取調べの受け方
1.逮捕された人の権利
逮捕段階だけでなく、逮捕⇒勾留⇒起訴⇒裁判の全ての段階で、自分が選んだ弁護士を選任し(弁護人選任権)、選任した弁護士と捜査官の立会いなく密室で面会し(接見交通権)、取調官や裁判官の質問に沈黙を貫き(黙秘権)、調書の内容に変更を申立て(増減変更申立権)、内容が変更された調書であっても署名押印を拒否すること(署名押印拒否権)ができます。
2.各権利の内容
(1)弁護人選任権
逮捕された場合、いつでも資格を有する弁護人を依頼することができます。
勾留請求されるまでは国選弁護人を選任できませんが、私選弁護人の選任は可能です。
ただし、私選弁護人の選任は経済的負担を伴います。
もっとも、弁護人を選任せず、適切な対応ができなかった場合には、長期にわたる身体拘束を強いられるおそれがあります。
早期に弁護人を選任し、留置施設から出るための助言を受けましょう。
弁護人選任権を行使して、弁護人に相談することで、取調べに関する具体的なアドバイスを受けることができます。
(2)接見交通権
身体拘束されている間、弁護人や弁護人となろうとする者と警察官や検察官の立会いなしに面会(接見)をすることができます。
勾留請求前の段階で接見できるのは、基本的に弁護士に限られるため、弁護士との接見が外部と接触する唯一の機会といえます。
また、取調べで一度発言した内容を後で取り消すことは非常に困難です。「裁判で本当のことを言えば大丈夫」との考えは全く通用しません。
取調べを受ける前など早い段階で弁護士から助言を受けて取調べなどに対応することで、今後不利な状況を回避できる可能性が高まります。
被疑者・被告人は、留置場に入り、外部との接触を絶たれると、時に寂しさを感じたり、必要なものが手に入らなかったり、知りたい情報を自由に手に入れられなかったりします。
そのような中で、捜査機関による取調べ等を受けます。被疑者・被告人は精神的にも肉体的にも辛い状況に立たされることになります。
こうした場合でも、被疑者・被告人は、接見交通権を行使することで、弁護人に事件のことを相談し、アドバイスを受けることができます。
(3)黙秘権・供述拒否権
取調べの際、自己の意思に反する発言をしなくてよい権利があります。
取調べの中で取調官から答えたくない質問をされた場合には、「言いたくありません」「話したくありません」と答えることもできるのです。
しかし、どのような場合にこの権利を使うべきか難しい問題です。
本当に犯人でないのであれば「自分はやっていない」と主張したうえで黙秘した方が効果的な場合がありますが、本当に犯人であるならば積極的に取調べに応じることが反省の態度を示すことになり、後の刑事処分が軽くなる場合もあります。
事前に弁護士と相談したうえで、この権利を効果的に使うことをおすすめします。
(4)署名押印拒否権
取調べで話した内容は「供述調書」に記録されます。
調書に署名押印することで、調書に記載されている内容は「供述者本人が発言したことに間違いのないもの」として後の裁判で取り扱われます。
署名押印は義務ではありません。
調書が100%正しい内容であっても、署名押印を拒めます。署名押印するか少しでも迷った場合には、いったん保留して弁護士に相談しましょう。
(5)増減変更申立権
調書の記載内容に誤りがあった場合、調書を修正するように申し立てができます。
調書は後の裁判において重要な証拠になるため、自分が納得できる内容に訂正されるまで署名押印をする必要はありません。
遠慮せずに修正を申立て、自分が納得できる調書を作成してもらいましょう。
2 理不尽な取調べを受けたら
警察などの捜査機関は、自白を得るため下記のような方法で取調べを行うことがあります。
- 朝から夜まで長時間に及ぶ取調べ
- 接見要請を無視した取調べ
- 暴力的、脅迫的な態度で取調べ
- 目撃者がいる、共犯者は認めているなどと虚偽を述べ自白を誘導してくる
- 自白すれば逮捕しない、不起訴になる、執行猶予になるなどと述べ自白を誘導してくる
こうした取調べは違法である可能性がありますが、取調べの違法性を証明することは容易ではなく、一旦自白すると、おおよそ被告人の有罪・量刑を決める重要な証拠として採用されてしまいます。
こうした虚偽の自白は、逮捕直後に捜査機関による連日の取調べなどで、逮捕された人が精神的に追い込まれやすく、取調官の違法・不当な取調べに屈してしまいやすい、逮捕直後の弁護士がついていない時期における取調べでなされることが多いです。
つまり、虚偽の自白を回避するためには、逮捕後すぐに弁護士を選任し、その弁護士に適切な弁護活動をしてもらうことが重要です。
3.勾留請求されないために
検察官は、勾留の理由と必要性があると判断した場合に勾留請求します。
勾留の理由として、①住居不定、②罪証隠滅のおそれ、③逃亡のおそれといった事情が1つでもあることが必要です。
弁護人に依頼し、①~③の事情が全くないことや勾留の必要性のないことを示す証拠を収集し、検察官に提出してもらうことで、勾留請求しないように働きかけを行いましょう。
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