大麻取締法違反事件(営利目的譲渡し)の保釈

2022-04-05

大麻取締法違反事件(営利目的譲渡し)の保釈

大麻取締法違反事件営利目的譲渡し)の保釈について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、東京都千代田区の繁華街で飲食店の客引きをしていた男子大学生に「大麻吸ってみないか」と声を掛け、後日、大麻約3グラムを1万8千円で譲り渡しました。
その後、Aさんは、警視庁麹町警察署の警察官により、大麻取締法違反営利目的譲渡し)の容疑で逮捕されました。
Aさんは、なるべく早く身柄を解いてほしい、保釈をしてほしいと考えています。
(2021年1月14日に静岡新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【大麻取締法違反(営利目的譲渡し)とは】

大麻取締法3条は、大麻取扱者(大麻取締法2条2項・3項に定められた都道府県知事の免許を得た者)以外の者が大麻を譲り渡すことを禁止しています。

大麻取締法3条
大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。

そして、大麻取締法24条の2は、大麻をみだりに譲り渡すことを禁止しています。
特に、大麻取締法24条の2第2項は、営利目的譲渡し行為を厳しく罰しています。

大麻取締法24条の2第1項
大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する。

大麻取締法24条の2第2項
営利の目的で前項の罪を犯した者は、7年以下の懲役に処し、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処する。

大麻取締法24条の2第1項の「譲り渡し」とは、大麻について何らかの処分権を与えてその所持を移転することをいいます。
刑事事件例では、AさんはVさんに大麻を売り渡しており、このAさんの行為は大麻取締法24条の2第1項の「譲り渡し」に該当すると考えられます。

また、大麻取締法24条の2第1項の「みだりに」とは、法律に大麻の譲渡しを適法とする除外事由がないことをいいます。
例えば、大麻取締法3条は「大麻取扱者でなければ」大麻を譲り渡してはいけないと規定しています。
この場合、大麻取扱者であることは、大麻取締法に規定された大麻の譲渡しを適法とする除外事由に当たります。
本件刑事事件例では、Aさんの譲渡し行為を適法とさせる法定の除外事由はありません。
よって、Aさんの譲渡しは大麻取締法24条の2第1項の「みだりに」行われたといえます。

さらに、大麻取締法24条の2第2項の「営利の目的」とは、財産上の利益を得る目的をいいます。
刑事事件例では、AさんはVさんに大麻を売り渡しています。
売り渡すという意味通り、Aさんには財産上の利益(代金)を得る目的があった、すなわち大麻取締法24条の2第2項の「営利の目的」があったと考えられます。

以上より、Aさんには大麻取締法違反の罪(営利目的譲渡し)が成立すると考えられます。

【保釈とは】

刑事訴訟法89条は、同条1号から6号がない限り、被告人の方の権利として保釈を許可しなければならないとしています。

刑事訴訟法89条
保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。

刑事訴訟法89条の「次の場合」とは、①重大犯罪であること、②重大犯罪の有罪判決を受けたことがあること、③常習して犯罪を犯していること、④罪証隠滅のおそれがあること、⑤証人威迫等のおそれがあること、⑥氏名又は住所不定であることです。

刑事事件例の大麻取締法違反事件でも、例えば家族の協力のもと被告人を監督できる環境が整えられていることといった事情があれば、その事情を基に上記の権利保釈の例外事由がないことを主張する保釈請求書を提出することができると考えられます。

また、刑事訴訟法90条は、権利保釈が認められなくとも、裁量により保釈を許可することができると規定しています。

刑事訴訟法90条
裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

もしも権利保釈が認められなくとも、例えば会社を解雇されるおそれがある、家族の介護が必要である、被告人本人の通院が必要であるといった保釈を認めてもらう必要性などを合わせて主張していくことで、この裁量保釈を求めていくこともできます。

保釈は何度でも請求することができますので、弁護士と共に保釈に十分な環境を整えながら粘り強く保釈を求めていくことが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を中心に取り扱っている法律事務所です。
大麻取締法違反事件営利目的譲渡し)での保釈についてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。