせください。