薬物事件と一部執行猶予

2019-07-20

薬物事件と一部執行猶予  

東京都府中市に住むAさんは、警視庁府中警察署の家宅捜索を受け、覚せい剤を所持していたとして覚せい剤取締法違反(所持罪)で逮捕され、その後勾留を経て起訴されました。そして、Aさんの判決期日は、令和元年6月18日と指定されました。実は、Aさんは、平成31年10月1日に、刑務所を出所(覚せい剤取締法違反(使用)で(懲役)1年6か月間服役)したばかりでした。Aさんと接見した弁護士は、再犯防止の観点からも、一部執行猶予判決を獲得できないか検討しています。
(フィクションです)

~ 執行猶予とは ~

執行猶予とは、その罪で有罪ではあるが、言い渡された刑(懲役刑、罰金刑)の執行を一定期間猶予する(見送る)ことをいいます。そして、執行猶予には「全部執行猶予」と「一部執行猶予」の2種類があります。今回は、そのうち一部執行猶予についてご紹介いたします。

~ 一部執行猶予とは ~

一部執行猶予は、言い渡された刑期のうち、一部を実刑とし、一部を執行猶予にするものです。
たとえば、薬物事件の場合、

被告人を懲役2年に処する。
その刑の一部である懲役6月の執行を2年間猶予し、その猶予の期間中被告人を保護観察に処する。

などという判決が言い渡されます。

一部執行猶予は、執行猶予期間中、刑の執行猶予取消しによる心理的強制の下で、

社会内における再犯防止・改善更生を促すこと

を目的としています。

* 一部執行猶予は実刑である *

一部執行猶予は、実刑と全部執行猶予の「中間」と誤解されることもありますが、あくまで実刑の一部です。
つまり、裁判所(裁判官)としては、従前どおり、まず実刑か全部執行猶予のどちらが相当かを判断した上で、実刑を選択した場合に、全部実刑か一部実刑(一部執行猶予)かを選択できる選択肢が増えたということになります。

~ 一部執行猶予判決を受けるための要件 ~

では、薬物事件で一部執行猶予を受ける要件をご紹介いたします。

薬物事件を犯した者に対する一部執行猶予については、「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律(以下「法律」)」に規定があります。一部執行猶予判決を受けるには次の要件が必要です(法律3条)。

1 薬物使用等の罪を犯したこと
2 本件で、1の罪又は1の罪及び他の罪について3年以下の懲役又禁錮の判決の言い渡しを受けること
3 刑事施設における処遇に引き続き社会内において規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが、再び犯罪をすることを防ぐために「必要」であり、かつ、「相当」であること

なお、薬物使用等の罪については、他の犯罪と異なり、前科の要件は必要とされていません。つまり、

Aさんのような累犯前科を持つ方であっても、一部執行猶予判決の対象

となり得ます。

ただし、薬物事件においては、執行猶予期間中

必ず保護観察

に付されます。

* 薬物使用等の罪とは? *

法律2条2項には次の罪が挙げられています。

同項2号 大麻の所持又はその未遂罪
同項4号 覚せい剤の所持、使用等又はこれらの罪の未遂罪
同項5号 麻薬及び向精神薬取締法の所持罪等

~ 一部執行猶予のデメリット ~

確かに、一部執行猶予は実刑の期間(刑務所に服役する期間)が短くなるというメリットはあります。しかし、薬物事件では、上記のように必ず保護観察が付きます。保護観察が付くと、定期的に保護観察に通所しなければならないなど、公的機関の監視下に置かれることになります。しかも、執行猶予期間中、保護観察に付されるわけですから、

全部実刑の場合の服役期間より公的機関の監視下に置かれる期間が長くなる

というデメリットが発生します。つまり、上記の例でいうと、全部実刑の場合、満期出所でも2年間の刑期で済むところ、一部執行猶予の場合、実刑の1年6月に加え、2年間保護観察を付されるわけですから、合計で3年6月、公的機関による監視下に置かれることになります。しかも、保護観察所から言われた遵守事項を守らなければ、執行猶予を取り消され、再び
服役しなければならないおそれもあります。

一部執行猶予を選択肢に入れる場合は、こうしたデメリットも考慮して検討しなければなりません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。薬物事件での一部執行猶予獲得をご検討中の方は、フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談初回接見サービスを24時間受け付けております。