Archive for the ‘未分類’ Category
覚せい剤事件のおとり捜査
覚せい剤事件のおとり捜査
~ケース~
東京都八王子市在住のAさんは、覚せい剤取締法違反の疑いで警視庁八王子警察署に逮捕されました。
その後、勾留により10日間拘束されたあと、覚せい剤取締法違反で起訴されてしまいました。
しかし、Aさんは警察による捜査がおとり捜査であって違法であったと主張しています。
というのも,Aさんは覚せい剤のいわゆる「売人」をしており,覚せい剤の取引に赴いたところ,取引相手は警察官であり覚せい剤取締法違反の疑いで現行犯逮捕されたという経緯があるからです。
(フィクションです)
~おとり捜査~
麻薬取締法第58条やあへん法第45条では、麻薬取締官などが麻薬やあへんに関する犯罪を捜査するにあたり,厚生大臣の許可を受けて,同法の禁止規定に関係なく麻薬やあへんなどを譲り受けることができる旨規定されています。
なお,この規定は麻薬取締官などにのみ譲る受けることが認められ,警察官は譲り受けることが認められていません。
銃刀法では警察官に銃器等の譲受を認める規定,公営競技に関連する法律ではノミ行為の情報収集のために「ノミ屋の客になることができる」という規定があります。
これらの規定は,捜査の中で犯罪組織などに身分を隠して近付いた場合に,違法行為を勧められることがあり,下手に断ると職業身分が露見しかねないよう場合に,自己の安全と捜査のために違法行為をしたとしても,捜査員が罪に問われないようにするためにあります。
すなわち,これらの規定はおとり捜査を一般的に許容しているわけではなく,これらの規定を根拠におとり捜査を行うことはできません。
逆に,これらの規定がないからといっておとり捜査が一般的に許容されないというわけでもありません。
なお,おとり捜査に関する規定は麻薬取締法およびあへん法にのみ規定があり,覚せい剤取締法および大麻取締法にはおとり捜査に関する明示の規定はありません。
おとり捜査は学説上,大きくわけて以下の2つの類型にわけることができます。
一つ目は,犯罪意思のない者に対して,働きかけによって犯意を生じさせ,犯行におよんだところを検挙する犯意誘発型と呼ばれるものです。
二つ目は,既に犯意を有している者に対して,その犯意が現実化および対外的行動化する機会(犯行の機会)を与えるだけの働きかけを行った結果,犯行に及んだところを検挙する機会提供型と呼ばれるものです。
犯意誘発型の場合,もともと,犯罪を行わなかったであろう者に対し国家(捜査機関)が干渉し,犯罪行為を行わせるものであり,まさに国家が犯罪を作り出すものであるから許されないと考えられています。
機会提供型については,最高裁判所昭和28年3月5日決定(刑集7巻3号482頁)が「おとり捜査は,これによって犯意を誘発された者の犯罪構成要件該当性,責任制又は違法性を阻却するものではなく,公訴提起の手続きに違反し又は公訴権を消滅させるものではない」と判示しています。
この事案はいわゆる機会提供型のおとり捜査であったため,機会提供型については捜査の違法はないと解されてきたといえるでしょう。
その後,「おとり捜査は,捜査機関又はその依頼を受けた捜査協力者が,その身分や意図を相手方に秘して犯罪を実行するように働き掛け,相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところで現行犯逮捕等により検挙するものであるが,少なくとも,直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において,通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難である場合に,機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象におとり捜査を行うことは,刑事訴訟法197条1項に基づく任意捜査(執筆者注:令状がなくとも行うことができる捜査)として許容されるものと解すべき」と判示されました(最高裁判所平成16年7月12日決定刑集58巻5号333頁)。
この判決によると,①直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において,②通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難であり,③機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象に行う,という3つの要件を満たす場合には任意捜査として許容されることになります。
これらの要件を満たさない場合には,強制捜査として直ちに違法捜査となるわけではありませんが,おとり捜査の適法性は厳しく審査されることになるでしょう。
次回は具体的な事件の内容からAさんに対するおとり捜査が許容されるものであるのかを解説していきたいと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
覚せい剤などの薬物事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
初回接見・無料法律相談の予約を24時間受け付けています。
外国人の覚せい剤所持事件で無罪主張
外国人の覚せい剤所持事件で無罪主張
~ケース~
神奈川県横浜市中区在住のフィリピン国籍で飲食店を経営しているAさんは、友人であるXさんからハンドバッグを譲ってもらった。
ある日,Aさんがお酒に酔って街を歩いていた際に,神奈川県加賀町警察署の警察官から職務質問を受けた。
Aさんは職務質問に応じ,任意の所持品検査にも応じた。
所持品検査の際,Xから譲ってもらったハンドバッグが二重底になっており,内側からパックに小分けされた覚せい剤が発見された。
Aさんはその場で覚せい剤取締法違反の疑いで現行犯逮捕されてしまった。
在留資格の関係で強制退去となってしまわないか心配になったAさんは、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に弁護を依頼した。
(フィクションです)
~在留資格~
外国人の在留資格については、出入国管理及び難民認定法(通称:入管法)に規定されています。
加えて,強制退去となる事由も入管法第24条に規定されています。
ただし、条文は「本邦からの退去を強制することができる」となっていますので,強制退去事由に該当した場合に直ちに強制退去とならない場合もあります。
実際の強制退去事由も24条に規定されており,無期又は1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた場合(執行猶予となった場合を除く)には強制退去事由となると規定されています(24条4号リ)。
しかし,薬物事件においては執行猶予の有無に関係なく,有罪判決を受けた場合は強制退去事由であると規定されています(24条4号チ)。
そのため,Aさんが仮に覚せい剤取締法違反で有罪となってしまった場合,執行猶予が付されたとしても強制退去させられてしまう可能性があります。
~無罪を主張~
覚せい剤に限らず、多くの薬物事件は初犯であれば執行猶予付きの判決となります。
しかし,覚せい剤取締法違反の場合,上述のように執行猶予が付されても強制退去事由に該当してしまいます。
そのため,Aさんが強制退去とならないためには、無罪判決もしくは不起訴処分を勝ち取る必要があります。
今回のケースのような事件では,Aさんは否認することになりますので,逮捕後勾留されてしまう可能性が高くなる可能性があります。
また、Xさんが自ら覚せい剤を隠していたと供述することはあまり考えられませんから,正式な刑事裁判で事実を争う形になる可能性は高いでしょう。
刑事裁判で無罪を主張する場合は,犯罪事実そのものがなかった(冤罪である),もしくは罪とならない事由があることを主張していきます。
今回のケースで、Aさんは覚せい剤自体を所持してしまっていたので、犯罪事実そのものがなかったと主張することは出来ません。
一方,刑法では故意処罰が原則であるため(刑法38条),Aさんは覚せい剤所持に関する故意・認識がなかったことを主張します。
覚せい剤所持には過失の場合の処罰規定はありませんので,故意がなかったと刑事裁判で認められればAさんは無罪となります。
裁判では、どのように主張を組み立てていくかによって主張が認められる場合と認められない場合に分かれてしまうことがあります。
今回のケースのような事件の場合,主張が認められるかどうかが有罪となるか無罪となるかの分かれ目となります。
無罪を主張したいような場合には、刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士に弁護を依頼されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
薬物事件に限らず,身に覚えのない事で逮捕されてしまったような場合には0120-631-881までご相談ください。
警察署での初回接見・事務所での無料法律相談のご予約を24時間受け付けております。
(神奈川県加賀町警察署までの初回接見費用:35,500円)
大麻所持と逮捕後の流れ
大麻所持と逮捕後の流れ
~ケース~
会社員のAさんは、埼玉県さいたま市浦和区内の自宅で大麻を栽培し,インターネットなどで大麻の販売をしていた。
ある日,Aさんは近所にある行きつけのバーで自分の栽培した大麻を使用した。
帰宅中,通りがかった埼玉県浦和警察署の警察官に職務質問をされ,ポケットから残っていた大麻が見つかり大麻取締法違反(所持)の現行犯として逮捕された。
Aさんは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に初回接見を依頼した。
(フィクションです)
~大麻取締法~
大麻取締法は、覚せい剤取締法,あへん法,麻薬及び向精神薬取締法とならぶ薬物四法のひとつです。
その名の通り,「大麻」すなわち大麻草の所持などを規制しています。
しかし,大麻取締法第1条では、成熟した茎およびその製品,大麻草の種子およびその製品を大麻から除くと規定しています。
また,大麻の使用そのものは規制されていません。
大麻が規制対象となっているのは、大麻草に含まれるテトラヒドロカンナビノールという成分が多幸感,幻覚,妄想などを引き起こし有害作用があるためです。
このテトラヒドロカンナビノールは大麻草の樹液に多く含まれており,花や葉には樹液が多く含まれていますが,成熟した茎や種子にはあまり含まれていません。
日本では,茎の部分は麻縄や麻織物として利用されていますし,種子の部分は七味唐辛子に使用されています。
大麻草をすべて規制対象としてしまうと,麻縄や七味唐辛子を持っているだけで,大麻所持として大麻取締法違反となってしまいます。
そのため,成熟した茎や種子およびその製品は大麻取締法の規制の対象から外されています。
また,薬物の使用の有無は主に検査などで指定成分(大麻では上記のテトラヒドロカンナビノール)が体内から検出されるかどうかで判断されます。
大麻の茎や種子には少量とはいえテトラヒドロカンナビノールが含まれていますので、七味唐辛子などで大麻の種子を食べた場合に検出されてしまう可能性があります。
そのため,規制対象となっている大麻草の花・葉・樹脂などからテトラヒドロカンナビノールを摂取したと確実に言うことができません。
そこで,覚せい剤など他の薬物と異なり、大麻については使用が処罰範囲から除外されました。
もっとも,罰せられるべき大麻の使用は,大麻の所持なくしては現実的には不可能ですので大麻所持で検挙されることは当然ありえます。
なお,覚せい剤や麻薬などは製造が禁止されていますが,あへん法や大麻取締法では原料であるケシや大麻草の栽培が禁止されています。
罰則は大麻の所持・譲受・譲渡は5年以下の懲役,栽培・輸出・輸入は7年以下の懲役となっています。
営利目的での所持などは7年以下の懲役および200万円以下の罰金の併科,栽培などは10年以下の懲役および300万円以下の罰金の併科となります。
~逮捕後の流れ~
薬物事件では,多くの場合が所持をはじめとするいくつかの違反行為の併合罪となります。
今回のAさんも大麻の栽培,所持および譲渡を行っています。
刑事事件において、逮捕や勾留(10日以上にわたる身体拘束)は逮捕状や勾留状に記載された犯罪事実のみに効力が及ぶとされています(事件単位の原則)。
たとえば,コンビニでの万引きで逮捕・勾留し,その身体拘束を利用して別の強盗事件の取調べなどをすることは原則として許されないとされています。
薬物事件の場合,使用・所持などは厳密にはそれぞれ別個の事件ですが一度の逮捕・勾留で一緒に取り調べられることが多くなっています。
このような場合,事件同士の関連性などから許されるかどうかが判断されます。
また,事件単位の原則を厳密に適用しますと,所持について逮捕した後,栽培で逮捕し,またその後に譲渡で逮捕というかえって被疑者の身柄拘束期間が長くなってしまいます。
そのため,身柄拘束期間を短縮する面でも,薬物事件で互いに密接関連しているような事件同士では一緒に取調べされる場合が多くなっています。
薬物事件では多くの場合勾留がなされますが,ある程度捜査が進展する前に身柄解放に向けた活動をした場合,釈放された後に別の容疑で再逮捕・再勾留されてしまう可能性が高くなっています。
薬物事件で逮捕されてしまい今後の見通しなどが不安な場合には、薬物事件の弁護経験が豊富な弁護士に相談されることをおすすめいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
薬物事件で逮捕されてしまい,今後の見通しなどがご不安な場合には0120-631-881までお気軽にご相談ください。
警察署等での初回接見・事務所での無料法律相談のご予約を24時間受け付けています。
(埼玉県浦和警察署での初回接見費用:35,900円)
覚せい剤事件で執行猶予
覚せい剤事件で執行猶予
大阪府大阪市北区に住むAさんは、バーで知り合った男から勧められ、覚せい剤を使用してしまいました。
男が警察に逮捕されたことから捜査がAさんに及び、Aさんは覚せい剤取締法違反(自己使用)の疑いで大阪府大淀警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです)
【覚せい剤について】
覚せい剤はアンフェタミン系の精神刺激薬です。
摂取することで神経が興奮し、眠気や疲労感を取り払う覚醒作用があります。
これらの効果は工場の生産性向上に有益だと考えられて、太平洋戦争中、旧日本軍は覚せい剤を大量に製造しました。
戦後、軍の物資が民間に放出されましたが、覚せい剤はタバコや酒といった嗜好品が不足していた民間に広まりました。
こうした経緯もあり、現在の日本において覚せい剤取締法による検挙人数は1万人を超え、薬物事件の中で最も多いです。
覚せい剤は覚せい剤取締法によって規制されています。
覚せい剤取締法においては、覚せい剤の輸出・輸入、所持、製造、譲渡、使用が規制されています。
罰則についてはそのほとんどに懲役刑が含まれています。
中でも覚せい剤を輸出・輸入した場合、1年以上の有期懲役(上限20年)に処せられます。輸入して売ろうとしていたなど営利の目的がある場合は最低でも懲役3年、最高刑は無期懲役という非常に厳しいものとなっています。
覚せい剤に関する事件の性質としては、①特に使用事件において尿検査等により覚せい剤の使用が客観的に明らかであることと②被害者がいないことが挙げられます。
被害者がいないため、刑事事件において不起訴処分を得るために効果的な示談を行うことができません。
ですから、覚せい剤の使用が客観的に明らかになりやすいという事情もあり、覚せい剤事件では起訴を避けることが難しいと言えます。
実際、平成26年のデータでは刑事事件全体では起訴率が3割程度であるのに対し、覚せい剤事件に限って言うと8割が起訴されています。
このことからも、覚せい剤事件は不起訴処分という形で日常生活に復帰することが容易でないことが伺えると思います。
そのため、覚せい剤事件においては執行猶予を得ることが重要になってきます。
【執行猶予とは】
執行猶予とは、懲役や禁錮といった判決で言い渡された刑をすぐには行わず一定期間その執行を猶予する制度です。
しかし、執行猶予が付いたからといって、絶対に刑を受けることがないかというとそうではありません。
猶予期間中に犯罪を起こして起訴され執行猶予が付かなかった場合など、一定の要件を満たしてしまえば、執行猶予が取り消されて処罰が執行されることには注意が必要です(刑法刑法26条から26条の3参照)。
また、不起訴処分とは異なり、犯罪を犯したことが公判で認められたわけですから前科が残ります。
一方、執行猶予が取り消されることなく一定期間が経過すれば、もはや刑を科されることはなくなります。
ですので、執行猶予を得ることで、刑務所に収容され社会から一定期間断絶されることは無くなる可能性があります。
社会に早期に復帰できることは事実ですから、その点はメリットということができるでしょう。
執行猶予を得るためにはいくつか要件があります。
①言い渡される刑が3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金であること
②事件が発生した過程、事件が社会に与える影響、被告人の性格・更生可能性等(情状と言われます)を総合考慮した結果、執行を猶予することが相当であると認められること
また被告人の前科・前歴等によって要件が追加されることがあります。
以下で場合ごとに見ていきます。
①前科・前歴のない場合
追加の用件はありません。
②過去に懲役・禁錮について執行猶予の判決を受けたことがあり、言い渡された執行猶予の期間が終了している場合
追加の用件はありません
③過去に懲役・禁錮について執行猶予の判決を受けたことがあり、執行猶予の期間が終了していない場合
1年以下の懲役または禁錮の言い渡しで、情状に特に考慮するべきものがあること
④過去に懲役・禁錮について実刑の確定判決を受けたことがある場合
刑の執行終了日または執行免除の日から今回の判決を言い渡される時点で5年が経過していること
以上が刑の全部の執行猶予の要件となっています。
刑の一部の執行猶予の場合は、③については追加の要件なく認められています。
一方で、刑の全部の執行猶予の場合、特に③について認められるのが容易ではなく、これらを訴えていくには法律の専門的な知識が必要です。
刑事裁判で執行猶予を得るためには、法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
大阪府大阪市北区の刑事事件でお困りの方、覚せい剤所持などの薬物事件で嫌疑を受けてお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回の相談を無料で行っております。
大阪府大淀警察署までの接見費用:34,700円
MDMA製造事件で逮捕
MDMA製造事件で逮捕
~ケース~
兵庫県神戸市東灘区の製薬会社に勤めるAさんは、自らの借金を返すためにMDMAを製造し販売していた。
兵庫県東灘警察署の捜査官Xは、AさんがMDMAを製造・販売していることを突き止めた。
後日,神戸地方裁判所によって発付された逮捕状を基に,Aさんは兵庫県東灘警察署によって麻薬取締法違反(麻薬製造)の疑いで逮捕された。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻Bさんは、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に初回接見を依頼した。
(2019年4月16日のニュースを基にしたフィクションです)
~麻薬取締法~
麻薬取締法は、正式名称を麻薬及び向精神薬取締法といい,その名の通り麻薬および向精神薬を取り締まる法律です。
この法律と関連法令(政令や施行令など)によって、具体的にどのような薬品が「麻薬」や「向精神薬」に該当するかが定められています。
これは、誤って不利益を受ける者が生じないよう刑罰法規が明確に規定されていなければならないという原則によるものです。
たとえば,「麻薬を所持してはいけない」という規定のみの場合,どういった薬品が麻薬に該当するのかが不明確であり、いかなる場合に処罰されるのか必ずしも分かりません。
そうすると,警察(国家)がある薬品を麻薬であると認定すれば恣意的な運用が可能となってしまいます。
そういった不都合がないように、刑罰法規などは予め罪となる事柄を明確に規定しておく必要があるのです。
上記事例で問題とされているMDMAは、正式名称を「メチレンジオキシメタンフェタミン」と言います。
このMDMAは、「麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令」の第1条40号によって麻薬であると指定されています。
~麻薬取締法違反~
麻薬取締法では無許可での麻薬の製造を禁止しています。
無許可でMDMA等の麻薬を製造した場合,1年以上10年以下の懲役が科されるおそれがあります。
また,営利目的での製造であった場合には、法定刑が1年以上の有期懲役(上限20年)及び500万円以下の罰金となります(65条1項2項)
なお,麻薬製造業者および麻薬研究者による研究目的での製造は禁止されていません。
~逮捕と在宅~
今回のケースでAさんは逮捕されてしまっています。
一方,ケースのモデルとなった事件では,大学教授が麻薬研究者としての許可を受けずに学生にMDMAを作らせていたというもので,逮捕はされずに書類送検されたようです。
被疑者を逮捕した警察は,原則として48時間以内に事件を検察官に送致するかどうか決めなければなりません。
そして、送致を受けた検察官は,24時間以内に被疑者の勾留を請求するかどうかを決定しなければなりません。
勾留請求に対する判断は裁判官が行い、勾留が認められた場合には10日間,延長請求が認められた場合には更に10日間の最長で20日間勾留されてしまうことになります。
検察官は勾留が終わるまでに原則として事件を起訴するかどうかを決定する必要があります。
一方で,被疑者を逮捕しない場合,事件を検察官に送致しなければならない時間的制約は基本的にありません。
警察が事件を捜査し,捜査した書類などをまとめて検察官に送致するので書類送検と呼ばれます。
また,検察官も勾留の場合と異なり,起訴するかどうかを決定する時間的制約も基本的にありません。
したがって,逮捕・勾留されない在宅事件の方が事件の手続きがゆっくりと進む形になります。
逮捕・勾留は無条件に認められるものではなく,住所不定・罪証隠滅,逃亡のおそれがある場合といった勾留の理由および勾留の必要性(捜査による利益が不利益に勝ること)が要求されます。
逮捕段階で弁護士を依頼することによって勾留阻止に向けた活動が可能です。
具体的には,ご家族の方の上申書や勾留の必要がない事を主張する意見書を検察官に提出します。
今回のケースでは、家庭でしっかりと監督すること,罪証隠滅をしないために製造現場である会社には近づかない事などを確約した書面を提出することが考えられます。
勾留請求が認められてしまった場合にも,勾留に対する準抗告という不服申立てを裁判所に行うことができます。
これらが認められれば、晴れて釈放されることになります。
ただし,釈放されたとしても事件そのものは存続していますし,今回のケースのような事件ではほぼ間違いなく刑事裁判を受けることになります。
麻薬に限らず,薬物の営利目的での製造は所持や使用に比べて犯情が悪質であるとみなされやすく、初犯であっても実刑となってしまう可能性もあります。
しかし,事件への反省や今後の更生,再発防止への取り組みなどを裁判で主張することによって執行猶予付きの判決となる可能性もあります。
薬物事件の弁護経験の豊富な弁護士に依頼することによって実刑判決を回避できる場合もございます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
MDMAをはじめとする麻薬や覚せい剤など薬物事件で逮捕されてしまいお困りの方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
初回接見・事務所での無料法律相談のご予約を24時間受け付けています。
(兵庫県東灘警察署までの初回接見費用:35,200円)
シンナー吸引と弁護士の接見
シンナー吸引と弁護士の接見
事例 :Aは、自宅近くの路上において、自車を停めて車内でシンナーを吸引した。
京都府西京警察署の警察官は、Aを毒物及び劇物取締法違反の疑いで逮捕した。
Aの家族は、薬物事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)
~シンナーと毒物及び劇物取締法 ~
本件ではAは、シンナーを吸引した容疑で逮捕されています。
そもそも、シンナーの吸引が犯罪にまでなるとは知らなかったという方もいらっしゃるかもしれません。
この点に関する取締法規である「毒物及び劇物取締法」は、第3条の3において「興奮、幻覚又は麻酔の作用を有する毒物又は劇物(これらを含有する物を含む。)であつて政令で定めるものは、みだりに摂取し、若しくは吸入し、又はこれらの目的で所持してはならない」と定めています。
そして、ここでいう「政令」である毒物及び劇物取締法施行令が、「興奮、幻覚又は麻酔の作用を有する物」として、
法第3条の3に規定する政令で定める物は、トルエン並びに酢酸エチル、トルエン又はメタノールを含有するシンナー(塗料の粘度を減少させるために使用される有機溶剤をいう。)、接着剤、塗料及び閉そく用又はシーリング用の充てん料とする
としており、「シンナー」が規制対象となっていることが分かります。
再び「毒物及び劇物取締法」に戻ると、第24条の3において、「第3条の3の規定に違反した者は、1年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と罰則を設けており、Aはこの規定に違反したことによって逮捕されてしまったことになります。
~弁護士による早期の接見(面会)の重要性~
私選の弁護士のメリットとして、逮捕段階という早い段階で迅速に逮捕されてしまった被疑者との接見(面会)を行えるということがあります。
刑事訴訟法は、39条1項によって弁護士に特別の接見交通権を認めています。
したがって、この権利に基づき弁護士は、逮捕中の被疑者とも接見(面会)をすることができるのです。
これに対し、逮捕中(約3日間)の段階では、残念ながら家族を含め一般の方が逮捕されている被疑者と面会することはできません。
刑訴法80条には、「勾留されている被告人は、第39条第1項に規定する者(注:要するに弁護士)以外の者と、法令の範囲内で、接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる」とし、「被告人」の一般面会に関する規定を置いています。
しかし、被疑者段階(起訴される前の段階)に関する規定である刑訴法209条が、「逮捕状による逮捕」に関して刑訴法80条を準用していないことから、逮捕段階では一般面会は認められないとも解されています。
もっとも、実務上は、面会制限は上述の条文上の根拠に基づくものというよりは、逮捕から検察官による勾留請求まで72時間という厳しい時間的制約があるため、逮捕段階での一般面会を認めていないというのが実情といった方がいいかもしれません。
上記の時間的制約は、捜査機関側のみならず被疑者・弁護士側にとっても極めて重要です。
したがって、被疑者の不利益を最小限にとどめるためにも、早期の弁護士による接見交通権の行使が大きな意味を有するのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、毒物及び劇物取締法事件などの薬物事件を含む刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
弊所では、逮捕されてしまったご家族等に対する、迅速な弁護士による接見(多くの場合には土日祝も対応)をお約束します。
シンナーなど毒物及び劇物取締法事件で逮捕された方のご家族は、夜中も繋がる年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)にまずはお問い合わせください。
(京都府西京警察署への初回接見費用:36,800円)
向精神薬輸入事件で情状酌量裁判
向精神薬輸入事件で情状酌量裁判
東京都在住のAさん(40代女性)は、向精神薬を海外の違法サイトから個人輸入で購入しようとしたとして、東京空港警察署に逮捕された。
Aさんには薬物犯罪の前科が多数あったことから、Aさんは身体拘束を伴う警察取調べが続いた後に、「麻薬及び向精神薬取締法違反」などの容疑で起訴されて、裁判にかけられることになった。
Aさんの家族は、なんとかAさんが刑務所に入ることは避けられるように、裁判で実刑判決を避けられるようにと考えて、刑事事件に強い弁護士に法律相談することにした。
(事実を基にしたフィクションです)
~薬物種類と犯行態様による法定刑の違い~
薬物犯罪は、薬物種類と犯罪態様に応じて、「覚せい剤取締法」「麻薬及び向精神薬取締法」「あへん法」「大麻取締法」「医薬品医療機器等法」などの各法律によって、以下のように、刑罰の法定刑が定められています。
・薬物使用事件の場合
覚せい剤使用、ヘロイン施用 →「10年以下の懲役」
麻薬施用(ヘロイン以外)、あへん吸食 →「7年以下の懲役」
危険ドラッグ使用 →「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科」
・薬物所持事件(非営利目的)の場合
覚せい剤所持、ヘロイン所持 →「10年以下の懲役」
麻薬所持(ヘロイン以外)、あへん所持 →「7年以下の懲役」
大麻所持 →「5年以下の懲役」
向精神薬所持 →「3年以下の懲役」
危険ドラッグ所持 →「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科」
・薬物所持事件(営利目的)の場合
覚せい剤所持、ヘロイン所持 →「1年以上の有期懲役、情状により500万円以下の罰金を併科」
麻薬所持(ヘロイン以外)、あへん所持 →「1年以上10年以下の懲役、情状により300万円以下の罰金を併科」
大麻所持 →「7年以下の有期懲役、情状により200万円以下の罰金を併科」
向精神薬所持 →「5年以下の懲役、情状により100万円以下の罰金を併科」
・薬物輸入輸出事件(非営利目的)の場合
覚せい剤輸入輸出、ヘロイン輸入輸出 →「1年以上の有期懲役」
麻薬輸入輸出(ヘロイン以外)、あへん輸出輸入 →「1年以上10年以下の懲役」
大麻輸入輸出 →「7年以下の懲役」
向精神薬輸入輸出 →「5年以下の懲役」
危険ドラッグ輸入 →「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科」
・薬物輸入輸出事件(営利目的)の場合
覚せい剤輸入輸出、ヘロイン輸入輸出 →「無期または3年以上の懲役、情状により1000万円以下の罰金を併科」
麻薬輸入輸出(ヘロイン以外)、あへん輸出輸入 →「1年以上の有期懲役、情状により500万円以下の罰金を併科」
大麻輸入輸出 →「10年以下の懲役、情状により300万円以下の罰金を併科」
向精神薬輸入輸出 →「7年以下の懲役、情状により200万円以下の罰金を併科」
危険ドラッグ輸入 →「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又は併科」
・業として行う規制薬物の不法輸入、譲渡譲受(麻薬特例法)
薬物種類に関わらず「無期または5年以上の懲役及び1000万円以下の罰金」
なお、違法薬物の輸入は、関税法の規制対象にもなっています。
今回の事例のような、向精神薬輸入事件においては、「麻薬及び向精神薬取締法違反」に当たるところ、本人の「営利目的の有無」によって、刑罰の法定刑は大きく変わってきます。
向精神薬輸入事件で刑事弁護の依頼を受けた弁護士は、「営利目的の有無」という争点主張の他にも、被疑者・被告人に情状酌量の余地があるとして、本人が深く反省している事情や、今後の薬物克服のための病院通院等の治療の道筋を示すことで、裁判官の情状酌量による刑事処罰の軽減や実刑判決の回避のために、裁判での主張立証活動に弁護士が尽力いたします。
向精神薬輸入事件でお困りの方は、刑事事件を専門に扱っている、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
(東京空港警察署の初回接見費用:39,000円)
大麻所持罪で無罪主張
大麻所持罪で無罪主張
事例:Aが自宅において大麻を所持しているとの情報得た警察官Kは、この供述をもとに作成した調書を資料として、捜索差押許可状(令状)を請求し、これによってA宅を捜索した。
その結果、A宅から大麻1グラムが見つかったことから、大阪府住吉警察署の警察官Kは、Aを大麻取締法違反(大麻所持罪)の容疑で現行犯逮捕した。
Aの家族は、薬物事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実を基にしたフィクションです。)。
~大麻取締法と大麻所持罪~
Aは、大麻を所持していた疑いで現行犯逮捕(刑事訴訟法213条)されてしまっています。
大麻取締法は、大麻の不正取引や不正使用等の防止を目的とするものであり、医療用途での使用も禁止されています。
この点、大麻取締法は3条1項において「大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない」とし、譲渡や譲受とともに単純所持も禁止の対象としています。
本件における大麻所持罪は、大麻取締法24条の2第1項によって「5年以下の懲役」が刑罰として科される可能性があります。
~違法捜査に対する無罪主張(違法収集証拠排除法則)~
無罪主張といっても、有罪であることを立証する責任があるのはあくまで検察官であり、被疑者・被告人(および弁護士)が無罪を証明する必要はなく、検察官の有罪立証を攻撃・弾劾することが無罪主張の主眼となります。
刑事訴訟法317条は「事実の認定は、証拠による」ものとしており、検察官の立証の核となるような証拠が排除されることになれば有罪の立証は困難になると考えられます。
この点、証拠排除に関する法則として、刑事訴訟法上に明文こそありませんが、判例上確立した考え方として、違法収集証拠排除法則があります(最判昭和53年9月7日等参照)。
これは、(捜査官等の証拠収集手続に)令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、将来における違法捜査の抑制の見地からして相当でない場合には、これを上記刑訴法317条のいう「証拠」として許容しないという考え方です。
上記排除法則を適用し証拠排除を認めた最高裁判例はわずかしか存在しませんが(最判平成15年2月14日等)、近年では下級審において証拠排除を認める裁判例が増えつつあるのが現状です。
例えば、本件のような大麻所持罪における証拠たる大麻の捜索・差押えが、捜査官によって作成された虚偽の供述調書を資料として請求・発付された捜索差押許可状(令状)に基づいてなされた場合など(横浜地決平成28年12月12日参照)、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来の違法捜査抑制の見地から相当でないといえる場合には、当該違法捜査によって得られた証拠は排除されることになります。
このように、有罪立証の核となる差押えられた大麻が証拠として採用できない場合、被疑者・被告人の有罪を証明することはできなくなり、無罪となり得るのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、大麻取締法違反事件を含む薬物事件といった刑事事件を専門に扱っている法律事務所です。
我が国の刑事司法ではハードルの高いと言われている無罪主張を含め、依頼者様にとっての利益を最大化するための弁護活動を行ってまいります。
弊所フリーダイヤル(0120-631-881)にて、大麻取締法違反事件等で逮捕されてしまったご家族のお問い合わせを24時間態勢で受け付けております。
逮捕された方への、刑事事件専門の弁護士による直接の面会(初回接見)サービス等、担当者が分かりやすく丁寧にご案内いたします。
大阪府住吉警察署への初回接見費用36,800円
薬物事件捜査の範囲と限界
薬物事件捜査の範囲と限界
~ケース~
警察官Pは、Aが兵庫県小野市の自宅を拠点に覚せい剤を密売しているとの疑いを強め,A方の捜索差押えを実施する必要があると考えた。
Pは、神戸地方裁判所社支部裁判官に対し,Aに対する覚せい剤取締法違反(営利目的の譲渡)の被疑事実でA方の捜索差押許可状の発付を請求し、捜索すべき場所をAの自宅とする捜索差押え許可状の発付を受けた。
Pは,Aが玄関のドアチェーンを掛けたまま応対してきたため、A方ベランダの外にあらかじめ待機させていた捜査員Qらを、Pの合図でベランダの柵を乗り越えて窓ガラスを割って解錠し、A方に入らせた。
その後、PはAに対し捜索差押許可状を呈示し。捜索を開始した。
(上記事例はフィクションです)
~薬物事件捜査の範囲と限界~
上記の事例では、Pは捜索差押許可状(いわゆる令状)に基づいて、A方を捜索しています。
そのため、令状なく捜索差押えが行われたわけではなく、この点について違法はありません。
もっとも、上記の事例において、Pは、部下の捜査官Qらに命令して、ベランダの柵を超えて、窓ガラスを割って解錠し、Aの自宅内に入らせています。
刑事訴訟法は、警察官の行う捜索差押えについて、令状に基づいてさなれる必要があると規定されているにとどまり、その際の捜査手法について具体的に規定されているわけではありません。
そのため、このような態様での捜査が適法といえるかどうかが問題となります。
刑事訴訟法111条1項本文は「差押え状、記録命令付差押状又は捜索状の執行については、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる」と規定しています。
同条は、直接的には裁判所の行う執行について規定したものですが、警察などの行う捜査においても準用されています。
そのため、P及びQらの行為が、上記の「必要な処分」に当たるといえる場合には適法な捜査であるといえることになります。
刑事訴訟法111条は、捜索差押えという主たる処分に附随する処分として認められた捜査手法であるといえます。
また、警察や検察の行う捜査は、一般的に、必要かつ相当な範囲でのみ認められるべきであるという比例原則が妥当します。
したがって、上記の「必要な処分」については、その捜査手法が必要かつ相当であるといえる場合に限り、認められるものであると考えられます。
では、上記事例でのP及びQらの行為が必要かつ相当であるといえるでしょうか。
上記事例では、Pは、Aが自宅を拠点として覚せい剤を密売しているとの疑いを持っています。
覚せい剤等の薬物事件においては、密行性が高く、証拠物である覚せい剤そのものや注射器などを容易に廃棄することが可能であるといえます。
そのため、覚せい剤事件では、一般論として、証拠保全の必要性が高いといえます。
また、上記事例では、Aが玄関のドアチェーンを掛けたまま応対しています。
そのため、玄関からA宅に入るためには相当の時間を要し、その間に証拠物を破棄される恐れがあるといえます。
したがって、そのような証拠の破棄を防ぐためにベランダの柵を乗り越え、窓ガラスを割って解錠する必要性があったといえます。
さらに、窓ガラスを割るという行為についても、玄関ドアそのものを破壊する行為などと比べると、Aが被る財産的損害は軽微であるといえ、捜査としての相当性も認められるといえます。
したがって、P及びQらの行為は「必要な処分」として適法であるといえる可能性が高いです。
なお、Pは捜索差押許可状を捜索の着手後にAに呈示しており、令状の事前呈示を怠っています。
しかし、証拠保全の必要性がある場合には、捜索着手後に近接して令状呈示を行うことも認められていることから、この点について、違法があるとまではいえないでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は、刑事事件を専門とした弁護士であり、捜索差押えをきっかけとした逮捕や取調べのご相談も受け付けています。
覚せい剤などの薬物事件についてお悩みの方は、弊所の弁護士まで、ご相談ください。
まずは、0120-631-881までお気軽にお電話ください。
兵庫県小野警察署までの初回接見費用:上記フリーダイヤルにてご案内いたします。
麻薬取締法違反で逮捕・即決裁判
麻薬取締法違反で逮捕・即決裁判
事例:Aは自らが所持している違法薬物が、実際は覚せい剤であるのに、これを麻薬(コカイン)であると思い込んで所持していた。
京都府宇治警察署の警察官は、Aを麻薬取締法違反の疑いで逮捕した。
なお、Aは違法薬物を所持していたことは認めている。
Aの家族は、薬物事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実を基にしたフィクションです。)。
~麻薬取締法と覚せい剤取締法~
まず、どちらも違法薬物であるコカインと覚せい剤は、それぞれ別の法律によってその取締りを規定しています。
コカインは、麻薬取締法によってその所持等の禁止が定められています。
麻薬取締法は、28条1項本文において「麻薬取扱者、麻薬診療施設の開設者又は麻薬研究施設の設置者でなければ、麻薬を所持してはならない」と、「麻薬」の所持を禁止しています(ここにいう「麻薬」とは、2条1号が別表第一に定めるものであり、コカインもこの別表第一によって本法が取り締まる「麻薬」に当たるものとされています)。
これに対し、覚せい剤は、覚せい剤取締法においてその所持等を禁止しています。
覚せい剤取締法は14条1項において、(法定除外事由の無い限り)「何人も、覚せい剤を所持してはならない」と、「覚せい剤」の所持を禁止しています。
麻薬取締法で禁止される麻薬の所持の法定刑が「7年以下の懲役」(同法66条1項)であるのに対し、覚せい剤取締法で禁止される覚せい剤の所持の法定刑は「10年以下の懲役」(同法41の2第1項)と後者の方が重い刑罰が科されていることになります。
本件では、Aはコカインだと思って覚せい剤を所持していたところを逮捕されています。
この場合に、どちらの法律が適用されるのでしょうか。
この点、判例(最決昭和61・6・9)は、軽い罪の故意(本件でいえば麻薬所持)で重い罪(本件でいえば覚せい剤所持)を犯した場合には、犯罪の構成要件が重なり合う限度で軽い罪が成立することを認めています。
本件では、両罪の目的物が麻薬か覚せい剤かに差異があるだけで、犯罪の構成要件の重なり合いが認められるため、軽い麻薬所持罪が成立することになります。
~即決裁判手続の利用~
薬物犯罪は重大犯罪であり、仮に初犯であっても起訴され、通常の刑事裁判は避けられないとのイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
しかし、特に初犯であれば、通常の刑事裁判ではなく即決裁判手続を利用することで早期に裁判などの刑事手続からの解放を目指すという道を選ぶことも考えられます。
即決裁判手続とは、争いのない明白かつ軽微な事件について、検察官が被疑者の同意を得て起訴と同時に申立て行うことで、迅速かつ簡易な審理・判決を実現させる手続です(刑事訴訟法350条の2)。
即決裁判手続では、可能な限り速やかに裁判の期日が指定され、原則としてその日のうちに結審・判決がなされます。
そして、判決で懲役または禁鋼が言い渡される場合には、必要的に執行猶予が付されることとなります。
このように即決裁判手続によれば、迅速な刑事手続からの解放と執行猶予判決がなされることから、事件の早期解決を希望する被疑者や家族にとっては少なくないメリットを得ることが可能です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、麻薬取締法違反や覚せい剤取締法違反などの薬物事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
当該事件における即決裁判手続の利用の可否や、そのメリットだけではなくデメリットなども十分に検討・ご説明差し上げます。
麻薬取締法違反事件(麻薬所持罪)で逮捕された方のご家族は、年中無休で繋がるフリーダイヤル(0120-631-881)まで、まずはお電話ください。
京都府宇治警察署への初回接見費用:36,500円