保釈中に覚せい剤使用で逮捕
保釈中に覚せい剤使用で逮捕
埼玉県草加市に住むAさんは、同区内の自宅アパートで、覚せい剤を所持し、使用した(覚せい剤取締法違反(所持罪、使用罪))疑いで埼玉県草加警察署に逮捕、その後、さいたま地方検察庁の検察官に同罪で起訴されました。Aさんの私選弁護人はさいたま地方裁判所に保釈請求し、許可されたことからAさんの家族から預かっていた保釈金を納付の上、Aさんは釈放されました。ところが、Aさんは保釈釈放中に知人女性宅を訪ね、その女性を誘って女性に覚せい剤を注射しました。後日、女性が草加警察署の警察官から職務質問を受けて事態が発覚。Aさんは覚せい剤取締法違反(使用罪)で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
~ 保釈とは ~
保釈とは、被告人(裁判にかけられた人)に対する勾留の執行(効力)を停止して、その身柄拘束を解くことをいいます。「被告人」とは起訴され、刑事裁判にかけられた人をいいますから、あくまで保釈請求は
起訴後
しかすることができません。
~ 保釈のメリット ~
保釈のメリットとしては以下の点が挙げられます。
① 精神的,肉体的負担の軽減
留置場,拘置所暮らしの生活は,多大な精神的,肉体的負担を伴います。保釈により釈放されれば,これらの負担から解放されます。
② 様々な処分を免れる
早期に釈放されることにより,会社の懲戒処分(解雇,減給等),学校の退学処分等を免れることができるかもしれません。
③ 家族が安心する
何より,ご家族が安心されます。ご家族が留置場等へ面会に行く手間も省けます。
④ 裁判に向けた十分な打合せができる
釈放されていますからいつでも弁護士に相談できるわけですし,何より落ち着いて、時間をかけて打合せを行うことができます。
~ 保釈の注意点 ~
保釈は、あくまで勾留の停止にすぎません(勾留の効力が消滅したわけではない)。また、メリットだけではありません。以下の点に注意する必要があります。
① 多額の保釈保証金が必要となる
保釈保証金の額は、被告人の認否、事案の内容等に鑑みて裁判官(裁判所)が決めます(日産のカルロスゴーン社長が保釈保証金1億円を納付したことはニュースになりました)。決して安い金額ではなく、通常の簡易な事件でさえ100万円~150万円を準備する必要があります。
② 保釈条件を遵守する必要がある
保釈を許可するにあたっては
・裁判所から呼び出された場合は必ず出頭する
・住居地を変更するには裁判所の許可を受ける
・被害者への連絡は弁護人を介する
・被害者、目撃者、共犯者などの事件関係者と接触しない
・薬物に近寄らない
などの条件を付けられます。全くフリーな状態で釈放されるわけではありません。
③ 条件を守らなければ保釈許可を取り消され保釈保証金を没収されて、拘束される
決められた条件を守らなければ保釈許可を取り消され、納付した保釈保証金は没収され、再び留置施設等に拘束されるおそれがあります。
~ 保釈中に・・・~
上記のとおり、保釈中は裁判所から指定された条件を守って生活しなければなりませんが、近年、保釈中に①逃走する、②覚せい剤を使用する、という事件が話題となりました。
①について
これは、神奈川県愛川町に住む男性が、刑務所に収容するため男性宅を訪れた検察庁職員らに包丁を示すなどして逃走したというものです。男性は控訴(1回目の裁判である第一審に対する不服申立て)を棄却され、第一審で言い渡された懲役3年6月の刑がすでに確定していた、ということですから純粋な保釈中ではありませんが、控訴申し立て後に保釈請求し、許可されたことから釈放されていたのです。なお、控訴審では男性は法廷に出廷する必要がありませんから、控訴棄却が言い渡されてもその日に収容されることはなく、言い渡しから数か月後に収容に至るという事態となったのです。この場合、保釈保証金は没収されます。
②について
次に、覚せい剤取締法(所持罪、使用罪)で起訴されていた埼玉県飯能市の男性が、保釈中、覚せい剤を知人女性に使用したというものです。このケースは、第一審裁判中での出来事であること、刑を言い渡されておらず、かつ、確定もしていないことが①のケースと異なります。男性は再度逮捕されています。では、保釈金は没収されるのかといえば、没収されません。これは、すでに起訴された事件と新たに逮捕された事件とが全く別の事件であるからです。
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