薬物別―シンナー等有機溶剤

1 薬効など

シンナーとは、塗料を薄めるために使用される有機溶剤のことをいい、その成分となるトルエン等とともに、「毒物及び劇物取締法」により、その乱用等が規制されています。

シンナー等の有機溶剤を乱用すると、神経が抑制されてぼんやりとし、酒に酔ったような感じになります。

乱用を続けると、集中力、判断力が低下し、何ごとにも無気力になるほか、幻覚や妄想などの症状が現れます。

また、身体に与える影響も大きく、心臓、肝臓、腎臓、呼吸器系、生殖器官等の各種器官に障害が起こります。

特に恐ろしいのは、乱用によって大脳が萎縮し、一度破壊された脳の働きはたとえ乱用をやめても決して元には戻らないことです。

さらに、大量に吸入した場合には、呼吸中枢が麻痺するなどにより、窒息死することもあります。

 

2 法定刑

(1)無登録販売等

3年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はこの併科

 

(2)(摂取・吸入・これら目的の所持を知情しての)販売、授与

2年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はこの併科

 

(3)摂取・吸入・これら目的の所持

1年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金又はこの併科

3 弁護活動

・犯罪の成立を争う場合

シンナー等有機溶剤の摂取等をした場合でも、犯行当時に違法な薬物であることの認識がなかったのであれば、罪に問われることはありません。

ただ、違法性の認識については、これが規制薬物に該当するという認識までを要するものではなく、当該薬物が違法な物かも知れないという認識がある程度で構わないとされています。

ですから、違法薬物とは知らなかったという主張は、容易に通るものではありません。

しかし、確実に適法であるとの確信を持っていた場合には、犯罪が成立しませんし、十分に争う余地はあります。

弁護士は、違法薬物との認識がなかったということを、客観的な証拠や事実に照らして、具体的に主張していきます。

また、たとえ事件を起こしても、それを証明するに足りる証拠がなければ有罪にはなりません。

その証拠は適法な捜査によって獲得されたものでなければなりません。

ですから、職務質問・所持品検査・取り調べなど、捜査の過程で看過しがたい重大な違法行為があれば、その旨を主張して、収集された証拠を排除します。

こうした主張が認められれば、犯罪を立証する証拠が不十分であるとして、不起訴処分・無罪判決を受けられる可能性が高まります。

 

・環境調整・再犯防止

シンナー等有機溶剤を摂取・吸入等したことなどにつき争いがない場合、できる限り量刑を軽くしてもらえるように、酌むべき事情を精査して主張していきます。

具体的には、薬物への依存や常習性がないこと・再犯を防ぐ対策をとっていること・共犯者間で従属的な立場にあったことなどを客観的な証拠に基づいて説得的に主張します。

薬物依存を断ち切るためには、専門医の治療を受けることも重要です。

減刑・執行猶予付き判決の獲得には、ご家族や周囲の方の理解と協力のもと、二度と薬物犯罪に手を染めない環境作りと具体的な対応策を裁判所に示すことが重要なのです。

また、毒物及び劇物取締法では、選択刑として罰金刑が定められているため、正式な裁判手続きではなく、略式手続によって罰金にすることが可能です。

この略式罰金を狙うためにも、環境づくりが大切です。

 

・身柄解放活動

シンナー等有機溶剤に関する犯罪をしてしまった場合でも、証拠隠滅の恐れがない・逃亡の恐れがないことなどを客観的な証拠に基づいて積極的に主張します。

こうした活動は、逮捕・勾留されている方の早期釈放・保釈につながります。

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