薬物傷害事件で鑑定留置

2020-01-22

鑑定留置について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

大阪市西区在住のAさん(30代女性)は、商店街で通りすがりの人に暴力を振るって、怪我をさせたとして、傷害罪の容疑で大阪府西警察署に逮捕された。
Aさんは、逮捕後の警察捜査で、薬物使用の疑いがあると判明し、傷害事件当時の責任能力が問題となり、精神鑑定にかけられることになった。
Aさんの家族は「精神鑑定のための鑑定留置により、さらにAさんの身柄拘束の期間が延長される」と警察から聞かされた。
Aさんの家族は、今後のAさんの早期釈放や刑罰軽減のために、まずは刑事事件に強い弁護士をAさんのもとに初回接見(面会)に派遣し、今後の事件対応について、弁護士のアドバイスを求めることにした。
(事実を基にしたフィクションです)

~鑑定留置とは~

刑事犯罪を起こして身柄拘束中の被疑者・被告人は、「精神状態に問題があることにより、刑事事件の責任能力が有るか無いかを判断するため」に精神鑑定がなされることがあります。
精神鑑定(特に嘱託鑑定)の際には、鑑定留置の処分により、さらに身柄拘束が長引くことがあります。

精神鑑定の種類として、「起訴前の簡易鑑定」「起訴前の嘱託鑑定」「起訴後の正式鑑定」などが挙げられます。

①起訴前の簡易鑑定
逮捕から起訴されるまでの身柄拘束期間に、検察官の判断によって実施される精神鑑定を「簡易鑑定」といいます。
検察官の依頼を受けた精神科医が、数時間程度の診察を1回行い、鑑定書を文書で提出します。
簡易鑑定が行われる機会は、嘱託鑑定や正式鑑定に比べて多く、検察官による起訴・不起訴の判断に、大きく影響しています。

②起訴前の嘱託鑑定
逮捕から起訴されるまでの身柄拘束期間に、検察官の嘱託によって実施される精神鑑定を「嘱託鑑定」といいます。
嘱託鑑定を実施する際には、検察官は「裁判官が発行する鑑定処分許可状」を取得する必要があります。
嘱託鑑定は通常2ヶ月程度かかるとされており、嘱託鑑定に要した時間は、逮捕から起訴されるまでの勾留期間の時間制限から除外されるため、起訴判断までの身柄拘束期間が長引く結果となります。
また、嘱託鑑定を実施する際に、被疑者の同意は必要とされません。

③起訴後の正式鑑定
起訴後の公判期間中に、裁判官の命令によって実施される精神鑑定を「正式鑑定」といいます。
刑事訴訟法165条には「裁判所は、学識経験のある者に鑑定を命ずることができる。」との規定があり、通常は弁護人側から「精神鑑定の実施を要望する文書」が裁判所に提出され、裁判官が弁護人の依頼を容認する形で、正式鑑定がなされます。
正式鑑定を実施する鑑定人には、宣誓義務・証人喚問などの重い責任が課されます。

精神鑑定(特に嘱託鑑定)のために、鑑定留置が行われる場合には、被疑者の身柄拘束期間が長くなってしまう結果になるため、早期解放を願う被疑者本人やその家族にとって、身柄拘束延長の不利益を被るおそれがあります。
他方で、精神鑑定が実施されることで、被疑者の心神耗弱状態や心神喪失状態や認定されれば、刑事処罰が軽くなる可能性も考えられます。

薬物傷害事件で刑事弁護の依頼を受けた弁護士は、被疑者本人やその家族の意向を聞き取りながら、より良い結果に結び付けるためには、精神鑑定を依頼したほうがいいのか、精神鑑定を拒否したほうがいいのかを検討します。
精神鑑定に関わる事件において、早期釈放や刑事処罰軽減に向けた最適な弁護活動を目指して、弁護士の側から、裁判官や検察官に対して積極的な働きかけを行っていきます。

大阪市西区薬物傷害事件でお困りの方は、刑事事件を専門に扱っている、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の評判のいい弁護士にご相談ください。