薬物事件と即決裁判

2021-09-02

薬物事件と即決裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

Aさんは,コインパーキングに停めていた車の中にいたところ警察官の職務質問を受け、Aさん承諾のもと自動車内を検索されたところ、サイドボックスの中からパケに入った白色製粉末を発見されてしまいました。簡易検査の結果、白色製粉末が覚せい剤であることが判明し、Aさんは覚せい剤取締法違反(所持罪)で緊急逮捕されました。Aさんは前科がなく、逮捕事実もすべて認めています。
(フィクションです。)

~薬物事件の逮捕率は高い~

覚せい剤事件をはじめとする薬物事件の場合、高い確率で逮捕・勾留されます。
薬物事件の場合、覚せい剤の入手(輸入等)→売却→譲り受け(譲り渡し)→使用という一連の流れを踏み、その過程には多くの関係者が関与しています。にもかかわらず、その関与者全員が検挙されることは稀です。したがって、たとえ特定の犯人を検挙できたとしても、他の未検挙者と通謀するなどして罪証隠滅行為をすると疑われてしまう可能性が高いのです。そのため、薬物事件では、勾留によっては罪証隠滅行為を防止できないとして接見禁止決定を出されることが多いと思われます。接見禁止決定とは、弁護人あるいは弁護人となろうとする者以外の者との接見を禁止する決定を言います。

~即決裁判とは~

即決裁判とは、即決裁判対象事件について、事案が明白かつ軽微であって、証拠調べが速やかに終わるなどの事情があるときに、原則、1回の審理で判決の言い渡しまで行う裁判手続をいいます。
勾留中に起訴されると自動的に2か月の勾留が決まります。しかも、起訴されてから初めての裁判が行われるまでに早くても1か月程度を要するでしょう。
しかし、事案が軽微であって犯罪の成否に争いがなく、執行猶予付き判決が見込まれる事件についてさえ上記の手続きを取ることは、被告人(起訴された方)にも負担であるばかりか円滑な社会復帰の妨げとなるおそれがあります。また、そうした方をいつまでも収容する収容側にも大きな負担となります。
そこで、即決裁判手続きが認められています。
即決裁判を受けるメリットは、審理は申立て後、原則、14日以内に開かれ1回で終わること、必ず執行猶予判決を言い渡されること(実刑判決は言い渡されない)、審理当日(判決当日)に釈放され、早期の社会復帰が可能となること、です。
他方、デメリットとしては、必ず有罪判決が言い渡されること、量刑不当を理由に控訴できるが、事実誤認を理由とする控訴はできないことです。

覚せい剤所持罪は即決裁判の対象となります。また、覚せい剤の所持量が微量であること、Aさんに前科がないこと、Aさんが事実を認めていることに鑑みれば、本件が即決裁判に付される可能性は十分あります。検察官が即決裁判の申立てをする場合は、被疑者の同意が必要です。また、即決裁判には上記のようなデメリットがあるため、裁判官は、被疑者が同意をするかどうかを明らかにしようとする場合において、被疑者に弁護人がいないときは、請求により、被疑者のために(国選の)弁護人を選任しなければならないとされています(さらに、即決裁判は、弁護人がいなければその審理を開くことができません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は薬物事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、弊所までお気軽にご相談ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスを受け付けております。