大麻所持事件と執行猶予
大麻所持事件と執行猶予
~ケース~
Aさんは福岡県宗像市で自動車を運転中、パトカーに停止を求められたので、停止し、職務質問に応じました。
質問中、Aさんがハンドバッグを不自然に抱え込んでいるのを不審がられ、中身を見せるよう求められました。
バッグを開けると、ガラスパイプが見つかったので、車内をもう少し見せてほしいと言われ、承諾すると、ダッシュボードから2グラムの大麻が見つかりました。
簡易検査の結果、陽性であったので、Aさんは大麻所持の現行犯として福岡県宗像警察署に逮捕されました。(フィクションです)
~大麻所持の罪について解説~
大麻取締法第24条の2第1項は、「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する」としています。
「所持」とは、「事実上の実力支配関係」をいい、自分が直接手にしている必要はなく、社会通念上本人の実力支配、管理の及ぶ場所に保管していれば足ります。
自宅に置いてある場合、カバンに入れている場合はもちろん、勤め先の医院薬局内においてある場合も「所持」に該当すると考えられます。
~今後Aさんはどうなるか?~
警察署に引致された後、犯罪事実の要旨及び弁護人選任権があることを告知され、弁解の録取を経て取調べが行われます。
そして、留置の必要があると認められると、逮捕時から48時間以内に身柄が検察庁へ送致されます。
検察官は、Aさんから改めて弁解を録取した後、取調べを行い、身柄を受け取ったときから24時間かつ逮捕時から72時間以内に、Aさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するかを決定します。
勾留請求は裁判官に対して行うものであり、Aさんは裁判所で勾留質問を受けることになります。
裁判官は、勾留決定を行うかどうかを検討し、勾留決定を出した場合Aさんは10日間勾留されることになります。
さらに、やむを得ない事由(たとえば捜査の遅延など)があると認められるときは、最長10日間勾留を延長されます。
検察官は、勾留の満期日までに、Aさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決定します。
~大麻所持事件の捜査の特徴~
大麻所持事件に限らず、ケースのような薬物事件は、多くの関係者が存在することが見込まれ、入手ルート、入手先の背後にどのような組織があるか、など、捜査を遂げて明らかにすべきことがたくさんあります。
したがって、捜査の都合上、身体拘束が長引く傾向にあります。
身柄解放活動の一つとして、勾留決定に対する不服申し立て(準抗告)がありますが、以上の様な事情から、認容されにくいのも事実です。
一方、起訴後の保釈については、起訴前の身柄解放活動と比べて認められる見込みがあると言えます
上記の事情から、大麻所持事件における身柄解放活動は、基本的には保釈の実現に向けて重点を置くことになります。
もちろん、勾留の要件(逃亡の恐れ、罪証隠滅のおそれなど)を満たさないと考えられるときは、勾留前、あるいは勾留延長前から積極的に検察官や裁判官と交渉することも重要です。
~執行猶予付き判決の獲得に向けた弁護活動~
執行猶予は飽くまでも言い渡された刑を猶予するものに過ぎないため、有罪となって前科がついたという事実には変わりありません。
とはいえ、刑の執行は見送られるわけなので、そのまま社会に復帰することができる点で有用な制度です。
薬物事件の初犯の場合、単に所持しただけといった単純な事案では、執行猶予付き判決がなされることが多いです。
そのため、起訴された場合は、執行猶予付き判決の獲得に向けた弁護活動を展開します。
その際、判決を下す裁判所としては、Aさんが再度薬物犯罪に手を染めることを懸念するのが通常です。
ですので、執行猶予を付けても問題ない、と判断してもらうためには、Aさんがまた薬物に手を出さず、刑務所に行かずとも社会内で更生できるということを納得してもらう必要があります。
そのためには、信頼できる身元引受人を用意し、保釈中から薬物治療のプログラムを受けるなど、再犯防止に努めていることを示す必要があります。
弁護士のアドバイスを受けながら、執行猶予付き判決の獲得に向けた環境作りを行っていきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所であり、大麻所持事件の解決実績も豊富です。
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