覚せい剤所持の罪、薬物事件の特徴

2021-01-28

覚せい剤所持の罪、薬物事件の特徴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。

密売人のAさんは、休日、自宅にいたところ、突然、警察署の捜索(ガサ)を受け、自宅から覚せい剤約30グラムを押収されてしまいました。そして、Aさんは覚せい剤取締法違反(営利目的所持の罪)で逮捕されてしまいました。Aさんから依頼を受けた弁護士がAさんと接見しました。
(フィクションです。)

~ 覚せい剤取締法 ~

覚せい剤取締法で禁止している覚せい剤の所持には、①単純(非営利目的)所持と②営利目的所持の2種類があります。

①の法定刑は「10年以下の懲役」です。他方、②の法定刑は「1年以上の有期懲役又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金」で、①より非常に重たい罪であることが分かります。

* 所持とは *

「所持」とは、「事実上の実力支配関係」とも言われています。すなわち、自分が直接手にしている必要はなく、社会通念上本人の実力支配、管理の及ぶ場所に保管していればいいとされています。ある日、突然、警察のガサが入り、自宅部屋のタンス内から覚せい剤を押収されたとき、覚せい剤(所持の罪)で逮捕されるのはこのためです。

* 営利目的とは *

営利目的とは、覚せい剤を所持する動機が財産上の利益を得る、ないしはこれを確保する目的に出たことをいうとされています。本人が営利目的を有していたかどうかは、専ら本人の内心に関わる事情ですから、以下のような客観的事情から推認されます。

① 覚せい剤を所持する量
  覚せい剤を所持する量が多ければ、それだけ他人に売っている疑いが高くなり、営利目的が疑われます。
② 所持の態様 
  ガサ時に、多量のチャック付きポリ袋(パケ)に入った覚せい剤が押収されたなどという場合も、他人に売っている疑いが高くなり、営利目的が疑われます。
③ 覚せい剤以外の押収品
  通常、覚せい剤はパケに2~3回分の使用量を入れて売られます。また、その際、使用道具である注射器も付けれれることがあります。そのため、多量のパケ、注射 器(未使用のもの)が押収された場合は、営利目柄が疑われます。その他、覚せい剤を小分けする量を計るなどする電子計り、小分けに使うピンセット、スプーン等が 押収された場合も同様です。その他、密売事実を裏付ける購入者リスト、メモ、メール・電話履歴等が押収され、そこに密売の形跡が認められる場合は営利目的を疑わ れるでしょう。

~ 薬物事件の特徴 ~ 

覚せい剤事件をはじめとする薬物事件の場合、他の刑事事件と異なり、以下の特徴があると言われています。

= 示談できる相手がいない =

覚せい剤事件をはじめとする薬物事件にかかる犯罪は被害者不在の犯罪です。被害者がいる刑事事件では被害者との示談→不起訴処分・執行猶予獲得という絵を描きやすいのですが、薬物事件の場合は被害者が存在しないためそうはいきません。

= 高い確率で逮捕・勾留される =

薬物事件の場合、覚せい剤の入手(輸入等)→売却→譲り受け(譲り渡し)→使用という一連の流れを踏み、その過程には多くの関係者が関与しています。にもかかわらず、その関与者全員が検挙されることは稀です。したがって、たとえ特定の犯人を検挙できたとしても、他の未検挙者と通謀するなどして罪証隠滅行為をすると疑われてしまい、逮捕・勾留される可能性が高いのです。

= 高い確率で接見禁止も =

そのため、薬物事件では、勾留によっては罪証隠滅行為を防止できないとして接見禁止決定を出されることが多いと思われます。接見禁止決定とは、弁護人あるいは弁護人となろうとする者以外の者との接見を禁止する決定を言います。

~ 薬物事件における弁護活動 ~

上記の特徴から、示談交渉は無意味です。そこで、釈放に向けた弁護活動(保釈請求等)が主となります。その他、執行猶予や一部執行猶予・減軽獲得のため、再犯防止に向けた対策を立案して実行に移せるよう手助けを行います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,薬物事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。