MDMA所持事件において保釈を目指す弁護活動

2021-09-23

今回は、MDMA所持事件を起こし、逮捕されてしまった場合において、保釈を目指す弁護活動につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~
会社員のAさんは、警察により自宅の捜索を受け、MDMAを自室の机に保管していた疑いで逮捕・勾留されてしまいました。
任意で尿検査を受けた結果、MDMAを使用したことを示す反応は検出されなかったので、現在はMDMAを所持していた嫌疑に絞り捜査が行われています。
Aさんのもとへ接見にやってきた弁護士の話によると、「捜査段階で釈放を実現するのはかなり難しい。釈放に向けた活動は行うが、保釈の実現を目指すことが身柄解放活動のメインになるだろう」とのことです。
Aさんは今後どうなるのでしょうか。(フィクションです)

~MDMAを所持した場合に成立する罪~

麻薬及び向精神薬取締法第66条1項は、「ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持」する行為を禁止しています。
ジアセチルモルヒネ等とは、一般に「ヘロイン」のことを意味します。
MDMAは、「ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬」に該当します。

「所持」とは、「事実上の実力支配関係」をいい、自宅自室の机にMDMAを保管する行為は、通常、「所持」に該当すると判断されるでしょう。
また、人から預かってMDMAを保管している場合であっても、「所持」に該当します。
MDMA所持罪の法定刑は、7年以下の懲役となっています。

~MDMAを使用した場合は?~
MDMAを使用(条文上「施用」となっています)する行為も処罰の対象です(麻薬取締法第66条の2第1項・27条第1項)。
こちらについても、法定刑は7年以下の懲役となっています。

もっとも、尿検査の結果、Aさんの尿からはMDMAを使用したことを示す反応が検出されなかったため、使用行為について起訴される可能性はほとんどゼロと考えてよいと思われます(ただし、取調べにおいて、保管していたMDMAをどのように扱っていたのかについて尋ねられることはあると思われます)。

~ケースの場合における身柄解放活動~

接見にやってきた弁護士が告げた通り、薬物事件の身体拘束は一般的に長引きがちで、法律上可能なすべての期間、逮捕・勾留される可能性が高いです。
捜査段階で身柄解放を実現することはかなりハードルが高いといえます。
もっとも、捜査によって十分に事件の全容が解明されていれば、起訴された後に「保釈」を実現できる可能性があります。

「保釈」とは、保釈保証金の納付を条件として、被告人に対する勾留の執行を停止して、その身柄拘束を解く裁判及びその執行を意味します。
捜査段階では「被告人」ではなく「被疑者」なので、保釈を請求することはできません。

裁判所は、保釈の請求があったときは、権利保釈の除外事由(重罪事件である、罪証隠滅のおそれがあるなど)がある場合を除き、原則として保釈を許可しなければなりません(権利保釈)。
また、権利保釈の除外事由がある場合であっても、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができます(裁量保釈)。
さらに、勾留による拘禁が不当に長くなったときは、請求によりまたは職権で、保釈を許さなければなりません(義務的保釈)。
なお、義務的保釈は実務上、ほとんどありません。

~保釈を実現するメリット~

身体拘束から解放されることにより、心身の負担が軽減することはもちろん、薬物依存の治療プログラムを受けることにより、再犯防止に向けた取り組みを行うことができます。
さらに、再犯防止に取り組んでいることを裁判所へアピールすることにより、Aさんへの判決にも有利に作用することが期待できます。
勾留されたままではこのような治療を受けることはできないので、薬物事件において保釈を実現する大きなメリットといえるでしょう。

MDMA所持の疑いで逮捕されてしまった場合は、すぐに弁護士のアドバイスを受け、有利な事件解決を目指していきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族がMDMA所持の疑いで逮捕されてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。